愛・地球博 「現状では参加困難」―自然保護協会など国内環境3団体
2003.12.20 中部朝刊 27頁 社会 (全968字)
◇IUCNへ報告書
05年日本国際博覧会(愛・地球博)への参加を博覧会協会から求められていた日本自然保護協会、世界自然保護基金(WWF)日本委員会、日本野鳥の会の自然保護3団体が「現状では課題が残っており、参加は出来ない」と国際自然保護連合(IUCN・本部スイス)に報告していたことが19日、分かった。IUCNは主要国際機関として協会から参加を要請されており、IUCNの判断にも影響を与えるとみられる。また、自然との共生を掲げる愛・地球博に「愛知万博検討会議」のメンバーでもあった日本を代表する自然保護団体が疑問を表明したことで、開催理念も問われそうだ。
IUCNは48年設立。約70の国と約100の政府機関、自然保護団体など約1000の非政府組織(NGO)などで組織され、ラムサール条約や世界遺産条約の推進にかかわった国際的影響力を持つ組織。愛・地球博をめぐっては00年10月のIUCN総会で▽環境に配慮した万博にする▽会場予定地の「海上(かいしょ)の森」(愛知県瀬戸市)を法的に保全する―よう求める勧告案が採択され、博覧会国際事務局(BIE)と日本政府に勧告した経緯がある。
報告は来年11月のIUCN総会で勧告が実現しているかどうかの検証材料とするため、IUCNの日本委員会事務局を務める日本自然保護協会など3団体が今月8日付でカカバチャ会長に提出した。この中では▽海上地区で進められている道路計画の再考を求めているが実現していない▽愛知県が海上の森を自然環境保全地域に指定する方針だが、IUCNが求めた政府レベルでの保護の動きがない―などと指摘した。
そのうえで国内外のNGOなどの参加で行う博覧会協会企画事業「地球市民村」への参加は見送ったことを明記。「この問題でIUCNの判断を左右する考えはないが、今後は愛知万博をチェックし、海上の森保存のための監視を続けたい」との意向を示している。
この問題について、協会の海上地区モニタリング委員会委員も務める吉田正人・日本自然保護協会常務理事は「環境というテーマは(万博誘致のため)後から付けられた理由だ。海上保全のため計画を修正した(00年)当時の理念が維持されれば立派な万博になる可能性があったが、現状はスケジュール優先で理念は継承されていない」と話している。【相良美成】
<毎日新聞社>
愛知万博参加に慎重姿勢 自然保護3団体
2003.12.21 中部朝刊 30頁 (全293字)
二〇〇五年日本国際博覧会協会から「愛・地球博」(愛知万博)への参加を要請されている日本自然保護協会、世界自然保護基金日本委員会、日本野鳥の会の自然保護三団体が、「自然保護策が不十分で、愛知万博に、現状では参加できない」とする報告書を、国際自然保護連合(IUCN、本部・スイス)に送っていたことが、二十日わかった。
三団体は、IUCNへの報告のなかで、この決議に絡んで「海上の森の保護が国家レベルで進展していない」などと指摘、自然保護策が十分ではないとの認識を示している。
博覧会協会では、三団体に対し、民間活動団体(NGO)、非営利組織(NPO)の祭典「地球市民村」への参加を要請している。
<読売新聞社>