御岳ロープウェイ事故
握索機の摩耗が原因
国交省最終報告、安全装置も作動せず
長野県三岳村の「御岳ロープウェイ」の転落死亡事故で、国土交通省北陸信越運輸局の事故調査検討委員会(委員長・永井正夫東京農工大教授)は5日、ワイヤをつかむゴンドラの握索機の部品の摩耗や、安全装置の異常が事故につながったとする最終報告書をまとめた。同運輸局は、同社の安全管理体制の不備も事故の一因との見解を示しており、長野県警は業務上過失致死容疑も視野に入れて調べている。
報告書によると、握索機が2つともワイヤを十分つかめなかったのは、部品の摩耗が主な原因。さらに、頂上駅に設けられた2種類の安全装置のうち、握索機のばねの異常を検出する装置は本来よりも若干高い位置にあり、機能していなかった。握索機の緩みを調べる安全装置も作動しなかったが、原因は特定できなかった。
このため、事故を起こしたゴンドラは握索機が緩んだまま出発し、ワイヤ上を滑走。山頂側の握索機がワイヤをつかみ直して急停止したため、ゴンドラが大きく振れてワイヤに衝突し、アクリル窓が外れ、乗客2人が投げ出された―と推定した。
御岳ロープウェイでは事故の11日前にも、握索機がワイヤを十分につかめないトラブルが起きていたことも新たに判明した。同運輸局の秋元孝生鉄道部長は、定期点検が適切に行われれば、部品の摩耗にも気付いたとの認識を示した。
同運輸局は近く同社に対し、業務改善命令等の行政手続きを行う方針。国交省は同日、全国の事業者に対して安全対策に関する通達を出した。
御岳ロープウェイは「握索機の部品が摩耗していることは分かっていたが、交換には期間を要することから、11月の運休時に行う予定だった」としている。
<2003.12.6中日新聞>