<朝日新聞 2003年12月3日>
万博瀬戸会場 周辺でムササビ捕獲 行動範囲、内外の20ヘクタール

  愛知万博(愛・地球博)を企画、運営する愛知万博協会は2日、瀬戸会場の計画による環境への影響を検討する会場計画モニタリング委員会(座長=山本幸司・名古屋工業大大学院教授)を開いた。協会側は、県のレッドデータブックで準絶滅危惧(きぐ)種とされているムササビを会場そばで捕獲したことを明らかにし、それに発信器を付けて調べた生息状況などを報告した。

  協会の02年6月の修正環境影響評価書では、ムササビの生息域は会場外とされている。しかし、市民団体による指摘を受けて協会が調べたところ、会場内の南部で昨年12月、鳴き声などを確認した。市民団体が「パビリオンに近い北にも生息の跡がある」と指摘したが、協会は今年2月、「リスのもの。ムササビが活動している可能性は極めて低い」との認識だった。

  継続調査で協会は、会場内外の数十カ所に巣箱を設置。会場そばの巣箱で今年10月31日午後、雄の成獣1匹が捕獲網にかかった。個体に約3グラムの発信器を付けて放ち、11月4日以降、行動を追跡。その結果、ムササビの行動範囲は会場の北、東部を含め吉田川上中流域など約20ヘクタールの森林を移動していた。

  協会は今後も月1、2回の調査で行動範囲などを検証するとともに、繁殖期の「縄張り」を調べるため、雌の捕獲を試みるという。

  報告を受け、委員からは「会場は行動範囲の真ん中。木から木に(ムササビが)滑空できるよう、建設する県道の幅を狭めるなど設計を見直すべきではないか」といった意見が出た。

  同協会会場整備本部の黒瀬英治・環境グループ長は「ムササビが会場を横断できるように植栽の配慮をしたい」。県の担当者も「歩行者らの安全上、道路幅は必要最小限と考えている」などと答えるにとどまった。