【1】 今より不便になるのではなく、より便利、より安全で快適な並行在来線へ
<資料1-1> 乗客減少に歯止めがかかない並行在来線4社の07年度決算などから
◆ しなの鉄道株式会社
〇「経常利益は、前期比11%増で2期連続で黒字を確保。7億2700万円の累積損失は今期中に解消できるとの見通し。通学定期や定期外の乗客は減少したが、通勤定期の利用者が開業以来初めて前回を上回る。全体の輸送人員は1078万人で0.7%減。『減少傾向に歯止めがかかってきた』(井上社長)とみている」(「日経」07/05/12)
〇「07年6月に運賃値上げし実質経常黒字を見込む」(「日経」07/05/12)。「今夏をメドに運賃を10%強引き上げる。県による実質的な債権放棄(103億円)で財務体質は改善したものの、乗客数の減少に歯止めがかからないため。中長期的な経営安定に向けた収支拡大策が課題」(「日経」07/01/31)
〇「小諸駅近くに保有する駐車場の土地を小諸市に売却」(「日経」07/03/27)。「軽井沢駅周辺で土地売却交渉をすすめる」(「日経」07/05/12)
 
● IGRいわて銀河鉄道株式会社
〇「(会社設立から平成17年度までの長期収支計画の累計と収支実績について)計画では、累積赤字が10億9800万円のところ、実績が4億3600万円余、その差6億6200万円余と大幅に圧縮。具体的にみますと、営業収入の面では、旅客運賃収入計画では70億7000万円余のところ、土地建物等の貸付料が計画では4500万円余を見込んでいたところ、実績では1億6200万円余と1億1600万円余増加し、一方、営業費の面では、開業費を人件費、社員研修費など当初8億3500億円を見込んでおりましたところ、6億2600万円と2億900万円圧縮」「開業後の人件費につきましては、JR出向者の若年化、あるいはまたJR退職者の再雇用などによりまして、計画では34億5200万円を見込んでいましたところ、実績では31億8800万円」「車両清掃委託など業務委託の圧縮」「開業以来、旅客運賃収入、輸送人員も減少傾向にございまして、IGRいわて銀河鉄道の経営は現段階では必ずしも楽観できない」(2007年6月県議会・当局答弁)
〇「東北新幹線青森開業に伴い、現行の輸送指令システムから分離、単独新設する一部の装置や設備の設計費のうち、経営安定化基金から1762万円を計上した」(「岩手日報」07/06/02)
 
● 青い森鉄道株式会社
〇「2006年度決算は最終損益が300万円の赤字となり、二期連続の赤字。経費節減に取り組んだが、1日あたり乗車人員が前の期に比べ2.2%減の1933人となり収入が落ち込んだ」(「日経」07/05/31)
 
● 肥薩おれんんじ鉄道株式会社
〇「鹿児島県は、第3セクター肥薩おれんじ鉄道について、今後の黒字転換は困難として補助金などの公的支援が必要になるとの見通しを示した。県当局が公的支援の必要性に触れるのは初めて」「利用者数06年度169万人が11年度には約20%減の135万人に落ち込む予想」「支援の具体策としては、直接的な赤字補てんではなく(1)線路や車両維持への補助、(2)沿線自治体による固定資産税の減免(現在約4500万円)、(3)国への税制優遇措置要望−を示した」(「南日本新聞」07/06/26)
〇「開業2年目の05年度に5600万円の減価償却赤字を計上。06年度も1億7900万円の赤字が見込まれる。赤字は開業時6億円程度あったが内部保留金で充当されるが、当面の運転資金や災害対応資金として3億円は確保しておく必要があるため、活用できる余剰金は07年度中にも底をつく見通しだ」(「南日本新聞」07/06/26)
〇6月28日株主総会と取締役会を開き、今後5年間の経営改善計画素案を報告。「JR鹿児島中央駅への乗り入れなどの収支改善策をまとめた経営改善計画を9月までに決定。併せて両県、沿線自治体は公的支援の内容を協議し、08年度中にも予算化する見通し。鹿児島、熊本両県は『単年度償却赤字が発生した場合、各県側の収支に応じた赤字について、それぞれが責任をもって対応する』と合意していた」(「南日本新聞」07/06/29)。
 
<資料1-2> 地方旅客鉄道の概要
@並行在来線・第3セクター会社の概要





 

 
営業キロ
  (q)
輸送人員
 (千人)
輸送密度
(人/1日)
営業収益
(千円)
営業費用
(千円)
全事業経常損益(千円) 職員数
 ( 人)
資本金
(百万円)
青い森鉄道 25.9 770 1,229 430,215 441,368 △4,762 24 600
いわて銀河鉄道 82.0 4,891 3,515 3,633,922 3,756,620 △118,360 190 1,849
しなの鉄道 65.1 10,963 7,598 2,717,819 2,638,104 △5,443 225 7,536
肥薩おれんじ鉄道 116.9 1,881 986 883,560 960,592 △76,668 90 1,560
                            (出所)「数字でみる鉄道2006」運輸政策研究機構
 
<資料1-3> 並行在来線・第三セクター鉄道と信越本線・北陸本線分離区間比較

 
IGRいわて銀河鉄道 青い森鉄道
 
しなの鉄道
 
肥薩おれんじ
鉄道
信越本線
(長野・直江津)
北陸本線
(直江津・金沢)
開業年 2002年12月 2002年12月 1997年10月 2004年3月 2004年春 2004年春
営業キロ

 
82.0q

 
25.9q(青森まで121.9q)
 
65.1q

 
116.9q

 
長野37q
新潟38.1q
 
新潟60.6q
富山100q 、石川20.6q

運賃
(JR運賃比)
普通1.58
定期2.06
 
普通1.37
定期1.65
 
<00>1.1<02>通勤1.2、通学1.32<07>平均10%増 普通1.3
定期1.3
 


 


 
分離会社  JR東日本   JR東日本   JR東日本    JR九州   JR東日本   JR西日本 
線路  複線電化   複線電化   複線電化    非電化  単複線電化  複線電化 
  (出所)2007年6月2日公共交通をよくす富山の会シンポジウム「北陸新幹線の開業で北陸本線は どうなる どうするPart2」より
 
<資料1-4> 地方鉄道衰退の主因
    直接的要因・・・@モータリゼーション A少子化 B高齢化 C過疎化
 衰退の要因            Dスプロール化 E温暖化F不況 G二次交通の衰退
    間接的要因・・・@会計・法規 A大合併 B財政難 C事故・天災
                             (出所)「論説 地方交通」浅井康次編著・交通新聞社
 
<資料1-5> 「交通手段を確保する」の呪縛からの解放
 「交通権は生きるために不可欠な権利であり、公共交通は生きるための必要や要求を満たすための手段のひとつです。ですから、『コミュニティバスを走らせること』や『公共交通手段を用意すること』が、目的化してはなりません。一人ひとりが目的地に移動することが完全に保障できなくても、地域社会の実情にあわせて、京都の商店街が導入したようにFAX注文による商品配達をおこなったり、移動介護ステーションが巡回する回数を増やすなどの工夫により、地域福祉や地域医療の新しいかたちの追及のなかで、一人ひとりの交通権は保障されると考えることができます。なぜなら、交通は移動と異なり、双方向の動きだからです。」
(出所)「国民の交通権保障と公共交通」交通問題研究家平井すぎの、「議会と自治体」2007年6月号
 
<資料1-6> 東北本線を守る会の「利便性に関する10項目の提案」
@電車を維持する。A複線・電化を維持する。B本数を増やす。C運賃を高くしない。D車掌がいる電車・駅員がいる駅。E所要時間を短縮する。F安全の確保。G地元負担がないこと。H経営基盤が強い経営主体を。I
公共性の保障、設立される会社への支援として、事故・災害に対応できる国の制度・補助。
(出所)「蟻が巨像に挑む」より、東北本線を守る会・山火武津夫、2004年1月9日