シンポジウム 北陸線は どうなる どうする Part8   2013年6月15日
将来も安定した運行ができる並行在来線経営計画のために
 
司会 酒井久雄(公共交通をよくする富山の会・世話人)
 今日は私たちが、県民のみなさんに、並行在来線についての県民的な討論の場として、将来も安定した運行ができる並行在来線計画のためにということで、シンポジウムを開いたところ、大勢おいでいただきまして、新潟県の方や、またお隣の石川の方からもおいでいただきまして、本当にありがとうございます。
 私は、今日の司会と進行をつとめさせていただきます、世話人の酒井といいます。宜しくお願いいたします。本日の報告をいただきますパネリストのみなさんは、県並行在来線会社、あいの風富山と、社名も発表されましたが、そちらから専務の朝倉隆文様、それから、郷土史家で地域鉄道研究家の草卓人様、国労の富山県支部執行委員の山口様、それから、私どもの会の世話人をやっております、岡本勝規さん、渡辺眞一さんが行います。
 報告はお一人約20分程度を予定して頂き、3人の方が終わったところで、小休止をさせて頂きたいと思います。再開後、あとのお二人の方に報告をいただき、その後、フロアーの方の質問や意見をいただきまして、そして最後に、各報告者の方々から5分程度、質問や意見についてのお答えなどをいただいて、終了は16時30分ぐらいを予定しております。よろしくご協力をおねがいいたします。それでは、まず最初に、アンケートに現れた利用者が望む並行在来線ということで、当会世話人の岡本勝規が報告させていただきます。
 
[ アンケートなどに現れた利用者が望む並行在来線 ]
岡本勝規(富山高等専門学校 准教授、公共交通をよくする富山の会 世話人)
 公共交通をよくする富山の会の世話人・事務局をしております岡本勝規と申します。本職は富山高専国際ビジネス学科の教員をしております。今日はわざわざ並行在来線会社改め、あいの風富山鉄道さんから、朝倉専務にお越し頂いて、お話をお伺いできるということになっていますが、それに先だって私の報告を露払いという形で、利用者の意向について説明させていただければと思います。
 それじゃ、ちょっと、これから先は座って失礼をいたします。私ども公共交通をよくする富山の会では、沿線住民に対して並行在来線に関するアンケート調査というものを、これまで2回おこなってまいりました。1度目は2010年の春に行ったものであります。当時は国土交通大臣であった前原さんが、JRに責任を期待するような発言もあったので、それを踏まえた上でのアンケート調査でございました。住民がJRに期待する責任や役割を調査しようというのが趣旨です。概要は、画面に示したとおりで、3000枚ほど配って500枚ほど回収しました。
 続いて2回目のアンケート調査というのは、2012年の4月から5月、やはり春にかけて実施したものであります。これは県の方で、並行在来線経営計画概要第1次案というものが決定されたことを受けて、それに対する沿線住民の見解を調査しようという趣旨でおこなったものであります。これもやはり3000枚ほど沿線住民の方に配布して、600枚ほど回収をしたというものでした。これらの2つの結果は、それぞれ2010年、それから2012年に報告をしたわけでございますけれども、今回改めて2つの結果を合わせて、総まとめみたいなものをして、あいの風富山鉄道様が発足する際の環境を、ようするに沿線住民の視点みたいなものを少し検証できればなと思っております。
 そもそも経営分離を行うことで並行在来線会社が発足されるわけですけれども、やはりよく話題になるのが、そのこと自体が知られているのかということですね。2010年に調査したときには、知っている人が6割、知らない人が3割ほど、後は良くわからないというような具合でした。おそらく少しずつ、知っている人が増えてきているんだと思うんですけれども、結局、並行在来線会社を発足させた他の地域でお話を伺っても、開業当日になって「えーっ」というような人が普通にいるということです。従って、なかなか理解を得られないでしょうが、引き続き知らせることはしていかなければならない。「経営分離を知ってはいるけれども、その賛否は…。」というようなことになると、新幹線のせいで経営分離されるのはちょっとおかしいんじゃないかという意見の方が多かったわけです。その地域的傾向面では、呉西よりも呉東の方に反対が多い。富山市は除いていますが。この結果から、並行在来線会社さんが発足される環境としてやはり留意しておかなければならないのは、みんなが望んで「いやー、よかったね。」、みたいな感じで発足するような環境では残念ながらない、ということです。これは肥薩おれんじ鉄道で伺った話ですけども、「支持を受けて発足するわけじゃないというのが辛いところ。」とおっしゃっておられました。そのような環境であることを踏まえて、今後実際に発足するまでにいかに理解を得て「反対」の意見の割合を減らしていくのかということが環境を整える1つの重要な点じゃないかと思います。
 JRが果たすべき役割と国が果たすべき役割については、私どもがアンケート調査をしたところ、JRに応分な責任を持たせるべきだとか、あるいは、国に応分の責任を持たせるべきだというような意見が多かったわけです。国やJRに並行在来線の運営をやらせろという意見が大半を占めているわけですけれども、その一方で支援制度を充実させるべきという意見もございました。
 今回並行在来線会社さんが発足されるにあたって、いろいろ国の支援制度をとりつけたりとか、JRからの資産譲渡価格が低減されたりというところで、一定の成果がみられたのではないかと思っております。いよいよ発足するというこの段階になると、JRとの接続や、在来特急存続との兼ね合いもございますので、JRに応分の責任を負わせるためにはどういう論理をねじ込んでいくのか、というところで知恵を絞っていくべきではないかと思います。JRそれ自体は黒字企業で、十分な内部留保を抱えておりますから、企業の社会的責任(CSR)という点を、問うていけるし、問うていくべきではないかと思います。国においては、やはり交通権の観点が重要です。交通基本法が再度の政権交代があったせいもあって、なかなか前にすすんでおりませんが、相変わらず俎上に残っておりますから、国が人の移動というものをどう考えるのかということを引き続き突き詰めていかなければならないでしょう。その意味合いでは、震災復興がらみでも浮上してまいりましたが、地方鉄道に対する支援制度において最近動きが出てまいりましたので、その点ではちょっと期待もし、さらに進めていって欲しいと考えております。
 ちょっと(前の画面で)構成比のほう見ていただきたいのですが、経営主体については、経営分離に反対の人はもちろんJRが引き続き運行して欲しい、そういう意見が極めて強うございます。しかし実は、経営分離に反対していない人や、賛成している人であっても、支援制度を充実させるべきだという意見が強いわけです。ですから、ほとんどの人が経営分離で発足する第三セクターの並行在来線会社の運営に不安を覚えておられている。それに対して、何らかの支援を、JRや国が講じて欲しいという意向が経営分離に反対していない人であっても望んでいるところなんです。
 続いて、運賃に関しお話申し上げます。今回このあとに、朝倉様からお話があろうかと思いますが、運賃は一応これまでに経営分離されたところの中で一番最低水準の値上げにとどめたということです。確かに、他の所で1.5倍とか1.65倍というような、ものすごい値上げがありましたので、それに比べれば努力をしてずいぶん抑えておられる。ただ、沿線住民の意向としては、やはり現行維持が多かったわけです。県内では万葉線のように、値下げをした例もある。そのことを踏まえれば、本来であれば値上げ自体を避けて然るべきでしょう。マシな方かと思いますが。問題は、この後です。とりあえず低水準の値上げにとどめて発足したけれども、会社様が予測されているように、だんだんだんだん利用者が減っていく見通しになっております。ですから、現行のその値上げ幅にとどめられるのは一体いつまでかというのが次の課題になってくるかと思います。やはりその点では会社様が気にされているように、利用者をどうやって増やすかということになってまいります。そこで問題となるのは、移動手段がどうしても車に流れてしまうという県内の傾向です。つまり、車からどうやって顧客を取り返すかということが課題なのです。そのことを念頭におけば、運賃水準というものは、価格競争力の面からも考えていかなければならない。お得感を出すのは何かということを考えないといけない。家族層をどうやってとりこむか、その点が鍵ではないかと思います。
 今回、並行在来線会社さんは、結局県別で発足することになってしまいました。私どもの会は県別に発足するのはマズイんじゃないかということで反対しておりました。でも、残念ながらそのようになってしまった。運行自体は、幸い県境をまたいでの運行が維持される。石川県方面については充分にそうなる。でも新潟県方面はちょっと微妙に状態になっておりますが。沿線住民の意向としては、共同でやってほしい、あるいはJR西日本に委託して欲しいという意見が強かったのです。それはやはり不安があるということでもあり、運賃の初乗りが2回かかるのだろうかということでも不安をおぼえるということでありました。ただ、運行指令に関しては…、すいません、朝倉さんに伺いますが、運行指令って、富山の並行在来線会社に石川の会社も新潟の会社も委託するんですか?
 朝倉 暫定期間中だけです。
 岡本 暫定期間中だけなんですか。
 朝倉 そのうちにできなくなるから。
 岡本 そうなんですか。わかりました。
 あとはやはり、会社が県別になるというのは初乗り運賃が2回かかることにつながるのであって、この点の制度に関しては経営計画によるとまだ検討中ということでありますので、運賃値上げが基本的に生じないように調整していただきたい。また、ICカードとしてICOCAを導入されるという話もございますので、富山地鉄のICカードである「エコまいか」では運賃割引を実施していますから、同様のことを期待したいと思っております。
 駅での待ち時間の許容程度についてもアンケート結果を出しました。これは運行頻度に関わる問題ですね。それによると、待ち時間が15分未満であれば、大半の人は許容するという傾向になりました。待ち時間15分未満であれば、「10分以内しか待てない」という14・8%の人を除いた、約85%の人々が許容してくれますので、ぜひ会社様にはそこもめざしてもらいたい。やはり待ち時間が長いと移動手段として期待されなくなる傾向があります。
 さらに懸案になっております、富山と関西方面・中京方面を結ぶ在来特急存続の話です。これは沿線住民の間で存続を望む声が非常に強うございます。その意向は、並行在来線が経営分離されることに賛成であろうが反対であろうが共通しています。並行在来線会社の方々は特に、直通運転の維持に向けて頑張って頂きたいと思っております。特に呉東の方の方々が金沢に出るというときなどでは、深刻な問題が生じると思われますので、ぜひとも力を入れて頂きたい。
 貨物の話を少しだけさせて下さい。貨物輸送についても荷主企業の方を対象にアンケートをいたしましたが、荷主の方々は、並行在来線になると、いくつか不安があるというような回答されているんです。それは何かというと、事故や災害が起きたときに対応できるのかとか、線路の補修は貨物列車を運行することが可能なレベルで維持されるのかとかいうようなことです。貨物調整金が、並行在来線会社の大変重要な収入源になろうかと思いますので、その収入をもたらしてくれる大切な荷主さんですから、そこへの配慮が懸案になっていくだろうし、考えるべきことではないかと思っております。
 最後に、実は公共交通改善の取り組みでめざすべきことは、私は3つあると思っています。1つ目は路線の有無。2つ目は接続の問題。待たなくていいという意味合いですね。行ったらすぐに乗れるということです。あるいは、何回も乗り換えなきゃいけないとか、そういったことがないというのが2つ目。そして3つ目は運賃の話。運賃が安いということです。この3つがそろって初めて、人々は公共交通に乗ろうかという考えになってくるのだと思います。幸い、今回は廃線ということはありませんでした。それから県境分離をされるとはいえ、一応運行も県境をまたいで直通はする。だいたい、公共交通の話をするときは、一つ目には気を配るんですけども、3つ目、つまり運賃の観点が抜けてしまうことが多いんです。経営に係わる問題で、シビアな課題なものですから、なかなか良い具合にはなってくません。しかしながら、自家用車に対抗するには運賃のことは避けて通れなくい。どうしても利用者の増加、それから並行在来線が公共交通の軸として位置づけられるようになるためには、運賃の問題をより戦略的に考えていくべきなんじゃないかと思います。私からは以上です。どうもご清聴ありがとうございました。
 
司 会
 どうもありがとうございました。それではですね、引き続きまして、県の並行在来線会社の専務であります、朝倉様から、県並行在来線経営計画のポイント- 利用促進に向けてという演題でお話をいただきます。よろしくお願いします。
 
[ 富山県並行在来線経営計画のポイント−利用促進に向けて− ]
朝倉隆文(富山県並行在来線株式会社 代表取締役専務)
 県並行在来線準備会社の専務をさせていただいております。朝倉でございます。きょうはこのような場所にお招き頂きましてありがとうございます。
 私どもの会社がまだまだ知られていないというふうなことをよくいわれておりまして、出来るだけ機会があればですね、あちこち出向いてお話したいと思っているんですが、今年の2月3月に住民の意見を聞く会ということで、県とともにやらさせていただきましたが、またお声をかけていただければですね、少人数でもかまいませんので、なんなりとこちらの方説明させていただけるなら、おうかがいしたいと思っておりますので、よろしくお願いします。
 今日はですね、県の並行在来線対策協議会がつくった、私どもも共同でつくりましたパンフレットで、今回の経営計画概要のポイントをですね、簡単に説明させてもらいたいと思います。
 まず、開いて頂きましてですね、1ページ、先ほど、今回、経営運営の区間についてのお話がありましたが、4県の県がかかわっております。長野と新潟と富山と石川でございます。長野の方は、もともと篠ノ井駅−軽井沢の間で65キロぐらい、すでに十数年間運営しておられる、大変実績をお持ちの所でございます。そこに、今度は長野から以北、ど真ん中をちょっと抜いた形での管理をされるという形になります。
 それから、新潟県の方は、妙高高原の方から信越本線の直江津までと、それから直江津からわが県の県境までという扱いになっておりまして、こちらの方もあわせますと、98.7キロということで、富山県は98.7キロなので、同等の距離数でございます。
 石川県さんが一番短くて21キロと。それぞれのですね、お客さんの利用状況を見ていますと、圧倒的に多いのが石川県区間でございまして、それに準じて、私ども。新潟県さんは非常に少なくてですね、特に北陸本線の県境から直江津の間のこの間は非常に少ない利用になっております。直江津から妙高の部分については若干多いかなということですが、本県から比較しますと、非常に少ないという状態でございます。で、今回、しなのさんが引き受けになる長野以北、こちらは長野近辺はそれなりにお客さんがあるんですが、以北の方に行くとかなりお客さんが減るという状態なので、それぞれ各県がですね、お客さんの利用状況とか線路の状況、しなのの方なり、新潟県さんの方は、単線に近いものがございます。
 そういったことから、鉄道を維持するためにはですね、各県かなりバラツキがございまして、同じその線路を維持するといっても、例えばディーゼル車両を運転する運転手がいるかいらないかというところが違っていたりですね、車両もそういう車両もいりますし、そういう微妙なところで違いがあって、現実会社を経営するにあたって、一体的に経営するときには、非常に調整が難しい部分があるなというのが、最初私のこの仕事にかわったときの印象であります。
 みなさんたぶん、私よりもたぶん詳しいと思うのですが、この1年3ヶ月の間勉強させていただいていますが、そもそも経営分離の話をさせて頂きたいと思います。先ほど、今回JRから経営分離することについて、賛成か否かというアンケートの話がございましたが、この経営分離の経緯の中ではですね、平成2年12月の政府与党申し合わせの段階からスタートしておりまして、当初とにかく新幹線が走るときは、並行在来線は、JRは非常に経営が厳しいので分離するということでスタートしております。当時、国鉄からJRに変わったのが昭和60年でございますので、平成2年当時は、JRさん、みなさんそうだと思いますが、東海を除いて、かなり経営的にはですね、厳しい時代にこういうお話がスタートしたところでございます。
 そのあと、しなのさんが開業されまして、なかなか経営が厳しいということがございまして、そういう中で、平成12年ですが、貨物調整金、貨物が通った場合の線路使用料ですね、線路使用料を取りましょうと。貨物線路使用料を会社にお支払いしましょうということの申し合わせができまして、しなのさんはこのあたりで若干経営がよくなったというあたりがございます。
 富山県の場合はですね、平成13年と17年に、新幹線をぜひ作っていただきたいというふうにお願いしたときに、これは平成8年12月ぐらいになるんですが、2つ目の枠の所の真ん中の方に、新幹線が通る実施計画認可前に、沿線地方公共団体の同意を得て確定ということになっております。一番下にもございますが、平成13年と17年、2回にわけてですね、県と市町村は国の方に対して、経営分離後はですね、新幹線開業後は、関係市町村と県と、経済界の協力を得ながらですね、なんとかこの鉄道をですね、責任を持って存続を図りますという約束事を実はさせられております。
 これがそもそもの私どもの会社のですね、おいたちでございます。そういうなかで、平成17年4月に同意した後ですね、これはなかなか大変なことだということで、経営対策協議会というものを立ち上げて、どうすれば、出来るだけ県民のみなさまにご負担をかけずに、できるだけ利便性の高い鉄道にできるかということを、8年近く議論してきた結果としてのまとめがこの経営計画概要というものでございます。
 ちょっととんでいただきまして4ページ目の方にですね、本県の特徴、みなさんご存じなので、おさらいという形で見て頂きたいのですが、基本的には通勤通学等の利用が約8割ぐらいありまして、かなり固定客が多いというのが特徴でございます。それから本県の場合は、現在の北陸本線を中心に、枝線としての氷見線、城端線、高山本線、それから富山地方鉄道さん、それからライトレールさんなり、万葉線なりですね、非常に北陸本線を中心に、2次交通の路線がきちんと備わっておりまして、全国的に見ても非常に整った交通体系がある県であります。
 それからこの路線につきましては、東日本大震災の時に、新聞等を賑わしたと思いますが、震災復旧のためにといいいますか、当面のいろいろな物資の運搬のために、日本海側の貨物ルートが非常に役立ったということもご承知だと思いますが、通常の場合でも毎日40本の貨物列車がここを走っております。日本海側の産業の重要な路線という位置付けがございます。
 一番下にございますのが、旧型車両413系というのですが、現在45年以上たっております。がんばって走っている車両なんですが、これもそろそろ寿命がきつつあるなという車両でございまして、昨年4月から、富山から、西側の方ですね、521系の車両が、日中だけですけども、走り始めております。これは県の方からJRさんにお願いして、出来るだけ早く521系を入れてくれということで入ったものでございます。
5ページ目の、北陸本線の1日あたりの利用者数でございますが、特急もあわせましてだいたい4万2000人ぐらいというふうに聞いております。平成7年から15年までの大幅なお客様の減から見ますと、若干ですが、利用者数減が、おさまってきてはおりますが、基本的には減少傾向ということでございます。6ページ目の方に、輸送密度というのがございまして、これはちょっとわかりにくいですけど、各駅の間に、駅間で毎日何人乗っているかというものを調べたデータがございます。それを、全県平らにならしてですね、1キロあたり何人乗っているかということで、考えますと、全県では7800人が毎日利用しておるわけでございます。4万何千人のお客さんがいるといったものの、全区間乗っているわけではございませんので、それをならすとだいたい7800人ということでございます。東と西で大幅な密度の差がございまして、西の方が1万1094人で、東が5597人ということで、どうしても東側のお客さんが少ないということで、こちらの方のダイヤが薄くなっているのが現状であります。
 この輸送密度というものが会社のですね、売上げに直結するものですから、運賃収入に直結する数字ということで、こちらの数字がどれだけあるかが、経営のしやすさにつながってくるわけなんですが、先行の事例でいきますと、私どもに一番近いのが、しなの鉄道さんが7000人、岩手の方にありますIGRいわて銀河鉄道さんが3000人、青い森鉄道さんが990人で、肥薩おれんじが831人ということで、各県とも、非常に厳しい中でですね、現在、会社を経営しておられます。IGRさんは昨年の年末に10周年を迎えたわけでありますが、大変厳しい経営の中頑張っておられます。
 先ほどちらっといいましたが、こういう並行在来線の3セクということで、全国に4箇所、それから今回、私どもの北陸本線の関係でも、富山県を含めて4箇所増えますが、8箇所のこの3セクのなかでですね、県庁のど真ん中において、お客さんを乗せて走らせる県、これは富山県だけでございます。長野は長野の手前でとめられています。篠ノ井−長野間はJRが抑えております。IGRの方は盛岡からスタートして、県庁の所在地からスタートしているという形になっておりまして、会社経営をすると、ど真ん中にあるのが一番、お客さんの流動が高いので、その意味ではわが県は恵まれているなと思っております。
 ちなみに、新潟県のですね、県境から直江津までは、だいたい新潟県さん資料でいきますと、1500人ぐらいです。うちが7800人にたいして1500人ぐらいという数字です。直江津から妙高高原のあたりが、3300人ということなので、新潟県さんはですね、会社を経営するとなると、それだけの売上げで運賃収入をあげるということになるものですから、大変厳しい経営をされなくてはいけないと。そうなると、何とか運賃を出来るだけ上げないようにするためには、どこかで工夫しなければならないので、うちの県以上にたぶん、県なり市の税金投入といいますかね、そういった支援が必要かなというのがこちらの状況かなと思っております。
 石川県さんの方は21キロなものですから、お客さんの方は非常に多いんですけど、短い区間なものですから、売上げ収入はなかなか上げにくいという距離間でございます。鉄道会社の場合、最低限必要な機械設備がどうしてもいるもので、基本的なコストを考えたときに、当面は石川県さんもなかなか苦しいだろうな。ただ、石川県さんは、将来的には、新幹線がさらに西につながった段階からは、私どもも経営的には楽になるだろうという状況の中でのお仕事をみなさんがんばっておるところでございます。
 次の将来予測というのが、7ページにございますが、これは何もしなければどうなるかということを輸送密度で見た場合です。平成24年で78000人いるところが、30年後には半減するだろうと。人口が減って、例えば通学定期のお客様が、2500人ぐらいから約1000人ぐらいになっちゃうという予測をしております。
 こういった状況の中で何をしていくべきかというのでご説明します。経営主体がですね、富山県単独の3セク会社になぜしたかという問題があるんですけれども、やはり先ほどいいましたように、各県が抱えているお客さんの数、それから鉄道のあり方、それと例えば、富山県はど真ん中を走っていますが、新潟県さんは県境の端っこを走っています。そういう状況の中で、それぞれのいろんな判断が出てくると思います。そういったこともあるし、それと、現況と致しましてもですね、鉄道自体、車両がですね、実際に動いている区間というのが、富山県の場合は金沢−糸魚川間、現在は直江津までいっていますが、そこが中心ですが、新潟県さんの方は意外とそうでもないという、それぞれ事情がありましてですね、このあたりをどうするかということで、現時点では、私がここに来る前の段階で、方向としては決まっていたんですが、各県バラバラで取り組みましょうということがいわれています。
 9ページ目の運行計画でございますが、基本は、現在の全線確保するということで、朝晩の集中する時間については、若干増便しようということでございます。現在一番、朝で特徴的な列車が1つございまして、おはようエクスプレスというのが、泊から金沢駅へ走っております。朝8時半くらいに金沢駅に着く車両でございますが、この車両については非常に利用者が多いということがございまして、県民の方がこれを使って金沢まで通勤したりということもあるものですから、ぜひこれは残したいということで、おはようエクスプレスと、あと夜、こんど、おかえりのエクスプレスということではないんですが、お帰りの快速列車を走らせることを想定いたしております。
 左下の方にですね、特急列車の課題というのがございます。特急列車を従来通り走らせて欲しいという要望が非常に強うございます。住民説明会でもかなりのご要望を頂いたわけなんですが、このなかで、一番運行の課題として大きいのは、そもそもという議論で、JR西さんは、新幹線を走らせるので、新幹線に乗ってくれればいいじゃないかということでございます。
 現実に、たぶん、黒部より、私、黒部市なんですけど、黒部の人は、大阪に行くときに、新幹線をとるか在来線をとるかといったときに、新幹線の方が確実に早く行きます。それと、先行事例から考えますと、金沢で乗り換えた場合に、乗り継ぎ割引というものが入る可能性が高いです。そうなると、そうなった場合を考えますとですね、料金的にはあまり変わらずに、時間は非常に短く行けると。だから、私どもが特急を走らせたとしても、たぶん乗っていただけないだろうなというのが現実だと思っています。じゃあ、全ての駅がそうかというと、新幹線の駅があるところはそうだということなので、これはお客様の選択肢で選ばれることになると思いますが、なかなか特急をご利用いただける環境が、新幹線にした後はですね、減っていくだろうなというのが現実かなと思っています。
 一番会社的につらいのはですね、貨物調整金というのがございます。これは、こちらの、私どもの鉄道を1日40本貨物が走るんですけども、貨物列車が走れば、だいたい20両くらいの長い列車が走ってまいります。で、大変重たいです。そういった重たい車両が走れば、当然、レールが痛み、維持管理費が嵩んだりします。当然、貨物さんそれくらいは負担してくれよというのが、私どもといいますか、従来ずっと県が主張してきた話で、そういう要望がなんとか通ってですね、最初、ほんのわずかの線路使用料だったのですが、応分の負担をしましょうということで、財源をまた別に国のほうで用意しまして、貨物調整金というのが入ることになっています。
 私どもいま、見込んでいますのが、だいたい年間56億円収入ある予定なんですけど、56億の約半分が運賃収入、26億円くらいが運賃収入だと思っています。貨物線の使用料が24億を見込んでいます。簡単にいうとですね、運賃収入と貨物調整金で半々で収入がもっているようなイメージだと思ってください。
 その貨物調整金が24億あるうちですね、配分の仕方が、国の方で決まっておりまして、車両キロという言葉をつかうんですが、ぞれだけお客さんを乗せた車両が、例えば1つの車両が、県内100キロ走れば、100車両キロということになります。20両の貨物が100キロ走ると、20ですから、2000車両キロとなります。ですので、そういうその車両キロという割合でですね、かかった費用は按分しましょうという約束になっておりまして、お客さんを乗せる列車がですね、車両数が増えれば増えるほど、貨物側の負担が減って、私どもの実入りが減るというしくみになっております。
 そうなりますと、特急を走らせれば当然その分だけが減るということで、県の試算では、現行の23往復ですか、その分をまともに走らせると、15億くらい、毎年15億くらいの貨物調整金が減るという試算をしております。そういったこともございましてですね、なんとかですね、どこかで兼ね合いをみながら、みなさんのご要望にこたえるべく、いま非常に苦しい検討をしておるところでございます。
 ダイヤの方はですね、あまり大変わりしません。若干増えるということで、若干の、大きくびっくりされるのは、泊駅で、新潟県の車両と富山県の車両が、乗り換えということが出てきます。新潟県さんが泊までしか来ませんので、そちらで私どもの車両に乗り換えて頂くと。同一ホームでの乗り換えでございますので、ダイヤを出来るだけ近くして、みなさんにご負担をかけないようにとうことで新潟県さんと調整いたしております。
 それから11ページでございますが、相互乗り入れでございます。私どもの会社は、石川県側は金沢駅、新潟県側は糸魚川まで入ります。石川県さんの方は富山駅まで入って頂きまして、新潟県さんは泊駅ということになってございます。駅の管理等は、特急列車が廃止されたことによって、管理の人員が若干減ったなというところですが、そのあたりをいま検討しておるところでございます。
 それから飛ばしましてですね、13ページ、経営安定に向けたとりくみでございます。この北陸本線は、100円儲けるのに150円かかる路線でございます。そういう路線でどうやって会社を経営していくかということを考えたときに、できるだけ初期投資は公でなくてはいけないということで、まずJRから譲り受ける価格を安くして頂いて、そのうえで県と市町村の方からご支援をいただいて、初期投資をまかないましょうと。
 県は非常にたくさんの負担があるものですから、そういった負担はおかしいのではないかということで、国の方に初期投資にたいしてですね、交付税措置してくれということを長年お願いしてきた結果、43億円相当の交付税措置があることになっております。
 それで、初期のハード的なものは全部準備できるのですが、開業後、安定した経営をするためには、まだ運賃の値上げ抑制財源とか、乗継割引の財源とか、いろいろといるということで、県や市町村と話し合いまして、30億ずつ出して、それから民間のみなさまにも拠出をお願いしまして、約65億円で経営安定基金を県の方に設けて、それを会社の経営にあてていこうと。具体的にあてていく、あて先が、何かといいますと、運賃水準の抑制が一番多いんですけども、昨年の5月ぐらいに対策協議会が示したのは、1.25倍くらいの運賃値上げをすれば、収支とんとんになるんではないだろうかという数字を示しておりましたが、その後、1.03倍とか1.12倍にするためには、その差額分を会社がかぶるにはですね、とてもそういう収益はでませんので、その分をこの経営安定基金の方から、その分として出たということになっております。
 あと、ちょっと時間がなくなってきました。利便性の向上につきましては、いまいろいろと検討しているところでございますが、県の方でも対策協議会というものをつくっていただきまして、いろいろと支援頂けるようになっていますが、これは県民のみなさまのご協力、ご支援がなければなかなか出来ない部分がございまして、一番効果的なのは、パークアンドライドであったり、新駅であると思います。そういったものについても、今後どんどん取り組んでいくということで、いま国の方とつめておりますし、ICカードについても、ICOCAカードを入れるということで、いまJR西さんの方と協議をスタートしておりまして、これもなんとか出来るだけ早くやりたいなと思っております。
 だいたいそういうところでございまして、いま会社はですね、65名の新入社員、いま現場で働いています。各駅とか車両センターとか、そういうところですでに研修をいたしております。富山駅の改札口で毎日のように集改札をやっておるんです。何とかですね、2年後には、安全安心運行できるような社員に育てていきたい。なかなか1人前は難しいと思いますが、少しでも一人前に近づくように頑張りたいと思っておりますので、よろしくお願いします。ちょっと時間もオーバーしましたけど、ご静聴ありがとうございます。
 
司 会
 どうもありがとうございました。それでは、引き続き、郷土史家、草卓人さんから、北陸線の施設を活かした利用促進策にむけてという演題でお話をしていただきます。
 その前に一言お知らせなんですけども、先ほど、この会には新潟や石川の方も来ておいでますというお話を紹介しましたが、県会議員の自民党さん、それから社民党さん、共産党さんの議員さんもおいでになっていることもご紹介しておきます。草さん、お願いします。
 
[ 北陸線の施設などを活かした利用促進策について ]
草 卓人(郷土史家、地域鉄道研究家)
 はじめまして。私、一応、郷土史家とかいう肩書きがついておりますけど、実際は富山市内の会社に勤めている普通のサラリーマンです。先ほど、岡本先生、あるいは朝倉専務から専門的なお話、それから、実際に現場で仕事をされている方のお話をお伺いしましたが、私は、専門家、実際に鉄道業務に携わっている方から見たら、ちょっと的外れと思われるところもあるかもしれませんが、鉄道が好きな者という視点から、今度の並行在来線がどのようにしたら、もう少し利用して頂けるようになるか、そういう提案という形でお話をさせて頂きたいと思います。
 先ほど、朝倉専務からもお話がありましたが、基本的には、並行在来線の将来、お客さんの、人口の減少、自動車への転移などがありまして、将来的にはどうしても一般の乗客は減らざるをえない、という予測が出て、そのなかでどのようにやっていかなければならないかというようなことをおっしゃっていたかと思います。そこで、私は、3つの視点から、いままでの北陸本線の施設、車両、それから遺産を活かした利用促進策について提案をさせていただきたいと思います。
 まず、北陸線についてですが今BBTさんとかで、「100年の軌道」とかいう番組で紹介されているかと思いますが、今年で全通100周年を迎えます。現在も一般のお客さんの足、あるいは貨物列車等が一日何十本も走行している重要な幹線になります。全通から100年たちますと、開通当初の施設は、新しいものに建て替えられる、あるいは撤去されてしまうということで、だんだん当初の面影を残すものがなくなってきているということがあります。
 例えば、北陸線では木造駅舎、東富山、あるいは呉羽駅とかには木造の駅舎がありますが、これは昭和くらいになってから建て替えられたもので、だいたいそれ以降の建物ということになっていますが、ただその中で、水橋駅、富山駅からわずか2駅行った水橋駅、これは、北陸線が全通に先立って明治41年にできた建物ですが、今年で105歳を迎えております。見た感じは、白い色で塗られたりして、結構近代的なような感じがします。中に入ると小屋組の木の骨組みがあったり、事務室の方を見ると、昔の国鉄の駅員さんが座って、荷物のチェックや、改札していた、そういうなつかしい感じが漂ってきます。また、ホームの側に出ますと、建物の管理関係の仕事で実際に携わっている方はご存じかと思いますが、これが何年につくられたものということがわかる「財産票」というプレートが貼られています。これに「明治41年」と書いてありまして、この建物が、いまから105年前につくられた建物ということが分かります。
 話は飛びますけど、JR東京駅は、大正の初め頃にできましたが、昭和20年5月の空襲で崩壊して、仮復旧のまま何年か前までそのまま使われていました。一時は建て替えるという話もありました。これが文化財として見直そうという気運が起こって、復元工事が行われて、現在も見るドーム、3階建てのドーム建ての赤煉瓦の駅舎として復元されまして、いま、1つの観光スポットになっています。去年は、ライトアップの予定があったそうなんですが、お客さんが多すぎて中止せざるをえないというほどにお客が集まるような存在になっております。
 そこでですね、北陸線にも残る100年前の駅舎、せっかく1つだけ残っているのですから、今風にリニューアルしたり、あるいは壊してプレハブの待合室にしてしまうだけじゃもったいないと思います。
 そこで提案ですが、この水橋の駅舎も、近代的にするのではなく、わざと古色蒼然とした、焦げ茶色にして、正面に「水橋駅」というホーローの看板を掲げて、他の駅との差別化をはかる。そうすれば、中高年の方には、自分たちが現役だった頃に利用した懐かしい駅舎、若い人には、逆に古くて新鮮、古いものも新鮮で良いな、そういうような感じを持たれると思います。
 例えばしなの鉄道さんでは、100年以上前の駅舎が登録有形文化財ということに指定されて、お客さんが来て頂くスポットにもなっております。せっかく残っているものをただやっかいもの、将来壊さなければならないというだけではなくて、こういったものを活用して、あいの風鉄道には、水橋駅舎がある。また、こういうところがあるというような、セールスポイントにしていただければと思います。
 次に、車両面ですが、これは以前CiCで並行在来線さんの説明会があったときにも少し申し上げさせていただいたんですが、先ほど朝倉さんから頂いたパンフレットの4ページの一番最後に、「45年以上経過した極めて古い車両が走行」。これだけ見ますと、ぼろくて誰も乗りたくないような車両が走ってて、よくないなというイメージをいだいてしまうと思います。しかしですね、逆に考えれば、他にはない車両が走っているということで、例えば鉄道が好きな人、あるいは県外の観光客の方からは、昭和の時代に走っためずらしい車両が走るということでアピールできるのではないかと思います。
 例えばですね、今度の並行在来線の車両計画には、475系という、昔、国鉄の急行「立山」、あるいは「ゆのくに」「加賀」ですね。みなさんのなかには、急行立山の直通列車に乗って、地鉄の立山駅、あるいは宇奈月温泉まで直通で乗られた思い出のある方もいらっしゃるかと思います。こうした車両を利用して、むしろここにある、ここにはこういう車両が走っているからぜひ来てください。あるいはですね、イベント列車で使うという手があります。
 イベント列車ということでしたら、例えば、真っ先に思い浮かぶのはSLですね。新幹線開業に向けてのシンポジウムでは、SL列車を走らせてはどうかというお話も結構あったと思うんですが、やっぱり、実務面を担っている方、知っている方はご存じかと思いますが、SLの運行には非常にお金がかかります。あるいは、給水施設、給炭施設、あるいはそれ専門の要員を配置しなければならないということで、ボイラーの検査とかでも非常にお金がかかりますので、これから経営の大変な並行在来線会社にそういうものまで求めるのは酷かと思います。
 そこでですね、こうした475系、こういった国鉄時代の車両を、例えば国鉄色にして、イベントとかで走らせる。あるいはですね、単にイベント列車だけじゃなくて、イベント等の多客の波動輸送、それから、他の車両が故障したときの振替用して使用することができるというメリットがあるのではないかと思います。
 またですね、こういった電車のイベントでしたら、例えばしなの鉄道さんが最近けっこうやっているんですが、例えばしなの鉄道さんだったら、「なつかしの信州」号の運転とか、あるいはですね、これは、当時の電車の入り口の横についていた列車名の表示板なんですが、例えば、そういうイベント列車を走らせたときに、こういったものを、複製をはめて走らせて、これを使用した人にオークションかなんかで売りますと。普段の運賃の収入にはちょっと程遠いかもしれないですが、少しは雑収入ということにも貢献すると思いますし、また、こういった電車に乗りに来ようという県外の方々も来られるのではないかと思います。
 それから、最後にですね、こういった鉄道施設を、近代の産業遺産ということで見てほしいということを、最後に申し上げさせていただきたいと思います。いま申し上げたように、並行在来線には古い駅舎、あるいは懐かしい国鉄時代の車両などの資産もありますし、また、北陸線から誕生した大正2年に、同じく本線から分岐する立山鉄道という鉄道が大正2年に開業したんですが、今年100周年を迎えました。そこで私は今年のはじめに立山町の方に提案して、6月4日からこれを記念するイベントが始まって、写真や資料を展示しています。また、当時の沿線に大正時代の客車が民家に残ってたり、ホームなどなんかが残っていたりして、そういうところもあわせて見て頂いたら面白いのではないかなと思います。
 それから、近代産業遺産ということで申し上げたんですが、例えばこの富山県には、鉄道だけではなく、北陸地方最初の発電所、大久保発電所、そういった発電所、それから、最近注目されている揚水発電、夜間に昼間発電した水を夜、逆に汲み上げて再利用する揚水発電所、これが日本で2番目に富山県内に設置されました。最近は農業用水とかを利用した小水力発電所もできていますけど、さらに明治32年につくられた鉄道のトンネルや、また話はとびますけど、世界で最初にキャタピラを発明した人の記念碑とか、意外とそういった産業の遺産が残っております。
 そこで、例えば今県では、立山黒部アルペンルートのお客さんが少なくなって、いま何とか来てもらわなきゃというようなことをPRしておりますが、そういった、立山黒部アルペンルートだけではなく、例えば南砺地方の方にはアニメを利用した地域振興をされていた、あるいはその他の振興策もあると思うんですが、別にアニメや観光だけじゃなくて、こういった産業の遺産を利用した観光地があることもPRしてお客さまにきていただく、そして並行在来線に乗って、昭和の遺産を味わっていただくということもいいのではないかなと思います。
 また、確か、今年か来年かと思うんですが、こういった産業遺産の研究をしている産業考古学会という学会が富山でやるかやらないかという話も聞いておりますので、これを機会に、こういった地域の宝があるということをPRしていただいて、並行在来線にもっとお客さんが来ていただければなと思います。
 時間も迫りましたので、もう一度最後にまとめをさせていただきますけど、北陸線が古い施設が残っているからといって、やみくもに今風なプレハブ建築に作り直したり、まだまだ使えるものを新しくするのはもったいないのではないかと思います。
 それから、単に残すというだけではなく、そういったものに価値があることを知っていただき、そういった宝を活用して、これから人口が減る沿線だけではなく、他の地域からも見に来て頂く、乗って頂くようにする鉄道にしていただくこと、それから、富山へ観光にきていただく際の観光ルートの一つとして、こうした宝を掘り起こしPRをしていただきたいと思います。以上、とりとめのない話なんですが、私の話をこれで終わらせて頂きたいと思います。ご静聴ありがとうございました。
 
司 会
 ありがとうございました。これで前半3人の方の報告を一応終わらせて頂きまして、後ろの時計で3時20分から再開ということで、小休止させていただこうかなと思います。
 
<休憩>
 
司 会
 JR工務現場からみた現状と課題ということで、山口雅幸さん、国鉄労働組合富山県支部執行委員さんでございます。お手もとに、プログラムの方のまさゆきさんのゆきが、幸せの方の幸でございまして、我が方のミスプリントでございます。山口さん、よろしくお願いします。 
 
[ JR工務現場からみた現状と課題 ]
山口雅幸(国鉄労働組合富山県支部執行委員)
 お疲れ様です。私は、国労富山県支部で執行委員をやっています山口です。仕事はですね、富山電気管理センターというところに所属をしておりまして、国鉄採用から今年で34年目を迎えてます。JRのなかではですね、一応電気屋さんということで、仕事をしているところです。
 それでは座って話をしていきたいというふうに思います。私はですね、電気屋さんなんですが、工務という仕事のなかには、施設と電気という二つの部門があります。私は、電気のなかでも、電車線を専門にですね、電灯と変電の仕事の保守をおこなっています。
 施設の方の関係の方はですね、あまり詳しくありませんけども、わかる範囲でお話をしていきたいというふうに思っています。まず、施設の仕事の方なんですが、施設の仕事は、線路の保守管理、鉄道用地の管理があります。施設の中にはですね、施設管理センターと施設管理室という二つの部門がありまして、センターでは、工事の設計、工程管理、軌道の管理等をおこなっております。管理室では、検査を含めて保守を中心におこなっているところであります。施設の仕事の中身なんですが、検査全体の約50%を外注がおこなっています。工事はほぼ100%外注がおこなっているのが現状であります。
 直営でやっている検査の中には、枕木検査などが含まれているところです。社員はですね、2週間に1度、線路巡回、これは全線を徒歩で歩くものをおこなってます。それと、5日に1度、列車による巡回をおこなっています。年に何度か、ポイントの検査、レール交換や枕木交換など、計画的に技術力維持のために行っているところです。またこの夏になりますとね、レール温度が高くなるとですね、特別に巡回をおこなっています。
 次に、電気の仕事です。電気は大きく分けて、電車、電灯、変電、私が受け持っている電力グループと、信号・通信を受け持つ信通グループがあります。電気の仕事なんですが、検査、工事ともすべて100%外注となっています。工事の1部ではですね、まだ信通の方で立会が必要な業務がありまして、いろいろ、結構要員がとられている状況で、非常に信通さんは忙しくしている状態です。
 電気の職場はですね、富山に一つしかありません。ここで工事設計や工程管理、検査管理、設備管理などをおこなっているのが主なものです。そして、どうしても設備には障害、故障がつきもので、信号トラブル、踏切の故障、遮断間のせつぞん、これなどがあればですね、すぐに現場にかけつけるような体制になっています。特に電力さんはあまり行かないんですけど、信通さんのほうはこれにも対応するために、結構な人数がとられていると思います。電力では、施設さんもありましたが、7日、1週間に1度、列車による巡回もあります。
 次にですね、施設のなかにはですね、建築、機械、土木技術センター、このような部署もありまして、まず建築なんですが、これは金沢支社全部を保守しています。金沢にあります。検査、工事全て外注になっています。建築さんは、駅の建物、職場の詰め所の建物、うちでいう変電所などの建物やフェンスなどの管理などをおこなっています。
 次、機械区さんなんですが、これも金沢管内すべてを保守しています。金沢にしかありません。エレベーター、マルスや券売機、業務用のエアコンなど機械類の保守・工事をすべておこなっていまして、これもすべて外注化されています。
 次に、土木技術センター、これ、通称土技セというんですが、金沢支社管内のトンネル、橋梁、高架橋など建造物の保守をおこなっています。これも金沢に1つしかありません。検査なんですか、検査の責任者は、土技セの直轄社員になっていますが、検査をする作業員等は外注の作業員を使っておこなっているところが現状です。
 次に社員数です。現在、富山の工務の人数を示していますが、まず、センター、管理室、あわせて施設ですが、76名ということになっています。電機管理センターは28名、金沢の建築で20人、金沢機械区13人、土木技術センター30人、横に3セクの要員も載せてあります。3セク概数であります。決定の数ではありません。3セクの要員として55名を示されています。電機のほうは20名ということになっています。
 今年から3セクの社員の出向を受け入れています。施設5名、電気3名だと思います。ちょっとこれ6人だったかな、5名、そんなところです。電気は3名を受け入れています。施設の合計、3セクのいわば55名ということなんですが、現在施設の方は城端、氷見、高山の枝線の保守もおこなっています。その人数をちょっと差し引くと、55名なのかなと。でも機械区、建築、土木技術センター、この部門の要員の割増がないと少し厳しいのではないかというのが、私が思っているところであります。
 現状の問題点に入りたいというふうに思います。まず保守管理の方法ですが、工務職場、施設がやっている検査の50%をのぞけば、ほぼすべてを外注化されています。
 特に電力グループのことしかよくわかりませんので、これを中心にいいますが、電力グループの電車、電灯、変電、この25年度の検査費用は金沢社全体で約2億円といわれています。富山だけですと4分の1の5000万円ほどをかけているのではないか。これは検査だけの話です。これで富山の全部の工務全体を考えると、約2億円ぐらい必要ではないでしょうか、という考えであります。これには検査で修繕が必要と判断した工事の費用はまったく入っていません。
 工事をやるかやらないかその場で決める、壊れていれば変えなければいけませんが、工事の費用は入っていません。ちょっと聞いたところによるとですね、いまおこなっている、うちの電力の検査会社なんですが、3セクの検査やらないんじゃないかというようなことも聞きました。例えば第3セクターにいった電気社員がおこなうのかなということも、いま職場では話題になっています。
 現在ですね、電気の職場28人の社員で設備管理をおこなっているんですが、設備管理やってるだけで、検査はまったくやってません。検査をやっている検査会社の人数はですね、いまのところ23名、検査会社がいて、おこなっています。3セクで20名の要員だけで検査をおこなうとなると要員が足らないので、検査会社に頼むんだろうなというふうには思っておるんですが、どうなんでしょうかというところです。そんなことがあればですね、列車の本数も少なくなるということになれば、検査周期をのばすのではないかと。
 部品の材料はですね、昔よりもずいぶんよくなりまして、耐用年数もあがってきてます。検査周期を伸ばすとですね、やっぱり故障の原因を見逃すことにもなりますし、障害も増えるというふうに考えています。
 いまですね、毎日のように踏切の遮断管折損などがあり、飛び回っているところで、検査を本当にできるんでしょうかというところです。まだ、第3セクターの検査の態勢、工事の体制がまだ見えていないというところが現状であります。
 次にですね、施設の老朽化の問題です。電気に限っての話です。北陸本線の電化は1964年に行われて、来年で50年になります。設備はすべて新しいものに変わっているのでしょうかというところなんですが、線路の脇に立っているコンクリート柱、コンクリートの柱ですが、これは寿命は60年です。電化されてもう50年、それで、ちょっと寿命危ないなといって、変えられたコンクリート柱はたぶん30%くらいであります。まだ、60から70%の古いコンクリート柱が建っているのが現状であります。
 他の設備はですね、だいたい寿命20年から30年ぐらいに設定をされています。さび等で、金属のものはさび等があれば取り替えるんですが、1度は、一回りは取り替えてあると思います。でも、もう2度目がこなければいけないねというような設備の年数になっているところなんですが、昨年あたりからですね、この3セクに渡す設備の更新の工事がですね、増えてきました。お金もいっぱいついてきました。が、工事、お金が増えてもですね、いま、工事をおこなう作業員がいないんです。
 新幹線の電化工事がですね、今年いっぱい、最盛期を迎えておりまして、これにたぶん、作業員、会社がとられてですね、在来線に人をいっぱいおけないというような状況になっていると思います。そんなもんですから、あと2年で、たとえば8割、9割の設備を、8割9割ぐらいまで新しい設備に変えていこうという工事っていうのは多分できません。なので、第3セクター開業後もですね、例えばJRから設備更新の工事費を5年ぐらいもらってですね、設備事故のない設備をつくりあげていくことも必要かと思っています。
 今日、来ておられる朝倉さんもですね、ぜひJRにですね、そんな話をしながら、お金を出させるような努力をしてですね、設備事故のない新しい設備に変えていってもらいたいなというふうに思っています。あと、小さな修繕は第3セクターがおこなうのかなという疑問も職場ではおこっています。
 もうほとんど、工事も検査も自分たちでやっていませんので、どんだけ、後やろうかといったときに、できるのかなという不安も現場にあることは間違いありません。
 次にですね、冬期体制の問題です。今年の冬、あまり大雪も降らずにですね、運行障害は見られなかったんですが、一昨年はですね、1日全く列車を走らせなかったという、歴史的な年になりました。ラッセルシャーはですね、年々、年取ってきて、老朽化して、多々多々、故障しています。一昨年、列車止めたときも、ラッセルシャーが故障して、倶利伽羅駅にずっととまったりしておったわけなんですが、少し前までは、人回戦術もできたんですけども、いま工事や検査が外注化されて、現場にですね人数が少なくなってくるにしたがって、やはり除雪にいけというような体制もとれなくなってきています。
 もちろんホーム除雪も外注がおこなっています。踏切の側の施設も外注がやります。いままではやっぱり、特急列車をですね、優先するあまり、構内の除雪、1番線とかに雪が多く残るわけなんですが、列車通らないところはですね。そういうところを施設の方が無人ロータリーで除雪をするんですが、どうしても上下に渡ったりするときにですね、何時間も同じ場所で待ちぼうけをくわされることもあったと。
 それと、あと貨物列車ですね、貨物列車も、特急やら普通列車を早く早くということで動かすと、貨物列車はずっーとまるまる1日、どこかの線で待機させられたりというようなこともあります。
 金沢支社はですね、新しいラッセルシャーを導入しようということで、去年から言っとったんですが、やっと設計に入ったというような体制であります。いま設計に入っていつできるんですかというと、いまじゃないんで、来年の冬にできるのか、できなければたぶん、古いラッセルシャーで、第3セクターは故障におびえながら冬を越さなければならないのではないかなというふうに思っています。
 最後になりましたが、課題はたぶん、まだいっぱいあるんですが、第3セクターの検査、工事の体制とかが見えない中で、いくら心配しとっても、心配しきれないところです。3セクがですね、いままでの体制、ほとんど検査、工事、外注というようなことをですね、工務の職場で運用していくとなれば、安全性はある程度維持はできるのではないかなというふうに思っています。
 でも、JRはですね、グループ会社、すべて検査・外注はグループ会社の会社、子会社がおこなっています。その子会社、グループ会社と共存して、検査、管理、工事、この3つをうまくまわして、設備事故をなくそうというふうに、いまおこなっているところです。第3セクターの方もですね、こんなような体制が維持できればですね、良い保守体制をつくれますし、安全な第3セクターになるのかなというふうに思っていますので、そこら辺をいろいろ考えて、安全な鉄道づくり、安全な鉄道交通機関でありつづけてほしいなというのが現場からの願いです。つたない話でしたが、これで終わります。ありがとうございました。
 
司 会
 どうもありがとうございました。それでは最後に、うちの会の世話人であります、渡辺眞一の方から、並行在来線の持続的な維持の方策を考えるというテーマで、話させていただきます。よろしくお願いします。
 
[ 並行在来線の持続的維持の方策を考える ]
渡辺眞一(公共交通をよくする富山の会世話人)
 最後になりました渡辺です。宜しくお願いします。私の報告は、「並行在来線の持続的維持の方策を考える」です。あえて「方策」と書きました。一筋縄ではいかない相手ですから、「方策」としたのですが、従来から私たちの「会」は、孫、ひ孫の代まで並行在来線が維持・運営されるということをずっと掲げてきました。
 そこでまず最初に、地域社会と鉄道との係わりの視点からですが、そもそも並行在来線問題を考えるときは、何を忘れてはならなかを考えてみます。それから2つ目は、新しく第3セクター会社が出発するにあたって、検討すべきものというのはいろいろありますけども、えちぜん鉄道からね、学ぶことがあるのではないか。それらについてお話をしたいと思います。そして最後は「2つの方策」ということで、話をします。
 まず並行在来線問題を考える「前提」の第1番は、先ほど朝倉専務さんは、1990年以降の話をされたわけですが、それ以前の話をしておかなければならないと思うんですね。これは1984年12月27日の「朝日新聞」1面トップの記事です。北陸と東北の整備新幹線が工事にかかることになりました。記事の左側、赤線をひっぱっておきましたけれど、「在来線の廃止前提」、つまり、新幹線ができれば在来線は廃止するというのが出発だったということです。ここを忘れてはならんのだと思います。横川・軽井沢間は廃止になってしまいましたが、その考え方がずっと、いまだ引きずっています。
 そんななか東北で、いよいよ新幹線の工事が始まろうとしたとき、一戸町を中心にして住民の大運動が起きました。国会にも押しかける運動が起きまして、この時初めてですね、1990年11月に廃止という言葉が消えたんです。消えてどうなったかといったら、そこの自治体が並行在来線を引き継いで、やりたければやりなさいということになるわけです。いずれにしても政府と自民党与党との「政府・与党合意」というのを、この東北のみなさんの運動で、ここで一歩打ち砕いたわけです。
 そこでJRはですね、どういう姿勢なのかっていうことです。これは、一昨年なんですけども、富山県の並行在来線対策会議の時、ある一人の委員が、まったくうまく位置づけてくれました。並行在来線は“JRが捨てた会社”なんだと。私は傍聴していて「うまい。まさにその通りだ」と思いました。もしこの並行在来線がですね、儲かるものであれば、こんな問題は決しておきなかったんです。
 前の方の席に新潟の方が来ておられますが、実は先月、新潟でお話しすることがありまして、いろいろ調べていました。2009年12月14日に、新潟県の並行在来線対策協議会の経営委員会がおこなわれまして、その「議事録」がありあました。そこに2つ書いておきましたけども、経営委員の一人は、“こんな赤字がある会社、おれたちにやれっていうのか、できないよ。赤字であることがわかっているのに、責任持って検討に入るなんて、検討することも出来ない”などという意見がどんと出てるんですね。富山でも同じような意見が出たかどうかはわかりませんが、はじめは、そこから出発したんだということは、ぼくは忘れてはならんことだというふうに思います。
 ですから、会社が発足のときからですね、実質的に採算を取るのは無理、第3セクターの出発は苦難の始まりだということです。それを引き受けて専務をされる朝倉さんは大変な苦労をされているわけで、敬意を表します。いずれにしても、この3セク鉄道の経営はですね、初めから構造的な問題を抱えているわけです。
 さて、富山市は大きいかといえばそうでもないですね。中くらいの都市でしょうか。県境へいけば小都市、過疎地帯も増えます。中小都市を抱えた低密度地域ですね、そこで鉄道を運営しなければならない。そこへもってきてですね、大重量の貨物も走ります。
 今後も人口が減っていく。そういう問題もあるわけですよね。「儲かる、もうからない」市場原理だけで考えれば、なんでこんな損なことをやるのか。鉄道をやらなくてもいいんじゃないか、別の施策をとってもいい、そういうことは当然出てくると思います。
 しかし、やるという結論が出たわけですし、そのことを県民が望んでいるわけです。ですから行政、国・県・市の政策的な関与というものは必要になってまいります。政策的なものだけでなしに、財政的な支援をどう構築していくかという問題も同時についてまわる。
 そこで、えちぜん鉄道の話をちょっとしておきたいと思いますが、2000年と2001年にですね、正面衝突事故が起きました。このときはまだえちぜん鉄道ではありませんででして、京福電鉄ですけども、勝山へ行く線と三国へ行く線と2本あります。両方とも路線が運休になってしまいました。
 昨年、再開してからちょうど10年になりました。10年になったところで、福井大学の川上洋司先生が、『運輸と経済』という雑誌に書いておられますが、その最初の方に私、いたく感心をしたものがありまして、そこへ載せておきましたけども、10年たってですね、“えちぜん鉄道として存続をさせるということが終着点ではない。存続させた地方線が地域社会をより良くしていくための手段として、地域にいかに貢献したのか、地域にいかにその存在を定着させたのか、そこが問われなきゃならない”と。10年たってこういう言葉が出てくるっていうのは、すごいと思いました。
 左の写真は、2003年11月に鉄道が再開した、えちぜん鉄道が発足したその年の秋に勝山市で「鉄道まちづくりシンポジウム」が開催された。私がその会議に出まして、左下が発言をしている写真です。えちぜん鉄道が運休になったとき乗っていた人達はどこへ行ったのか。代替えバスへ行ったり、路線バスへ行きました。それから、自動車運転に切り替えた人、家族の自動車送迎を受けた人、これが42%もいるんです。
 当然こういうことが予想されるわけでありますが、その次です。これも社会的な大実験だというふうに思いますが、その中で、バスに変えたらダメだ、鉄道でなきゃならない。「バスに変えられない鉄道」の必要性、これがですね、いろんな形で出てきたということです。
 経営上、収益上だけでは考えられない問題がたくさん出てきました。「バスは疲れる」こういうのももちろんありますね。ラッシュ時はバス1台ではすまない。3台必要じゃないか。それから、「電車では本が読める」。本を読むことが目的じゃないと思うんですけど、身体を休めるなどいういろんな意味がこのなかにはあるというふうに思います。
 その下の2つなんですけども、これはですね、鉄道の便益という視点で考えた場合、これも数字に表れない問題だというふうに思うんですが、「家族の送迎の負担が増える」「子どもが学校へ行くのに自転車に乗り換えたら、親の心配が増えた」というんですね。これなんかというのは数字に出てきませんよね。しかし、鉄道を利用するときの大きな要素になってしまうっていうことです。
 それから、もう一つ、えちぜん鉄道で私が感心したのは、運行再開後、どこからどれだけの人が帰ってきたのかと、乗ったのかというのを図にしたものです。このなかで、路線バスから戻ったとか、自家用車から戻った、これは当然わかるんですが、「新規利用者」が9%伸びたというんですね。これ、どうして、なぜ伸びたのか。
 普通ですね、富山県でも並行在来線が3セクとなって発足したら、逸走率、どれくらい減るんでしょうかね。私が調べたところでは最大で14%乗客が減っています。ですから、乗客が減るのが当たり前のように思っていますけども、えちぜん鉄道の場合はですね、増えているんですね。9%増えています。
 で、その中身と人数の問題なですが、2009年、2010年、2011年は、伸び率が少ないですけども、それにしても2011年は2423人の目標に対して3234人です。なぜこんなに増えたのかっていうことですね。ここに並行在来線の3セクを考えるときの一つのヒントがあるのじゃないだろうかと思いました。
 なぜ増えたのか、一番大きいと思うのは、値上げではなしに値下げをした、それも15%の値下げをしたっていうことです。15%というのは大きいですよね。確かに、京福鉄道と北陸本線は鉄道施設・設備は全然違います。その問題は考慮しなければならないというふうに思います。しかし値下げをしてるんですね。
 それから、運賃助成というのがあります。沿線の地方自治体が通学にたいして、高校生にたいして一定の補助をしている、そういうものがあります。市長さんのなかには、そんなことはムダだという方もいるでしょうけども、そうではなしにちゃんと補助をしているということです。ダイヤ編成の問題もあります。
 それから、10年前の話ですけども、写真はですね、連結バスです。ちょっと勝山の駅前に停まっていましたのでとってきた写真なんですが、現在もこのバスなのかどうかわかりませんけども、そういうバスを運行しています。こうして、地方自治体が支えるということになっています。また、運転再開に必要な工事費を出しました。沿線地方自治体は、接続でも、支援しました。こういうことをしっかりやっているということですね。
 問題は、私はこれらを見習えばいいということを言いたいわけじゃありませんで、ここなんです。えちぜん鉄道の考え方ですね。「鉄道事業者の常識で安全やサービスを考えるのではなくて、顧客の視点で安全やサービスを考える」、ここに立っているというのが、大きな前進面をつくってきた要素ではないかというふうに私は思いました。
 それから、先ほど岡本さんが私たちの会のアンケートの話をされました。そのなかにあるわけですけども、これ2003年ですから10年前のアンケートなんですが、「自動車に依存する日常生活についてあなたはどう思いますか」って、一般の人と高校生2クラス、中部高校の1年生と2年生なんですけども、アンケートしました。
 一般は「自家用車に頼るという日常生活というのは好ましくない」という人が19.7%、2割近くいます。「高齢社会になっているんだから、公共交通はもっと充実すべきだ」っていうのが27%です。「自家用車に頼らなくてもいいように、JRやバスや電車を便利にしてほしい」というのが27%です。これで8割近くになりますよね。
 高校生も同じような傾向にあります。ここをですね、どう見るかということですよね。私は、自家用車に頼るというのはあまりいいことじゃないんじゃないか、便利になれば、電車やバスに乗るんだという人達が多いということ、ここがですね、潜在的な需要者というふうに考えるべきじゃないか。これを、利用促進ということを考えた場合にあるのではないかというふうに思います。
 先ほど話にありましたが、私たちのやりました鉄道貨物の、荷主調査では、様々な条件がありますけども、鉄道貨物を利用したいという事業者がですね、100のうち7%いる。これも数字的には大きいものだというふうに。
 それで、どうしていくのかということで、方策の2つでありますが、一つはですね、最初に前提の問題でお話もしましたが、JRの社会的責任というものを絶対にですね、不問にしてはダメだということです。だって、新幹線が通ってですよ、在来線がなくなって、結局一番儲かっているのはJRなんですから。そこのところは不問にしてはいけないと思います。ですから、社会的責任がとわれているんだぞということを絶えず発信していく必要がありますし、国がその立場に立つということも大事だというふうに思います。
 それから2つ目はですね、富山、新潟、石川のようにですね、どちらかというと低密度の地域を走るわけですから、社会的に必要な最低水準、ソーシャルミニマムをですね、満たすような役割を鉄道はやっぱり担っていくべきではないか。そのための国と県と地方自治体の役割っていうのがあるだろうということです。
 それから3つ目は、富山は非常に大事だというふうに思いますが、3セクができたから、3セクにすべてまかせるっていうんじゃなしに、行政の方はですね、すべての交通機関、富山県の場合ですね、富山県を縦断していると言いますか、横断している鉄道、1本しかないわけです。ですから、あらゆる交通機関が鉄道と接続をするわけですから、3セクに全てをまかせるんじゃなしに、全ての交通機関の費用を含めてですね、調査をし直して、地勢的な特徴をいかした潜在的需要をですね、鉄道利用の経済的需要に変えていく、そういうとりくみが大事だろうというふうに思います。
 そこで、時間がないので説明あまりできませんが、えちぜん鉄道の場合はですね、10年たって県も沿線自治体も、新たに支援していく体制をとりました。
 それから、国の財政支援政策の流れをちょっとここに書きましたけども、京福鉄道が事故を起こした時分ですが、この時からですね、国の考え方に一つの変化がありました。
 それは、地方自治体が関与した場合にですね、上下分離方式というものを検討材料にしていったらどうかと示唆したんです。それから、この前、東日本大震災の結果ですね、三陸鉄道に対する補助の問題ですけれども、国、自治体で4分の1ずつ、それから事業者が2分の1でインフラ整備にある。事故が起きた場合、被災が起きた場合ですね、それが国と自治体半分ずつになった、ということですね。さらに、今度、今年になりまして、91のローカル鉄道にたいして、自治体の負担、自治体が線路などの施設を見る場合に、30%、並行在来線の場合には45%、富山県の場合は43億円でしたか、そういうふうになってきています。
 これをさらに発展させることが必要なんではないかということです。そこで方策の第一としてですね、富山を考えた場合に、線路使用料の話が先ほどありまして、特急が走ると線路使用料が減っていくという話を聞いてみなさんびっくりされたというふうに思いますが、当然ですね、改めさせていかなければなりませんが、しかし、その線路使用料も、10年で終わりですよね。もう2年たっていますからあと8年で終わりです。そこを県に聞きましたら大丈夫なんだって、こう言っていますけども、まだ法律的な保障は出ていません。
 それから県の経営安定計画ですね、これ10年計画です。10年以降どうなるのか。そうすると、「10年後問題」っていうのがあるだろうということですね。
 それで1つは、国等の並行在来線に対する公的支援を法律的にもきちんとすべきだ、新幹線の貸付料なども使ってですね、基金をつくいく。将来的には上下分離方式の方向に踏み出していくことも考えていく必要があるのではないかということです。
 さて、最後ですけども、先ほどえちぜん鉄道の乗客が増えてきたっていう話をしました。開業時、つまり2003年と比べて、直近で、2012年だと思いますが、「開業時と比べて利用回数は増えましたか、どうですか」という質問をしておりますね。増えたという人が59%で60%近くになった。何故なのか。「通勤・通学先が変わった」問題、これは当然ありますよね。2つ目ですが、この電車の存続のために、前よりも「意識的に、電車を利用する」。これはやはり、電車が走らなくなった、運休という後に復元にあるわけですから。当然電車を大事に考える、意識が変わってきた問題だと思います。
 3問目が大事なことだというふうに思いますが、乗ってみてですね、「えちぜん鉄道の便利さに気づいた」っていうんですね。乗ってみてあきらめたんじゃなくて気づいた。だから乗ろうってことです。ここのところが、大事なところではないか。
 これは、先ほども話したように、さまざまなですね、お金でははかれない、鉄道の便益というものがあるから。そこで、1つはですね、「住民の参加と公開」。問題はですね、徹底した情報公開やっていかなきゃなりませんが、さらに公開される経営データを含めてですね、利用者がどう評価していいんだ、どう判断していいんだ、それができるようにする。そんなことも工夫された参加と公開という方法があるのではないかと思います。
 もう一つは、富山県の場合ですね、県は3セクにたいして、大きな出資で係わりを持ちます。しかし、沿線のほとんどの自治体はですね、第3セクター会社にたいしてものが言えないんですよね。25%以下の出資ですから。ですから、言う場が少ない。言う場をどう確立をしていくかっていうことが、住民の問題であり、行政の側の問題だろうというふうに思います。以上で私の話は終わります。
 
司 会
 以上で、今日の報告をしていただく方の第一回目の報告がこれで終わりました。そこで、きょう、5人の方々の意見を、提案などを聞いて、みなさんのほうからご質問やあるいはまた、みなさんの方からこう思うんだけど、というような提案などございましたら、お受けしたいと思います。挙手でお名前をおっしゃってお願いしたいとおもいます。どちらからでもよろしいですが、ございませんか。どうぞ。
 
(フロアからの発言者名は、発言順のアルファベットでご紹介します)
Aさん
 私はAというもんでございます。どうもお世話になります。渡辺さんに質問なんですけども、貨物調整金はあと8年しかもらえないとかっておっしゃられましたけども、まずなんで8年しかもらえないのか、いうことが、すでに2年間もらっているのか。まだ、富山県通る第三セクター鉄道もまだ発足していないのにね、2年前からもらっているというのはどういうことなのか、ちょっとここをもうちょっと詳しく説明して頂きたいというのが1点と、えちぜん鉄道があって、利用者が年々増えておりますが、私も実際この本で解釈させてもらったんですけども、南社長の、やっぱり一人でもお客さんに乗ってもらいたい、上下分離やなんかしてもお客さん増えるわけじゃない。赤字が減ってもダメだと。一人でも多く乗ってもらいたいな。運賃値下げもありましたが、キャリーアテンダントをおいて、高齢者に対するサポート体制をとったいうことと、地元の沿線三国高校、三国フレッシャーズですか、そこらとタイアップして、プランターでつくった花とか、利用しやすい環境づくり、地域で盛り上げようとしたことが、私この利用者数ですね、このグラフですか、年々見込みが増えているという、これに現れているんじゃないかと解釈するんですが、こういう解釈でよいか、ちょっと見解聞かせて下さい。お願いします。
 
司会 まだ他にありませんか。どうぞ
 
Bさん
 あのー、方策の方でさっき話されましたけど、富山県の実態からいうと、自動車の持ち車数が全国第2位で1.72台と。そして、半径2キロ以内の通勤、そういう新しい駅をつくった場合の利用者数なんかも、新しい駅を新築する場合の査定で県もきたんですけど、私も近くに住んでいるんですけど、私の近くに新しい駅、高岡に、西高岡に駅できるんですけども、2キロで通勤に使っている人は、持ち車の台数が1.72台以上あるんですけど、その利便性、将来もJRを利用するかしないかということが、ちょっと不審なもんで、たぶん将来はあまり利用しないだろうなと思っています。
 2点目には低密度地域社会ということで、えちぜん鉄道いわれたんですけど、福井県の密度は192、富山県は256と。そして、富山県のJRの利用者は1日あたり5万2千人というデータが、いま県のデータで出てますけど、そこらへんのデータから、将来に渡って安定した運行ができるかできんかということを経営分析してほしいということと、
 3点目に、朝倉さんこられましたけど、いま平成25年度の全般のなかで、本格会社へ移行する場合に、増資と社名変更が壁になっていますけど、この増資の払い込みいうことは、いまなんか増資して、なんかどっか増資をして、払い込みをやっとるんか、やってないんかいうことについてお聞きしたいんですけど。以上。
 
司 会 どうぞ。
 
Cさん
 県会議員のCです。きょうはありがとうございます。山口さんの工務職場の点検だとか補修だとか、その報告についての朝倉専務のご感想と、現在予定しておられること考えておられることがあったら、ぜひお聞きしたいと思います。よろしくお願いします。
 
Dさん
 南砺市からきましたDと申します。教えて頂きたいんですけども、これからなんといいますか、高齢化社会に、私たちもね、つっこんできたんですけども、どんどん車の社会になりますと、交通事故がどんどん増えてきます。いずれ、年寄りは、70歳以上は免許を持ったらダメだというようなしゃばになってくると思います。そうしてからあわててもダメなんで、いまからやっぱり、公共交通というものを整備しておく必要があると、私は思っています。で、そのときにですね、やはりいま、渡辺さんの方から話ありましたように、公的なお金をですね、公共施設、公共交通に投ずるというような傾向になってこないといけないんだと思うんですね。
 いままでは、トヨタをはじめ、車社会ですから、車社会が日本を支えてきたということで、確かにそれは一理あるんですけども、これからはそれじゃダメなんで、やはり車社会に落ちたお金を、こんどからは鉄道に落とす、そういうお金の使うところをかえるべきなんだ、というような発想にたたなければいけないと思います。そういう意味で、いま日本は非常に車社会にお金を投じているんですけど、もっとこう目を転じて、海外の例を見ればもっと先進地は、本当にこんな、なんといいますか、公共交通、鉄道にお金を投じていないのかなというような疑問がしますので、もし海外の事情に明るい方がいらっしゃれば、ぜひ教えてください。
 
Eさん
 入善からまいりましたEですが、2月19日の日に意見交換会が入善の町でありました。そのなかにちょっと疑問に思ったことは、駅の西側の方なんですが、入善の駅のなんですが、駐車場があるわけなんですけども、これがどうも、JRの所有になっていると思うんです。どうも話の中では、それが譲渡資産にはならないような、ていうのは、駐車場を有効に利用したらどうですかという、駐車場が広ければそれだけJRの利用者が増えるんじゃないかという立場からなんですが、そういう話があったんですが、その土地は譲渡資産には入っていないっていうようなことが、言っておられたように思うんですよ。それで私は、結局いま持っておられるJRさんの大半の資産がそのまま在来線のところにくるんじゃないかなと思っていたので、ちょっと意外なことを言われるなと思ったんですが、その点わかりましたら、お願いします。以上です。
 
Fさん
 県会議員のFです。6月10日の富山県議会の経営企画委員会でやった質問なんですが、同じことを質問いたします。経営計画を前から見ていたんですが、先ほども指摘があったように、貨物調整金の収入をこの10年後に通産で1億円の黒字になるということなんですが、貨物調整金の収入を40%から45%、10年間見込んでおられます。貨物の量が減ったら、貨物調整金が減るんじゃないかということが考えられます。
 先ほど、山口さんの方からですね、一昨年の冬、貨物列車が24時間とまってしまった。ということがあります。JR貨物の労働組合のみなさんと話しているんですが、JR貨物という会社自身が、北海道から関西への日本海ルートを、災害等で止まるもんだから、太平洋ルートにシフトするというという、大きな会社の方針をもっているんじゃないか、こういうなかでですね、日本海側の貨物の量が減ってくるんではないか。
 富山県に対しては、私は、ちゃんと貨物の将来需要を、旅客の将来需要は分析しておりますが、貨物の将来需要の分析はどうなっているのかということを聞きますと、富山県は、JR貨物は(?)資産なので分からないというのが答弁なんです。非常に10年後まで、貨物の量が減ることによって、並行在来線会社の経営が成り立つのかどうなのか、10年間成り立つよと、いまの人は言われますが、10年後だれが責任をもつのかというようなことが非常に不安でございます。私としてはですね、並行在来線株式会社の経営の大きな柱にですね、貨物全国ネットを守る、こういったものをすえるべきだということを県に質していますが、県の方はそれは国が考えていることで、(?)である。先進事例でそういうものを、例えば、岩手銀河鉄道とか、青い森鉄道では、そんなことをかかげているところはありませんよという答弁なんです。しかしですね、これは誰かがそういうことを守ってかないと、経営はなり立たないんじゃないかというふうに思います。県におられました方に聞くのはなんですが、やはり、新しい会社としてはですね、しっかり考えなきゃいけないんじゃないか、いうふうに思いますので、どうでしょうか。
 
司 会 大変多岐にわたった質問や意見がございました。それでは、各パネリストの方がたから、それぞれ、私さっき5分程度と言いましたけれども、5人の方に5分話して頂きますと、4時半ちょっと過ぎるわけですけれども、5分以内でということでよろしくお願いします。今度は、渡辺さんのほうから、特に渡辺さんへの質問がいくつかあったので、ちょっと伸びるかもしれませんが。
 
渡辺眞一
 まず鉄道線路使用料ですけども、これは制度が変わったんですね。2年前に。言葉としては貨物線路使用料と言っていますけども、利益剰余金、国鉄時代のですね剰余金を活用する制度に変えてしまったんですね。鉄道・運輸機構から払うというふうに、制度を変えてしまったんですよ。利益剰余金の範囲で線路使用料をみていくということになりますから、その利益剰余金の切れ目が、貨物線路使用料の切れ目になるということに制度上なってしまった。簡単に言えばそんな感じなんですね。
 貨物鉄道線路使用料は、一番最初はアボイダルコストという形で、国鉄の分割民営化のときにできるだけ貨物会社に負担を負わせないようにということで、低いものになりました。東北本線で運動があって、線路使用料を引き上げる運動が起きて、いったん引き上げましてた。また、青いもり鉄道の新たなで指令施設をつくっていく段階で、貨物線路使用料が引き上がりました。そしてまた、北陸本線の第三セクターへ化のなかで、また引き上がると。ということで、何回か引き上がってきてですね、現在の制度ができてきたわけです。貨物線路使用料がですね、このまま永続していくものだというふうに、法律上はどこもないので、私はそう思っているんですけども、県にもそれを確認したら、はじめはそうだと言っていたんですが、いや、政府に確認したら続くような方向で考えているみたいだということで話が入ってきましたので、そうなんだろうと思いますが、きちんとした保証は1つもないということです。
 それから、えちぜん鉄道の評価の問題については、いろんな角度からあると思うんですね。去年の確か11月の「運輸と経済」に、福井大学の川上洋司先生が書かれた文章があます。そのなかには、いまおっしゃった話も全部出ています。私はそれ全部しゃべるわけにはいきませんでしたので、今日の会議にかかわるものだけを紹介したということで、そのアテンダントの問題もですね、あると思います。しかし、富山の場合には三セクにアテンダントを乗せるのか乗せないのかまだはっきりしていないところですね。乗せることになりましたか?
 <「経営計画には書いてあります」の声あり>
渡辺眞一
 それから、低密度の問題ですけども、福井県は、富山県は、という話がありましたけど、数としてみればそうなんですけども、県境ですね。県境も同時に考えていかなければならない。そこも考えますとですね、やっぱし、現在も利用者は倶利伽羅の所とですね、新潟の県境でがぐっと下がってしまうわけですから、そこも考えた運行というものを展望して行くべきではないかというのが先ほどお話をした趣旨であります。
 貨物線路使用料、今後どうなっていくのかという話ありましたけれど、先ほどお話ししたように心配をしています。私たちは、JRあるいは国鉄の鉄道貨物を昔、利用していた会社も含めて100社に荷主アンケートをしたのが先ほどの結果なんですね。現在の富山操車場、富山貨物のところですね。あそこのあたりをもっと利用しやすいものにしたら、いろんなことが出てるんですね。それを誰が整備していくのか。貨物会社はなかなかやらないですよね。そういう点で県と国が、日本海に循環している貨物をどう位置づけるのかっていうのが、大きな意味を持っていくのではないか。そういう点で、伏木からですね、線路を引いて、貨物をつなげるとか、そんなことも発想なんかも知事から出たりしていますけども、日本海側の貨物輸送を、全体をどうするんだという新しい視点ていうのが必要なんだろうというふうに思います。
 ただ、先ほどありましたように、JR貨物だけでものを見れば、北陸を走っているものをやめてしまって、いまのリニアのような、本州の真ん中をずばっと走る鉄道貨物専用線路を引くという構想もありますからね、その方向に大きくシフトしていく可能性もないではない。あるだろうと。そういう点で、地域の経済をどう活性化していくかということを含めた鉄道貨物のあり方というのを、われわれは迫られているのかなというふうに思います。
 
司 会 それでは、朝倉さん、お願いします。
 
朝倉隆文
 ちょっと補足を含めまして、まず貨物調整金ですが、鉄道運輸機構というところが、利益剰余金をもっているという前提があって、それを活用してですね、並行在来線の貨物調整金の方に10年間、1000億円くらいこちらの方にまわしましょうと。北陸新幹線の債務返済に1500億円をまわしましょう。という、そういう仕組みを決めたのが平成23年です。
 新幹線も並行在来線もそうなんですけど、どちらも根っこは財源ですね。お金がどこから用意できるかという問題が一番大きくて、新幹線の延伸に関しても基本的にはそこだろうと思います。今の段階から10年以降のことを議論できれば、一番望ましいんですけども、現実の問題、財源がなくて新幹線がとまってきたわけですから、それと同様のことが貨物調整金にはあります。10年後、何も財源確保できなければ、24億いま予定しておるのが半分になるという形になるんだろうなと思います。これは政治の世界の問題として、当然行政としても国に働きかけていくわけなんですが、なんらかの工夫をしながら解決していくべき問題であると思います。
 えちぜん鉄道の評価についても、先ほど渡辺さんからありましたが、私もえちぜん鉄道に行ってまいりました。根本的に違うのは、かなり限られた区間での運行されております。富山県では地鉄さんのイメージに近いかなと思います。そういったところで行う、地域密着型の鉄道の運営とですね、私たちがこれからやっていかなくてはいけない、県の幹線鉄道という位置づけとの違いというのは正直感じてまいりました。
 例えば社員がですね、地域の観光資源をどうやってお客さんにピーアールするのか、地域で降りてもらうのかという努力をされております。こういうお客さんの満足度をあげるためのさまざまなとりくみをやっておられる努力というのは大変すばらしいと思っておりますが、それをうちの社員にもぜひやってほしいということで、私は社員にも、きみは何ができるんだという話は何時もしておりますが、彼らは例えば駅舎に来ていただいたお客さまに、列車を待って頂いている間に、何かなごんで頂ける、何か喜んで頂けるしくみが工夫できないだろうかと。そういったものが、ほんのささいなことでもいいからできないだろうかということで、地域の力を借りてですね、例えば子どもさんの絵画展やってみたりとか、絵本展やってみたりとかの提案を若い人達から受けています。
 並行在来線会社が今後どう変わっていくかというところについては、いまの若い社員の方々が自らアイデアを出してとりくんでいくなかで、新しい案が出てくるものだと思っておりますが、越前鉄道とイコールではないと思っています。いま言いましたアテンダントなんかはですね、越前さんの場合は、地域のどこどこのおっかちゃんとアテンダントの世界でございます。北陸本線の7800人輸送密度の所で、どこどこのおっかちゃんと写真撮影というのはなかなか厳しいものがございましてですね、これに準じたアテンダントやっているのが、IGRさんていうところが岩手県にあるんですけど、そちらは病院に通われるお客様を特別サービスしています。そこは、どこどこのおっかちゃんと、会社の社員の世界でございます。そういった形での地域との密着のあり方みたいなものは、我々前向きに考えなくてはいけないかなと思っています。
 それから、先ほど、低密度の話が先ほどされたので、そこはちょっとパスをさせてもらいますが、本格会社の話でございますが、いまだに本格会社ということでずっと県議会などで説明させて頂いておりますが、法的にはただの商号変更と増資です。で、商号変更は、今月末の総会で定款変更いたしまして、あいの風とやま鉄道という社名になります。
 増資の方は昨年、対策協議会の方にご協力頂いて、県と市町村と9割もって、民間から1割出資があるというので、ほぼ出資社については固まりつつありまして、この総会の段階では発表できるかなと。県としては以前から出資割合決まっておるものですから、それはもう公表されたものでございます。それからC先生、県議会ではいつも厳しい質問を頂いております。(C そう?)なかなか厳しくて困っていますけど、先ほどいいました感想としましてはですね、現場の話というのをぜひよく聞かせて頂いて、それをどうやって会社の中で一つひとつ解決していくかということだと思っています。
 なかなか開業時までに出来ることは限られていまして、現在、研修いたしている65名の新入社員以外に、県とJRさんで20名ぐらいの人数で、本社でがんばっていますが、20人でできる仕事の中で、一番力を入れなくてはいけないのが、安全安心運行だと思っています。新駅とかICカードとか華々しい話がありますが、それ以上に、基本は安全安心運行なので、そういったときに、今言われたような視点で、どうすればやっていけるか考えたときに、一番いま心配されている、技術会社の世界というのは、私どもも非常に心配しております。
 現在のJRの仕事のやり方は、本社とJRグループ会社がですね、タッグをくんで、互いのいいところを持ち寄って、安全安心運行をやっておられますので、これは、我が社が突然開業したからと言って変えるとですね、正直私ども300人のうち200人はJRから来ていてだきますが、100人はまだ入って1年か2年のひよっこです。そういったものが、どうやって安全管理するかというと、本人が努力をいくらしてみても限界がございます。
 そうなると、自動的にグループ会社のですね、いままでやってこられたノウハウは、かなり協力をいただかないと、やっていけないのは明白だと思っています。このあたりでの打合せといいますか、グループ会社さんとの打合せはこれからなので、まだグループ会社さんの方には具体的な話は申し上げてませんし、基本姿勢としてはそういう形は取らざるをえないというのが現状だと思っています。
 ただ、JRさんにいつも言ってるんですけど、富山県として出来るだけ低コスト、高い効率の会社運営していくときに、JRさんと組むのはベストであるかどうかということは、常に疑問を持って仕事をしたいと思っていますので、そういった所が、JRさんの方から非常に私、きらわれてるんですけども、県民のために、は我が社がやるべき仕事だと思っています。
 どこまでJRさんがのんでくれるのか、交渉ごとなので、結果的には現場の方にまたご負担かけていくことにもなるかなという心配もあるんですが、一番心配なところ、たくさん教えて頂いて、どこまですすめるかわかりませんが、少しでも改善できるようにしたいなと思います。
 それから、高齢化社会に向けての対応ということで、出ておりまして、私も同感でありましてですね、できるだけ高齢者の方が駅に来て、スムーズに鉄道に乗って頂けるような環境をつくっていくためには、例えばパークアンドライドといった問題とか、駅のバリアフリー化という問題が出てくると思います。いまJRさんにお願いしているのは、黒部駅と石動駅のバリアフリー化ということで、今年度から工事をすすめていただいておりまして、開業時までには間に合うと思いますが、それ以降も、できるものならば、少しそういった部分もですね、改善していきたいなと。ただ、これも金のかかる話なので、どこまでできるかとお約束はできないんですけど、その姿勢については、会社としてはゆるぎないものだとと思っています。
 それから、入善駅の西側のJR敷地の話につきましては、いまだに、どの地面かというのが、私、確たる自信がございません。現場を見てきましたが、たぶんあれだろうという思いがありまして、たぶんあれであれば、私どもに譲渡いただける地面だろうと思っているんですけど、そうであれば、駐車場としての活用はあり得るだろうなと。ただ、パークアンドライドはですね、JR敷地だけを議論すべきではなくて、市町村さんにもお願いしておるんですけど、市町村さんご協力のもとに、駅周辺にできるだけ駐車場、公的な駐車場をですね、確保して頂けるようなとりくみを工夫していかないかんなと、実は思っております。
 それから、G先生のお話もちょっと厳しい話ですけど、私県職員であった立場もございまして、県職員としての答と違うというのもまずいんですけど、基本的に貨物についてですね、聞ける情報は、私ども県から聞いている情報しかございません。現在いろいろJR貨物さんと議論をさせて頂いてますが、貨物輸送というのは、やはり将来だれも予測がつかないというのが正直なところなんだなと思っています。
 私は企業回りさせて頂いて、出資とか寄付金集めてまわっていますが、そういったなかでも、先ほどの雪の問題とかですね、そういった苦情もお聞きしておりますので、今後3セク会社になりましたらですね、できるだけそういうその貨物さんが、JR貨物さんが利用しやすい運行について、できるだけ努力していくしかないんだろうなと。それが結果的にご利用につながるんだろうというふうに思っております。簡単ですけど、以上でございます。
 
司 会 すいません、新駅の話、ちょっと、もし、お答えできることがあれば。
 
朝倉隆文
 新駅のですね、設置にあたって、収支がとれないとなかなか新駅を作る意味はないということ、やはり特定の箇所に新駅つくって、赤字がどんどん増えていくようであれば、特定の地域の方がたのために県民全体の税金を投入することになるので、できるだけその(収益収支?)がとれるところからやりたいということで、県の方で平成23年度に新駅の可能性調査というのをやっています。
 その時に駅勢圏人口といいまして、駅から2キロ以内の方、お客様が、住んでおられる方々が、どれぐらいその駅を利用してくれるかということについて、これまでの傾向をベースにですね、積算しております。こういう収支を見込むときに、一番気をつけなくてはいけないのは、どちらかというと悪い方の、収入はできるだけ少なめに見積もるのが基本だと思ってますので、今後車に移行するだろう、それから、いまの鉄道利用の割合がいまよりはよくはならないだろうと、現状維持だろう、精一杯現状維持だろうと、そういった形で積算したものが、いまの西高岡間と東富山間の駅でございまして、どちらもなんとか、10年から30年間黒字になりうるのではないか、というふうに見込んでおります。
 ただ周辺のですね、あくまでその収支が取れるという前提条件が一つありまして、周辺の土地、区画整理とかまちづくりがですね、うまくいってという前提です。
 高岡の場合は住宅団地、土地区画整理事業を駅南の大部分やっておられまして、それがどんどん進むだろうということと、新幹線の新高岡駅に割と近い駅になるということで、ある程度新たなお客さんが見込めるだろうということでやっています。
 鍋田の方はこの後そういう住宅開発がもっとすすめばという前提で、はじめてプラスになるんだろうなと思っていますが、こちらの方はまだ富山市さんがこれから県の方といろいろ議論されてすすんでいくんだろうなということで、高岡市さんの方が早く動きそうな、動きでございます。
 
司 会 最後に、もう一つですね、公共交通に公共的なお金を投資するというのは、世界の流れはどうですかみたいな話がありました。岡本先生がご存じだと思いますので、お願いします。
 
岡本勝規
 私の方からは、低密度輸送状態における鉄道経営と、それから公的資金投入のお話をいたします。日本の鉄道経営というのは、極めて高密度輸送が前提で、ようするに非人間的なくらい押し込んで、それでようやく儲かるという不思議な体制をしておりました。本来、おかしいんです。
 例えばヨーロッパですと、スウェーデンだったら、だいたい輸送密度2000人ぐらいでいいという具合にされております。2000人で十分経営できるんだ、そのあとは公的資金で補てんするから、それでいいんだという考えでございます。富山県の並行在来線の輸送密度は現在7800人、これがどんどん減って5000人台になってもですね、思想的に言えばやないことはないという理論的スキームがあるということです。
 これは、関西大の先生がいっておられたことですが、日本ではこのあと少子高齢化が進んで人口が減って中で、地方のみならず、例えば関西レベルでも、鉄道会社はだんだんやっていけなくなるよと。ようするに、阪急とか阪神でも儲からない状況が来るぞと言っておられました。つまり、首都圏以外では鉄道会社の経営が傾く時が来るということですから、ある程度密度が低い状態でも採算がとれるような思想なりスキームなりをつくらなければいけないね、ということです。そして、これは地方だけの話ではなくて、極端なことを言えば、首都圏を除いた全国の話になる、全国的な課題なんだということです。阪急や阪神が廃止になるとなったら、大騒ぎでしょうからね。
 公的資金投入については先ほども言ったように、とりわけヨーロッパの方では、例えばフランスなどでは交通権の概念がありますから、これは権利なんだからちゃんと保証してやらなければいけないという、そういう思想的スキームで資金が投下されています。われわれの会でも、総合交通会計の考えというの主張しています。
 例えば、港湾は港湾運送会社がお金出してつくったわけではないし、空港は航空会社がお金を出してつくったわけではないし、道路はバス会社が作ったわけでもないわけで、公的なスキームで維持をしているんです。ならば鉄道についても公的なスキームで維持をするような思想が入ってくるべきではないかと。そのための仕組みを踏まえた会計思想があるべきだと主張しております。
 ヨーロッパの方ではそういう思想になっていて、積極的に上下分離をやっている。アメリカですらそれやるんです。例えば、トランジットモールを走る路面電車の運賃をただにしたりとかするわけです。そちらの方が社会的費用から見るとお得だという考え方ですね。ですから、公的に多少の持ち出しがあっても、社会的に帳尻が合えばいいんだということで、考えていく必要があるのではないか。
 今後高齢化社会と言うことで、高齢者のことが念頭にはあろうかと思います。私のように学校で勤めているものから言いますと、結構、自動車免許を取ることができない若年層も苦労しているんです。車を運転できないですから。ですから、若年層が現在、車を運転できないのでわれわれは自由を奪われている、早く車に乗りたいなあといっているような状況においてですね、今後の公共交通を考えると暗澹としてまいります。若年層の代が不便に感じているということにも是非配慮して頂きたいなあと思います。それでこそ、なんとか未来が描けるんじゃないかなとういうふうに思います。以上です。
 
司 会 どうもありがとうございました。草先生、どうでしょうか。何かありましたら一言。
 
草 卓人
 いろいろなお話を聞かせて頂きましたが、やっぱり、普段利用するお客さんを多くしていくような努力、例えば、スーパーだって、商品が売れないとき、売れない商品をもっと売るときは、「タイムセール」で値段をある程度値を下げて、消費者が買いやすいような設定にして販売しております。
 同時に例えば、電車が昼間がらがらで走っているのを見ると、大変もったいない気がします。乗らない時間帯だったら、もう少し社会実験とかで下げるなりして、お客さんが乗ってくる運賃と、お客さんが乗りたくなる運賃と、それから鉄道会社の採算の運賃の最大公約数を求めるための社会実験をして、もう少し積極的にお客さんに乗って頂くような試みをしていって頂ければと思います。
 それからちょっと岡本先生のお話に付け加える形になりますが、バスは、バス会社が道路をつくるわけではない、飛行機会社が空港をつくるわけではないという話で、鉄道会社は自分でつくらなければならないという話しがあったんですが、かつて北海道では、植民軌道、これちょっと極端なんですが、北海道が線路を敷設して、運行を地元住民に委託したという例もありましたが、こういった「上下分離」を日本でも、もっと導入することを考えていただければと思います。とりとめのない話なんですが、以上で終わらせていただきます。
 
司 会  それでは最後にJR労働者の方から、何かありましたら。
 
岡本勝則
 補足させて下さい。すいません、草さんが言ってらっしゃったけれども、公的なところがつくって民間的なレベルに委ねているというのは、すいません、富山でやってましたね。ライトレールでやってますから。補足しておきます。海外でなくても、地元でやっております。
 
山口雅幸
 たぶん、現場の労働者がこんなことをしゃべってるのは、私が初めてなんだろうと思うんですが、3分の2はたぶん、出向社員が、第3セクターの方に行くと思います。行きたい人、行きたくない人、いろいろあると思います。第3セクターはですね、早く労働条件を出してですね、俺、行って頑張るわ。というようなですね、意気込みで、第3セクターに行かなければですね、やはり会社としてのチームワークも必要ですので、そこはですね、チームワーク良くなければ、やはり安全に対するものの考え方もですね、だんだんずれていくものがでてくるんではないかというふうに思いますので、なるべく早く、労働組合の人間として、労働条件を出してもらってですね、新しい会社でがんばろうという人間をですね、よりいっぱい採用してですね、安全な第3セクターの会社をつくってもらいたいなというふうに思っています。以上です。
 
司 会 本当に、ここ現在の並行在来線の現状にふさわしい議論が交わされたのではないかなと思います。一応予定の時間も来ておりますので、ここで終了させて頂きたいと思います。
 終わりにあたって、代表委員の奥村の方からごあいさつがございます。
 
奥村義雄 (公共通をよくする富山の会・代表世話人・富山大学名誉教授)
 今日はどうも長い時間ご苦労さまでした。報告をお願いした5人の方々には、大変ご苦労さまでした。有難うございました。
私たち、公共交通をよくする富山の会として、並行在来線のあり方をめぐってシンポジウムを開きましたのは、今回で8回目です。みなさん方のお手元に届いている案内のチラシにもありますので、ご承知のことと思います。昨年、ちょうど今から1年前には、並行在来線の経営計画概要(第1次)(案)が出た段階で、経営計画概要のさまざまな問題点について検討するためにシンポジウムを開きました。その後、経営計画概要の最終案が取りまとめられるにあたって、県に対して提言を出したり、県への要請をしたりして来ました。そして今日、経営計画概要の最終的な案の取りまとめを受けて、8回目のシンポジウムということになりました。
これまでに取り上げて来ました問題は、今日もそうですが、非常に多岐にわたっています。そもそも、赤字になりそうだからといって、JRの経営から北陸本線を切り離すこと自体どうなのかという、JRの経営からの分離の問題をはじめとして、県境分離をめぐって、上下分離をめぐって、あるいは運賃やダイヤ、施設設備、さらに安全の問題など実にさまざまな問題があります。そしてまた沿線をはじめ地域の住民が、現在の北陸本線、並行在来線、あるいはこれからの第3セクター鉄道にどういうことを望んでいるのか、この地域社会にとってどういうことが必要なのかという問題があります。
今日のシンポジウムでも、いろいろな問題が出されましたけれども、もちろんこれだけで尽きるわけではありません。例えば、一部の例だけを挙げてみましても、経営計画概要の最終案では、「地域の活性化」とか、「まちづくり」とか、あるいは「地域産業の振興」という言葉がよく出て来ます。しかし、これらの言葉の具体的な内容についても、それが北陸本線のJRからの経営分離、並行在来線の第3セクター化、第3セクター鉄道のあり方などの問題とどう係わっているのかということについても、まったく触れていません。
経営計画概要じたいが第3セクター鉄道の経営方針、経営計画が中心になっていますからやむを得ない面もあるかとは思いますが、私たちとしては、これらの問題にもっと力を入れて取り組んでいく必要があると思います。
先行する4つの第3セクター鉄道の例が、経営面についてはよく引き合いに出されますが、並行在来線が第3セクター化されて、その沿線の地域、あるいは駅周辺の地域が、ど
うなっているのか、どのように変わったのかを見ていきますと、「地域の振興」とか「まちづくり」という言葉を使うだけでは終わらせることのできない、衰退の一途をたどっているとしか見えない地域が少なくありません。富山もそうなるのではないかとは必ずしも思いませんが、またそうなって欲しくはありませんが、とくに東部の方では、下手をすると、新たなローカル線ができてというような形で、やはり衰退の危険さえないとはいえないという問題があると思います。そういう点もやはり、これから経営の問題とともに、取り組んでいかなければならないと思います。
それから、もう一つ気になりましたのは、「業務の効率化」と言って、ワンマンカーを導入するとか、駅を無人化するということが出ています。そうすると、利用者、乗客へのサービスの低下や安全の軽視につながるのではないか、さらに、「社員の多能化」は従業員、社員の過重負担、労働強化につながるのではないかという問題もあります。
これらの問題も含めて、並行在来線、第3セクター鉄道をめぐる問題について、その現状はどうなっているのか、どうあるのが望ましいのか、少なくとも近い将来どういう見通しが持てるのか等々、私たちは、住民の一人として、鉄道の利用者として、あるいは鉄道に関係する者として、もっともっと考えていかなければならない課題があると思います。私たちのこの会としても、これからも、県やJR各社、あるいは新しい鉄道会社などに対して、こういった議論を十分踏まえた上で、提言をするなり、話し合いの機会を持つなりして、その取り組みをさらに進めていきたいと考えています。ぜひ皆さん方のお知恵も拝借してやっていきたいと思います。よろしくお願いします。
(文責:事務局)