北陸新幹線の開業で北陸本線は どうなる どうする Part6
シンポジウム 富山県の並行在来線「基本方針」を考える
− 2011年6月5日 シンポジウムの記録 −
 
司 会 渡辺眞一 (公共交通をよくする富山の会・世話人)
 北陸新幹線の開通で北陸本線はどうなる、どうするpart6、6回目のシンポジウムの開催です。今日は、チラシなどに書いてありますたように、富山県が並行在来線の経営についての基本方針を出しました。その基本方針についてですね、いろんな角度からみなさんと論議をしたいと考えまして企画しました。
 この県の基本方針は、この県並行在来線対策協議会によりますと、年内もしくは来年早々にも、予算付けなんかを行うためにも、経営方針が決まっていく。そういう段取りになっているそうです。みなさんの方に県がつくりましたスケジュール表も行っていると思いますので、ご参考にしてください。
 この北陸本線は どうなる どうするpart6でありますけど、一番最初にやりましたのが、2004年の5月でした。2007年から毎年このシリーズでやってまいりまして、2007年の時には並行在来線のあり方、3回目は県が収支予測を出しましたので、それについての検討ですとか、上下分離などについて検討しました。第4回目の2009年は、石川県、それから新潟県から見た並行在来線という角度でシンポジウムを行いました。昨年の5回目はですね、JRに期待される役割は?ということで、JRの社会的責任に踏み込んだ形でシンポジウムをやました。
 今日のシンポジウムはですね、みなさんのお手元にプログラムが行っていると思いますが、5人のパネリストのみなさんにそれぞれご報告をいただきます。発言順でご紹介をいたしますが、最初は県の並行在来線基本方針の問題点ということで奥村義雄さん、富山大学名誉教授です。一番向こうが奥村さん。2番目は、県境分離で特急列車、運賃や運行などをどうなるかということで、岡本勝規さん、富山高専の先生です。公共交通をよくする富山の会の世話人でもあります。
 3番目は、第3セクター化でですね、施設設備、貨物ははどうなっていくのかということで、JR貨物の社員であります太田茂雄さん。そこで一度休憩をはさみまして、4番目にですね、北陸線がJR経営でなくなると高校生の通学は?高校生の通学に焦点をあててもらって、増川利博さん。高等学校教職員組合の委員長さんです。
 最後に、まちの魅力づくりの観点から、北陸線の第3セクター化に思うことということで、武山良三さん、富山大学の教授です。武山先生には、第3セクターというのはだいたい、流れとして大きくなっていますので、新幹線開業後ということも頭において、この先のことも話をしていただこうというふうに考えております。お1人20分以内ということで、予定をしております。
 では、さっそくですが、奥村さんからお願いいたします。
 
奥村義雄 (富山大学名誉教授)
 奥村です。時間が20分以内ということですので、ちょっとはしょってお話したいと思います。会員の皆さんには、すでに県の並行在来線対策協議会専門委員会が出しました「並行在来線(北陸本線県内区間)の経営の基本方針(素案)」と、その素案の「検討の概要」その他の資料が配布されていると思います。それから、今日、受付でも、何点か資料を用意してもらっています。私は、あらためて新しい資料を追加することは省かせていただきます。いま司会の紹介がありましたように、「素案」と「検討の概要」の問題点について、2、3お話をしてみたいと思います。1つは、平成2年(1990年)12月のいわゆる「政府・与党申合せ」とそれに関連した問題について、つぎにもう1つは、並行在来線(北陸本線)の公共交通としての捉え方について、それから、並行在来線と「まちづくり」との関連について、そして最後に、「素案」と「検討の概要」のなかで、「隣県との合同会社の場合」と「県単独会社の場合」に分けて、運行形態と運行体制について、どういうメリットがあるのか、どういうデメリットがあるのかということが、きわめて単純な二分法で書かれていますので、その捉え方の問題について、取り上げてみたいと思います。
それでは、まず「政府・与党申合せ」についてです。この「政府・与党申合せ」は、1990年12月ということは、第2次海部内閣の時で、およそ20年以上も前のことです。その「政府・与党申合せ」は、要するに、整備新幹線を新たに着工する時には、その区間の並行在来線は新幹線の開業時にJRの経営から分離するということを、沿線の地方自治体とJRが同意することを確認するというものです。その「申合せ」の問題ですが、それは政治決着によって、つまり、JRとして採算の見込みのない並行在来線はJRの経営から切り離すという、あくまでもJRの経営上の収支を優先させた政治決着であって、例えば、鉄道事業法(この法律は、鉄道事業の運営を適正かつ合理的なものにすることによって、利用者の利益を保護し、鉄道事業の健全な発達を図ることを目的としています)その他いろんな関連の法律がありますけれども、そういった法律に基づくものではないということです。さらに問題は、並行在来線で収益があがりそうなところはJRが経営を継続し、収益があがる見込みがなさそうなところ、赤字が避けられそうにないところはJRの経営から分離するというものです。これは広域的な公共交通機関としてのJRの責任を放棄するものだと言わざるを得ません。ご承知のように、国鉄の分割・民営化が1987年に行われて、JRの各社は非常に安い帳簿価格で国有財産を承継しているわけです。そして、政府からの補助金などもあって、多くの利点を得て優遇されてきたわけです。そういう点からも公共交通機関としての責任を果たさなければなりません。また、それを政府がそのまま放置し助長させています。それだけではなくて、政府自身も公共交通機関を整備しさらにそれを維持していくという責任を放棄しているわけです。このような多くの問題が「政府・与党申合せ」にはありますので、その根本的な見直しを求め続けていくべきだと思います。ところが、県の「素案」では、このような「政府・与党申合せ」によって並行在来線(北陸本線の県内区間)の経営はJRから分離されるのだということを前提にしてしまって、これらの問題についてまったく検討しようともせず、まったく触れていません。
しかし、この「政府・与党申合せ」をめぐる政治的、経済的、社会的な情勢の大きな変化からも、「政府・与党申合せ」を見直さなければならない必要性が高まっています。
政治的には、政権交代が2009年8月にありました。長く続いた自民党・公明党の連立政権に替わって、民主党中心に社民党と国民新党を加えた3党の連立政権が発足しました。これは日本の憲政史上、いわば本格的な、といいますのは、野党が衆議院選挙で過半数を占めて政権交代をするという意味で、おそらく初めてのことだろうと思います。そういう意味では、画期的なことであったと思います。当時の前原国土交通大臣などは、先ほど言いました「政府・与党申合せ」等の枠組みを再検討しなければならない、場合によったら白紙に戻さなければならないということも考えなければならない、などと発言しています。その後、はっきりした動きは今のところはなさそうですが、JRによる運行を継続することを、あるいはもし仮に第3セクターになったとしても、その第3セクターの経営にJRが参画することを要求していく道はまだまだ残されていると思います。
それから、経済的には、ご承知のように、国にしても地方にしても、財政的に非常に困難な状態にあるわけです。富山県をみてみましても、東京を頂点とした地域的な格差がさまざまな形で拡大しているなかで、とくに地方都市が非常に衰退してきているという点があります。例えば、細かい数字は時間の制約があって省きますけれども、1人当たりの県民所得をみても、実質の経済成長率をみても、あるいは財政力指数などをみても、富山県は悪い方向に変化して来ているわけです。一向に改善・向上の兆しがみえない状態です。
 さらに、社会的には、やはり人口が減少して、少子・高齢化がすすんでいるという点があります。富山県の人口は、昨年11月現在で公表された数字で、109万人ちょっとです。将来の予測人口でいいますと、2025年には100万人を割って約97万人、それからさらにその後10年経って2035年になると、90万人を割って88万人ぐらいになるという将来人口の予測がされています。少子・高齢化についても、15歳未満の年少人口、15歳から64歳までの生産年齢人口、そして65歳以上の老年人口という年齢区分を基にして、人口の高齢化の現状と変化を捉えることがよく行われます。そのなかで、一番端的に人口の高齢化の程度を示している数字が老年化指数といわれるものです。老年化指数は、老年人口の年少人口に対する割合を表しているわけですけれども、これをみますと、富山県の場合、2010年で2.0で、簡単に言ってしまいますと、年少人口1人に対して老年人口2人という割合です。それから20年後には3.1に、30年後には3.6になると予測されています。このように、人口の減少と少子・高齢化が急速にすすんでいるということがあります。
このように、平成2年(1990年)の「政府・与党申合せ」から20年の間の、その間の政治的、経済的、社会的な情勢の変化をみますと、これは、これから先の並行在来線がおかれる状況でもあるわけです。そうすると、「政府・与党申合せ」とか、その後いくつかの「政府・与党合意」といわれるものがありますけれども、そういうものを基にしていては、並行在来線(北陸本線)は存続できなくなることは明らかです。ですから、「政府・与党申合せ」や「政府・与党合意」、それらを基にした枠組みの転換、その根本的な見直しを求めていくべきであると思います。
それから、2つ目の問題は、県の「素案」を見ますと、「コンパクトな運行体制にする」とか、「身の丈に合った規模の組織にする」とか、そういった表現があちこちにあります。そういう並行在来線の捉え方、北陸本線の捉え方は、やはり基本的に間違っていると思います。といいますのは、北陸本線は、米原と直江津の間353`ありますが、富山県内では、19の駅があり、普通列車、特急列車、貨物列車などが走っているわけです。そういう意味では、北陸本線は、日本海沿岸を縦貫して、旅客輸送の面でも、貨物輸送の面でもその根幹をなしている大変重要な路線であるわけです。現在の北陸本線は、私たちにとっては、といいますかとくに沿線の住民にとっては、基幹的な生活路線、生活交通として非常に重要な役割を果たしています。また、これからも果たしていかなければならない路線です。いま生活路線とか生活交通と言いましたけども、私たちは、日常的に、通勤、通学、通院をはじめとして、買い物や遊び、余暇やレジャー、教養や娯楽などで出かけますし、また時々は、出張や研修・調査、観光・旅行で出かけ、あるいは冠婚・葬祭その他で遠方の親戚や友人・知人を訪問したりしています。そういった移動はすべて生活の重要な一部であるわけです。北陸本線は、そういう移動に不可欠な生活交通手段として捉える必要があります。ただ単に通勤、通学、通院の便というだけではすまされない生活全般にかかわる重要な路線であるわけです。県内の通勤、通学、通院といってもそれはそう遠くまで出かけるわけではありませんから、県の「素案」での捉えかたは、非常に狭い範囲の移動に視野が限られていて、その視野が狭く内向きで、外の世界に向いていません。時によっては、閉鎖的ともいえる捉え方に終始しています。もう少し視野を広げて、富山県だけではなく、少なくとも北陸地域として、全国的な、広域的な公共交通網のなかで北陸本線を捉える必要があると思います。北陸地域が全体としてお互いに連携しながら、また機能的に分担しながら、地域全体として、その産業、経済、文化あるいは観光を発展させていくために、北陸本線は、いわば交通の面からその基盤をつくっていく,交通の面からそれを支えていくという役割を負っていると思います。さらに、県内、県外を含めて、首都圏、中京圏、関西圏なども含めて、広域的な相互の人々の行き来が活発に出来るように考えることが必要です。
もう1つは、公共交通は、見方を変えると、生存権保障の問題にも関係してくることです。通勤といえば勤労の権利と義務、通学といえば教育を受ける権利と教育の義務、そのほか医療・福祉の増進などがまず考えられますが、すべての生活部面について、国民の健康で文化的な最低限度の生活を営む権利が保障されなければなりません。そのような国民の生存権を保障するためのいわば土台になるインフラ、社会資本として公共交通機関を位置づける、捉えるということが必要だと思います。残念ながら、そういう視点は「素案」その他の県の捉え方にはまったくみられません。
そのつぎに、北陸本線の「まちづくり」との関連では、1か所だけ、「まちづくりとの連携」という表現があります。しかし、何が書いてあるかといいますと、括弧して(駅改修・設置など)とあります。駅の改修と新駅の設置だけしか書いていません。「まちづくり」といいますと、最近富山市がよく使っている「コンパクトシティ」という語を思い浮かべます。1998年に制定され、2006年に改正された中心市街地活性化法です。中心市街地の空洞化に直面した自治体がその「中活法」に基づいて中心市街地の活性化を図るという計画が推し進められて来ました。その後、全国的に、「コンパクトシティ」という語がはやり言葉のようになっています。しかし、具体的な指標で、中心市街地の占有率、つまり行政区域全体に占める中心市街地の割合の変化をみますと、人口からみても、年間の商品販売額、どれだけ商品が売れたかということからみても、あるいは事業所の数等からみても、以前の総務省の統計ですが、うまくいったケースはほとんどありません。
そしてさらにもう1つ悪いことに、これも富山市によくみられることですが、ヨーロッパやアメリカの都市、歴史的な伝統のある都市をいわばモデルにして、それを真似て「まちづくり」をすすめていこうとすることです。例えば、ドイツのダルムスタッドとか、フランスのストラスブールとか、あるいはアメリカですとポートランドなどがよく取り上げられています。しかしこれらの都市は、それぞれ非常に長い歴史と伝統のある都市で、独自の雰囲気や景観があり、そこに住んでいる人々には独自の生活様式、ライフスタイルが形成されています。そういう都市をちょっと見に行って、外見的に、断片的に真似をしようとしても、それでは「まちづくり」にはなりません。
先行している並行在来線とその沿線地域の状況にもっと学ぶべきです。先行している並行在来線が4つあります。これは配られている資料にも出ていると思いますけが、青森県の「青い森鉄道」、岩手県の「IGRいわて銀河鉄道」、長野県の「しなの鉄道」、熊本・鹿児島県の「肥薩おれんじ鉄道」です。経営手法や経営内容については、細かい資料がよく紹介されていますが、この沿線の街がどんな街になっているのか、そこに住んでいる人々の生活がどういう生活になっているのか、その沿線の地域や住民の生活にとって、並行在来線がどういう役割を果たしているのか、といったことこそもっと実態と課題をよく調べて、それを北陸本線と「まちづくり」の参考にするべきだと思います。
時間が来たようですので、もう1点だけつけ加えておきたいと思います。運行形態と運行体制についてです。隣県、つまり新潟県と石川県との合同の会社をつくるか、あるいは富山県単独の会社をつくるかということです。そして、鉄道インフラ施設の保有主体と鉄道の運行主体について、「上下一体方式」をとるか、「上下分離方式」をとるかということです。運行形態と運行体制について、それぞれの運行面や組織・施設面などでのメリットとデメリットが詳しくあげられています。しかしこれは、厳密な意味で同じ1つの指標を設定して、それで両者を比較・対照するという形にはなっていません。なぜか、はじめに「県単独の会社を上下一体方式で設立する」ということがあって、そして「県単独会社にした場合」のメリットと「隣県との合同会社にした場合」のデメリットについて、詳しくあげられています。しかしどれも、どういう運行形態や運行体制であっても不可欠なことばかりです。どうもはじめに「県単独の第3セクター鉄道ありき」という発想があって、こじつけたような表現になっているところが多いようです。メリットとデメリットを考える際の最も重要な基準は、営利企業としての採算性や行政の面子ではなく、利用者の利便性と安全性、そして沿線地域の活性化に資するか否かでなければなりません。
また、大阪方面に行く特急「サンダーバード」や名古屋方面に行く特急「しらさぎ」などはどうなるのか、貨物の輸送はどうなるのかという問題もあります。
私の報告はこれで終わらせていただきます。どうも有難うございました。
 
司 会 ありがとうございました。では、続きまして岡本さんお願いします。
 
岡本勝規 (富山高等専門学校教員)
 こんにちは。富山高等専門学校で教員をしております、岡本勝規と申します。先ほど奥村先生の方から、今回示された素案についての全体的な疑問点等々を語っていただきました。確かに疑問点は多岐にわたるのですけれども、そのなかで、特に運賃と特急乗り入れの件についてお話をさせていただきます。運賃の件に関しましては、2年前に簡単な報告をさせていただきました。そこへ何故また再び運賃のことに触れるのか。その点に関し、まずは私自身の考え方をお話をしておきたいと思います。
 今回の問題では、路線の維持・存続という点が非常に大きな関心事となっているように思います。ようするに、新幹線が開業した後に並行在来線は第3セクター化されるという話だけれども、やっていけるのか、なくなるんじゃないか、というようなことですね。しかしながら、公共交通が維持され、活性化されていくためには、単に路線が存在する。・存在しないという問題だけを論じていては不十分なのです。では何を論ずるべきか。1つ目にはもちろん、路線が存在する・存在しないと言うことが焦点になります。2つ目には運行接続の問題、あるいは運行頻度の問題を取り上げねばなりません。路線が存在しても1日に1本しか走らない状態では意味がないわけです。必要なときに必要な頻度で走ってくる、乗りたいときにちゃんと接続してくれる状態になっているか、これが1つ大きな課題であろうかと思います。そして3つ目には、運賃の問題があります。「路線は残った。そして、運行頻度もそこそこある。でも運賃がすごく高い。隣の駅まで行くのに500円とります。」と言う具合になってしまったら、誰も乗らないでしょう。したがって結局、公共交通が維持・活性化されるためには、まず路線が存在していて、じゃんじゃん走ってきて、しかも安いということが必要になるわけです。
 今般示された素案においては、確かに路線の維持には触れられています。それから運行頻度については、あまりはっきりとはしませんが、「地元密着」という言葉を使って若干のイメージを示されておられます。しかしなから、運賃についての言及がない。ようするに、第三セクターになったら運賃はいくらになるのかということですね。仮に経営分離された並行在来線が、本当に使い勝手が良い路線になると言うのであるなら、運賃の部分にも素案でちゃんと触れておいてもらわねばなりません。判断材料不足で善し悪しが判断できないからです。したがって、今回の素案ではその点が非常に残念だと考えております。
 ただ、今回の素案では確かに触れられてはおりませんでしたが、それ以前の試算においては、ご存じのようにいくつかの運賃のパターンが示されておりました。まず、この表は以前私がシンポジウムで報告したものですが、いずれの先行事例でも運賃値上げが行われていることがわかります。ご覧のように、「経営分離されたら運賃が上がらないはずがないんだ。」という傾向があるわけです。かつての富山県の予測でも、やはり色々と値上げした時のケースをあげておられました。今回の素案にはその辺のことは書いてはいなかったのですが、平成20年に行われた富山県による調査報告では、ご覧のような運賃値上げのシミュレーションが示されています。この表の、例えば一番上の赤い丸で印がつけてあるところには、運賃を1.25倍にすると第三セクター会社はどのような収支になるかと言う予測が示されています。赤い丸印は3つありますが、真ん中の印は、開業の年に運賃を1.25倍にして、さらに10年後にもう一度1.25倍にした場合の収支を予測したものです。1.25×1.25ですから、10年後は1.5625倍ということになります。約1.5倍ですから、いままで300円だった運賃が450円になる計算です。一番下の丸印の部分は、運賃を1.25倍にして人件費を削減したら収支はどうなるかというケースでした。ご覧のように、平成20年の時点で富山県は、このような報告出しておられるわけです。ですので、今回の素案にはどういう形で反映されるのかなと思っていたんですが、残念ながら特には言及しておられなかったわけです。 運賃が値上げされる要素としては「経営分離」の他に、「県境分離」と言う要素もあります。例えば、並行在来線の石川県内区間と富山県内区間が別々の会社になってしまったら、県境を越えて乗車した地点で改めて初乗り運賃がかかるでしょう。富山から金沢より先(小松方面)まで乗り続ければ、金沢駅を越えた時点でまた初乗り運賃がかかります。枝線まで考慮すると、初乗り運賃が一体何回かかってくるのやらと言う状態です。一応、今回の素案では、富山県単独で第三セクター会社を立ち上げた場合には、県境を越える流動が二社にまたがってしまうことを想定して、「初乗り運賃に関して何か手を加えなければいけないかな。」といったことが書いてありました。実際のところ我々としては、県にも要望したとおり、県境分離はやめてほしいと考えています。これは運賃面からのみならず、運行管理の面からも要望しております。運賃の部分だけにまとを絞っていえば、仮に県境分離をしたとしても、運賃表を統一するなりゾーン運賃制にするなりして、当然運賃は統一的に運用をしてもらいたいと思います。
 在来線特急の話ですが、富山県内区間で在来線特急の運行が維持されるかどうか、まだわかりません。ただ、仮に在来線特急の運行が維持されたとしても、経営分離と県境分離のせいでその運賃・特急料金は値上がりしてしまいます。そのようなことになると、やはり問題があります。富山県はいま県内の人口が減っていますから、交流人口を増やそうとしています。県外からお客さんに来てもらって、観光などを活性化させて、経済を盛り上げようと色々施策をやっておられます。しかし、運賃値上げしてお客さんが来るようになるのでしょうか。そのあたりの整合性がとれてないのではないかと思います。割引なりなんなりという手もあるのかもしれませんが、その辺の展望はまだ示されてはおりません。
 いずれにせよ、やたらと初乗りが発生して運賃が上がるというのは、利用者の立場からすれば好ましくはないわけです。したがって、例えば各県単独の会社にして運賃表を分離しようとか、JRとは運賃別建てにしますよというような発想は、所詮自治体の都合なんであって、利用者の立場からこんな発想が出てくるはずがない。にもかかわらず不思議なことにそのような発想が行政から出てくる。従って、「自治体は本当に利用者の立場に立って計画を立ててくれているのか。」という点が、大きな疑問として浮かび上がってくるわけです。いま、多くの先進国の大都市圏に行くと、だいたいゾーン運賃制で、会社をまたいで乗っても、運賃通算してくれます。東京都ですら、都営地下化鉄と東京メトロとの間の垣根をはずそうとなどと議論がされているというのに、我が富山県ではわざわざ垣根を作って分けようとしておられるのです。
 運賃が上がるということに関して言えば、非常に気になるのは他の交通機関との競合という点です。並行在来線がその経営を維持していくためには当然お客さんに乗ってもらって、収益をあげていかなければなりません。収益を上げていかなきゃいけない、たくさんお客さんに乗ってもらわなきゃいけないという一方で、運賃を上げて本当にお客さんは乗ってくれるのかという問題が1つ大きい課題としてあります。とはいえ、例えばこの地域の交通を独占的に並行在来線が担っているのであれば、多少運賃を上げてもお客さんは逃げていかないかもしれません。しかし残念ながら、独占的に担っているわけではない。
 一番の強敵は自家用車です。ただでさえ自家用車に顧客をとられているというのに、ここで運賃を上げて本当に大丈夫なのかという点が、大きい問題でしょう。金払ってでも速く行きたいという人がいるかもしれません。でも、そういう人は新幹線に乗ってしまいます。並行在来線には乗らないでしょう。それでは、自家用車も持ってないし、金もないよという人たちはどうするか。有力な競争相手としては、高速バスが存在します。回数券なら、富山から750円で金沢まで行くことができます。私の学生も高速バス利用ばかりですよ。そうなってきますと、並行在来線が非常に中途半端な立場におかれることが恐れられるわけです。たいして早くもないし、たいして安くもない。そのような状態では、この先、路線の維持が本当に可能なのかどうか、ちょっと心配になってまいります。以前、肥薩おれんじ鉄道の社長さんが−いまは転職されて、新潟の並行在来線第三セクター会社の社長になられましたが−こんなことをおっしゃっていました。第三セクター会社による並行在来線が開業した後、良いことを何一つ利用者にアピールできない。運賃は上がるし、電車はディーゼルになるしということで、利用者に対して「こんなに良くなったよということを何一つ提示できないんで、住民の支持がなかなか得られない。」というような話をされていました。富山県でもその轍を踏みかねないと、私は危惧をしています。
 在来線特急の乗り入れに関しては今、色々県の方でも努力をされてJRに打診などされておられるようです。過去に、並行在来線において、JRから在来線特急が乗り入れることで在来線特急の運行が維持された例があったかと申しますと、夜行列車に関してはありました。しなの鉄道では在来線特急は全廃、肥薩おれんじ鉄道でも同様ですが、いわて銀河鉄道と青い森鉄道で、夜行列車(北斗星)の運行だけが維持されたわけです。そういうことを考え合わせるとですね、先の展望は楽観視できません。もう少し、JRから在来線特急が乗り入れる対象路線の範囲を広げて、整備新幹線の開業に基づいて経営分離された並行在来線だけを考えるのではなく、例えば赤字83線の時にJRから経営分離されて第三セクターによる路線になったところで引き続き在来線特急が走っている例はないのかといえば、若干あります。例えば、伊勢鉄道などです。残念ながら、新幹線がらみで経営分離されたところでは、夜行列車以外例がありません。
 しかしながら、この件に関しては、県民の声は結構切実です。前の画面に示したのは、去年、私どもの会で行った沿線住民に対するアンケートの結果です。この赤い丸を付けている部分に注目をして下さい。これは、「サンダーバード」と「しらさぎ」には、これまで通り富山まで運行してほしいという人の割合を示したものです。基本的に、大半の人がこれまで通り富山まで運行されることを望んでいるんですね。とはいえ、そもそも経営分離自体がいやだという人のなかで、相変わらず在来線特急には来てほしいという人が多いというのは、まあ、そりゃそうだろうということになります。確かに、経営分離反対の人の90%は、変わらず在来線特急の富山県内での運行は維持されるべきだと答えています。ただ注目されるべきなのは、「経営分離することに反対しないけれども。」という言う人においても、「しらさぎ」や「サンダーバード」の富山県内での運行は維持されるべきだという人の数が非常に多いんです。例えば、「経営分離することに反対はしないけれども、県や市の負担は軽くなるようにするべきだ」と答えた人が、大体150人ばかりいたんですが、そのうち135人が「『しらさぎ』と『サンダーバード』の富山県内までの運行は維持されるべきだ。」と答えてるわけです。要は、経営分離への賛否を超えて、乗り入れ等による在来線特急の運行維持が求められているのです。
 だから県民においては、この点に関して非常に切実な要望をもっていると、私は感じています。県の対応としては、今回の素案を読む限り、「JRにちょっと働きかけてみますよ。」ぐらいの印象しか私は受けませんでした。経営分離とか、そういうものを超えて、富山県内での在来線特急の運行維持が求められているんだというところを県には認識してもらって、より真剣な働きかけをJRにしてもらいたいと考えております。実際のところ、現在、富山駅を朝の4時半に出る大阪行き「サンダーバード」がありますが、その列車が金沢始発となって金沢から5時ぐらいに出るとすれば、それに接続する新幹線を富山から金沢まで走らせてくれるのだろうかとか、そういったところもちょっと疑問です。
 まとめとしまして、一つ問題提起をしておきたいと思います。このように、例えば運賃値上げするとか、あるいは県境分離をするというような発想が出てくるのは、結局のところ、県が利用者の視点を重視していないためであると私は考えています。利用者の視点が重視されているならば、なかなか考えられるはずがないのです。
 とはいえ実際のところ、「ない袖は振れないのだから、収入が少ないところへ、運賃を上げないようにするなどもってのほかだ。」という発想もあろうかと思います。今回の素案をよくよく読んでみますと、「受益者負担」という言葉が出てまいりました。受益者負担の原則から言えば、確かに利用者が、利用したサービスに必要なコストを負担すべきだということにはなろうかと思います。従って、それに見合った運賃を、ということになるのでしょう。しかしながら、ここで考えなおしていただきたいのは、先ほど奥村先生も触れられましたが、社会的に必要な投資という範疇も存在するという点です。道路や空港、港湾などは、その設備の維持や管理にかかるコストのすべてを利用者が負担しているわけではありません。例えば港湾の維持費を、船会社や港湾運送業者がすべて負担しているというわけではないのです。ところが鉄道においてのみ、受益者負担が100%実現されなければならんといわんばかりに、利用者に維持や管理のコストを全て押し付けるという施策がまかり通っているとすれば、逆におかしいのではないでしょうか。県は、この点をふまえて、設備の維持管理に伴うコストの全てを利用者に押し付けるような施策を避けるべきです。
 その解決策として、よく話題に取り上げられるのが上下分離という方策ですが、今回の素案で、富山県は上下一体という方針を打ち出されました。ただ、先般、県の委員会で配布された資料の一番後ろを見ますと、「上下一体とはいえど、いろんなパターンがあるよ。」という具合で図が記載されています。要するに、設備の維持管理に関して公的な資金をどのレベルまで投入をするのか、設備投資のレベルまで投入するか、あるいは維持管理のレベルまで投入するか、とか言うような形で、いくつか考え方のパターンが出ていました。確かに上下分離と申しましても、所有権そのものを分離する考え方もあれば、会計上のレベルでのみ分離をするという考え方もあろうかと思います。もし所有権のレベルで分離することが、なんらかの事情で躊躇されるのであるならば、せめて会計上の分離までは検討すべきではないかと私は考えます。その際に、県境分離という点に関しても見直しをしてもらいたい。少なくとも運賃表の統一は必要だろうと私は考えております。利用者の視点に立った素案のつくり直しがとどのつまりは必要だということです。以上で私のお話を終ります。どうもありがとうございました。
 
司 会 続きまして、JR貨物社員の太田茂雄さんからのお話です。
 
 
太田茂雄 (JR貨物社員)
 どうも、みなさん、こんにちは。JR貨物社員の太田です。私は、JR貨物の社員という立場から、第3セクター化で施設や設備等、貨物輸送がどうなるのかというのを社員の立場から考えていきたいと思います。まず、施設設備と貨物輸送の現状ということで、富山県内の施設に限ってお話ししたいと思います。
 まず、組織ですが、JR西日本金沢支社管内がありまして、そのなかで直轄といくつかの地域鉄道部に別れております。そのうち、これは平成21年からの体制ですけれども、現在富山県内の全線は富山地域鉄道部という管轄になっております。その下に、各センターと呼ばれるいわゆる現業機関というのがある形になっています。
 線路ですが、いま言ったように、全線で4つの線があって、合計で176.3キロという営業キロになっています。このなかで北陸線ていうのは、石動からこれは「市振」と書いてありますが、駅は、糸魚川地域鉄道部のもので、市振の手前までっていうところで、一応境界になっていますが、93.3キロあります。
 現在の最高運転速度というのは130キロ、1部120キロということで、これは小杉―呉羽間と東富山―泊間でしたかね、120キロですけども、おおむね130キロという速度で、そのほかの高山線、城端線、氷見線というところは85キロの運転区間です。高山線に限っては富山地域鉄道部は、JR西日本の境界・猪谷というところまでとなっております。城端線、氷見線は全線ということになっております。
 次に駅です。駅は4つの線で47駅あります。そのうち北陸線には19駅ございます。駅が19駅あるんですが、会社側の形態といいますかね、そういうもので、社員配置駅とか業務委託駅とか、こういうふうにありまして、19駅のうちJR西日本の社員がいる駅は8駅です。これは見ていただければわかりますように、石動とか高岡、小杉、富山など、利用者が多い駅を中心に社員を配置していると。そこから少し少ないところや、出入り口が2カ所あるところの一部、高岡とか富山ですね、業務委託駅といって関連会社が業務委託をしてやっております。そのほか簡易委託発売駅とかありまして、無人駅は現在、北陸線には3駅あります。
 車両なんですが、富山運転センターというところがあります。富山駅と東富山駅の間にあります。ここで車両の検査・修繕をおこなっています。検査は期間ごとに定められておりまして、走行実績に応じた検査を実施していますが、電車の場合ですね、仕業検査、交番検査、要部検査、全般検査という段階がありまして、仕業検査は3日から6日の間で、その使用方に応じてですね、特急なら3日間、1日あたりの走行距離が500キロから600キロなら5日間ということで決められておりまして、そういうことを富山運転センター、ほかというのはほかに金沢総合車両所とか福井運転センターとかでやっているということです。その上の交番検査、要部検査、全般検査というのは、富山県では現在やっていません。
 交番検査、これは90日に1回ですが、金沢総合車両条所の乙丸というところで、金沢駅の横にありますよね。そこでやっております。要部検査、全般検査というのは、下の表の書いてある通り、動力装置とか走行装置とかありますが、それを解体の上確認するということで、車体と下の台車を切り離してするもんですから、大がかりな、車体を持ち上げるようなクレーンの特殊な設備や、大きい庫といいますかね、そういう施設が要るといいますから、それは松任工場、旧の松任工場ですね。現在の金沢総合車両所松任で行っています。運転センターでは、今言いましたとおり、電車、それから気動車ですね。ディーゼル機関車の仕業検査ですね、3日から6日間に一度の仕業検査ですね。それと、気動車、ディーゼル機関車の交番検査を担当しています。その他に、車両の留置や整備を行っています。留置は着発線とか電留線とか、こういう留置線がありまして、整備という部分でははたまた車両の清掃から汚物の抜き取り、汚物の処理、消毒作業なんかをやっております。
 運転関係なんですが、これも富山運転センターというところで車両検査、修繕をいいましたが、同時に運転の管理を行っております。富山運転センターというところは、運転士の管理ですね。運転士というのは北陸本線と高山線の運転士ということです。ここの管理・運用を行っています。それと合わせて高山線の車両の運用をセンターでは行っています。センターから派出という枝分かれがありまして、それには富山運転派出と高岡運転派出というのがありまして、富山運転派出は車掌の管理、高岡運転派出では城端線・氷見線の乗務員の管理と車両の運用管理を行っています。
 指令ですが、列車の運行管理する業務です。輸送指令がありまして、そのほかに、貨物や旅客、施設、電力、信号通信などの指令が集まりまして、異常時にはここに輸送指令で情報を収集しながら、関係各所に適切な指示を行うというところがあります。北陸線においては、志賀県近江塩津駅から直江津駅までを金沢指令というところが行っております。富山県内では、富山指令、高岡指令という2つの指令がありまして、富山指令は高山線の富山から猪谷、高岡指令は城端線、氷見線の指令を行っております。
 次に施設ですが、管理を行う施設管理センターと、その作業を行う施設管理室というのがその下にあります。主に業務内容としてみれば、線路を検査する保線作業、それから金沢にあります土木技術センターが管理するトンネルや橋梁などの土木関係の検査を、一部簡単な検査を行っています。
 次に電気ですが、富山電気管理センターというところがありまして、ここが電力、電灯、変電所、通信機器の保守・管理をしています。それから、建築・機械部分の保守管理という部分は、金沢建築区、金沢機関区というところが、富山県の部分も管轄してやっております。
 いま、言いました各施設なんですが、現在社員は669名の社員がおります。
 富山県内の設備ということで、主に地上設備という部分では、変電所が4ヶ所、それからき電区分所が3カ所、橋梁は12カ所、トンネルは4カ所、踏切は130カ所。そのほか架線、軌道、信号や通信設備などがあります。
 保安設備というものはさまざまあるんですが、車両側の代表的なものとしてATSという自動列車停止装置ですね、これがあります。その当該速度の制限カ所や停止限界カ所の手前までに安全に止める機能を持つATSの進化型のSW型が整備されております北陸線。車両には、それよりもう一つ高規格のATS―P型というものが設置されています。そのほかには、踏切保安装置などがあります。
 次に貨物輸送ですが、北陸線の貨物輸送というのは、1日あたり上下で42本現在走っております。運行されている貨物列車というのは、おもに2つの需要がありまして、北陸の輸送需要に対する列車、それから、関西、中国、四国、九州地方から東北、北海道への輸送ルート、輸送需要に対応するという役割を現在持っています。表にも書いてありますが、この2ケタの列車番号の列車、1000代というのは、主に北陸需要の輸送がメインの列車で、3000代、4000代の列車っていうのは、主に西日本から北の地域の長距離列車というふうになって、これだけいま走っております。北陸線を通る貨物列車というのは年間約300万トンの荷物を運んでおりまして、1日に換算しますと、約8300トンですね。で、5トンコンテナというのが一般的な一番小さい箱のコンテナですけども、1日あたりに1660個、10トントラックに換算すると、1日830台分を北陸線を通っているということです。
 その運んでいる荷物というのは、人々の暮らしを支える生活用品ですね、米とかタマネギ、いも、トマト、昆布、これさまざまあるんです。これは今年の4月の某日の調べた積載貨物、このほか時期によっていろんなもの変わったりね、ありますけども、主にこういうような生活用品ですね。それから、経済活動を支える工業製品とか、積み合わせ貨物、これは大手の宅急便とか、ああいう貨物、佐川急便とかヤマト運輸ですね、この貨物なども運んでおります。それから化学品、これは特殊なタンクに詰めて、現在はコンテナに乗せるような形で主に運んでいます。それから、液化天然ガス、これは燃料ですね。運んでいます。
 東日本大震災後の輸送対応ということで、貨物列車が非常に活躍をしましたので、ここで触れておきたいと思います。3月11日に起きた東日本大震災により、東北線は被害を受けて不通となりました。そのために日本海縦貫線、これは北陸線、信越線、羽越線、奥羽線を主に言うんですが、主にというか、それを通した部分を、なんというかね、正式な名称ではありませんが、略称として日本海縦貫線というふうになりますが、これを使った迂回列車というのを計画して、実際にこれだけの列車ですね。表に書いてあるような1日あたり7本ですか、列車が、東北線が開通するまで行われておりました。特にですね、石油列車の運転ということで、震災後に非常に問題となりました、被災地の石油不足に対応するということで、日本海縦貫線から磐越西線、または日本海縦貫から青い森鉄道、そして、IGRいわて銀河鉄道を使った迂回運転ていうことを行いまして、この図にもありますように、根岸というところから運んだんです。通常の運行は、仙台の製油所からJR貨物は東北線を使って、盛岡なり郡山ですね、運んでいます。それから郡山は根岸からも運んでいます。これも東北線を、通常は使っているんですが、仙台の製油所は被害が大きくて使えませんし、そのルートも使えないということで、こういうルートで運んでいました。 輸送量は、ガソリンが1万9300キロリットルとか、全部合わせますと、ガソリン、軽油、灯油、重油、タンクローリー2837台分ということを実績として運んでおります。救援物資の輸送ということで活躍したということで、輸送ルートとして、東北線が使えないので関西方面から新潟の貨物駅、または秋田の貨物駅まで運んで、後は自動車で太平洋側まで運んだというふうなこともしましたし、3月17日から救援物資ということで、被災地の自治体に向けた救援物資は無賃で運びますよということで、実績としてコンテナ199個分を食品や水、寝具などを詰めたものを運んだということです。
 それで、いま地震に対応した鉄道貨物ということで非常に見直されております。東日本大震災で不通となった北の大動脈ですね、これは東京から東北線を通って北海道まで行くルートですね、これ北の大動脈です。駅と言いますと東京でも隅田川駅というのが北の拠点の駅なんですね。それで西にむけた拠点駅というのが東京貨物ターミナルというのがありまして、ここから福岡までが一応、西側の大動脈ということになります。それをですね、東西をつなぐというのが、この日本海縦貫線の役割ということです。この図を見ていただければわかりますが、西から北へ向いて運ぶルートというのは2線あり、距離も日本海縦貫線が短いですよね。実際その東京方面にむけて北へ行こうとすると、現在の列車ダイヤからいいますと、もう貨物列車これ以上増やせないという状況なので、日本海縦貫線が運んでいる年間300万トンというのは、代替えできない貴重な重要な日本海縦貫線という線路ということが言えると思います。そういう部分で、日本の物流ネットワークとして非常に重要なものなんじゃないかなというふうに思いますし、そういうふうに震災に対応した輸送で見直されたと思いますし、鉄道輸送のよさということで大量輸送、定時輸送ということが非常に見直されたんではないかなと思っております。
 また、地球環境問題に対応するということでCO2の排出削減の効果、それから労働力不足とか道路交通問題の解消に果たす役割も期待されているということです。
 第3セクター化による変化や問題点ということで、設備のことでいいますと、1つは運行管理ですね。列車の遅延というものがいろんな状況で発生しますが、それによって新幹線の接続とか、これは第3セクター化による変化ですから、新幹線の接続とか、北陸新幹線のことですよね。JR在来線との接続、それから終着駅から先の接続が図られるかどうか、ここが非常にいまなんともこれわからないところですよね。どうなるのかなあと。考え方によっちゃ、他会社なんで接続なんて関係ないよという考え方にもなるんじゃないかなというところに非常に不安です。
 合わせて貨物列車の運行整理ということで、これが適切に行われなければ輸送力が確保できないということになります。これは非常に貨物の場合は、主要線路とか入れ替え作業、荷役作業の時間の関係とかもありまして、非常に調整が難しいんですよね。空いたからいけるという問題じゃなくて、作業合間をぬって、空いた時間をみつけてそこに列車を入れるという非常に複雑な作業があります。
 あるいは検査体制として富山運転センターの活用をはかることを県は検討していますが、交番検査を行う専用のピット、それから材料倉庫など新たな整備とそれに伴う要員が必要ということです。で、タイヤ検査ですね。車輪が傷がついたり、滑走によって円が削れてちょっと線になるとそれを削るという作業、そういう施設がありません。先ほど言いました要部検査、全般検査というクレーンを使って台車と切り離すような施設も富山県にはありませんので、これを新設するということを考えても非常に大がかりなので、第3セクターとしてはこれは困難じゃないかなと。従って金沢総合車両所に同じ体制として今度は第3セクター化で委託するんじゃないかと考えられます。
 車両の導入なんですが、第3セクターの計画では、1編成2両の新型車導入が検討されている。現在は基本編成3両で、25編成とすれば、75両ですが、これが1編成2両となれば、編成数は同じでも、両数が50になるということで、3分の2程度の定員となることから、非常に朝、夕方の混雑が予想されるということです。その導入にあたって、新製両数とかJRからの譲渡両数と譲渡額など調整・協議次第では多額の投資費用が必要になるということです。
 各管理部門ということで富山県内にはない指令所の設置を新たにしなければいけない、土木、建築、機械という現在金沢にある施設が行っている部門も新たに設置する必要がある。多くの設備を保守・維持するためには多くの費用がかかり大きな負担になるということが考えられます。業務委託、第3セクター開業時に、すべての機能や業務をJRから移管して第3セクターがスタートすることは、その規模とか技術の面から非常に難しいので移管時は、業務委託や出向者の確保などが必要になると考えられます。
 線路使用料でいいますと、北陸線を走行する貨物列車は、本数が多いですから、線路の保守費用は非常に大きくなるということで、現在、線路を保有するJR西日本に対してアボイダブルコストルールというふうな、これはいわゆるJR貨物、国鉄改革によってJR貨物に調整するような措置ですね、これを適用して現在線路使用料というのを払っていますが、現在のすでにある整備新幹線の並行在来線の調整という実態は、そこに鉄道運輸機構が調整金をJR貨物に払って、それをJR貨物が第3セクターに調整金額という線路使用料と合わせて現在払っているということが実態で、今後、10年間で総額1000億円という支援策が、国から計画されておりますが、この制度で並行在来線の運営会社がJR貨物から得る線路使用料が増額されるような算定方法を変更してですね、JR貨物の負担増分は鉄道運輸機構の剰余金を活用して補てんすることとしていますということです。貨物列車の運行ということで、廃線となる区間がなくて、電化が維持され、これは非電化線区用の機関車がすぐには用意できないという理由ですが、電化が維持されること、そして高規格な線路、1級2級3級4級という線路の等級があるんですが、高規格な1級の線路が維持されること、臨時に退避する線がある程度確保されていることが必要なんです。北陸線は、現在は満たされていますが、第3セクター化の計画にも一応、これを変更するようなことは書いてないので、これは一応満たされるんじゃないかなというふうに思っております。
 そのほかですね、JR貨物がJR西日本に委託している高岡駅での入れ替え業務、それから、城端線と氷見線の貨物列車の運転。それから、JR貨物がJR西日本から今度は受託している富山貨物駅の信号業務など、現在行われている受委託の関係がどうなるのかという問題があります。解消となれば、要員とか、体制の変更などの対応が必要になるんじゃないかなというふうに考えます。
 並行在来線の進むべき方向性ということで、まずは並行在来線の経営分離がどうなのかというところで、第3セクター化の変化の問題はこれまでさまざまのべてきましたが、JRが並行在来線の運営を行えば、この問題はすべて発生しないということなんですよね。そういう意味では、JRが新幹線も並行在来線も運営をし続けて、それを、厳しい面もある部分は国が支援するという形が一番いいんじゃないかということで、経営継続・分離に別れる並行在来線と図がありますけども、実際にその整備新幹線の並行在来線の中でも北陸線の高崎―横川間、それから篠ノ井―長野間、ここはJR東日本が継続しておりますし、九州新幹線で言いますと、博多から八代間、それから川内―鹿児島中央駅間、ここはJR九州が継続してやっているという事実もありますし、新幹線の運行と在来線と両方行うということは、JRに確かに経営負担を強いることにもなるということで、国の経営支援が必要となるんじゃないかなという部分もあります。  
 並行在来線は、幹線鉄道としての性格をもっています。貨物鉄道輸送も担っていることを考慮すれば、道路のように鉄路の整備もある程度国の支援、国が主体となって行うという考え方もあるんじゃないかなというふうに思います。経営分離する場合も当然、県の計画なんかでは経営分離当然になっていますので、そういうふうな考え方として、上下分離方式っていうことで2種類ありますよね。上下ですから、上が第3セクターの場合、下が第3セクターの場合と考えられます。上が第3セクターの場合ですね、これは下がどうなるかっていうことなんですが、下は膨大な保守費用がかかりますので、上の第3セクターは保守費用が軽減されますということです。
 北陸線の線路・施設は、さっき言いましたように、高規格な線路、高速で走行しても耐えうるものとなっておりますので、今後もそれと同水準の線路・施設を維持していく必要があるんですね。経営分離後。それを維持する高度な技術力や膨大な費用はというのは、3セク会社には現実的に厳しい負担となるところであります。
 この例でいいますと、のと鉄道がそうですね。これ下は線路がJR西日本、上がのと鉄道なんですけども、線路使用料が払うとかそういう関係はちょっといいのに確認できていないのですけども、資産とすれば線路はJR西日本です。で、保守はのと鉄道が行っています。線路使用料のところはちょっと確認できていないので申し訳ございません。 
 それから青い森鉄道も上下分離で、上が第3セクターで、下は青森県ですよね。その逆、下が第3セクターの場合は、今度はこれは利用者の利便性が維持されるという特徴があります。会社間をまたぐ利用というのは、先ほども、岡本さんも言われましたけども、2重の初乗り運賃が発生すると、利用者にとって大幅な負担増となるということです。運賃値上げも考えられますし、そういう割高感というのは、利用者離れをますます起こしまして、サービス低下、悪循環というふうにつながっていくんじゃないかなと考えます。列車の運行をJRが継続するという、上がJR、下が第3セクターですか。上をJRが継続すれば、在来線も運行上在来線網が維持されるということ、それから運賃もJRの運賃が適用されるということを考えますと、途中下車や有効期間などの制度的な利便性も維持できるということですね。例で言えば、整備新幹線の九州―長崎ルートの並行在来線、これが上がJR九州という予定にはなっています。
 3番目に貨物輸送の重要な幹線としての役割からということで、物流の大動脈、環境問題の対応など、貨物輸送の重要性から国がモーダルシフトの推進策として積極的に並行在来線を維持するための支援が必要であり、法改正も含めた持続的な制度の確立が必要なんですと。先ほどのは10年間で1000億円支援策ということですから、期限がありますので、持続ではないと。新たに持続的な制度の確立が必要なんじゃないかなというふうに思います。
 最後にまとめです。並行在来線というのは、経営継続または分離のいずれにしてもですね、国とJRが支援や協力など運営に大きく係わることが必要なんじゃないかなというふうに思います。第3セクター単独で運営するよりもJRが参加や支援することが安全・安心で利便性が高く、持続していける北陸線となるのではないでしょうか。地域の生活や経済を守るため、また、交通の安全性・利便性を確保するために、新幹線開業後も並行在来線の水準を絶対下げてはなりません。その役割はJRの社会的責任であり、国の責任です。ということで、私の発言を終りたいと思います。
 
司 会 ありがとうございました。ちょっとここで10分間休憩に入りたいと思います。
 
司 会 それでは、シンポジウムを再開します。増川さん。よろしくお願いします。
 
増川利博 (富山県高等学校教職員組合委員長)
 北陸線がJR経営でなくなると、高校生の通学はどうなるかということで少しレポートさせていただきたいと思います。はじめに、並行在来線のJRからの分離、それから第3セクターの経営ということで、先ほど岡本先生からありましたように、試算として一次1.25倍、さらに10年後に1.25倍ということで、1,56倍くらいになるというような例として出されました。これも見て、ちょっと驚いていたわけです。しかし、いまの素案の中では、運賃については言及を避けていると、さらに精査をするんだというようなことになってはおりますけども、他の鉄道なんかも見ても、非常に不安であるということ、私たちも関心を持たざるをえないということであります。便数の減少なども含めて、不安が広がっているということであります。
 それから、長野高教組の委員長に聞いたら、やはり新幹線に伴って、支線の方が非常に不便になって、冬、2カ所で不通になってバスで通っている高校生がいたり、碓氷峠あたりが不通になって高校生が群馬県の私学にバス通しているとか、他人ごとではないなという思いがいたしました。それから、城端線沿線の高校の分会長が、こんな流れがあるなかで不安になって、城端線は大丈夫かということで高岡の鉄道部の方に電話したら、3年ほど前は大丈夫ですと言われ、その人は安心していたんですが、しかし、ご存じのとおり、西日本の総裁が来て、住民の理解、県民の理解があったら、バス通ということも検討したいというような話を2回ほどしたかと思います。そういったことも含めて、非常に不安が広がっているということであります。
 それで、高校生の通学の現状について少し考えてみました。実は、昨日、一昨日と、いくつかの高校にお電話しまして、どこの高校か、よく考えたらわかるかもしれませんが、一応、学校名は伏せながら、そこに書いておきました。北陸線沿線でありますけども、かなり東側の新川の方の高校、JRの駅とはちょっと離れている地鉄もあるところでは30.0%の高校生の利用率でした。それから、これも富山市の東側の郊外の高校でありますが、わかるかもしれませんが、JRの駅から割と近いところ、50.0%。それから、富山市の高校で地鉄の駅も近い、JRからも近い、33.5%。それから富山市のいわゆる進学校だと言ったらわかるかもしれませんが、JRから比較的近いところで30.5%。もう1つは、JRの駅から一定の距離があって、地鉄駅も近い高校は少なく14.8%です。それから富山市の同じ郊外、ちょっと西側で、駅から極めて近い高校で70.5%でした。高山線も含めて利用している子たちが通っています。それから高岡市内、駅からも近いし、JR氷見線からも近い高校ですが、49.5%。そして、西側の田園地帯にある高校、JRの駅から比較的近く、74.4%ということで、この高校の先生はさすがに、「並行在来線は死活問題。訴えてほしい」と言っていました。
 通学との関係でいうと、高校の輪切りの実態を並行して、遠距離通学者が数多くいます。朝日町とか魚津市から富山市内の新学校に行くという生徒も結構います。また、氷見市の県境近くから戸出の高岡南高校まで通っている子もいます。南砺市も、城端あたりから高岡市の高校へ進学校へという形で通っている子もおります。逆に都市部から、いわゆる受験学力の問題で、いなかの方に流れざるを得ない子もやはりいるんですよね。こういう子たちにとっては、家計もかなり厳しいわけですから、運賃1.5倍なんていうことになると、さらに厳しくなってくると思っています。
 それから、私学は一部を除いては富山市、高岡市に集中しているわけで、富山県の場合は、だいたい公立落ちて私学というパターンがあるわけですが、この子たちも、非常に厳しいことになってくるということであります。私学にとっては、ある意味経営に係わる問題でもあろうかと思っております。それから、これは必ずしもJRだけじゃないんですが、氷見あたりでは、朝と夕方2便しかないというバスが結構あります。だから、親が氷見駅まで送るしかない。そういったことも含めて考えると、JRの利便性がなくなったら、本当に厳しいことになってくると思います。
 それから、高校では学校の日課がJRのダイヤに相当左右されます。始業時間とか、それから掃除が終わったら間に合わないといった例もございます。部活動の終了時間、これも最寄りの駅のJRのダイヤに左右されます。ダイヤ改正で、大きな影響を受けるというようなところもございます。私どももかつてはJRに対して、このダイヤなんとかならんかと申し入れたということもございました。特に、夜間の定時制高校に通っている子たちは、9時過ぎの電車に乗り遅れたら11時までない。特に女子高生は、本当に不安であると聞きます。それから、今年非常に雪が多くJRが不通になり、生徒がいつまでたっても来ないというようなことがよくあり、最終的には休校になったというようなことも何回もありました。そういう意味でもJRの状況に学校の運営自体が大きく左右されています。この言葉が正しいのか、保線をする方々の兼任というようなこともあって、JRが雪に弱くなり、高校にとっては非常に厳しくなっています。JRと高校生は密接な関係にあります。
 高教組は、並行在来線問題について高校の先生たちの意識調査をしてみました。昨年、この会が沿線住民に行ったアンケートと同じものを、私たちの定期大会でも実施しました。大会ですから、結構ゆっくり答えてらいました。計122名からいただきました。私たちも並行在来線問題は組合の情報で書いてはいるんですが、必ずしも知っていないですよね。調査結果は簡単に言いますけれど、年齢構成は50代、40代が圧倒的に多いということで駅周辺の調査とはかなり違います。男女構成はほとんど違いません。そして、「JRからの分離について知らない」というのが、教職員の方が沿線住民の方よりも多いということで、関心があるようなないような感じです。「鉄道資産の購入」以下からは、ほとんど駅周辺のものとは変わらないという調査結果であったかなと思っています。4ページのほうの「運賃の値上げ」については、若干やむをえないという人たちが、教員の方が多い。しかし、「県境分離については反対」であるというのはほとんど変わりません。いずれにしても、経営分離では困るし、今までのように継続してほしいというのが切実な思いということで、知らなかった人たちも「えっ」という思いで、非常に不安が広がっているということであります。最後ですが、6ページの方の「その他」にはいっぱい書いていただきました。最初にありますように、「最近の流れは都会に優しく田舎に厳しい行政になっています。JRも同じ流れにのらないようにお願いしたいです」とか、3つ目「在来線はみんなの足だと思います。従来通りの確保と安全を重視してすすめていくことを希望します」など、高校生の足をなんとか守ってほしいというような声が、ずいぶん聞かれたというふうに思っております。2ページの方に戻っていただきたいと思いますけれども、考察ということではありませんが、基本的には沿線住民の方とほとんど変わらない結果になったということは、だいたいこの結果が県民の意見、県民の世論であるということがまず言えるのではないかと思っております。2番目、関心が薄いということにちょっと私たちも驚いたわけですが、情報をしっかり、みなさんに知らせていくということが必要だと思います。3番目、教員としては生徒の通学費が高くなるということ、それから利便性が失われるということに大きな懸念を抱いているというようなものが多かった。
 最後に、私たちのとりくみということであります。1点目に関わって、昨日の土曜日夜の9時ごろに青森高教組に電話したらまだいましたね。震災で必死になって支援しておられるんだと思いますが、ここに「青い森鉄道になって高校生に影響ありましたか」と聞いてみましたら、「いまのところは何も聞いていない」という話でありました。先ほどもありましたように、上下分離方式で、青森県としてもずいぶんこれについては気使った対応をしているということが、青森県のいろんな文書の中でも見られ、そのためにいまのところ影響がないと思っております。岩手県は組織が違い聞けないんですが、今年3月までは自治体・県の補助で運賃を維持してきております。その後もそうなるのではないかと思いますが、やはり極力高校生に影響のないように努力をしていただきたいということであります。県として運賃や利便性について、しっかりとした対応をお願いしたいということであります。2点目、「素案」は上下一体方式としていますが、青森のような上下分離として県がしっかりと下の方を見るというようなことではことでないということについては、非常に懸念があります。後で大変なことにならないように、ぜひお願いをしたいということであります。3点目では、「ゆきとどいた教育をすすめる富山の会」として、主には「30人学級実現」などの要求を掲げて2万〜3万、多いときは9万ほどの署名を集め、毎年議会議長さんを通して議会の方に出させていただいている署名がございますが、そのなかに、「新幹線開業に伴い、高校生の通学に支障をきたすことがないようにしてください」という項目を2年間入れました、全会一致で採択していただいています。私たちもこの議決の重みを十分に生かしていきたいと思っていますし、議会にも大きな期待をかけております。あとは必要に応じて県教委などにも要請したり、署名したりというようなこと、それから何よりも組合員にしっかりと、情報を伝えるということが、大事かなと思っております。雑ぱくでありましたが、以上で私の発表とさせていただきます。
 
司会 どうもありがとうございました。それでは最後の報告に入りますが、武山先生にお願いします。
 
武山良三 (富山大学芸術文化学部教授) 
 少しいままでの意見とは違うような観点からお話します。並行在来線が第3セクター鉄道になった場合にどうなるのかといったことが議論されています。しかし、この3セク化で、どういうような利用目的が考えられるかが議論されていますが、デザイン的な視点からいきますと、これは逆じゃないか。利用目的があって、そこで初めてその手段としての公共交通としての整備指針が出てきます。
 その利用目的は、県民の活動スタイル、それからの生活がどうあるべきか、といったところから生まれてきます。さらに、それは地域の目指すべきビジョン、これがあって初めてその流れができる。そこでビジョンが必要だと言われるんですが、どのようなビジョンかと言われると、ほとんどその提案がなされていません。
 都市に生活しているうえで、行動したい内容・目的は、労働・健康・消費・学習などになります。農業があり、工場があり、サービス産業がある。いろいろ考えていくと、これだけそろっている県というのは珍しい。こういったものを統合し、富山県の魅力をつくっていくとことに、一つの軸足を見出してください。
 並行在来線と新幹線ですが、たとえJRが維持しても、今後、存続が非常に難しいレベルのものであることを、認識する必要があると思います。いまのままの都市の構造のように、駅前に百貨店があって、それを結んで鉄道があるといったような構造を離れなきゃいけない。どうまちの構造をつくっていくかが問われていると思います。
 日本は、公共交通が発達した国ですが、新幹線以外は低下の一途です。しかし、富山県ぐらいの規模で旧来の鉄道線とLRTをうまくハイブリッドするというようなものが、もし確立できれば、これは諸外国への輸出できるような品目になりえます。もっと何か前向きの議論をしていただきたいなと思うわけです。
 公共交通の整備指針が、まずありきではなくて、目指すべき都市のビジョンをつくり、そこをめざして、公共交通のあり方をみなさんと議論していけたらなと思います。
 (武山先生は、いろいろな事例を交えお話しされたものを事務局の責任で要旨としました)
 
司 会 今日のシンポジウムの予定終了時間、4時半頃というふうにしておりましたので、あとわずかな時間しかなくなりました。しかし、このシンポジウムはですね、県民の討論の場を作るということを目標にしてやってまいりましたので、短い時間ですが、みなさんの意見などをですね、発言していただければありがたいと思います。
 今日のシンポジウムにはですね、石川県、それから新潟県から複数でおいでですので、できたら、新潟、石川の方からも発言していただければありがたいとおもいます。どなたからでも結構ですが、どうぞ、手を挙げてください。
 時間があまりないもんですから、発言したい人はみんな手をあげてくれませんか。まず、2人。じゃあ、締め切るわけではございませんけれど、まずお2人に発言していただきたいと思います。それでは最初に手をあげていただきました方。
 
Aさん
 私の施設(お年寄りの施設)ではですね、経営を効率化するために給食は外部委託をしております。本当に残念なことですね。本来をいえば、そういうことのない、きちんとした、統一したシステムで給食を行うべきですけれども、そういうところに追い込まれています。そして、外部委託した人たちは、一生懸命に注意して給食していると思いますけれども、不幸にして食中毒が起きたということは、外部委託の職員がやはり、労働条件があまりよくない。気をつけていてもついミスを犯すということになっているんじゃないかと思います。そういうことを思うと、富山県の介護、医療、教育、いろんな分野でですね、新幹線に対する県民負担のあまりにも膨大さのしわ寄せがね、あらわれているんじゃないかということを憂いてなりません。そういうことを思うとですね、ぼくはですね、いま周りの人に聞くとですね、いまは新幹線を考える時期ではないんじゃないか、つまり、東日本大震災が起きてた時、国民をあげてですね、救援活動に全力をあげるべきときに、そういう時にですね、膨大な資金を新幹線にかけるというのは、少し先延ばしたらどうかなという意見をよく聞きます。ぼくはそれは当を得たことであって、しばらく凍結するということをですね、在来交通をよくする課題の1つとしてもですね、考えていただけたらと思います。以上です。
 
Bさん
 金沢の交通を考える市民会議に参加しておりますBと申します。最初に奥村さんの方からですね、北陸での連携が必要であるという話をされたんですけれども、例えば電力にしても、鉄道にしても、農政局にしても、国土交通省にしてもですね、当たり前のように北陸地方建設局とか、そういうのがあるわけですよね。ですから、国が何かするときには北陸という圏域で一回、まず押さえてみるというか、そういう視点が必要だと思うんです。国のレベルからすぐ県のレベルに飛ぶというのも、やっぱりすべてがそれではおさまらないんじゃないかなという気がします。 後、まちづくりはよく、よそ者、バカ者、若者、女性という言い方をするんですけど、私はよそ者ということできょう発言させてもらったかと思うんですが、若者とか女性とかですね、そういった人の意見をもっと取り込めるような、そういう進め方も、金沢の方ではもっとやっていきたいなと思います。以上です。
 
司 会 他にございませんか。どうぞ。
 
Cさん
 新潟のCといいます。武山先生の話は、カルチャーショックでした。あとはだいたい、そういうことを言う人だなあと思って話を聞いておりました(笑)。新潟なんですけど、昨年、頭の方を金づちでがつんとたたかれるようなことを泉田知事さんはやってくれまして、かたっぽでは11道府県知事の国土交通省に対する要請書にはサインをしておきながら、また、5県協議にも参加しておきながら、突然、何にも展望もなし、何にも会社の設立もなしで会社立ち上げましてね、第3セクターの会社、社長さんだけ、先ほどどなたかおっしゃいましたが、肥薩おれんじ鉄道の社長さんを社長に据えたと。これは何かといいますと、あんまり5県共闘がやかましく言うので、早速新潟県から立ち上げて、うるさいやつはみんなそこへもっていく話をせえというやり方が、みえみえ。これが1点です。2つ目のショックは、第3セクター立ち上げますと同時に、信越線の一括在位譲渡、これ秘密でやっちゃいました。これわかったのは昨年7月の末なんですが、ただちに新潟県の連絡会議でもって、県の公開条例にもとづく公開を何回も要請しましたんですが、これもいろいろ難癖つきまして、今現在、内容については把握されない。ただ一括、在位のままでもって譲渡されたと。信越線が全線。ですから、非常に運動にとっては頭を5寸釘で脳天をぶちぬかれたような感じで、昨年の、黒姫での会議でもかなり各県の方にショックを与えたんだろうと思っております。で、実はですね、3.11の震災以降、2回にわたって、4月の25日と5月の13日、県に要請行動を行いました。これ、4月の25日については、県の交通対策部、それから、5月の13日については県の災害対策室長が対応いたしました。で、何をやったかといいますと、長い話でごめんなさい。何をやったかといいますと、要するに第3セクターでは、こういう大災害や大事故が起きたらだめだろうと。現実、三陸鉄道でも180億円の災害費、国が1割もつといったって18億円です。これも三陸鉄道でもって修復できるわけないわけですから、この部分を強く推して、さすがに、この2人の県の責任ある立場の人、答弁できませんでした。どうすんのやと。そしたら結論として、国の災害対策方針、ならびに県の対策方針が整い次第そういう対応をとるということで逃げましたが、むしろ対策室長の方が深刻でありまして、やはり原発なんですね。で、信越線の柏崎―青海川間がすぐ目の前が原発でありますから、国の動脈がぶっつりやられるとわかっているわけです。数キロです。国のその対策についてもかなり深刻な部分を言っておりまして、こういったことでもってですね。第3セクターでもって果たして、本当にただ交通を守れるばかりじゃなくて、安心・安全という言葉がありましたけれども、そういう災害に対してもですね、やはり第3セクターでいいのかと、逆に言えば、われわれはいま並行在来線ていう狭い形での、失礼、特定の枠の中での運動でありますけども、こういう災害・事故に対しての部分で言えば、今現在なっているいわゆる第3セクターの地域の方と手を結んでですね、いわゆる国に責任をもった形での運行対策を求められる運動ができるんじゃないかな、ということでもって、たたかいの領域が広がる展望ができたんで、今年はまたこの部分で頑張りたいなと思って、発言にかえます。長くなってごめんなさい。
 一分間だけコマーシャルです。NHK、今朝の、朝の4時5分から、山形のフラワー鉄道の野村社長さんが、苦労話を45分までやっていました。そして、その第2段が明日の朝の4時5分、NHKのラジオ第一、山形のフラワー鉄道の野村社長さんがずっと話してくれる。これ、苦労話がとっても聞きごたえがありますので、どうぞ。
 
司 会 ほかにありませんか。どうぞ。
 
Dさん
 いま、富山県人ですけども富山にすんでから2年ぐらいたちます。ちょっと心配なのはですね、新幹線に対する期待というか、関心が、私の目から見たら富山の人たちはちょっと少ないんじゃないかと思う。というのは、あきらめムードがあるんですね。新幹線は金沢だと。だいたいこういうのって、金沢行き北陸線、富山という名前は出ないと。それから、しらさぎ、サンダーバード、これが北陸線から切られたら、金沢行きになって、その支線の富山行きなんかは(?)になくなる。新幹線開通する日が富山の沈没する日だという、ことをいうことを言う人さえあるんです。これは、富山県は、新幹線はミスター新幹線という知事さんがいらっしゃって、強引に持ってきましたけれども、これを(?)そのなかにとじ込んでいくためには、大変な努力がいると思います。もう出来上がってしまったと思います。富山県の。組織として、みなさんひとつ、大いにがんばっていただいて、少しでも実現できるように頑張ってほしいと思います。それだけです。
 
司 会 ほかにございませんか。
 
Eさん
 県会議員の〇〇です。JR西日本の佐々木社長さんが、何度か記者会見のたびにですね、いろいろなことをおっしゃって、われわれ肝をつぶしたりですね、確認したりしているんですが、昨年の12月3日だったんですかね、東京の記者会見でね、おっしゃいまして、一般論として並行在来でない枝線等を含めてですね、地方の鉄道路線については、JRは引き続き経営を受け持つんだけれども、やはり経営である以上は合理化というものは非常に重要だと。バス路線への転換も含めて地元とですね、いわゆる鉄道が運行できるように協議していきたいってことを、12月に言ったんですね。去年ね。それをですね、北日本新聞は、城端線、氷見線廃止かと。こう報道したわけですね。これは大変だということで確認をしたと。佐々木社長、なに言ったんですかと言ったら、私は一般論をいいましたと。城端線、氷見線ていうことは一言も言っていないと。いうことであって、城端線、氷見線は引き続きJR西日本が経営しますよと。だけど、経営者としてですね、合理的な経営をはかることは当然のことであると。地元に協力をしていただいて、なんとか成り立つようにしていきたいという話だったんですね。それ以降は一つも話が、いま6月までないんですけれども、不安があることは事実と、こんなふうに思っています。ただ、JR西日本の佐々木社長さんは、城端線、氷見線をあげてですね、地元の理解でおえてバス路線化ということは自分は言っていないということなんで、若干こういうことはささやかれているかもしれませんけども、非常に微妙なことだなとこんなふうに思っています。ただ、この段にきまして、いろいろととですね、輸送密度もどんどん下がってきていますし、地域が一生懸命何かをやらないとですね、JR西本としても厳しい情勢は、刻々ときているんだろうなと、こんなふうに思いますけれども、ぜひともですね、JR側からこんなふうに言っているというふうには、できるだけ文字で書いてほしくないなと、こんなふうに思いますので、その点だけ一言言っておきます。
 
司 会 ちょうど時間になったのですが・・・、どうぞ
 
Fさん
 JR入善駅を守る連絡会から来たんですけども、最初の方のですね、奥村先生のお話のなかにありました、平成2年のですね、政府与党の申し合わせ、それを富山県も同意したんだと。だから、第3セクターに行く方向に来てるんだというようにおっしゃってましたけども、それを見直しをする必要もあるんじゃないかということを先生おっしゃっていましたんですね。そういうところを、やはり基本からですね、やっぱり公共交通機関ですので、人間がですね、会社に行くとか、それから学生が学校に行くとか、また普通にいろんな社会生活するというときには、自分で自由なところに移動するということは、その基本的人権の一つでもあるわけですよね。それに、このJRというものが関与しているということであれば、やはりそういうところ、JRとしてのですね、社会的使命というのはあると思います。それと、鉄道事業の方にはですね、こういうふうに書いてあるわけですよね。鉄道事業の第1条を見ますと、目的ということでね、この法律は鉄道事業等の運営を適正かつ合理的なものとすることにより、次にですね、運送の安全を確保し、鉄道などの利用者の利益を保護するとともに、鉄道事業等の 健全な発展を図り、もって公共の福祉を増進すること。となっています。
 それから、裁判所のこの法律の解釈をどういうふうに裁判所は解釈しているかというと、鉄道事業が、国民の日常生活及び経済活動に必要不可欠な役割を担っていることにかんがみ、輸送の安全と安定的かつ継続的な輸送の提供を確保することを目的としてうんぬんと。こういうように裁判所は解釈しているわけです。ですから、鉄道事業というものはそういうものであるということを、もう1度原点に戻っていただいてですね、県の方の平成2年のその政府与党の合意に、その時は確か、前の、前の前の知事さんでしたかね、先ほどおっしゃったように、新幹線知事とかなんかそんなような形で、強引に新幹線をもってくると。そのためには、なんでも飲むと、第3セクターでもなんでも飲むと、そういう形で新幹線を持ってきたと思うんです。ですけども、それからもう20年もたっているわけですよね。そうすると、やはり世の中も変わっていますし、先ほどおっしゃったように、与党も、政権も変わったわけですから、現時点で、やはり改めてこの政府与党の申し合わせを再検討してですね、どういう形が、県民の、鉄道を利用する立場での県民の生活にどういうふうな形が一番いいのかっていうことを、もちろんやっぱり原点に返って考えてみたらいかがかなというふうに思いますので、よろしくお願いします。
 
司 会
 時間になりましたので、きょうはこれで終わりたいと思います。このシンポジウムは、シンポジウムとして一つの結論をまとめるということはいたしません。お互いに学びながらですね、次のアクションをお互いに起こしていくというふうにしていきたいというふうに思いますので、みなさん、きょうは学ばれることがあったのではないかと思います。私たちの会とすればですね、今回6回目ですが、かなり情勢を見ながら、続けてやっていきたいと思っております。また、みなさんのところへこの会への入会の申込書を入れておきましたので、会費なしの会って、ちょっと変わった会ですけども、できたらぜひ書いていただければありがたいと思います。今日はどうもありがとうございました。