北陸新幹線の開業で 北陸本線は どうなる どうする Part5
シンポジウム JRに期待される役割は?
2010年6月13日 富山市
 
●塩原達雄(公共交通をよくする富山の会・世話人)
 ただいまから北陸新幹線の開業で 北陸本線は どうなる どうする Part5 シンポジウムJRに期待される役割は? を始めさせていただきます。
 今日のシンポジウムの進行役として、公共交通をよくする富山会の代表世話人で、富山大学の名誉教授である奥村義雄さんを紹介いたします。奥村先生よろしくお願いします。
 
●奥村義雄(富山大学名誉教授・公共交通をよくする富山の会・代表世話人)
 今日は、日曜日で何かとお忙しいことと思います。そのなかをこの公共交通をよくする富山の会のシンポジウムにお集まりいただきまして、どうもありがとうございます。
 新幹線につきましては、つい先日の新聞報道にもありましたように、平成26年度末までの開業を目指して、富山県内では、全区間での工事着工が終了しました。財界や経済界、あるいは行政の方では、新幹線が開通いたしますと、富山から東京まで最速で2時間7分で行けるというので、それが地域の発展や産業の発展にバラ色の幻想を、これはあえて幻想というのですけれども、持ったようないろんな記事が載っています。ところが、本来の問題は、並行在来線、あるいは氷見線、城端線など枝線をめぐる問題が、これからの緊急の問題として、われわれもより一層強力に取り組んでいかなければならない問題として、出てきているように思います。
 並行在来線につきましては、全国でそれぞれの地域で新幹線が開通するとともに、多くの並行在来線をめぐる問題があるわけですけれども、どれもほとんど赤字を出しているんですね。たとえば、赤字が一番少ない青い森鉄道、岩手から青森にかけてですね、これで2008年度の累積赤字が1億7千万円。赤字がもっとも大きな肥薩オレンジ鉄道は、これは九州ですね、赤字が8億円に達しているんです。こういうふうに、JRの経営から分離されて、第3セクター化されたいわゆる並行在来線の運営というのは大変困難な状況になっています。たんに経済的に採算が合わないというだけではなくて、北信越の人々の生活にも、果たして生活が便利になっているのか、安全になっているのか、産業が発展して、文化がそれぞれの地域で、発展していっているのか、というふうにみてみますと、決してそうは言えないんですね。むしろ、そうじゃないケースの方が多く見受けられるわけです。
 並行在来線については、去年の旧政府・与党間の合意では、新幹線が開業されると、並行在来線の経営はJRから分離されるというのが基本路線としてこれまで進められてきたわけですね。でもそれが、新しい政権、民主党を中心にした新しい政権が発足して、その以前の旧政府・与党合意の見直しが、大幅な見直しがすすめられています。再三取り上げられていますので、みなさん御承知だと思いますけれども、JRが、直接に並行在来線の運営・経営にあたってもいいのじゃないか、あるいは、第3セクターにJRがもっと、財政的にも、技術的な面でも、管理的な面でも、大きな役割を果たすべきではないか、県は、実際の財政的な負担をもっと軽減するべきではないか、といったようなことが議論されてきているわけです。
 この間に、当会は、実は昨年の12月に第9回の総会を開きましたが、その総会で、まず一つは富山県、それから各自治体に対して、この並行在来線のあり方について提言を提出する、それから沿線の住民を対象にして、並行在来線の問題を中心にしたアンケート調査を実施する、さらに、これらを踏まえてシンポジウムを開催するというような計画をたてました。
 それで、この提言については、2月に、富山県とか関係機関等に提言が提出されたわけです。そのタイトルですね、「将来も持続可能な並行在来線・北陸線のために、JRの社会的責任と国の役割を求める提言」という提言を出したわけです。その提言については、いくつかの新聞でも、当会がこういう提言を出したということが報道されていましたので、見出しだけ紹介いたしますと、北日本新聞では、「北陸線の運行を、JRが継続を」、それから北陸中日では、「並行在来線経営JRが責任を、市民団体県に提言」、それから富山新聞では、「北陸線の経営JRが責任を、よくする会が提言」、市民団体とかよくする会とあるのは、この会のことなんですけども、それから「朝日」では、「分離予定の北陸線、市民らが県に提言、JRの責任などを求める」、いうようになっています。ですから、この旧政権のもとでの政府・与党合意の見直しというのが社会的な形で広がっていったんです。そして、われわれとしても、それぞれの問題について、これまで以上にしかも具体的な形で検討し、また新たに提言を出していくことが、今、求められているかと思います。
 なお、1つ付け加えておきますと、県、その他への提言については、今回の提言は3回目なんですね。最初は環境にやさしいだとか、あるいはくらしに便利だとか、そういう北陸本線にするためにということで、2002年でしたか、に出しました。それから、2回目は、2006年からだと思いますが、並行在来線がその地域に生活する人々にとっての生活路線として結構重要な役割を果たしている、と同時に貨物鉄道の貨物輸送の大きな動脈としての役割も果たしている、そういう2つの面から提言を出しているわけです。その提言に対する反応なり反響なりについては、また後で、それぞれの今日予定されている報告などでも、触れられるかと思うんですが。
 それからもう1つは、アンケートですね。2つ目のアンケートです。これは、実はいま、事務局の方からいただいたんですが、アンケートの反響といいますか、これは6月11日付ですけれども、読売新聞にこういう大きな見出しで出ています。「JRは在来線運営というのが59%。新幹線問題で住民アンケート」。住民アンケートというのは、当会が住民を対象にして行ったアンケートということですけれども、このアンケートについては、最初の岡本さんの報告で詳しく話されます。アンケート結果を紹介してもらい、また分析してもらって、そこから何を汲み取っていくのかということを考えて行きたいと思います。
 それから3つ目のシンポジウムですが、これは用意してもらったチラシにもありますように、「北陸新幹線の開業で北陸本線はどうなる、どうする」、一体どうなるのか、どうすればいいのか、どうしなければならないのかというタイトルでですね、5回目のシンポジウムであります。
 去年は、県境分離の問題を中心にして、新潟県や石川県の人たちにも参加してもらって、議論したかと思います。今回は、これまでの4回のシンポジウムも踏まえて、いったいJRにどういう役割を果たすことが期待されているのか。また、JRがそういう役割を果たすように、県内関係機関がどういう働きかけをしなければならないのか、それからわれわれ自身が、JRの役割について、地域の公共交通機関の中心になるものとして、どのように自分たちの生活を便利なもの安全なものにしていくか、賑やかな活性的なまちにしていくか、文化も発展させる、そういう立場から見て、どういう役割を果たすように求めていかなければならないのか。そういうことについて、議論を深めていきたいということであります。
 そこで今日は、4人の方に報告をしていただきます。なにぶん、はじめる前に時間がのびているわけですけれども、終りの時間に制限がありますので、初めの3人、岡本さんと駒見さんと酒井さんの報告が終ったあと、若干休憩をとって、そして4つ目の渡辺さんの報告をして、そのあとに質疑と応答の時間を可能な範囲でとりたいと考えています。よろしくお願いします。
 
●岡本勝規(富山高専教員・公共交通をよくする富山の会・世話人)
 今日は日曜日の最中でございますけれども、ご苦労様でございます。私は、公共交通をよくする会の世話人をしております岡本勝規といいます。富山高等専門学校の国際ビジネス学科というところで教員をしております。
 今回は、先ほど私どもの代表世話人の奥村先生から話がありましたが、この4月から6月、私どもの方で行った沿線住民アンケートについての報告をさせていただきます。まずはアンケートに答えてくださった方々に深く御礼を申し上げる次第です。相当数返ってきまして、これだけ返ってまいりました(アンケート用紙の束を掲げる)。私自身配って参りましたが、まさかこんなにたくさん返して下さるとは思っておりませんでした。ちょっと驚きでございます。それだけ多くの方々が関心をもっておられるということなんでしょう。読んでみますと、もちろん選択式のアンケートなんですが、ところどころ意見を書いて下さっていまして、中にはこの紙に書ききれないから別紙を付けて意見を書いて下さって方もいらっしゃいました。非常に真剣に読んで下さってのかなと感じるところでございます。記して下さった意見を見ますと、多くの方々が、ようするに日常の足がどうなってしまうのかと危惧されています。新幹線という「すごい」ものがくるのはともかくとして、その一方で普段使っている日常交通に不利益が及んでしまうというのは、一体どういう理屈でそうなるのか? という非常に解せない気持ちがにじみ出ている、そういった意見が多くございました。また、北陸本線はかつて国鉄だったのだから国民の財産であったはずだ。にもかかわらず改めて何で買わなければならないのか? という意見もありました。全体的に、新幹線によってどうしてそんなに不利益を受けなきゃいけないのかと、一体どういう仕組みでそうなってしまうのかという、非常にこう、やり場のない不満というものがにじみ出ているといえます。そのような不満を抱えつつも、人それぞれの判断があって、だからこそ受け入れられないという人もいれば、ある程度妥協しようという考え方の人もいます。あるいはメリットとデメリットとバランスで考えたら、メリットの方が大きいかもしれないからデメリットには目をつむるとか。人それぞれそれの考えがあろうかと思います。
 本日報告させていただきますのは、その人それぞれの考えというものが、現在どういったものになっているのかということであります。先ほど代表世話人の奥村先生からお話しがありましたように、実はこのアンケートには割とはっきりとした趣旨がございます。それは何かと申しますと、去年の12月に国土交通大臣がプレゼン画面のように経営分離された並行在来線について、JRが支援しなければならない、JRに譲歩を求めなければならないというような意向を示したんですね。私どもの会では、従前からJRや行政に対して、「JRは十分な責任を果たすべきだ。JRの責任は一体どうなっているんだ。」ということを訴えてきました。同時に国の責任も問うてきたわけですが。そして、ついにここにきて、新政権になったということでもありましょうが、JRの責任というものを国土交通大臣自らが口にするようになったんです。この点では、私どもが今まで訴えてきたことがある程度反映されたということになりますので、前進と言えるかと思います。ただ、そうでありながら、JRのほうは相変わらず従来のスキームの踏襲を主張しております。国土交通大臣がJRの責任を考えなければならないということを言っても、JRが呑まない限りは前へは進みません。そこで、どういったことをJRに呑ませなければならないのか? そのことを考えるべき時が来たのではないか? 会ではそのような考えに至りました。しかも、つい先頃の県の並行在来線対策協議会で、平成24年には並行在来線の運営会社をつくるという方針が示された。ですのでもう時間がありません。早いところ、JRに責任を求める場合の、我々の具体的なスタンスを示さなければならないという時になってきたのです。ようは、これまでJRに対して、JRとしても責任を果たせと言ってきたわけですが、それについては、国土交通大臣が果たさせなきゃいけないということを言った。そこで我々としてはですね、じゃあ、どういう責任を果たさせるのかということを提案するために、沿線住民の方々がJRに対してどのような責任や役割を求めているのかと言うことを調査する必要が出てきたということですね。そして、それに基づいてJRに対して、「こういう責任を果たしなさい」ということを言っていかなければならない。そのような道筋となったわけです。
 さて、これから先はアンケートの内容についての報告です。まず、アンケートの概要をご説明申し上げると同時に、その回収結果と分析をお話しすることになります。まず、概要ですが、概要はスライドでご覧の通りです。質問の内容については、みなさんにお配りした資料の一番最後に実際に配布したアンケート用紙が付いておりますので、そちらの方をご覧下さい。2010年の4月11日から5月6日までの期間に、私どもの会員の方で手分けをして、富山県内の北陸本線の各駅周辺に居住する方々のお家に、アンケート用紙と趣旨説明のビラと封筒、これをワンセットにして直接配付させていただきました。本会受取人払いの封筒を添付して、その封筒を使って返送して下さいという依頼の仕方です。配付した枚数は、トータルで3178枚になりました。もちろん、駅の周りにたくさん住んでいるような地域とあまり住んでいない地域がありますので、各駅ごとに配布した枚数が一定しているわけではありませんが、トータルで3178枚です。回答として寄せられた枚数は、この6月11日の時点で524枚でした。回収率は16・5%になります。概要として回答して下さった方々の年齢構成と性別等をスライドに示します。駅の周りの1戸建て住宅の方々をまわることが多かったものですから、どうしても年齢が高い傾向にあろうかと思います。やはり若年層は集合住宅に住む傾向が強いものですから。それでこういう結果になったのかなと思っております。それから、回答をお寄せ下さった方々がお住まいの市町村の内訳はスライドでご覧のとおりです。基本的には人口の比率とだいたい一致はしておりますが、新川と富山市が多かったという状態です。概要はこんなところです。
 続いて本論です。まず経営分離についての認知に関する回答結果から申し上げます。「北陸本線が新幹線開通後にJRから経営分離されますよ」ということ、正確には「直江津から金沢までの区間が経営分離される予定なんですがこのこと知ってますか」という質問をしました。これに対しての回答はスライドでご覧のとおりです。6割の方が知っていて、知らないと答えた方が3割5分ということです。細かく各市別に見てみますと例えば、高岡市とか富山市においては、まだ4割の方が知らないと答えておられる。もうあと、4年ほどで新幹線がきてしまうのに、4割の方がご存じない。知らないまま、結局ふたを開けてビックリということになったら大変ですから、まだまだアピールしていくところがあるのかと思います。この質問以降では、4つほど「並行在来線が経営分離されたらこんなことが起こると予想されているんですけれども、そのことについてあなたはどう考えます?」というような質問が続きます。
 まず一つめは、鉄道資産を買わなければならなくなると、税金を使って買うことになりますが、どう思います?」という質問。二つめは「並行在来線が経営分離されると、これまで運賃が値上げされるのが常でした。北陸本線でも同様のことが企図されていますがそれについてどう思います?」という質問。三つ目は、経営分離後に並行在来線は各県別に別々の会社で運営される方向ですが、それについてどう思います?」という質問。最後に、よく話題になるんですが、「経営分離後には『特急サンダーバード』や『特急しらさぎ』が富山まで来なくなって、金沢止まりになる予定ですが、それをどう思われます?」という質問です。
 まず最初に質問した「鉄道資産を買わなければいけない」という点ですが、すでに経営分離されたしなの鉄道では、開業時に80億円出してJR東日本から鉄道資産を買いました。その後、結局は減価償却できずにずっと赤字で苦しんでおられるわけです。北陸本線でも当然そういうことは予想されるわけで、そのことについて問うたことになります。これはやはり「JRは鉄道資産を無償譲渡すべきだ」という回答が圧倒的に多いですね。先ほども紹介しましたが意見としてこのようなものも多かったですね。つまり、「かつて国鉄は国民のものだったのに、何で買わなければならないんだ?」という意見です。まったくその通りだと思います。この鉄道資産を買わなければいけないということに対する回答について、少しちょっと分析をしてみたいと思います。このスライドは、「経営分離されることに賛成ですか? 反対ですか?」という問いに対する回答と組み合わせてクロス集計したものです。、この列が「経営分離されることに賛成です」と言う意見、この列が「経営分離に反対しないけど負担を軽減してね」という意見、この列が「経営分離に反対だ」という意見にそれぞれ当てはまります。こうやって見てみますと、経営分離されることに反対だという人は、鉄道資産を買うことについても、「無償にしろ」とか、「減額にさせろ」という意見が多い。これはまあ、当たり前として、「経営分離されることには反対しないけれども負担軽減を」という人も、実は、鉄道資産については「無償でもらうか減額させるべき」という意見が圧倒的に多い。ようするに、経営分離それ自体に反対しない人ですら、鉄道資産の取得を税金で賄うこと疑問を持っておられるわけです。
 運賃と県境分離に関する仕組みについては、「運賃が上がるのはちょっとおかしいだろう」とか、あるいは「県境分離もおかしいんじゃないか」という意見が圧倒的に多い。ここでも経営分離への賛否との関係で先と同様の傾向が見られます。「経営分離に反対だ」いう人が、「運賃が上がるのはおかしい」と答える。これはある程度想定の範囲内でしょうが、「経営分離されることに必ずしも反対しない」という人も、「運賃が上がるのはどうかと思う」と疑問を示されるわけです。現に、「経営分離に賛成です」と回答された人ですら、「運賃値上げには反対だ」と答えられる。県境分離に関しても同様で、経営分離に反対の人が県境分離にも反対するのは当然として、「経営分離されることに反対はしないけれども」という人も、「県境分離なんてちょっとおかしい」と回答されているわけです。
 そして、「特急サンダーバード」と「特急しらさぎ」、そして「特急北越」の問題です。、「特急サンダーバード」と「特急しらさぎ」が金沢止まりになる可能性は極めて高いのですが、それについては、圧倒的な方々が、「富山までの直通を続けてほしい」と要望されている。大阪まで新幹線が開通したら廃止になってもいいけれどという意見はありましたが、とにかくまだ、大阪まで新幹線は開通していないんですから、なんとかして運行してもらわないと困るという意見が大半を占めています。北越に関しては、確かに廃止しないでほしいという意見が一番多いように見えます。ですが、最も多かったのは、無回答。つまり、関心がない、という態度です。経営分離への賛否との関係をクロス集計で見てみましたら、経営分離反対の人が「富山まで直通させろ」というのは当然として、「経営分離には反対しないけれども負担軽減を」という人も、「経営分離することに賛成だ」という人も、「富山までの直通を続けさせるべきだ」との意見が多勢です。ようするに、経営分離に対する姿勢や立場を越えて圧倒的に「直通させてくれないと困る」という意見が多いわけです。地域的な差も見てみましたが、あまり差はなかったです。予想していたのは、例えば、呉西の方は「特急サンダーバード」や「特急しらさぎ」と関わりが強いから、呉西の人は「富山に直通してほしい」というだろう。でも呉東の人はそうではないかもしれない? と思っていたんです。実はそうではなくて、呉東であろうが呉西であろうが、押し並べて直通を望んでおられるということがわかりました。駅別でも分析しましたがそんなに変わりません。どこの駅周辺でも、呉東の駅でも呉西の駅でも直通希望者がほとんどです。比較的直通希望者の割合が少ないのは石動ですが、これは金沢に近いですからだと思われます。どうせ金沢で乗り換えてもいままで変わらないと考えた方がおられるのでしょう。「特急北越」に関しては、ちょっと予想と違いますした。「特急北越」は先ほど言ったように、無回答が非常に目立つ。この無回答を除くと、基本的に経営分離に対する賛否や姿勢を越えてかなりの人が「廃止しないでほしい」と答えておられます。呉東と呉西で地域差があるかなと思っていましたが、やはりありました。呉東のほうが「廃止しないでほしい」という意見が多い。呉西の方々は関係ないと思っているのかもしれませんね。意外なのは、富山市の方々の間でが廃止しないでほしいという意見が非常に多くございました。駅別に傾向を見てみましたが、確かにやや呉西の方が「廃止しないでほしい」という人が少ない傾向にあります。
いよいよメインの質問に対する回答傾向です。経営分離への賛否ですね。「経営分離に賛成ですか、反対ですか」ということですが、6割の方が「新幹線のせいでなぜ経営分離しなければならないのか?」と疑問を示して経営分離に反対しておられます。また、「経営分離をすることに反対はしないけれども、市町村の負担をなるべく軽くしてほしい」という方々が3割くらいです。残りが「経営分離に賛成」の方々です。年代的に差があるのかと思い、その辺をちょっと分析してみました。先ほども言ったように、若年層の回答が少ないというきらいがあるんですが、40代未満、10代から40代のところの傾向を見ますと、例えば若い人たちは、経営分離されることを容認する傾向にあるのかというと、実はそうでもない。若い世代で、経営分離されることを積極的に容認している方はほとんどいなくて、積極的に反対する人、あるいは消極的に容認する人が多勢を占めている。つまり、若年層は車利用ばかりで、並行在来線はどうでもいいと思っているのかというと、必ずしもそういうわけではない。やっぱり残してほしいと思っておられるわけです。それから、経営分離に対する賛否の地域別な差を少し探ってみました。ほとんどの人が、経営分離に反対されていますけれども、中でもとりわけ経営分離に反対されている方々の割合が多い地域は、呉東ですね。呉東の方々のほうがより危機感が強いのかもしれません。駅別にも探ってみました。なぜそのように探ってみたのかといいますと、例えば新幹線ができるような駅周辺では、在来線などどうでもいいという人が多くなるのではと予測したのです。しかし、そういうわけではありませんでした。経営分離そのものに反対する率というのは、だいたいどこの駅も似たり寄ったりでした。
 それで、経営分離に対する賛否を問うたのちに、「ではJRにどんなことを期待されますか?」という、このアンケートの主たる趣旨に入っていくわけです。回答結果によると、JRが果たすべき役割としては、「引き続き並行在来線をJRで経営してくれ」という人がやっぱり一番多いわけです。その次に多い回答が、「第3セクターの経営が安定するまで、経営や運行に関わるべきだ」という意見ですね、この部分、合わせると90%になります。ようするに、回答された方の90%以上が、「JRが並行在来線の経営にもっと関わるべきだ」、「並行在来線の運営に対して積極的に支援してほしい」と望んでおられるわけです。
また、運営体制について、「JRが関わるとして、どのように並行在来線の運営に関わっていくべきなのか?」を問うたところ、6割の方が「JRがいままでどおり経営してほしい」と答えておられます。その次に多い回答が、「JR西日本と貨物、それから自治体が組んで第3セクターで運営していく」と。一方、グラフのこの部分が「上下分離で運営する」という回答を選ばれた方々です。運行はJRが行って施設は公的セクターが受け持つという方式ですね。ですから、「JRは関与しなくていいよ」と回答された方々は、グラフで言えば残りのこの部分だけということになります。したがって非常に、JRの関与を求めている傾向が強いと言えます。
経営分離への賛否と、JRに期待する役割についての回答とをクロス集計してみました。やはり、経営分離に反対されている方は「JRが引き続き並行在来線を経営すべき」と回答される傾向にあります。一方、「経営分離には反対しないけど負担軽減すべき」という方々や、経営分離に賛成している方々は、「第3セクターになってもJRは並行在来線の経営にかかわるべき」という回答が多くなります。いずれにせよ沿線住民が、経営分離に対する賛否の姿勢を乗り越えて、JRに対して、並行在来線経営への積極的な関与を求めていることが明らかです。
 もうそろそろ時間です。続いて、経営分離への賛否と、並行在来線の運営形態についての回答をクロス集計してみました。ここでは、「経営分離されることに反対しないけれども負担軽減を」と答えた方々の傾向に特徴がありました。皆さんJRに関与を求める点では共通しているのですが、運行形態については様々な選択肢を選ばれて、バラける傾向にありました。これはちょっとおもしろいところです。あと、地域別の差ですが、これについては、さほどはっきりとは見いだせませんでした。しかしながらやはり呉東のほうが、よりJRに積極的な関与を求めているように見えます。
 国が果たすべき役割に関しては、「より国が積極的に並行在来線の運営に関与すべきだ」という意見が圧倒的に多いですね。6割の方々が、「国は、並行在来線の運営を引き続きJRで行うよう、JRを指導すべき」という意見ですし、さらに3割の方々が「もっと国は第三セクター鉄道支援を充実させるべき」と回答されています。ですので、9割の方々が国の関与を非常に強く求めておられることになります。これらの回答と経営分への賛否をクロス集計したところ、その結果を見ても、やはり経営分離への賛否の姿勢を乗り越えて、ほとんどの方々が国の関与を積極的に求めているとわかります。
 最後にまとめでございます。結論から言えば、JRには並行在来線の運営で積極的な役割を果たすことが求められています。それが100%JRでやれというのか、あるいは100%でないにしろというのかは意見の幅のあるところです。しかしいずれにせよ、JRがこれまでに果たしてきた役割については不満であるとか、不十分であるとか、もっと関与しなさいということが回答として寄せられています。また、経営分離への賛否を問わず、沿線住民の方々はJRの責任を十分に認識し、問うていると判明しました。国がもっと役割を果たすべきだということも訴えておられます。更に、運賃値上げ、県境分離等々も反対であるということです。ですので、経営分離賛成か反対かとかいうのが賛否ということに終始している場合ではないのです。向こうは賛成派だ、こっちは反対派だというような話ではないわけですね。賛成か反対かというのを越えて、どちらの側にいるにせよ多勢の意見は、「並行在来線の運営をJRがもっとやるべきだ」、それから「国がもっと関与すべきだ」と、「運賃値上げや県境分離はごめんだ」と、この点では一致してるわけです。最初の、新幹線に対する姿勢だけが違っていて、並行在来線についての考えは、沿線住民総じて基本的に一致しているというふうに言えると思います。
このような形で、アンケート結果の傾向が見えてきました。今後、我々の会としては、このアンケート結果に基づいて、JRと国に関与と責任のあり方を問うていきたいと思います。ご静聴ありがとうございました。
 
(司会・奥村義雄)
 どうもありがとうございました。質疑・討論が後にございますけれども、いまの報告で言われたことについて、簡単な質問、例えば、言葉の意味とか、数字を確認したいとかそういうごく簡単な質問がありましたらお願いします。よろしいですか。それでは、続きまして、次に、駒見雅夫さんにお願いします。「貨物運転手から見た北陸線」についてお願いします。
 
●駒見雅夫(JR貨物社員)
 みなさんこんにちは。ただいまご紹介いただいたJR貨物社員の駒見です。所属は関西支社富山機関区運転士で貨物列車の運転をしています。担当区間は、東は新潟県の南長岡駅から、西は福井県の敦賀駅の間です。最高速度で100q/h、最長450mの22両編成、最大積載550トンを1人で運転しています。私は貨物の立場から何点かについて報告したいと思ってます。
 1点目は、北陸線は鉄道貨物輸送の重要な幹線ということです。現在、北陸本線において、貨物列車の運行本数は、1日当たり上り21本、下り21本で、合計42本の定期列車が走っています。
 参考図の1をご参照ください。北陸線で運行されている貨物列車は、主に北陸地域の輸送と関西、中国、四国、九州の西日本地域から東北、北海道地域への輸送ルートという役割があり、後者のほうが主で、その中には北海道の札幌ターミナル駅から九州の福岡ターミナル間2,130キロを38時間で結ぶ日本で一番長い距離を運転する列車もあります。
 富山県における貨物取扱駅は、参考図2のとおり富山貨物駅〔北陸線〕、速星駅〔高山線〕、高岡貨物駅〔氷見線→新湊線〕、二塚駅〔城端線〕、魚津駅〔OSR(オフレールステーション)※OSRとは、レールから離れた貨物駅として設置し、拠点駅との間をトラックにより輸送する施設〕があります。
 富山貨物駅ではE&Sと呼ばれる方式(《エフェクティブアンドスピーディー》効果的で速いという意味で一般的に着発線荷役)で、到着した列車に直接フォークリフトでコンテナを積載する方法をメインで行っています。運んでいる荷物は、生鮮食料品、自主流通米、飲料水といった人々の暮らしの生活物資や、巻取紙、自動車部品、化学工業薬品、特積貨物(トラックなどに乗り換える配送物)などの経済活動を支える産業物質、液化天然ガス(LNG)などの燃料輸送、循環型社会を支える静脈物流と呼ばれる廃棄物輸送も増えています。
 輸送量は、景気の低迷が影響し減っていますが、昨年度の金沢支店実績でいえば年間、年間300万トン、1日当たり約8,300トン、5トントラックに換算すると、1,660個輸送します。10トントラックに換算すると、実に830台分です。北陸本線は日本海側の鉄道輸送として重要な役割を担っており、これは全国一本でつながっているからです。
 二つ目は、鉄道貨物輸送の役割です。貨物の特性は、一度に大量でしかも安全に輸送する点にあります。
 [地球環境問題の対応に期待される役割] 近年、地球温暖化をはじめとする地球環境問題が深刻化するなか、環境負荷の少ない大量輸送(CO2排出量が営業用トラックの約1/7)として、貨物鉄道への期待が高まっており、今後、更なる発展が必要だと思います。
 [労働力確保の役割] 少子高齢化の進展に伴って若年労働者が減少する中で、輸送の省力化と労働力の確保の観点から、運転士一人で10トントラック55台分の貨物を運ぶことができる鉄道貨物輸送の重要性が高まっています。
 [道路交通問題解消に果たす役割] 近年、自動車の保有台数が増加するなか、交通渋滞による経済的・社会的な損失が問題となっています。また、交通事故を減少させることも重要な課題です。北陸地域は、自動車保有台数において全国でもトップクラスであり、その問題解消が重要となってます。先ほども申し上げましたが、昨年度の鉄道貨物輸送で金沢支社の輸送実績は1日当たり8,300トン、10トントラック830台分であり、鉄道貨物輸送が増加するほど問題解消の効果が期待されます。
 [地域に貢献する役割] 鉄道貨物輸送は、地域経済を支える産業物質や地域の生活を支える生活物質などの輸送に大きな役割を果たしていますが、近年、大規模工場の地方進出などに際して輸送手段として選択されるケースが出てきており、地域への企業立地などにおいてもその優位性が期待されます。
 [モーダルシフトの推進] 地球環境、労働力、道路交通、地域などの問題を解決するため、モーダルシフト(貨物輸送をトラックから鉄道や海運などに転換すること)の進展に、国や企業から期待が高まっています。
 3点目ですけれども、列車の安全・安定輸送についてです。
 [さまざまな設備] 安全輸送に必要なことは、運転士の知識や技術も大変大事ですが、安全な設備が整っていることです。列車を運転することは、線路、電車線(架線)、信号機、踏切、通信機器などさまざまな設備が必要ですべて重要なものです。
 最近、気候の変化が激しいなか、特に強風による運転規制が多く、速度規制や列車抑止などで遅れることがたびだびあります。ダイヤが乱れた場合に長大編成の貨物列車を待避させる駅が少なくなったために、運転整理において遅延時分が増し不便だと感じます。
 [設備の維持・管理] 設備を維持・管理し鉄道を運営していくことは多額の費用がかかります。例えばレールの下に敷く枕木は25mで約4,500〜6,000万円もかかります。そのほかトンネル、橋梁などの補修も必要で、莫大な費用の維持費をかけながら安全・安定輸送を確保することが必要になります。
 最後に、北陸線の将来にむけてです。
 [並行在来線経営分離] 整備新幹線開業時に、並行在来線の経営をJRから経営分離するという問題があり、その分離後の運営についていろいろなところで議論されています。北陸線も同様に経営分離という問題があり、第3セクターの可能性があると思います。
 [在来線と新幹線の一体経営が理想] 本当は経営分離せずJRが収益性の高い新幹線と、収益性が厳しいと予想される在来線を一体的に運営すべきと思いますが、沿線自治体が経営分離に同意しているので難しいかもしれません。
 [第3セクターになるとしても一体で] 仮に第3セクターで運営することになっても各県ごとの運営会社ではなく、すべての区間で一体の運営を行うことが安全・安定輸送や貨物列車の運行にとってベターであると考えます。各県ごとでは運行の集中管理などが難しく、各県をまたいで走る列車に対し、異常時などにスムーズな対応ができないかもしれません。
 [JRや国の支援が必要] JR会社に対して運行管理や設備の保守・修繕など多面的に協力を求めることも必要であり、また、モーダルシフトの担い手として貨物列車に対しての公的な位置づけとともに必要な投資を求めることも必要でしょう。そういったことを踏まえ、今後、国やJRに対して支援を求める運動の発展が重要になってくるのではないでしょうか。
 最後に、この公共交通をよくする会のシンポジウムに貨物会社の社員からの発言の機会を与えていただきまして、本当に大変ありがたいなと思っております。4年後ですけれども、これからが重要な運動になってくると私は思っていますんで、みなさんともにいろんな専門的な知識については、いろんな協力をしながら、並行在来線問題をみなさんと考えていきたいと思っております。本当に雑ぱくではありますが、北陸線を、貨物列車を運転している立場での発言を終わります。ありがとうございました。
 
(司会)
 ありがとうございました。簡単な質問がありましたらお願いします。
 
(質問)
 参考図の1を見たら、釧路から福岡までの線だけですが、この線しかいま生きとる線はないわけ?
 
(駒見雅夫)
 これはね、私どもの担当しておる列車がこの線路を走っておるという意味で、これほかにまだ東北線も走っています。
 開場から「わかりました」「はい。はい」の声。
 
(司会)
 ほかどうでしょうか。よろしいですか。じゃあ、どうもごくろうさまでした。続いて酒井久雄さんに、「利便性・快適性の改善などへの提言」として報告をお願いします。
 
●酒井久雄(公共交通をよくする富山の会・世話人)
 きょうは御苦労さまです。公共交通をよくする会の酒井でございます。お手元に、「乗ってみよう、乗ってみたい北陸本線に」というレジュメあると思いますが、これに基づいて報告をさせていただきたいと思います。こんなテーマにしたのは、1カ月ほど前に富山市で路面電車サミットというのがありました。そこでのシンポのなかで「マイカーのこの時代に、どうしたら電車に乗ってもらえるか」のテーマに、「乗ってみよう、乗ってみたい電車にすることではないか」と話された方があります。かつて万葉線を立ち上げた時、中心になって働かれた方で、現在、「ひたちなか海浜鉄道」社長の吉田千秋さんです。当時、減り続けていた万葉線の乗客を増加傾向に導かれた方です。その方がおっしゃったことに、心ひかれまして、こんなテーマにさせていただきました。
私たちは、今年の2月に発表しました、北陸本線・並行在来線の3次の提言のなかで、「より便利で安全、快適な並行在来線、暮らしと地域経済の発展に役立つ鉄道に」、を掲げました。そこで新幹線開業後に新たにスタートする北陸線が、県民により親しまれる鉄道となるために、どんなことが問題になるのかと考えました。
 富山県の交通は、まだまだマイカーが圧倒的です。そんななかでどうしたら鉄道の利用者が増えるのだろうか。あるいはまた、新幹線開業後の北陸本線がどうしたらもっと活性化するのかというこということです。そういう意味で私は県内で、これまで2つのところで、民間会社から3セクに移った事例がございます。その事例との対比で考えてみたいと思います。
 まずライトレールの例です。2006年にJR富山港線が3セクとしてスタートしました。全国的にも注目されております。「乗ってみよう、乗ってみたい」と言う鉄道になっているのかなと思います。それは、運賃の割安感、それと15分間隔の運行、そして、スマートな電車、この3つがあった思います。そういうことから考えて、思うのは、今度の並行在来線をどういう形で運行するのか、県が並行在来線協議会というところでいま検討されているわけですけれども、そのなかで一番気になるのは、125%に運賃値上げをするということが検討されております。運賃値上げによって収支の試算をしています。そういう考えというのは、本当に、いまのマイカー時代にどうなのかと思うわけです。私は市内電車の乗務員をやっていました。事務所の一角には毎日の運賃収入と一年前の運賃収入の対比が掲示されていました。そこで運賃値上げをした年に、その1年前と比べてどうなっていたのか。ほとんど運賃の収入金額が値上げまえとは変わらないんです。これ、なぜか。お客さんが減ったということです。運賃の値上げのときにそのような現象が繰り返されました。そういうことに交通事業者も気付かれ、経営の困難を運賃値上げで解決しようという方法は、最近はほとんど見かけられていないのが現状ではないか。つまり、運賃値上げによって交通事業の経営実績を変えようというのは、マイカーがまだ普及していない半世紀前の発想なんです。ところが、並行在来線の3セク化に関わっては、富山でも石川でも、新潟でも、運賃値上げを前提に計算しなくちゃならないところへ追い込まれています。このことを、作業をしている人達が、運賃値上げでもしなければ収支のつじつまが合わせられないところへ追い込まれているのだと思います。逆に言えばこの経営分離なり、いまの並行在来線のやり方、「政府与党合意のスキーム」が公共交通を発展させようと言う方向と矛盾しているのだと私は思います。
 万葉線も加越能鉄道から3セクとして再出発しました。その時には最低運賃が160円だったんです。それを、第3セクターに移った時には150円に下げました。最高運賃が、高岡から越の方の終点まで、450円だったのを350円に引き下げました。平均で18%運賃を値下げでした。値上げでなしに値下げをしているんです。
 JR時代の富山港線の運賃は140円から200円でした。ライトレールは、それを均一運賃の200円にするということが発表されました。私たち公共交通をよくする会も、そういう値上げということではどうなんだと。しかも、電車は1時間に1本だったんですが、並行してバスも走っていました。バスは、特に65歳以上の方は日中ですと「おでかけ定期」の制度で100円で利用されていました。そうなりますと、高齢者の方は一体どうなるんだということも十分検討してほしいということを申し入れました。結果的にはスタートから一年間は、土・日・際、それから平日でも9時〜16時半までは100円という形で、実質的に割安感の方が皆さんに定着しました。一年後、制度が終った時もまた、私たちは、地域の、豊田の公共交通をよくする会の方々とも共同歩調をとりながら、200円に復帰するのではなしに、特に日中、65歳以上の利用者のことを考えてほしい申し入れ、電車でも「おでかけ定期」のような制度がつくられました。
運賃を値上げして増収、客さんを増やすということは、マイカーの時代には非常に難しいと、私は思います。
 利用者はかえって減ってしまうのではないかと思います。先行事例を見ていきますとそのことへの配慮から、いろんな対策がなされていました。例えば、IJR岩銀河鉄道では、199%通学定期を上げました。こんなことやってもらったら困るということで、沿線自治体の方は基金というものをつくりまして、当初は学生さんは135%の負担増で済むような仕組みをつくりました。それから一戸町というところでは、75歳以上の人には、1回につき100円の共通の商品券を渡すとか、盛岡駅のデパートと買い物券セットの往復乗車券の制度で、実質片道分だけ安くなるとかいうような金額にされていました。そういう、割安感を持っていただけるよう非常に研究されていました。利用者が運賃の値上げで減ることを防ごうとの工夫がなされています。そういう意味では、北陸線の3セク化で運賃値上げによる運営は、見直されるべきだと思います。
 さらに、県別に3セク会社がスタートした場合、県境を超える運賃計算で、初乗り運賃の加算で割高の運賃となります。これは昨年シンポで、岡本先生から詳しくありましたけれども、例えば、高岡から金沢間で現在740円だと思います。これがもし各県で県境分離になると、おそらく800円程度になる。しかも、それに予定されている125%アップを加えると1000円位になるでしょう。これでお客さんが増えるのか、県民から支えられる鉄道となれるのか。「乗ってみよう、乗ってみたいという電車」になるのでしょうか。
また、日中のお客さんをいかに増やすのかっていうことが問題ではないのかと思います。といいますのは、例えばご存知のように、鉄道会社というのは、車両数だとか要員というのは、ラッシュ時に合わせた体制がどうしても必要です。日中もそれをどう活用するのかということが課題だと思うんです。そういう点でいいますと、一般的に地方の鉄道では、乗客の割合は、ほぼ定時券での利用者、つまりラッシュ時に乗るお客さんが7割、日中に乗車券を買って乗るお客さんの割合は3割ぐらいの構成となっています。
 富山の市内電車というのはずっと、どちらかというと黒字の期間が多かったと思います。富山の市内電車お客さんの構成は、定期券の方が4割、普通の切符を買って乗っておられるお客さんが6割でした。つまり日中のお客さんの割合が多い。車両や要員が有効に活用されているわけです。
 ういう対策の一つとしてたとえば、富山市の「お出かけ定期」という制度は非常におもしろい制度ではないかと思います。そういうことによってお年寄が出かけやすくなる。それを利用者、事業者、そして行政の3者が分担して負担しあっています。きたるべく北陸本線の運賃制度でも県、事業者、利用者が協同で、日中の利用者を増やすことが出来ないものでしょうか。
 以前に地方鉄道の方と会ったときに、ライトレール運営体制のことなどの話題では、「いや、うちだってね、線路を富山市でつくってやる、車両も市で買ってやるっていうがなら、どれだけでも、もっといいがにできるがや、騒音や運賃での苦情も寄せられるけど、私鉄は運賃の中でレールも直す、電車も買うんです。ライトレールがうらやましいですよ」と。
 次に、特急「サンダーバード」や「しらさぎ」が金沢止まり、という話もあります。これに対する県民の気持ちは先ほどのアンケートの通りだと思います。都市間交通を考えると、高速道路もあります。通行路料金は無料化の方向へいっています。地球環境や公共交通優先の交通を考えると矛盾を感じていらっしゃる方も多いと思います。マイカーのこの時代、より便利な公共交通、鉄道をと考えた時に、鉄道は乗り換えを強いられる、県境分離で割高の運賃になるとか言っていてよいのでしょうか。JRは、サンダーバードやしらさぎは金沢止まりにするのは、富山や高岡から大阪・名古屋方面の利用者をなんとしても、新幹線に乗せたいという気持ちがあるからではないかと思うんです。いわば、鉄道会社対鉄道会社のお客さんをめぐる争いをしているのではないでしょうか。いまの時代は、JR対「3セク鉄道」が争うという時代ではなく、「マイカー交通」対「公共交通」というそういう対立軸で見る、そんな時代ではないかと思います。お客さん1人の運賃をJRのに入れるのか、それとも第3セクターの会社の方へ入るのかというふうなそういう見方で、乗り換えの不便をつくったり、県境分離で割高運賃にすると、公共交通の利用者が、高速道路をマイカーで、となりはしないでしょうか。この点はぜひJRには公共交通を担う事業者としての大義を期待したいと思うわけです。
 もうひとつは、今度できる新しい鉄道がどういう形で運行するかということについては、住民の意見を反映するようにということで、私たちの提言の中に鉄道委員会の設置を提案しています。県や沿線自治体、交通事業者、交通労働者、専門家などで構成します。マイレールの意識が強調されますが、そのためにも住民の要望や意見を、どう事業運営の中で反映するかということでは大切なことだと思います。
 私は昨年、木曽町というところに、町民から親しまれているコミュニティバスが走っていることを聞き、見学に行ってきました。人口1万8千人、山あいに集落が点在していて、幹線道路から離れ公共交通が利用しづらい地区も多いそうです。かつては民間のバス会社が走っていたのですが、撤退の話がでてきました。最近はバスでも電車でも、地元が反対していても、規制緩和で「廃止の通告」すれば、1年後にはもうやめてもいい、ことになっています。さー大変だということで、みなさんいろいろ相談したそうです。その当時に、4つの町が合併するやさきのことで、このバス問題を最重要課題として「生活交通確保・充実検討会」を発足させ、高校生以上の全住民へのアンケートを行ないました。このアンケートは家族に1枚ではなく、お父ちゃん用、お母ちゃん用、高校生用など、家族全員に届けると言うきめ細かいものでした。高校生は何を求めてるか、お母さんは何を思っているか、お父は何を考えとるがかということが把握できるというものでした。回収率が76%だったそうです。非常に高いですね。それを参考に、問題や課題を見つけ出し、路線やダイヤなどの運行計画が検討されました。
 平成18年運行開始、再び利用者・住民アンケートを行ないました。それまでの「検討会」から「木曽町地域公共交通協議会」に移行させました。この協議会というのは、構成員27名でした。そのうち、9名が公募委員でした。とかくこんな会は、名誉職のような方々で占められることが多いのですが、住民・利用者の委員が三分の一も占めていること、運行に携わっている事業者はもちろん、労働者も参加していることに注目しました。そういうところでいろいろ調査・研究し、対策を立てるというのですから、利用者・住民の意見が反映されやすいのだと思いましした。2年ほどたったらまたアンケートをやっていました。ちなみに、人口1万8千人の町で、発足の年は、1カ月の平均利用者が1万4千800人。その後も増えて20年には1万7千800人までに増えていました。運賃は一律、片道200円でした。
 この運営費用のうちの8割は公の費用です。つまり、みなさんが運賃で払っているのは、2割ぐらいにしかなりません。国の補償、町の補償があってこうなっていました。当時、担当者は事業仕分の対象にされないかと心配しておられました。
新しくなる北陸本線が、県内の基幹交通の役割と、それにむけてのバスなどのアクセスをより充実させ、利用者・住民の足を守り、地域産業をささえ、地球環境に役立つ「乗ってみよう、乗ってみたい鉄道」にするためにこれからも進めたいと思います。
 
(司会)
 ありがとうございました。同じように何か簡単な質問はありませんか。それでは、酒井さん、どうもごくろうさまでした。それでは、ここで3人の報告が終りましたので、少し休憩をとりたいと思います。
 
 それでは、4つ目の「JRの社会的責任と経営」と題して渡辺眞一さんにお願いします。
 
 
●渡辺眞一(公共交通をよくする富山の会・世話人)
 公共交通をよくする富山の会の渡辺です。よろしくお願いいたします。私に与えられた課題は、JRの社会的責任のあり方です。「JRの社会的責任と経営を考える」の「考える」は後からつけたもので、みなさんといっしょに議論できればいいなぁと思って付けました。4つの点についてお話をしたいと思います。
 まず第一ですけれども、並行在来線の経営と北陸新幹線の収支という問題です。
 経営分離といいますけども、実際は、JRが撤退することです。そこで、それを引き受けた各地域の沿線自治体が第3セクター鉄道として運行してきました。先月、前原国土交通大臣、福井県での講演が「福井新聞」に出ているのを読んでいましたら、青森県、岩手県の知事は、“第3セクターを維持できなく、お手上げだ”と言っている。ここまで言ってるんですね。しかしながら、国はどうしていくのか、まだ見えてきません。夏ごろに方向を出すと言ったんですが、まだ方向が出されていません。
 並行在来線の第3セクター鉄道の経営状況を大ざっぱに図式にしてみたんですけれども、並行在来線を引き受けた自治体が税金をつぎ込む、しかしそれでもやっていけなくて運賃を値上げする。さらに新駅を設置するとか、便数を増やすとか、どんどんイベントやっても、なかなかうまくいかない。さらに乗客が減少して赤字が増え、また運賃を値上げしなければならない。こういう悪循環が続いているのがいまの状況なのです。
 こうゆう第3センター鉄道の状況のもと、今年の2月、国の「政府・与党合意」の見直しで発足した整備新幹線問題調整会議が、沿線自治体へのヒアリングを行いました。その時に、富山県はどういうことを言ったかというのが、そこに書いてありますが、「当面、例えば、新幹線の敦賀開業まで、現行のままJRが運営という考えもある」と。「当面」「考えもある」という、控えめな言い方になっていますが、JRがやるべきだと。そこへ踏み込んだわけです。これは大きな変化です。
 しかし、先ほど言いましたように、第3セクター鉄道になった場合のJR資産の譲渡は無償か、有償か、あるいは貨物線路使用料はどうするのか、人員の配置にJRはどんな支援をどうするのか、具体的な方向が見えていません。そういうなかで富山県は先月、第3セクター鉄道に向けて経営専門委員会と、その専門委員を任命して、2012年に運営会社を発足させる、ここまで来たました。
 そこで、北陸新幹線が通って、JRの経営はどうなるのかを図にしました。長野から福井まで北陸新幹線が開業した場合の収支見通しです。左側の図は、北陸新幹線建設促進同盟会のホームページからですが開業10目で、福井までで398億円の収支見通しがあります。でかい額ですよね。富山まで120億、金沢まで229億という金額が出ているんです。25年目になりますと、また、ぐっと引きあがります。注意書きがありまして「税引き後で、並行在来線の受益が含んでいない」と。「並行在来線の受益」とはなんでしょうか。たまたま発見しました福井県商工会議所のホームページに書いてありましたが、10年目のところを見ましたら、福井までの整備新幹線の収益が398億円。北陸新幹線建設促進同盟会のホームページもやはり398億円で、同じ金額です。その上なんですけども、マイナス(ホームページでは「赤字」となっている)で127億。マイナス127億とは何のことでしょう。ここにも注意書きがありまして並行在来線の収支と関連線区の収支の合計とあります。「関連線区」とは何を指すのかは書いてないんですけども、氷見線、城端線など支線を指すとも考えられます。
 この表のように、整備新幹線の収支見通しは398億円に127億円をプラスして525億円。つまり、北陸新幹線の開業でJRは、整備新幹線の収入と、在来線の負担なしという、2つの収益があるという構造ができることになります。
 しかし、考えてみますと、JRは、国鉄「分割・民営化」という政治決定の恩恵を受けてできたんですね。そのJRに政治的な責任はないのかという問題が存在します。
 そこで参考までに聞いていただきたいこのですが、日本の国のインフラ投資額について、日本で鉄道ができた、新橋・横浜間が開業した1872年後から1962年までの国のインフラ投資額のデータを取ってみました。インフラ投資額は、河川・道路・港湾・農林漁業・治山治水、電信電話、それから国鉄、これを全部合わせまして、見てみますと、1880年代から1925年ごろまで、インフラ整備予算の4割から5割が国鉄に投資されている。すごい金額が国鉄に投資されています。1950年代、60年代になっても国鉄には2割です。大変な、莫大な国の、国民の税金がつぎ込まれて来たのが国鉄で、それを引き継いだJRです。ですから、「民営化」になって、過去のことは関係ない、「民営化」ですべて終わりとしていいのかということです。
 さて、JRとステークホルダー(利害関係者)の関係を簡単な図にしました。株主、その次に従業員、左側に関連企業とあります。しかし、JRは利用者がいなければ走らないし、地域社会がなければ、運行できない、行政や地域社会と関わりがあるのですから。JRというのは、民間企業とはいえですね、社会的な存在だということです。ですから、この社会的存在であるJRが、だれのために運営するのかということが問われてきます。
 国鉄「分割・民営化」の時のことを、磯崎叡さん元国鉄総裁ですが、雑誌「世界」の1989年5月号で学者と対談をしているものがあります。これちょっと最近引っ張り出して読んでみたんですが、どういうことを言っておられるかといいますと、「分割・民営化」する前までは、国鉄の鉄道部門だけをとってみると黒字だった。民営化して余計なことを省いてしまえば、黒字でやっていくのはあたりまえだ。そんな対談をしておられます。で、磯崎さんは、国鉄「分割・民営化」の最後の国会の「運輸委員会」で、私に発言させてくれって言うんです。そうすると、ダメだって言われたんですね。「なにをされるかわからないからね。衣食の道が断たれる可能性もあります」と、この雑誌の中で紹介している。そして、とにかく、「中曽根さんの力に押しまくられた」というふうに書いてあります。
 このようにして発足したJRです。JR本州3社は、大手私鉄と比較しても、その路線も、営業規模も資本金も、比べ物にならないくらい大きなものです。質・量ともに民鉄とは性格を異にする役割を担っています。一方、3島会社は政府助成企業として存続をしている。それにJR貨物。だから全国的にみた場合に、民間企業と政府助成企業が共同しながら、各社が全国の鉄道網を形成しているという関係になっております。
 そこで次に紹介したいのは、国鉄の「分割・民営化」の時に、国会が「分割・民営化」に注文をつけた問題です。衆議院と参議院で、1986年11月に、国会「付帯決議」が上がっています。全部で10数項目にもなりますが、そのなかの1部だけを取り出してみました。これは参議院のものなんですけども、文面は衆議院とほぼいっしょです。「地域鉄道網を健全に保全し、利用者サービスの向上、運賃及び料金の適正な水準維持」、JRに課せた役割です。それから関連企業、JRは施設・設備の関連会社やホテルなども経営していますが、「関連事業の積極的な拡大は認める」が、中小企業への影響に配慮を、と中小企業の経営を脅かしてはいけないと。それからもう一つはですね、地方自治体に対して「過重な負担を求めない」となっています。これが国鉄「分割・民営化」のときの「付帯決議」です。
 もう一つ、「附帯決議」を紹介します。1997年4月ですけども、全国整備新幹線法の一部改正のときです。並行在来線の第3セクター化で鉄道貨物が危ないっていう話になりました。その時に国会であがった「付帯決議」は、「整備新幹線の建設に伴う並行在来線の経営分離によって、将来JR貨物の輸送ネットワークが寸断されないように万全の措置を講ずる」。具体的には「調整制度」をつくる。「調整制度」というのは貨物の線路使用料は低く、第3セクター鉄道にとっては施設・設備の傷みも大きいため引きあげるんですね。JR貨物が負担するんじゃなしに、国が負担しなさいという制度をつくったのです。期限がいつまでなのかというと、「当分の間」となっています。この二つの国会「付帯決議」というのは、改めて、いまの時点で検証されていくべきではないかということです。
 それから3つ目は、「企業の社会的責任」についてです。「企業の社会的責任」というと、なんとなくわかるようでわからないという感じをお持ちの方もおられると思います。私は、「企業の社会的責任」には、単純化してみると二つの流れがあると考えています。一つは「アメリカ型の企業の社会的責任」論、もうひとつは「ヨーロッパ型の企業の社会的責任」論です。
 「アメリカ型」というのは、企業の経営者の仕事は株主価値で測られ、株主の経済的利益を最大化する、株主の利益を上げるためにやるべきだっていう考え方ですね。アメリカ型は地域社会貢献が中心という見方もありますが、これでは儲かっている範囲内で社会貢献をしましょうということになります。
 「ヨーロッパ型」というのは、2002年7月に「企業の社会的責任に関する欧州委員会の通達」というのが出ていまして全文を読んでみますと、先ほど紹介したこの右の図ですが、JRを中心にした利害関係者、ステークホルダーといいますが、企業、株主、労働者、消費者、地域社会、環境、行政などですね、その全体の利害関係を考慮しながら会社は行動するんだ、こういう考え方に立っているんですね。イギリスのロナルド・ドーアという学者が「誰のための会社にするか」(岩波新書)という本を出しています。その本の中で、ヨーロッパの「企業の社会的責任」について、「企業は公器。経営者は株主ばかりでなく、他のステークホルダーの利益関係も勘案して行動すべき」だといっています。
 欧州委員会の通達を簡単な図式化にしてみました。「企業の社会的責任」政策は、その企業が利益をあげていくためには法を守ること。で、法を守るだけではだめだというんですね。法の要請を満たすだけでなく、法を遵守する範囲を超えて、すべての利害関係者に利益をもたらすよう、より多くを投資をする、こういう流れに「ヨーロッパ型」はなっているんですね。
 さらに、上の図ですが、企業の内部的側面と外部的側面、両方から社会的責任を果たすようにしていこうと。この下に「実行方法」と書きましたけども、その「企業の社会的責任」の果たし方は、企業が自発的に取り組むとなってるんですが、これはずいぶん論争がありすが、一応企業が自発的にとりくむことになっています。さらに、その右側なんですけども、「企業の社会的責任」という問題を、企業の中だけの問題にしないで、企業に関わっている利害関係者に、どういう社会的責任を果たしてきたかということを報告をする。社会の監視を受ける。つまり、社会のなかで「企業の社会的責任」を果たしていく、そういうやり方なんですね。これはなかなかすごいことだと思います。なんでこれができたかというと、1960年代から70年代にかけてヨーロッパにおける労働運動がきっかけといわれています。2000年3月EUのリスボン・サミットで「EUが2010年までに世界で最も競争力があり、包括的な経済になるという目標を達成する。その支柱にCSRを据えるのが合理的である」(CSR=企業の社会的責任)との合意のもとにはじまったわけです。そして、労働組合、経営者団体、消費者、市民団体の代表などが参加して「EUマルチ・ステークホルダー・フォラム」を発足させ、2004年6月に最終報告を出します。
 さて、JR西日本でありますが、JR西日本も「企業考動報告書・JR西日本CSRリポート」というものを出しています。そこにあるのは「CSRリポート」の表紙なんですけども、2009−2010年版です。このJR西日本のCSRリポートはなぜできたかといいますと、福知山線の事故ですね。あの時にJR西日本は新たな「企業理念」の実現にとりくんでいくとして出されました。この「企業理念」を実行することを目的にCSRにとりくみますということとして出されました。中身は安全問題が真っ先に書いてあり、その他に10項目あり、全部で11項目からなっています。そのちょうど真ん中あたりに「社会貢献」とありまして、その「社会貢献」という項目を読んでみますと「地域との関係を正面からとらえる」「地域とともに成長していく」と書いてあります。
 現在の社長さんは、この「企業考動報告書」に解説をつけています。どういう解説かといいますと「世の中と誠実に向き合い、関係者の皆様と積極的に対話を進めながら、CSRの観点に立って事業活動の質を高めていく」、こう書いているわけです。このまま読むと、なかなかいいものです。
 しかし、安全対策はルールを守ることが最低条件なんです。加えて必要なのは、沿線地域の社会的課題に取り組む、積極的にですね。そのことで社会に安心感、信頼感というものが生まれて来るのではないでしょうか。とりわけ鉄道は地域に密着していなければならないとわけで、ここが強調されなくてはなりません。そうゆう視点で、JR西日本のCSRリポートを読む限り、ヨーロッパ型のCSRとは大きな違いがあります。
 並行在来線問題に戻りますけども、並行在来線をめぐって、これまでJRが言ってきたことは何か。JR資産は莫大で第3セクター会社の経営の足かせになるから『無償譲渡にしてほしい』というと、『無償譲渡は株主の了解が得られない』と突っぱねる。2つ目に、もっとJRに資金援助などをしてほしいと言えば、『新幹線の貸付料以外に負担ることになっていない』と。3つ目に、経営分離はやめてほしいと言えば、『沿線自治体との合意があるからできない』と。だいたい数えてみますとこの3つくらいの中身で自治体や住民の声を聞き入れないで現在まできています。
 JRが引き続き並行在来線を運営することになれば、並行在来線から転換したどこの第3セクター鉄道でもやむなく運賃値上げをしてきたような利用者に新たな負担を押しつけることにはならない、自治体に新たな負担を背負わせない、また鉄道資産や資源の有効活用にもなります。さらに、並行在来線をJRが引き続き運営することは、物流ネットワークを維持・保障することになります。
 先ほど紹介した国会「付帯決議」にみられる、「地域鉄道網の保全」「自治体に過重な負担を背負わせない」「物流ネットワークの維持」など、国民合意である国会「付帯決議」の方向を検証しなおすことが必要です。改めて実行しなさいという迫り方もあるのではないかと思います。
 JRは、地域との関係を「企業の社会的責任」ととらえて、社会的投資していく、そうした立場に立っていただきたいものだというふうに思います。しかし、これに逆行する方向が出てきました。今年の3月27日付の地元紙をみるとJRは、城端線、氷見線は利用者が減少しているから、バスの代がえを含めて検討していきたい、地域と話し合いたい、こういうことも言いだしました。
 いまのJR西日本の株主の持ち株数をみると金融機関が44.2%、どんどん増えてきているのが、外国法人で27.8%、アメリカ系が多いですよね。それから、会社法が変りまして、福知山線の事故もあって、社外取締役に住友電気工業の元会長が、株主の取締役会の会長として議長役を担っています。
 国鉄の「分割・民営化」は政治決定です。その政治決定で誕生したのがJRであり、民営になったから、株主の所有物になったのだから採算性の低い並行在来線はJR経営から切り離すことは、先ほどから紹介してきた「企業の社会的責任」という立場から考えるなら再検討されるべきものです。
 もうひとつ並行在来線が直面する大きな問題があります。それは、輸送密度の問題です。富山県内ですが、年度別に見ていただくと2006年1日あたり8,600人。2014年度末の北陸新幹線開業時に7,000人、開業10年目で5,800人と予測されています。ですから、北陸本線を引き受ける第3セクター鉄道の経営は苦境に立たされることがはっきりしています。
 人口減少が見込まれ、利用者が減っていくなかで、もちろん「乗りましょう」「乗せましょう」という取り組みは大いにやらなければなりませんが、やはり、だれでもどこへでも自由に移動できるという権利が保障されるという考え方と、それから、並行在来線がすべての利害関係者との係わりで並行在来線の将来の運営について検討されなければなりません。やはり、JRで運行を続けることがベターなのです。
 JR西日本の内部留保を棒グラフにしました。内部留保は連結剰余金、資本準備金、それから退職給与引当金の合計で、各年度ごとの3月末決算でみました。そうしますと、2005年と2009年の3月末を比べてみますと、5,741億円から8,789億円に1.5倍です。JR西日本の資本金は1,000億円です。大企業という場合は、資本金10億円以上ですが、資本金1,000億円以上の企業がどれだけあるのか会社四季報で見てみますと全部で100社ありました。そのうち不動産関係とか銀行を除くと78社です。JR西日本はまぎれもなく大企業です。JR東日本の資本金2,000億円で倍ですから、もっと大きな企業です。
 この大企業、JRが、北陸本線維持のために最大限の努力をすべきであり、それがJRの社会的責任の果たし方であり、それができる規模の大企業です。
 随分と急いで話しをすすめてきましたが、最後に「まとめ」になります。このように考えてみました。将来も維持可能な並行在来線・北陸本線のためにJRは役割を果たす。しかし、JRは民営企業になったわけでありますから、利潤を追求していく企業には変わりありまん。同時に、社会的な存在としての企業活動をどう統合していくのかが問われていると思います。企業としての自主性を尊重しながら北陸本線を運営しながら社会的責任を果たしていくとき、国などの誘導策、こういうものも考えてみるべきではないかと考えます。
 そこで2つであります。一つは、政治決定で恩恵を受けたJRとして国民・利用者に責任を負うという義務がある。そこをしっかり見つめてほしい。ですから、利益は株主だけに分配するのではなく、国民や地域に還元する、そういうところに踏み出していくこと。
 もうひとつは、並行在来線をJR経営から分離するとリスクを負担するのは自治体や住民です。ですから、負担を背負わされる自治体や住民のために政治が介入をして、それはできるだけ最小限にくいとめる。つまり、JRが並行在来線を運営するときには見返り助成を国が行うことも考えられます。
 人口減少問題は必ず出てまいりますから、なかなか大変な時代を迎えます。先ほど駒見さんがこういう報告をしましたね。JRの設備投資っていうのが一番大きな問題なんですね。1969年に電化が完了してもう40年です。枕木1キロで約4,500万〜6,000万円かかる。こういう数字が出されました。たとえばこれ、新たな設備投資をしたときに、税制面から補助をするとか。そういうことをやっていけば、JRの社会的責任という問題と、社会的な存在というものが、両方果たせるのではないかと思います。
 みなさん、スライドの最後にCSRに関する文献を紹介しておきましたので、興味のある方は読んでいただきたいと思います。時間になりましたので、これで私の報告は終わります。
 
(司会)
 ありがとうございました。それではいまの、渡辺さんの報告について、ごく簡単な質問がありましたらお願いします。
 
 それでは、まず、4人の方に報告をしていただきました。個別の報告についてでも結構ですし、あるいは全体にかかる問題でも結構ですし、質問なり、ご意見なりありましたら、お願いします。手を挙げていただいて、最初に名前をおっしゃっていただくようにお願いします。
 
 
◆◆◆ フロアからの発言 ◆◆◆
(Aさん)
 Aと申します。私の思いは岡本先生に文章で出してあるんですけど、岡本先生、読んでいただけました?。(ああ、はい、お手紙いただいた…)ええ、Aと申します。そのことについてですけど、何か富山県がね、新幹線できたらね、バラ色のことばっかしで動いとるがですよね。40年来の富山県民の悲願だとかいうて新聞なんかには書いてありますけど、とんでもないですよ。富山県、全部新幹線、望んでない人でかいとおるがですよ。新幹線ができて、富山県はデメリットが私はまだ多ないかと思うくらいですよ。先生にもよく書いておいたんですけど、あれにつきるんですけどね、新幹線通したら、富山県まだ全部弱りますよ。さっき、先生の報告にありましたけど、まだ3割以上が、在来線がJRから離れることまだ知られんないかいね。実際運行されたらこれ大反対になりますよ。何をそんな悲願だったんですか。40年来、だれがそんなこと言うとるがですか。一部の県の知事とか市町村長とかね、そういうがだけじゃないがですか。これは絶対だめですよ。富山はどうなるがですか。それから、なんか新潟県知事があんだけがんばっとるがにですね、上越新幹線という新潟から東京まで、ノンストップの電車が1本あるでしょう。おそらくね、富山県なんかは必ず止まりますなんていうとって、とんでもない間違いだ。必ずね、東京、長野、金沢どまりなんかいっぱいつくりますよ。そういうことでもみんな考えとられるがですか。富山県の40年来の悲願なんかどこから出てきたのか、本意も教えていただきたいんですよ。それから私、学生どもがね、ちょっと個人的なことで、学生がね、夏休み、春休み、冬休みに青春18切符を利用してね、大変喜ぶんですよ。知っておられますか、先生。青春18切符。みんなそいつを利用しとんがですよ。なら、第3セクターになったら、東京とね、上越線に乗って富山とか金沢どまりできんようになりますよ。よけい電車賃かけるがならいけるかもしらんけど、東京から富山までみんな喜んで来て旅行でもしとるがですよ。それから、土、日、祭日にやっとる北陸お出かけパスちゅうがもある。何が富山県民にメリットあるがですか。忙しいもんは忙しけりゃ飛行機で1時間で行くじゃないですか。そうでしょう。新幹線で2時間5分や10分で行けるいうけど、いまの特急だって3時間何十分で行っとるんでしょう。何がこんなもの必要なんですか。私、いまでも新幹線反対なんですよ。特に富山市なんか3等地、4等地になりますよ。まんで金沢、いままで高速道路できたら、ああ、バラ色だ、JRがいままで1時間40分だったのがいま1時間以内で行っとるでしょ。そのために、富山市に営業所が縮小され、支店がなくなったり、営業所に縮小されたり、合併してまんで金沢に行っとるんですよ。富山市はますます新幹線できたら弱体化していきますよ。ちゅうことは森市長は考えとるがでしょうかね、これ。これでやめますけどね、考えてくださいよ。
 
◆岡本勝規
 おっしゃる趣旨はよくわかりました。おそらく、同感に思っている方々もこの中に多いんじゃないかと思います。おそらくこれは、我々の啓蒙宣伝、一般住民への啓蒙宣伝等を通じて、これからの対応として考えていきたい、それも含めて考えていきたいと思います。
 
司会)
 他にどうでしょうか。
 
(Bさん)
 会員でBと申します。富山市に住んでいます。この活動されるのに、どこからも給料はでんようなことを聞いておりますが、九州の方行ったり、岩手の方行ったり、木曽福島へ行ったり、しているそうですが、わしまだカンパ払たことない(笑い)。たまにカンパするだけで。大変な仕事をしておられると思うがですが、やっぱりこういう大事な仕事をしておられるということについて、もうちょっと宣伝していかんなんがでないかと思います。
 それで、駒見さんにちょっと聞きますけど、最近、なんか、風速がいくらかになると、じき止めしまうと。それから、なんかしらんけど、普通列車がちょいちょい故障すると。いうことで、そのために急行・特急が遅れるとか、しょっちゅうあるがですよ。毎年ひどなったと思うがですね。民間なってから。それで、待避線がないために、追い越しができんということもちょっと、実いうと、私もちょっとたまに利用したら遅れたんで、何で上りが遅れるがに、なんで下りまで遅れるがかということを突き詰めてみました。民間なって、その待避線が少なくなって、待避線つくるがにまた、何千万円かいるそうですね。そういうことが民間経営になってから利益を得るために、そういう設備をどんどんなくしたんだと、そういうことがやっとわかって、きょう駒見さんの話を聞いてわかったんだけど、そうするとね、この新幹線のせいでJRが運行をやめたということになったら、そんな面倒見ないということになったら、貨物が止まってしまうがでないかなと。いうことがちょっと心配になりました。それで、どっか言いに行くのか、どこに行けばいいか知らんけど、まず、県会議員は認識しとるかどうかということ、この物流問題、大問題になとるがで、富山県に来てくれ、来てくれ、なんでも犠牲になります、一般路線もいらんて、失礼なこというてやってきたことが、そういうことになっとるがでないかなということで、県会議員にも反省してもらってさ、こういう問題になっているということについて、まず認識を深めてもらう運動を粘り強くやって、県会議員一人ひとりがその在来線をなくした場合にどうなるのかと、第3セクターにした場合にどうなるがかということをまさに新幹線ができるまでの間に認識してもらうことが必要でないかとつくづく思いました。それで、分かったらでいいがですが、ターミナル駅ということになると、貨物駅というのは何が違うがかということと、もう一つ、待避線がどれくらいあるがかということについても、これ、トラックでこんなが運んだらいったいどうなるがかと。環境問題も含めて大変なことになるがでないかなというふうに、わしら、貨物は夜中に走っとるがに、私らは眠っとるから一つもわからんがですが、このことについてもっと働いとる人が真剣に議論された方がいいがでないかなと思います。以上です。
 
◆岡本勝規
 まず、はじめのほうですけれども、この会の財政っていうのは、非常に困窮している、といいますか、ほとんどからして、会員の会費なり募金で運営されているところです。ですから、一つには、会員の方々の数を増やすということ、それから、今日は後ろでしてもらっていると思いますが、カンパを増やしていくこと、それをこれからもやっていきたい。確かに、並行在来線をめぐる問題で、青森、岩手行ったり、あるいは九州行ったり、信州行ったり、事務局を中心の担当にして動いていますけれども、これらはまあ、自分の勉強にもなるからという言い訳もつけながらですね、自分でまかなっています。後の質問については、駒見さんおねがいできますか。
 
◆駒見雅夫
 えっとですね、国鉄時代とJRに変わってから、基点が変わりまして、いま、風速25メートルで抑止になります。国鉄時代は30メートル以上だったんですけども、それでですね、風速計を設置してある場所もい増えましたし、一度25メートル吹くと15分抑止がかかります。その15分の間にまた25メートル以上吹いたら、その時点でまたカウントして抑止がかかるんで、1時間や1時間ちょっと、抑止がかかったりしてあっという間に汽車が遅れていくというのがいまの実態です。駅の退避する線ですけども、若干、電車が入るような線は若干持ってるんですけども、貨物列車、いま北陸線は金沢の方最高22輌の分はあるんですけど、こっちの方は20輌で、かなり長い沿線を引っ張っています。それを入れる線路が少なくなってきているということで、この線上止まったら、あとずっと1本で、運行できないという状況になっていますんで、それをどう改善していくかっていうのが、これからの公共交通を守るという運動と、住民の足を守るという運動と、安全を守るという運動ではかなり必要ではないかなと思っています。だいたい以上です。
 
(司会)
 他に質問、ご意見ありませんか。
 
(Cさん)
 すいません、なんかこの、何け、この線みたいな、なんやら、この説明をいただきたいです。
 
◆駒見雅夫
 すいません、北陸本線の列車ダイヤが貼ってありますけれども、北陸本線はそういう過密なダイヤで、運転しているということをみて欲しくて出しました。
 
(Cさん)
 あのね、横の棒が駅だとか言えばわかると思う。横がね。これはわかるけど、素人がこれだけ見たらわからんから。
 
(司会)それでは、横のホワイトボードに詳しい地図を書いてもらっていますので、それだけ後で説明してもらってください。もう一人。
 
(Dさん)
 時間ありますので、私はJR勤めてますので、社会的CSRの反面、その反対世論がまあ、JRからきとるがで。内部告発、あの、三菱から始まって、いろんな日産とかそういうがで内部告発したというががずっときとるがで、それに対する厳しい統制もきとるということをあの、付け加えておきます。以上です。
 
(司会)
 わかりました。他にどうでしょうか。
 
(Eさん)
 すいません。Eといいます。高校生の通学の足で在来線がどうなるのかということに非常に関心をもってます。昨年、教育署名を毎年集めているんですが、その項目の中に、新幹線開業に伴って、通学の足に悪い影響が出ないようにと付け加えまして、この項目は県議会でも全会一致で採択されて、ぜひいまの問題、高校生の足を守ってほしいなというふうに思います。
 岡本先生のアンケートをみても、やっぱり経営分離に賛成している人、40代以下はほとんどいないということ、それから、いまもっと悲惨というのも、9割は借金でやっているということで、若い世代にとってこの北陸新幹線というのはどういうものなのかなということが非常に気になっています。県はいま探求科をつくるとか、普通科のなんかエリートにかたよったに学科をつくるとか言ってますが、そうなるとますます、通える子はお金のかかった学校に通えると。教育格差を今以上に広げる、そういうことにもつながるんじゃないかなというふうに思っています。本当に、新幹線開業ということは、それはそれとして、やっぱり地元住民、若い高校生たちの通学の足を守っていくような運動をしていきたいなと思います。
 
(司会)
 はい。特にどなたにということではなさそうですが、2,3年前にですね、まだ並行在来線をめぐる問題が現在ほど具体的な形では問題にされてきていない段階だったと思いますけれども、県内の公共交通機関がどうなるべきか、そのなかでJRがどういう役割を果たさなければならないのかということをとりあげた時に、富山県の中部高校とかですね、比較的そういうことで、先生も含めてですけども、電車を利用している生徒の多いところを対象に選んで、高校生のアンケートをとって、シンポジウムでしたか、ちょっといま手元に資料がありませんが、報告をして議論したことがありました。いまおっしゃったように、確かに、母親の立場から、子どもの通学を何とかしてほしいという声が強く出ていたように思います。これからもまた提言をまとめたいですね。はじめに指摘された、新幹線の是非をいまここでは議論しにくいですけれども、新幹線が開通することによって、どういうメリットとデメリットを、これは立場によって、それぞれの人の仕事などによっても、違うかと思うんですけれども、その基準をはっきりさせながら、どういうメリット、どういうデメリットが考えられるのか、そのデメリットを食い止めるために最小限度にするためには何をしなければならないのかということは、これからも考えていかなければなりません。新幹線のデメリットをめぐっては、この会が発足したそもそものきっかけの一つなんですね。確か、新幹線の着工が始まった時点だったかと思うんですが、その時に新幹線のデメリットについて議論したことがあります。これからもですね、いま言いましたように、メリットとデメリット、とくにデメリットですね、どういうデメリットが考えられるのか、またそれを最小限度にするためにはどうしなければならないのかということも、今後この会としても、在来線の問題と一緒に考えていかなければならない、そういう問題だろうと思います。
 他に、ちょっとすみません。
 
◆渡辺眞一
 通学問題ですけど、やっぱり非常に大きな問題ですね。先ほど酒井さんの報告の中で、いわて銀河鉄道の話がありました。199%、約2倍にしようと思ったら、総反撃を受けた。岩手県はですね、激変緩和措置として136%に抑えたんですけど、その時に、大学生も割引扱いをしたんです。大学生の方はじきになくなりました。いま136%です。このシンポジウムをやるにあたって、高校PTA連合会の方と話をしたんですけれども、やっぱり通学定期が引きあがるという認識は、あまり持っておられなかったようで、「あ、そんなに」という感じなんですね。ですから、実際に利用されている方は、学生が結構多いわけですから、高校のPTAや先生方、生徒のみなさんとの連携の問題も大きな課題だと思います。
 
◆酒井久雄
 それから、身近な例でいいますと、先ほどいいましたように、ライトレールの発足の時は、JRでは140円から200円のところを一律200円にしたわけですから、運賃が基本的に上がりました。特にそこでは蓮町に北部高校というのがありまして、あそこへの通学者の方の負担増が問題でした。そのために、発足時は1カ月定期で1000の助成、それから3カ月定期で2700円、6カ月定期で5100円の補助制度というものを、暫定的につくられました。
それから、今日のシンポの案内の訪問先で、列車ダイヤと学校の始業時間、それからクラブ活動のことなんかが心配だと聞かされました。また、東富山の駅のことで、東側の改札口をつくってほしいとJRにいくらお願いしても聞いてもらえんがやった、と悔しい思いも聞かされました。JRというのはなかなか地方の言うことは聞いてくれないようです。これからの公共交通の基幹を担わなければならない鉄道と、利用者・住民との架け橋が担えるような、「鉄道委員会」の設置を提案しているわけです。
 
司会)  
 はい、ありがとうございました。他に質問はありますか。
 
(Fさん)
 Fといいます。今日の報告の最初の方になりますけども、24年度の運営会社ですか。私も新聞やテレビでしか見ていないんですけれども、前回までのこのシンポでは、確か、経営分離だった場合に、各県単位がいいのか、1本がいいのかというようなことがずいぶん話題になっておったように思うんですけれども、先ほども提言されたということで、そういう点について、もっと提言していかれる必要があるんではないかとみています。
 実際の並行在来線の対策協議会ですか、どういう構成になるのか、ちょっと一回聞いたことがあるような気もするんですけども。私、水道の方で仕事をしてまして、鉄道と水道はちょっとよく似ていると思うんですけど、昭和50年代にですね、富山県の水道事業は平準化して、料金を安くする方にもっていこうということで、氷見市とか高岡市、小矢部市で、小撫川ダムができましたけども、そこの水がですね、浄水場のボリュームは6万トンあるんですけども、ここ2、3年前で最高4万トンまでいきまして、それでまた人口減少の関係で、ピークはいまこれから下回って行くと。そうすると、もう後は設備投資をね、リストラする方向で設備投資をやると。これは、人件費の場合はそれでいいんですけど、機械設備そのものをリストラしていくというのは、これはなかなか難しい話でしてね。はじめその、水道の場合には市町村長協議会ということで、氷見市長とか、高岡市長、小矢部市長とかいうところで、多分協議をやってたというふうに聞いておるんですね。ところが首長というのは、1期、2期で変わってしまう場合もあるし、市町村長協議会というものをつくりまして、じゃあ、実際にそのものができた場合はどうなるのかということで、幹事会というものに切り替わるらしいですね。そしたら、このJRの協議会の場合でもですね、つくるまでは協議会ということでつくりましょう、つくりましょうということで、後はその運営会社が後の経営はそこで自決しなきゃいけないということになって行くんじゃないかというのがね、私の思いとしてはあるんですわ。ですから、その辺を提言を出せるように、今後いろいろお願いしなければならない。前回のシンポでは、県境分離とかですね、そういうお話、各県ではだめだよ、多分、ひづめ県会議員なんかの話ではそういうふうに強くなんか言っておられたような気がしますので、ひとつまたよろしくお願いしたいと思います。
 
(司会)  
 わかりました
 
(Gさん)
 あの、これは将来の話で、未来の話になるんですけど、この提言、やられたときの、最後のしめの段階でこうまとめていますけど、「地域は人が住み、働き、育ち、楽しみ、生活をする場です。また、文化を創造し、自然環境豊の豊かな総合空間です。経済的な効率だけで北陸本線の運営を考えたのでは将来に禍根を残すことになりかねません」と、こういうことでまとめていますけれど、JR西日本はことしの4月からですけど、保育園児を対象に駅見学会という、そういうシステムを投入しています。で、私、そこで働いているときには、保育園児がだいたい1週間に1回ほど来て、バス1台分ですから、20何人ほどですわ。ゴールデンウイーク終ってから1週間に1回来て、駅のなかの設備を見学して車両に載せたり、車両の構造を見せたりして、保育園児に鉄道というものを、旅っ子を育てるというシステムをいまやっていますので、われわれもそのような、育てるということに対しても、もうちょっと言及してほしいと思います。以上です
 
(司会)
 わかりました。前後していろいろ意見や質問が出ていますので、簡潔に質問なりを皆さん方からうかがって、それで、報告者の方から、まとめて端的に答えていただこうと思います。
 
(Hさん)
 Hといいます。今日はわかりやすいお話をありがとうございました。渡辺先生に少し言いたいんですけども、さきほどの企業の社会的責任ということで、アメリカ型と欧州型とある、こういう話を聞いたんですけども、もし欧州型の企業の責任は、その考えといいますか、企業は健全な社会があって、健全な労働者がいるからこそ、もうけさせてもらって、なおかつ利潤を社会に還元して、よりよい社会をつくっていくという考えが根底にあるのかどうか、ひとつ簡単に教えていただきたいと思います。もちろん、ヨーロッパが世界の中心になりたいという考えもあると思うんですけど、そういう社会が、いま日本がそういう社会になればね、もうちょっといい社会になるんじゃないかと思って、その辺ちょっと聞きたいと思います。
 
(Iさん)
 ちょっといいですか。この4ページになっている提言は、2月25日に書かれたがか、出されたがか、それで、これはどの程度有効に動いているのか、相手がある話なんですが、相手はだれながで、どういう効果がありつつあるがか、動きはどうなっとるがか、その辺がいまこれから迫られてくると思うがで、その辺ちょっと解説あったら。
 
(司会) 
 わかりました。他、どうでしょうか。
 
(Jさん)
 私たちのことばかりで申し訳ないんですが、簡潔にいいます。1つは、実は県議会で意見書があがったときもですね、県議会の議員がよく知らなかったという、そういえばそうだなという話でですね、先ほどBさんもいいましたけども、県議会の人もいろいろ議論にはなっているけど、本当のことはよくわかっていないというかですね。県教委がもっとわかってないんじゃないかと思うんですね。ぜひ、私たちが入りながらですね、いっしょにわからないこともたくさんあるので、少しレクチャーという形でも聴いて、できれば県教委の人のアンケート、これをさせるということも必要なのかなという思いであります。もうひとつ申し訳ないのですが、驚いたのはやはり、佐々木社長がですね、氷見線、城端線、それをバス利用という。そのことがどうなっているかと聞きたいところですが、高校の方は鉄道部に電話して、とにかくそのままですよとか言っていわれたから安心してますと校長からいわれたという教員もいましてですね、こういう動きが出てくるんだなということで、これもなにかアクションしなくちゃいけないかなという思いを少しいわせていただきました。
 
(司会)
 他にございませんか。じゃあ、とりあえずこのへんでまとめさせてもらいます。一言で簡単に答えられる点でいいますと、提言ですね、2月25日付の提言ですね。これは今年の2月25日にまとめて県庁、知事あてですね、それから県議会議員、そのほか並行在来線問題協議会の幹事の方々などに届けてもらっています。手渡したり送付したりですね。それから県政記者クラブで記者会見をして、この提言をニュースにということをやっています。それで、提言を出したということについては、はじめに私のあいさつでも一言言わせていただきましけども、2月26日付の各紙で程度の差はありますけれども、こういう市民団体が訪れたという紹介がされています。いま質問された、特に3の問題については、まず渡辺さんにお願いします。
 
◆渡辺眞一
 「企業の社会的責任」の問題なんですけども、ヨーロッパのCSRはずいぶん歴史は古くて、出発はですね、労働条件の改善から始まった。多国籍企業化がどんどん広がって80年代にリストラ規制がEUの指令(法律)として出されます。多国籍企業の化学会社AKZOの大量解雇がきっかけで、5000人もの大量解雇を解雇規制のないベルギーで実行しようとした。そこで欧州レベルで解雇規制がないことが問題になって1975年の「大量解雇規制」、1980年の「労働者保護指令」となっていきます。そういう経緯があって、欧州委員会が通達として出すんですね。
 先ほどの「企業の内部と外部の社会的責任」、その企業の内部的側面の一番最初に出てくるのが労働条件改善です。それから、労働者の福祉の向上、そういうものを前提にしながら競争力をつけると。もう一つは、外部的側面である地域社会、下請け、外注など企業関係者全体で、環境や人権問題も含めて社会で見ていくっていう。その2つの側面からとらえています。
 それから、県対策協議会ですね。対策協議会のメンバーは、自治体の全部、それから、北陸経済連合会、商工会連合会、中小企業団体中央会、経営者協会、経済同友会が入っています。そのほかにトコンサルタント会社で、並行在来線を分離した場合に経営状態はどうなりますよ、どこに発電所をつくってどこに指令所を置いたらいいか、そんなことを全部調査などをしている会社なんです。
 糸魚川、上越、妙高、そこの人たちも私たち「提言」も参考に、自治体への働きかけもやっておりますし、現在ですね、新潟県内で国とJRに社会的責任を果たせという署名運動にとりくんでおられます。
 2012年に、運営会社を設立するっていうのは突然出てきたような感じがしますけど、そうではなくて、2002,3年ごろですね、2014年度末に北陸新幹線が開業するおおまかなスケジュールを描いてるんですね。そのスケジュールどおりにいまいってる、ということなんです。そのスケジュールを一生懸命追いかけているっていう状況ですが、しかし、並行在来線を運営していく枠組みが全然決まらないものだから、何をどうやっていいのか、まったく枠が定まらないという状況に立っているんですね。
 
(司会)
 高教組の方から出た、高校生の通学の件に関してですが、今回の提言では、並行在来線をめぐる問題が緊急の課題として出てきた段階ですから、並行在来線をめぐる基本的な問題について、それぞれの立場からの報告をしてもらいました。ですけども、先ほどの新幹線もそうですが、並行在来線についても、沿線の地域の住民の生活にとって、どういう影響をもたらしているのか、地域での人々の往来にどういう交通機関が利用可能なのか、活気のある、商店街なんかも栄えるような、観光地にしていくためには、どういう条件が必要なのか、また、通学の便を保障するためには、どういう条件が必要なのか、といったように、もうちょっと、各論的にとでもいいますか、場合によっては、高校生について、高校生を持つ親御さんについて、あるいは地域の商店街で営業している人たちについて、といったように、もう少しそれぞれの階層に大きく括って、そしてまた調査をするなり、提言を関係機関に提出していくなり、そういったこともこれから考える必要が出てくるかと思います。いままでのところでは、たとえば、県の教育委員会に直接訴えるとかそこまでは考えていません。
 
◆渡辺眞一
 北陸3県一体運営、北信越5県一体運営について、私たちの「提言」の第一回目からそういう方向を「提言」してきました。最近、JR貨物が、北陸本線は一体運営でないと貨物は運営できないということを国に言っています。そういう方向がJR貨物の方から出てきている。これは非常に大きいことだというふうに思う。
 私たちは、最初の「提言」から、並行在来線問題をかかえる各県と話しあうこと、隣県石川県とも話しなさい、新潟県とも話しなさい、これは繰り返し言ってきたんです。最近、ようやく話をしているという報道がありますが、中身はいろいろ問題がありますけど、一応話はするようになってきている。問題はですね、県境なんですね。新潟と富山の県境の乗客はがくんと落ち込んでいるんです。ここのところをどう、だれが責任をもってどうしていくのか。これは非常に大きい問題になります。それからデッドゾーンといって、糸魚川のちょっと先ね、交流と直流が切り替わる。あそこも問題が一つありますが、しかしこれはね、現在の技術からすると、インバー電車に換えれば大丈夫ということで、技術的に乗りこえられるようになっています。大きな問題じゃなくなってきているわけです。直流にしてしまうと莫大な工事費がかかります。いずれにしてもですね、富山県は糸魚川から金沢までの運行形態を考えるということに、最近なってきていますが、もうひと押ししなくはならないと思います。
 
◆岡本勝規
 県別の件に関しては、さきほど渡辺さんがおっしゃられたように、富山県は糸魚川と金沢の間の通し運行を念頭においていればいいようですが、例えば、岩手・青森も通し運行をしています。会社は別々ですが。ただ、問題はやはり運賃が分かれてしまったところですね。公共交通の活性化を目指していながらで運賃が高くなってしまってはね。酒井さんの方からも発表がありましたけれど、運賃の面も注目して注文をつけていきたいなと思っております。まあ、経営分離されないのが一番ですけども。
 
(司会)
 よろしいでしょうか。
 
(Bさん)
 新幹線関係(富山駅周辺整備)についてね、富山市にちょっと質問を出したら富山市が170億円やら負担すると、そのほかにも少し出るがでないかと。出るがないかという部分はよくわからんがだけど、まだ計画にはいっとらん部分があるがけ。こういう話になるがね。わしらもう、後期高齢者で、飛行機も新幹線もこんでいらん、免許証もこんで返さんなならん。お金、170億、200億近くのお金出すという話しまでね、しとるんで、これは年金者組合からちょっと質問状を出いたんです。富山県の交通はどういうがなるがかということについても、なんかはっきりしないような、あるがですよね。これ、大企業・大独占が好きなようにしたいというのが一つあるがでないかと。私の方ではそういうふうにいろいろ質問して、質問に答えてもらっておるなかでは、本当に便利な富山市になるがかどうかということがね、ちょっと疑問あるがです。それで、この新潟とか福井とかいろいろ全国的な連携とかも大事やけど、県都富山市の襟をどういうふうに正していくか、高齢者にもやさしい、いうふうになるかどうかですね。みなさんにこんなことも知らせたいと思っとるがで、これ付け加えていただきたいと思います。
 
(司会) 
 大変どうも重い宿題をいただいたようですが。よろしいでしょうか。それでは、午後4時を過ぎるまで、この会場を借りてきたわけですが、長時間にわたってどうもご苦労さまでした。今日は4人の方に報告していただきましたけれども、その報告についても、それからここで出された質問なり意見なり疑問なりについても、われわれ世話人の方で最大限生かせる方向で、今後、具体的に提言なり、シンポジウムなり、あるいは会のニュースで流すなり、いろいろな方法で取り組みを進めていきたいと思います。みなさん方からも、会の運営等も含めて、こういう問題についてご意見、あるいはご提案等がありましたら、どんな形ででも結構ですから、事務局、ビラの右下に連絡先としてあったと思いますが、そこへ連絡や問い合わせをいただいて結構ですからぜひお願いします。それと、こういう会を、この場だけの取り組みで終わらせるのではなくて、一般の地域の人々には、新幹線についても、並行在来線についてはなおさらのこと、知られていない、あるいは知らされていないのが現状ではないかと思いますので、もっともっと、事実を、問題点を、啓蒙と言いますか、宣伝と言いますか、して、より多くの人々に理解をしていただけるようにしていきたいと思います。
 今日は長時間にわたりまして、どうもごくろうさまでした。