北陸新幹線の開業で 北陸本線は どうなる どうする Part4
シンポジウム「北陸新幹線の県境分離はなぜいけないのか」
 
(2009年6月28日 富山市内で)
 
司会 酒井久雄(公共交通をよくする富山の会・世話人)
 今日は、私どもが計画いたしました「北陸新幹線の開業で、北陸本線はどうなる、どうする」のパート4として、シンポジウム「北陸新幹線の県境分離はなぜいけないのか」というテーマで開かせていただきましたが、本当にありがとうございます。
 私は、今日の司会を担当させていただきます、世話人の一人であります、酒井でございます。どうかよろしくお願いします。思い起こせばですね、2004年の5月の末に、「北陸新幹線建設で、北陸本線はどうなる、どうする 県内の公共交通は」というテーマで、関西大学の安部誠治先生をお迎えして講演をいただきましたのが、パート1のシンポジウムでございました。それから2007年の6月にパート2として北陸本線の歴史、それから北陸本線が果たしている、生活交通、それから、貨物の大動脈を果たしている役割、それと、県の公共交通政策課のほうから、経営分離された北陸本線の課題というようなことについてのシンポジウムをやりました。そして、昨年はパート3として、群馬型の上下分離方式と、JRから分離された北陸線の課題、それからまた、県が第3セクターにされた後の北陸本線の経営についての試算というものについての考察などについてお話をさせていただきました。 そして、今回になったわけですが、私たちはこの間、この北陸本線が担っている役割として石川県や、あるいはまた新潟県の方にもそれぞれパネラーとしてお招きいたしまして、またJRの労働者からもおいでいただきまして、それぞれの立場から、北陸新幹線の開業にともなう北陸本線のあり方について、みなさんといっしょに考える場を設けさせていただきました。今回もそれぞれご案内のように、5人の方々からお話をいただくことにいたしました。途中に1度休憩をはさんで、後でまたみなさんのご意見なども発表していただく、あるいは質問などもお受けしなければいけないと思っております。
 どうか今日はですね、この場で何か結論を出そうということではなくて、県民的な課題でありますこの問題について、自由な討論から今後のあり方についてお互いに学びあいたいというのが趣旨でございます。
 で、最初に、ご案内のように、運賃の県境分離、私たちの会の世話人であります、岡本勝規さんから報告をいただきます。よろしくお願いします。
 
岡本勝規(富山商船高専教員、公共交通をよくする富山の会・世話人)
 どうもはじめましての方ははじめましてですが、お久しぶりの方はお久しぶりです。公共交通をよくする富山の会の世話人の一人をつとめております。岡本勝規と申します。富山商船高専というところで教員をしております。きょうは5つのテーマをシンポジウムのために用意をして、それぞれ個別のパネラーがお話をさせていただくのですが、まず最初は、一番とっつきやすいお金の話をしようということで運賃のお話をさせていただきます。とりわけ県境分離ということによって、運賃がどういう影響を受けるのかということに関して、それからいくつかの論点を出していきたいと思います。きょうお話しするのは次の3つです。経営分離ということに関する運賃面の弊害、それから2つ目、今日のメインテーマであります県境分離ということによってもたらされる運賃の弊害、最後に、世界の趨勢と申しますか、世界的に見て運賃というのは現在どういう扱われ方をしているのかということをお話して、一つ今後のありかたというものに少し提言をと思っております。
 まず最初に、その経営分離ということに関しての運賃面の弊害ですが、これはいままで何回も同じようなシンポジウムで申しあげましたが、ご覧のように、経営分離された並行在来線で運賃が上がらなかったところは一つもございません。確実にあがります。一番低いところでしなの鉄道の1.24倍で、はなはだしいのは、いわて銀河鉄道の1.58倍です。これはかつてのJR時代と現行の運賃表を比較するとこれくらいあがるということですね。ですので、ほぼ確実に上がるんですよ、現在の趨勢では。富山県によって去年、収支予測調査というものが行われて、このケースだったらこれくらいの赤、このケースだったらこれくらいの赤、というような感じで収支予測が出されました。コンサルタントの方に依頼して収支を出されたんですね。その報告書が去年の5月に出ていますけれども、それによれば、運賃の値上げというのがほぼ想定されています。例えばこの、1番からですね、8番くらいまであったんですけれども。それらの例えば2番目のケース、運賃2、1.25倍ケースというのがすでに想定されているわけですね。運賃1.25倍ケースは、どういう根拠で出しているかというと、収支均衡というのをめざすためには1.25倍くらいにしないといけないというんです。で、過去のしなの鉄道とか、あるいはいわて銀河鉄道とか、過去の並行在来線を見てもこれくらい値上がりしてるから、うちもこれくらい値上がりするんじゃない? っていうような出し方で1.25倍を想定しているわけです。さらにですね、まず経営分離のときに1.25倍運賃を上げて、その上10年後にもう1回1.25倍にするというケースも想定されています。1.25倍のそのまた1.25倍ですから、現行と比べて1.5625倍、まあ、1.5倍にあがると。10年後には。そういうものもすでに想定されていると。それで、収支均衡にするためには、ようするに値上げせざるを得ないという部分も含まれているということです。ちなみに、運賃が値上がりしたところで実は、赤字は解消されないんですけれども。この収支予測調査は割と正直な出し方をしていて、あらゆるケースを想定して、あらゆるケースで黒字にならないという結果が出たというんですね。そういう意味では割と正直なんですが、値上げしても結局改善にはならんのですけれども、値上げをするということも想定に入れているんですね。ですので、経営分離されれば、それだけで運賃は値上がりするでしょう。いままでがそうでしたし。
 さらにですね、悪いことに、県境分離をすると、もっと(笑い)。値上げをした上で初乗りが2重取りになるということです。大変喜ばしくない結果が起こるわけですね。値上がりして、さらに余計に金を取られるという、そういう仕組みです。
 そこで、1例をご覧いただきます。高岡から松任へ移動する場合、いまは全てJRですから820円です。経営分離されて県境分離されるとご覧のようになります。すごいですね。高岡から松任に行くだけで3つの会社を乗り継いでいくことになるんですね。大変な状態になります。倶利伽羅と金沢でそれぞれ運賃打ち切りですから、それぞれで初乗りから計算し直して運賃をとると。各並行在来線運営会社がJRの時の運賃を維持したと仮定しても、ただ経営分離して県境分離するだけで単純に値上がりすることになります。もし、並行在来線の運営会社がさっきの想定のように、各社1.25倍の運賃値上げをここでも行って、ここでも行った場合どうなるか。ここは400円になって、ここは500円になりますから、1,190円になります。ですから大変、もともと820円だった運賃が下手をするとここまで上がるという、すごいですね、お手上げの状態になります。
 こういう具合で県境分離すると、初乗りがまたかかってくるわけですけれども、よりめんどくさいのは、枝線まで考えたらどうなるのかということですね。枝線の問題はまだ特に決着はついていないですよね。どこが運営を受け持つのかというのがわかっていない。というか、一応県の見解では、枝線は並行在来線じゃないんだから当然JRさんが持つんでしょ、というふうに言ってるわけです。なにかこう、妥協案を示したら、それで話が進んでしまいますからね、言ったところが責任とらなきゃいけない状態ですけど。仮に県が言うようにJRが枝線を受け持った場合、伏木から松任へ行くのに4社乗り継ぎという大変すごい結果が生じて、各社それぞれ初乗り運賃とって、950円が1,100円になります。更に、各並行在来線運営会社が運賃を1.25倍にしますと1,290円ですから、大変値上がりすることになります。要はですね、ただでさえ経営分離すれば運賃が上がるかもしれないんですけれども、県境分離したらさらに上がるということですね。利用する側として、県境分離したら何か良いことあるのかといったら、運賃面で見ていただいたとおり、何も良いことないんですよ。何一つ。
 さらに、在来特急の問題というのが現在見直されています。特急の問題はしばらく、店ざらしになっていましたけれども、最近になって「JRに並行在来線が経営分離された後も特急が乗り入れてくれるように要望する。」ということを県が言い始めたようですね。ほっとくと、例えば大阪から来るサンダーバードや名古屋から来るしらさぎは並行在来線が経営分離されれば多分金沢どまりになって、富山へ行く人はそこで新幹線に乗り換えて、ということになると。「乗り換えてね。」と言われて、乗り換えてまで富山に行こうかという人間がどれだけいるのか? という問題になりますけど。富山に住んでいる人は仕方がないですよね。乗り換えると思います。でも、例えば外からこられる方がわざわざ乗り換えて富山まで新幹線に乗ってくるのかといったら、来ないでしょうね。普通はね、そんなめんどくさいことしたくないですからね。そうなると乗り換えが必要ないように並行在来線に乗り入れてくれればいいということになるんですが、並行在来線に仮に乗り入れたとしても、金沢で会社が別になりますから別々にお金取るようになります。ですので、いままで大阪から7,980円で来れたものが、多分8,490円くらいになるんじゃないかな。これは、各並行在来線運営会社が運賃値上げをしないことを前提に、それから特急料金は、青い森鉄道が科している特急料金250円というのを参考にして算出したものです。経営分離したあげく、さらに県境分離までするとこれだけ値上がりして、7,980円が8,490円になるわけですね。ですから500円も値上げしておいて、それで観光客来てくださいといって、来てくれるのか? というのが非常に問題なわけです。ですから、仮に金沢どまりで乗換えを強要すれば多分こないだろう。乗換えを強要せずに乗り入れさせても運賃が上がるから、やっぱり来ないだろうというように、あまり良いことはないわけです。その上もし、各並行在来線運営会社がそれぞれ運賃を1.25倍値上げしたら、もっと上がって8,750円になります。1,000円近くの値上げです。ご覧のようにですね、経営分離に加えて更に県境分離までするということになりますと、利用者が何か得るものがあるかというと、何もないんですよ、良いことが。むしろ不利益であってですね、そうですね、富山から金沢までいま運賃は950円ですよね。これが県境分離して別々にしたら1,060円です。何もしなくても100円値上がりします。結構なことで(笑い)。経営分離後の並行在来線の経営についてもいろいろ悩ましいのですが、わざわざ値上げまでして余計に足かせはめているような状態です。
 話は戻りますけれども、結局要するに県境分離によって、在来線の利用者が利益を受けることは何にもないんです。ただ単に運賃が値上がりするだけ、むしろ不利益ですね。県境分離の話が検討課題にあがっているというふうに伝え聞いておりますけど、そもそも利用者の立場で、利用者の方から県境分離してくれといった覚えはないはずなんですね。ですから、県境分離というのは利用者の都合でもなんでもなくて、単に行政側の都合にしかすぎません。利用者の都合はまったく無視されています。もし利用者の都合であったら、利用者にとって何か良いことあるはずですけど、何もないですからね。ですから、運賃面から見ただけでも県境分離というの、いかに利用者無視の方策であるかということがわかります。利用者のことを考えるとそういう発想は出ないはずなんです。
 また、ちょっと経営にも絡みますけれども、例えば富山から金沢はもともと950円で行ったのが、勝手に県境分離しただけで1,060円になるという具合で、値上がりしてしまいます。並行在来線というのは最終的には新幹線やバスとかマイカーとかとお客さんを取り合わなきゃいけないんです。ですから、サービスを充実させて、逆に値下げしてお客さんを取りに行くぐらいのことこそ並行在来線のやるべきことなんですが、逆に値上げをするわけです。当然、新幹線と競合、あるいはマイカーと競合したりするにあたって、並行在来線はよりいっそう不利になります。遠方から来るお客さんにしても、金沢で新幹線に乗り換えれば同じJRなので運賃通算ができますから、富山へ来る人が減る上に、その少なくなった富山へ来る人ですら、多分きっと並行在来線に乗ってくれない。運賃通算ができるぶん、新幹線に乗ったほうが運賃は安いから、並行在来線より新幹線を利用する可能性の方が高くなるでしょう。ということで、新幹線との競合はよりいっそう不利になるんではないかということが懸念されます。県は交流人口の増加というのを、今後の目標に掲げているんですけれども、在来特急が富山に乗り入れをしても運賃が上がって障壁を上げてしまうので、逆に足を伸ばす人が減るでしょうから、県の目標と矛盾もしているわけですね。県の人口自体は少しずつ減っていく中で、交流人口を増やしましょうというふうに掛け声だけがかかってるんですけど、逆に来にくくなるようなことをしているんだと。よけいに金をかけて、目標を達成しにくくしている状態です。
 続いて、世界の趨勢というところを少しお話をしたいと思います。実は、世界的な流れにおいては、運賃というのはなるべく低く抑えるという傾向なんです。これは公共交通を活性化するためには、運賃の障壁を低くしようというのが、一つの課題になっているからなんですね。日本の場合、乗り換えの時にA社からB社というふうに会社が変わるとその時点で運賃を打ち切って改めて初乗りから計算し直しますよね。富山地鉄さんの電車に乗ってきて、富山駅でJRに乗り換えれば、JRさんも改めて初乗り適用になりますよね。ところが、これはヨーロッパのベルリンの例ですが、ベルリンのなかには地下鉄とか国電や、バスや市電がいろいろ走ってます。運営している企業体はそれぞれ別々なんですけれども、ゾーン運賃制というのを適用していて、地図のようにAゾーン、Bゾーン、Cゾーンに区分しています。真ん中がAで、そのドーナツみたいなところがBゾーンで、そのまた外側がCゾーンです。この一つのゾーンの中を移動する際、2時間という制限時間がありますけど、制限時間内で移動するならば何回乗り換えても料金同じという、そういう仕組みです。ですから、地下鉄に乗って、国電に乗って、バスに乗って、市電に乗って移動しても、このなかを2時間以内に移動する分には同じ運賃になります。運賃が上がるのはどういう時かというと、このゾーンをまたぐ場合。AゾーンからBゾーンへ行くとか、あるいはAゾーンからCゾーンへ行くとかいうふうに、またぐ時には一ランク値段がアップします。要するに、乗換えを何回やっても会社が変わっても運賃は同じという状態なんです。ヨーロッパの都市は普通だいたいこういうことをやるんです。つまり、会社が変わっても運賃は同じだというのが、ヨーロッパではあたりまえなんですね。
 これはまあ、1つの都市だからできるんだろうというふうに思われる方もいるかもしれませんが、実は1つの都市でなくてもできます。これはドイツのライン=ルール運輸連合の例です。運輸連合というのは、ドイツとかフランスとか、要するにヨーロッパではわりと盛んに行われてます。一番広いところはブランデンブルク州のように州全体が一つの運輸連合になっている所もありますけど、ここで例に出しているのは、ライン=ルール運輸連合という所です。このなかには、地図が色分けされていますけど、いろんな都市が入っています。1つの都市じゃなくて、複数の都市が連合体を組んで一つの運輸連合という組織をつくってるんですね。このなかは一つの運賃表で運営されていて、24の企業体が参加しています。国電みたいな路線や、市電みたいな路線、バスやモノレールも入ってます。ですから、かなり広い地域で運賃通算がされているんですね。この広さが5027平方キロメートルあります。富山県の面積は5247平方キロメートルなので、だいたい富山県と同じ広さでやっているということです。富山県と同じ広さを1つの運輸連合でカバーできるんです。ですから、地鉄に乗ろうが、JRに乗ろうが、万葉線に乗ろうが、全部おなじ運賃表で運営されていてもいいんです。こういう形で、乗り換えのたびに運賃初乗りになって移動費用があがっていくという仕組みを排除して、運賃の障壁を低くしていく。ヨーロッパではそうやって乗りやすくしてるんです。
 ヨーロッパだけでなく、アジアでもやっています。ソウルの例です。(スクリーン写っている)これは、Tマネーといいます。スイカやイコカみたいなものです。運賃などの決済はこのTマネーでやってるんですけれども、ここにマークがついてますように、バス、電車、タクシー、コンビニとかでも使えます。タクシーでも使えるのはおもしろいですね。これを使うと、地下鉄とバス、バスとバスなど乗り換えた場合でも、運賃は始発点からの通算乗車距離で算出してくれます。要するに、乗り換えのたびに初乗り運賃を取るんじゃなくて、最初の乗車時にピッとこう押して、最後に降りたところまでで乗車距離を算出して運賃をいただくんですね。乗り換えは5回までですが、5回までは乗り換えてもずっと通算で計算してくれるんです。バスに乗ろうが、地下鉄に乗ろうが通算してくれるわけですね。地下鉄を営業している会社も1社ではなくて1,2,3,4,5、5社ありますが、会社が変わっても全然関係なしという具合で運賃計算されています。これは運輸連合や、ゾーン運賃制とはちょっと違うんですけれども、電子マネーを使って、全部乗車距離を通算して運賃をとっていくんですね。そういうこともいまのテクノロジーではできるということなんです。ですから世界的に見ると、その会社から乗り換えたら運賃が上がるとか、会社が変わったら運賃が上がるとかいうような仕組みは排除して、なるべく通算にして運賃を下げましょうというのが趨勢なんです。そうでないと公共交通に人が乗らないと考えられているわけですね。
 日本でも少し一石を投じるできごとがありました。これは、九州新幹線の西九州ルートの例です。みなさんご存知かもしれませんが、ここの鹿島市の市長さんや江北町の町長さんが随分がんばってくれたおかげで、ここの並行在来線とされている路線は、上下分離して上はJR九州が受け持つということになりましたよね。まあ、20年間という時限付きではありますが。ですがJR九州が運行することになりましたから、当然、ここで運賃表を打ち切ってというようなことにはならず、全部運賃は通算されることになるわけです。仮に提案すれば、こういう方法もあるということですね。何も経営分離するといっても、下を自治体が受け持って上はJRにやらせるということもないではない、ということになります。この場合、何がいいかというと、運賃表の細分化がおこなわれず運賃が通算されるという点が一ついいところだと思います。
 最後に、まとめでございますけれども、先ほどもいったように運賃表を会社ごとに細分化することを排除するのが世界の趨勢です。会社をまたいでも、都市をまたいでも、なるべく運賃は全部均一にするとか、通しで計算するというのが本来の世界の趨勢なんですね。そうしないと公共交通というのは活性化しないんだということで、そっちの方向に向かっていってるわけです。にもかかわらず、県境分離するというのはその流れに逆行しているわけですね。世界の趨勢では運賃表はなるべくこう、均一にして運賃障壁を下げましょうとしているのに、わざわざ県境分離して運賃障壁を上げようとしているんですね。不思議なことに。ですから県境分離によって、例えば倶利伽羅を境に、あるいは越中宮崎を境に運賃表を区分するというのは、公共交通を活性化しようという世界の趨勢から明らかに逆行しています。
 われわれが取り組む交通改善の運動には、3つの課題があります。路線がない・なくなるとか、接続がとれてないとか、運賃が高いとかいう3つの課題です。実は我々の運動というのは、路線の有無とか接続というのはわりとやってきたんですが、運賃を下げる、運賃障壁をなくしていくという運動に関しては、少しまだですね、日本は遅れているというか、あまり手がついてないんですね。ですから平気で県境分離して、会社が変わったら運賃が変わるのは当然でしょ、みたいな感じで、何も議論もなくそうなってきているんです。けれど、世界に視野を広げれば、この運賃面の運動というのはすごく重要であって、日本は少し取り残されてた。今回、県境分離で運賃表が分かれるというような、あまり良くないことが、また行われようとしておりますから、ここで食い止めて運賃の障壁を下げるということにも運動を引き継いでいかなければと思います。明らかにですね、今回の県境分離は、運賃の面からいって世界的な流れからは逆行していますから、これは食い止めねばならないというのが、私の話です。以上、私からの報告を終わります。
 
司 会 
 どうもありがとうございました。引き続きまして、運行の安全と県境分離ということで、お話しいただきたいと思います。土合さんはJRの職員で、国鉄労働組合県支部の役員土合さんにお話していただきたいと思います。よろしくお願いします。
 
JR職員(土合さん)
 シンポジウムに参加されたみなさん、ごくろうさまです。いまほど紹介いただきましたように、私はJR西日本富山運転センターというところで働いております。職場、職種といいますと、検修職場で、主に車輌関係の保守をしています。
 2014年、予定通りに行けば、北陸新幹線は開業し、それに伴い北陸本線がJRから第3セクターにより運営されることになります。
 私が与えられたテーマは、運行、安全、県境分離でありますが、現在のJRの職場の状況といいますか、そのようなことを発言して参加させていただきたいと思います。
 現在、北陸本線だけをみますと、旅客列車が上り下り210本余り走っています。その他に貨物列車が上下40本走っており、1日合計にすると約250本の列車が運行されていることになります。まさに日本海側の公共交通機関の大動脈であり、地域住民の足として、また、貨物の輸送手段としてなくてはならない機関であると思っています。
 加えて環境問題、地球温暖化問題など、今後更に発展させていく必要があると思います。そういう意味では、運行の形態がかわろうとも、公共性、安全性が損なわれては絶対にいけないと思っております。
 さて、本題である運行についてでありますが、現在JRにはどんな職場、機関があり、運行されているのかを簡単にいいますと、一つには運転職場、運転職場では運転士、車掌、用務、2番目には工務職場として保線、信号、通信、電力関係の人、3番目には検修職場、車輌の保守・管理等を行っています。また、4番目として駅、出発、改札、営業業務など信号の業務も担当しているところです。それから貨物職場があります。
 運転関係でいえば、金沢支社内の受け持ちでいいますと、東は直江津から、西は米原、大阪まで受け持っており、そのうち富山運転センターでは、センターのエリアは直江津から福井です。例えば、サンダーバードは、富山の運転士が福井まで運転して、福井で別の運転士と交代して、終点の大阪まで運転するシステムをとっています。
 また、貨物列車の場合、富山機関区の運転エリアは、東は南長岡から、西は敦賀までとなっております。運転士の交代は、南長岡、金沢貨物ターミナル、南福井、敦賀とさまざまになっています。
 補足して、運転士の免許は国家資格であり、免許をとるまでに約10ヶ月余かかる、費用も約1,000万かかるといわれています。
 つづいて工務関係の職場ですが、行っていることは多く、保線社員はレール、枕木、道床、橋、踏切、トンネルなどの管理を主に行っており、一部を除く検査・保守は下請け会社がおこなっています。そのほかにも沿線の草刈等の環境整備などもあります。枕木は25メートルに39本しかれており、県内においても相当の数になります。また、踏切の数は120箇所、橋は1級、2級河川だけでも11の河川があり、その他に用水路や地下道などもあります。トンネルにつきましては3箇所で、過去にコンクリート片の落下事故などが発生しており、老朽化も進んでいるのではないかと心配であります。
 電気、信通の職場は、信号機、ポイント、保安機器、河川などの管理を主に行っており、これもまた、一部を除き検査・保守は下請けが行っております。信号機は各駅に進入するための場内信号機、駅から出発するための出発信号機、また駅下に設置されている低速信号機、そのほか、駅構内乗り換え信号機などたくさんあります。また、これらを正常に作動させるのに、電源設備や自動列車停止装置ATSなど安全にかかわる装置を受け持っております。保線にしろ電気、信号、通信にしろ、定期的な検査が義務付けられており、検査保守、検査項目も大変多くあります。
 次に検修職場であります。検修職場では、車両の保守・管理を行っております。車輌の保守という部分では、消耗品の取替え、使用部分の状態の外観からの検査、各装置の検査、台車、ブレーキ装置等の主要部分の解体検査、各装置の解体検査など、実際にはこれらの検査種別ごとに周期を定めて各検査を組み合わせて行っており、各検査の周期、検査項目、検査の方法等は、車輌の使用条件により機関車、電車、貨車等の車種別に定められております。
 富山センターという私の職場では、電車、駆動車、機関車の検査、修繕及び車輌の管理を行っています。また、下請け会社による車輌の清掃や構内の入れ替え等も行っています。 最後に、運行上、どうしても突発的な事象が起こります。
 例えば、人身事故、踏切事故、信号機のトラブル、車輌故障、雨や風の天候による規制、線路・河川の不具合など運転の抑止や規制など様々なことが起こり、列車ダイヤが乱れることがあります。そうした場合は、金沢にある輸送指令と連絡をとり、輸送指令の支持より列車を運行することになっています。もし、何か起こったら、例えになるかどうかはわかりませんが、今年流行した新型インフルエンザ対策ではありませんが、1つには初期対応、2番目には格差をつけない、3、情報伝達を早く行う。これが重要だと思っています。 何か突発的な事象が生じた場合には、各県ごとの対応・取り扱いではなく、各県統一の取り扱い、各県同じ情報の共有、このことが安全輸送に大切ではないかと思います。輸送指令関係は、このままいけば、県境分離になれば、各県ごとに設置しなければならないことになります。安全、正確、利便性、公共性が問われる交通手段としての役目を果たすことができるのか心配であります。
 列車の運行、安全の確保に多種多様な職種、多くの設備、多くのJR社員、多くの下請け社員が携わっています。費用も膨大な金額がかかっていると思います。そういう意味では、北陸線は、第3セクターではなくJRが責任をもって行うのがベターではないかと思っています。とりとめのない発言となりましたが、ご清聴ありがとうございました。
 
司 会
 それでは、3番目の報告といたしまして、運営会社の経営と県境分離ということで、同じく同会の世話人の渡辺眞一がお話をいたします。
 
渡辺眞一(公共交通をよくする富山の会・世話人) 
 公共交通をよくする富山の会の渡辺です。私の話はJR経営から分離した後の北陸本線の運営会社と県境分離について3つの点についてお話ししたいと思います。1つは、鉄道システムと県境分離、2つ目は貨物問題です。3つ目には、将来的に安定した経営を行っていく時に、どういう視点が必要なのかという3点です。
 いまJRの方からお話がありました。北陸3県と新潟県は、線路はこのようにつながってるんですね。列車には運転指令、金沢総合指令っていうのと、それから富山県ですと3箇所の車輌基地があります。福井県4箇所、石川県で3箇所、新潟県2箇所あります。この車輌基地と運転指令センター、これが連携をしながら、この金沢総合指令所で、一元的に運転を指令しているわけです。ですから、この地図を見ていただくとわかりますように、北陸本線というのは、県境というのはまったく考慮されていないシステムなんですね。つまり、こういうシステムに、長い間かかって発展をしてきた。そういう路線だと言うことができると思うんです。鉄道は、運転指令と車輌基地がなくては、列車は走らないわけですが、しかし、これまでにつくられてきたシステムを強制的に分離をするというのが県境分離です。
 この県境分離が起きたときに、これまでの並行在来線・第3セクター鉄道はどんな対応をしたのかをそこにまとめておきました。IGRいわて銀河鉄道は、これはJRの運行システムが盛岡・八戸間だったんですね。それで、そこが1区分になっていましたので、その区分をそのまま引き受けるということになりました。ですから、JRの既存の管理システムをそのまま受け継ぐ。JRの運転司令室と第3セクターである銀河鉄道の司令室が同じ部屋にあってですね、やってる。どちらかというと合理的な形に、この運輸システムがなったわけですね。
 一方、青い森鉄道はどうかといいますと、目時・八戸間が25・9キロ、30キロありません。そこでですね、このいわて銀河鉄道に、運行を全部委託しようっていうことになったんですね。委託費が7,000万円くらいだというふうに聞いています。ところがいま、大きな問題が起きていまして、それは青森まで、青い森鉄道を延伸をする。全部で121.9キロと言われています。そうしますと、青い森鉄道にとっては、新しく指令所をつくらなきゃなりませんし、指令システムもつくる必要があります。車輌基地も、それから変電所も整備をしなければなりません。それからワンマンカーに対応した駅の設備も更新しなければなりません。そんなことで、青森県が出した計算によりますと、約180億円プラスしなければならない。運輸システムだけでこれだけかかるということですね。
 そこで、この鉄道は、先ほど岡本先生からお話がありましたように、乗客が払う運賃収入で運営しますよね。それで、この運賃なんですけども、乗客数がどう変化をしていくかということで決まります。乗客数がどのように変化をしていくかについて試算した表であります。これは県の将来予測、需要予測からとったものなんですが、「計」というふうに書いてあるところですけれども、2005年で北陸本線は8,700人と書いています。富山県内です。それで、北陸本線が開業する時には、7,122人、それからもう10年経ち、もう20年経ったら、どんどん減っていくというわけです。それで、2030年になれば、2005年の約半分の乗客数になってしまう。そういう現状があります。
 そこで計算されたのが、この7つのパターンで、並行在来線を第3セクター鉄道会社にした場合の試算をするわけです。一番上に書いてあるのは、負担、160億というのは、JR施設・設備をそのまま買い取った場合ですね。「負担なし」というのは、JR施設・設備を自治体が買い取るっていうことにした場合です。で、その下の2つは、青い森鉄道方式で、運行会社は第3セクターがやるけども、インフラ部分は自治体が管理をすると。それは先ほど話がありました、上は第3セクター鉄道が走って、自治体が下の部分をもつ。こういう計算をしたわけです。それで右側のほうでありますが、それだけでは大変なので、ということで、改善策、利用促進策というのをとるんですが、これは下にかいてありますが、改善策・利用促進策っていうのは、運賃を1.25倍引き上げる、10年後さらに1.25倍引き上げる。それからJR貨物会社が支払う、実際は貨物会社が払うのでなしに国が払うということになりますが、線路使用料を引き上げる、それから人件費を徹底的に削減をする。
 こういう形で7つのパターンを組んだんですけれども、20年目を見てみますとですね、青い森鉄道方式で第3セクターが運行した場合、自治体が下を持った場合、このときに初めてゼロという数字が出てきた。しかし、自治体の負担は増えていく。単位は億の単位です。ですから、7パターンいずれをとってみても、第3セクター鉄道では経営が成り立たないというのが、県の試算でも出てきたわけであります。
 そこで、県境をつなげば、赤字はなくなるのか、そうはなかなかならないんですね。石動駅と越中宮崎駅の写真を載せておきましたけども、石動駅に列車がとおるようになったのは、1908年です。それから、越中宮崎のほうは1912年ですね。この石動駅を通過する人数は2,740人、これ2006年のデータですが、それから越中宮崎は563人ですね。ですから県境へ行けば乗客数は減るわけです。
 住民にしてみれば、どう考えてみても線路が切断になるなんて、とても考えられない。この前、酒井さんと小矢部に行ったときに、そういうふうな話をみんなしていました。しかし、1997年に信越本線の横川・軽井沢間が切断されたという事例もあります。県境分離という政策は、鉄道システムを分断してしまい、さらにこの県境である地域は、交通の不便がいっそう悪くなり切捨てになっていく。限りない赤字が押し付けられるということになりかねないわけであります。
 そこで、鉄道ネットワークというところから話をすすめたいと思いますが、日本の鉄道史の歴史を見ますと、技術の進歩とともに、レールがどんどん伸びていくということになっているんですね。ですから、技術の進歩、そしてそれによるシステムがつくられて、列車が走るという問題と、国の政策が一致してずっと進んでいったんですね。
 ところが、国鉄の分割・民営化以来ですね、『私』、つまり民営化を優先をする、そういう流れができてまいりました。じゃあ、一体全体、現在ですね、全国ネットワークという問題を誰が考えているのかというと、誰も考えていないんです。これは私たちが北信越5県でですね、北陸信越運輸局に話をした時に、運輸局の人がいいました。貨物があるから、鉄路は残るだろうという、非常に楽観的な話をしていました。
 全国鉄道ネットワークというものを考える場合、やはり日本の国土の均衡な発展、それから最近大きな問題になっている環境問題、これらからやっぱり考えていくべきだと思いますし、対外諸国からも学んで鉄路というものを見直していく必要があるんだというふうに思います。
 あの、これはですね、6月21日の朝日新聞に出ていたんですけども、こんな記事が出ていました。首都圏や中京圏から鉄道でコンテナを集め、伏木富山港の富山新港にあるターミナルで船に移して極東・ロシアからシベリア鉄道で内陸部へ輸送すると。還日本海シーアンドレール構想です。秋田県でもこの構想がすすめられているそうでありますが、一方ではこういうことをやっているんですね。
 それで、実際、JR西日本とJR貨物は、どういう経営方針を持っているのかを見てみました。これはですね、JR西日本の2008年から2012年までの「中期経営計画」というものであります。で、その「中期経営計画」を読んでみまして、ローカル線にかかわるところでありますけども、ローカル線については、システムのダウンサイジングをやると書いているんです。で、地域にとっては最適な輸送とサービスを提供する。提供するっていうのは何か、どういう線路を残すのか、と思って見たら、バスに転換することや、DMVっていうのはですね、線路の上も道路も走るバスレールですね。それも走らせていく。そして、大阪など収益性の高いところの線には金をつぎ込む。その考え方として、線区価値の向上っていうことを方針として出していました。
 それから、JR貨物ですが、これは、「2011中期計画ニューストリーム」という方針が出ていますが、それを読んでみますと、JR貨物としては徹底してコストダウンをやると。こういう方針が出ていまして、さらに、輸送形態は、拠点間輸送、つまり1,000キロ以上を超えて、はじめて貨物鉄道としての役割が果たせるんだと。そこへシフトしていくという方針が出ています。そのために、重量化をはかる、レッドサンダーですとかですね、重量の荷物を列車に運ぶトップリフターというものをですね、どんどん各駅に配置をしていくということであります。
 これがレッドさんダーであります。富山機関区に18台でしたっけ?配置されているそうでありますが、総重量1,100トンは運ぶことができると、いうことであります。物流業者の嘆きっていうふうに書きましたけども、ある物流業者がですね、ニュースを発行していまして、こういうことを書いています。整備新幹線開業後、赤字がほとんどの第3セクターが、将来にわたってきちんとレールを維持してくれるのか。整備新幹線建設が、JR貨物にとってはネックになっている。整備新幹線は華やかな話だけども、環境問題を考えるとその裏で貨物が泣いていると。
 鉄道貨物でありますが、富山県内で発着する貨物はですね、43万9,000トンなんですね。しかし、富山県内を通過している貨物量っていうのは、213万8,000トン。ですから、県内の貨物の約5倍は通過貨物になっているんです。この通過貨物が、倶利伽羅と、市振を走っているという形になります。ですから、もし県境分離になれば、とても大きな問題を投げかけることになりますし、鉄道貨物をまったく考えないということになれば、県内の北陸本線は地域鉄道として、例えば、金沢から泊りまでのローカル鉄道として運行していくことも、採算上考えられないこともないだろうというふうに思いますけども、この鉄道貨物がやっぱり大きなネックであります。
 そこで、将来の安定した経営を考えていく場合に、何が必要なのかっていうことでありますが、県の並行在来線対策室の資料によりますと、2014年の2年前に運営会社を立ち上げなければならないというふうに言っています。
 私たちがいろいろ議論もし、「提言」も出してきましたが、並行在来線の安定した経営を考える場合に、二つの視点が必要なんだろうというふうに思います。一つは、地域経済、地域社会、それから環境というものに多面的に応える鉄道としてどう発展させていくのか。そういうことで、これまで「県民鉄道」とか「基幹鉄道」とか、そんないろいろな言い方をしてまいりました。
 二つ目はですね、国とJRが責任をどう果たすのか、あるいはどう役割を発揮してもらうのかという問題です。その一つは、並行在来線に対する公的出資の問題なんです。それから、並行在来線にかかわる「法」がほとんどありませんので、法整備が必要です。それから三つ目にはJRの役割、公共的な役割をどう果たさせるかっていうことなんですね。
 そこで、いろいろな形で、こうしたら安定的な経営ができるということを考えがちですけども、今日お話したいのはですね、結論を急ぐことはないんではないか、あわててしまえば、いい結果は得られないのではないかということであります。のんびり構えると言うことではありません。
 先ほど岡本さんがお話になりました九州(長崎ルート)です。これは1つのベターな方向というふうにありますが、限界もあります。この九州(長崎ルート)方式ですけども、よく調べてみますとですね、こういうことをなっているんですね。JRが運行をすることになったのは、経営分離ではないんだという言い方をしていますよね。並行在来線に対する定義がここで完全に狂ってしまっている。
 私たちは、並行在来線を考える場合には、一つは富山県に合った創造的な方法を考えていくべきであるし、それがどう持続的に発展をしていくべきなのかという二つの視点でいろいろ考えていくことが大事だと思います。これまでも「提言」してきました。
 まず、「政府・与党合意」の問題について触れておきたいと思います。これは、当初の「政府・与党合意」の「基本」といいますか、次々「基本」が崩されてきているんですね。で、富山でさらに前進させていく方向で、この問題を考えていくべきではないかと。
 その、「JR資産の無償譲渡を」と言うのが私たちの主張でありますけれども、青い森鉄道の場合には、簿価が160億円といわれていますけれども、それが半分になりました。それから、JR東日本はですね、約100億円を、事前の修理・修繕、中古車輌の譲渡、それから人件費、観光宣伝などにあてるということを一応約束したという報道がありました。
 それからJR貨物の資本参加というのは、肥薩オレンジや青い森鉄道でおきています。それから、国がですね、JR貨物の線路使用料をさらに引き上げる方向も出ました。それから、先ほどお話ししました、長崎ルートがあります。
 そこで大事なのはですね、これは、5月29日付けの北日本新聞ですけども、並行在来線対策の会議をやったら、市町村長がですね、隣県と話し合えというふうに要望したというんです。県は隣県と本格的な協議を開始することにしたという記事が出ておりました。まだ、富山県では具体的には何も決まっていないんですよ。水面下での話し合いはあるでしょうが、これからJRとの交渉が始まります。ですから、結果を決めてかかる必要はないんで、「政府・与党合意」が次々打ち壊されてきていますから、その到達点を生かしてさらに発展させる、その運動がもう一つ必要なのではないかということであります。
 次ぎに、並行在来線の経営を考えていく場合に、今日は3つの視点を簡単に紹介しておきたいとおもいます。新幹線が必要だということをいうのにですね、スピードが速くなって時間短縮だ、これが最大の効果だ、環境の点からも効果が大きい。こう、さかんに宣伝をしていますね。で、費用はかかるけども、効果は絶大だっていうのが宣伝文句として出てまいります。私は、並行在来線にもですね、費用便益の考え方をもってくるべきでないか。鉄道存続の効果というのはですね、道路に車が走る量が大きく増えると環境問題をはじめ様々な問題が発生し大変になりますし、さらにまちづくり、駅を中心としたまちづくりが富山県内の北陸本線沿線のまちの成り立ちであります。で、生活を支える地域交通システムの基幹になっている駅を中心にしてまちが発展をした。それに加えて鉄道貨物輸送の動脈という問題がある。それから、通勤通学という点からするとですね、労働移動とか社会発展に限りない便益を与えてきたのが、また、これからも与えていくのが北陸本線だというふうに思います。
 それから、二つ目の視点ですけども、これは、いわて銀河鉄道が最近、2年間の一応試験運行なんですけども「病院切符」なんですね。これは、年間200人くらいの利用があるというふうに言っていますけども、列車の最後尾が、病院行きの人が専用に乗れるようになってるんですね。それで、アテンダントが病気の人にちゃんと相談しながらお世話もしてくれる。それに乗ると割引がありますし、それから盛岡駅に下りるとですね、タクシーとの連携ができて、タクシーの割引もある。こういう切符がどうしてできるかといったらですね、その沿線を利用している利用者の要求をどう実現をしていくか、そういう観点に立ってるんですね。マイレール意識っていうのがありますけども、それは確かに大切ですが、住民の要求から、列車を利用している人たちの要求から列車をつくっていく観点がとても大切になっていると思います。こういう観点で一つはいくべきじゃないか。
 それから三つ目は、先ほども言いましたように公的支出支援の仕組みをつくることであります。並行在来線の支援法ていうのが必要だと。大きくいえば、総合交通特別会計、交通基本法っていうものも展望していく必要があるのではないか。こうしてこそですね、地域にローカル線の経営安定の具体的な道、そのレールがひかれるのだというふうに思います。
 最後ですが、県境分離のですね、第3セクター鉄道になれば、3セク鉄道は、局地輸送に限定されます。そこを拠点間輸送の貨物列車が走ります。ですから、輸送目的も、経営方針も、運行形態もまったく違った鉄道が同一線路を走るわけですから、様々に矛盾がおきるのは目に見えています。
 県境を結ぶっていうことはどういうことなのか整理してみたいと思いますが、一つはですね、住民の利便性が向上されなければならない。それから二つ目には鉄道貨物輸送の維持がされなければならない。三つ目は、つくりあげてきた鉄道システムの一体化ということをですね、システムの上でも考えなければならない。
 それから、JR経営から分離となって上下をですね、各県が共同運営をするっていうのが3セクの1つの方法でもあります。それから、下の部分を九州のように各県が協同運営をするっていうのもひとつであります。運行をJRがやる、あるいは第3セクターがやるっていうのも方法であります。それから、県境を越えてそれぞれの3セク会社が相互乗り入れするっていうのもあるでしょう。
 しかし、これらが複雑に絡み合いながらですね、JRがどんなかかわりをしてくるのか、国がどんな役割を果たすのか、これは経営問題の基本問題だと思うのであります。
 そこに上京団と書いたのはですね、整備新幹線建設のための上京団は、いろいろ行われていますけれども、私たち自身がこういう観点でですね、並行在来線に対する問題を掲げて上京団を送る、そして国にものを言って来るのがすごく必要になってきているんではないかというふうに思います。
 これで終わりますが、これは朝日町の城山からの写真です。あの、列車通っとればよかったんですけども、スーッと、細い道が流れているのが、北陸本線です。こういうところがですね、真っ先に切り捨てられていくことになってはいけないと思います。
 どうもご清聴ありがとうございました。
 
司 会
 どうもありがとうございます。えーとですね、ここでちょっと10分くらい休憩いたしまして、この時計で3時15分から、あと、新潟県、石川県の方から報告していただきまして、みなさんから、フロアからのいろいろな質問やらご意見やらを受けたいと思います。4時半には終わりたいと思います。
 
司 会
 北陸本線の新潟県部分の課題といいますか、新潟県から見た課題について、佐藤一弥さんからご報告をお願いします。佐藤さんは、みなさんのお手元に、資料が届いているかと思いますが、暮らしと地域を支える鉄道の充実をめざす新潟県連絡会の代表の方でございます。よろしくお願いします。
 
佐藤一弥(暮らしと地域を支える鉄道の充実をめざす新潟県連絡会の代表)
 どうもごくろうさまです。大きく言って2点報告をしておきたいと思います。一つは、レジュメに入れておきましたけれども、新潟県での並行在来線問題はいま、どんな局面にたっているのかということと、今ひとつは、県境分離問題について、どんな状況か、特徴を報告させていただきたいと思います。
 ご承知の通り金沢開業と同時に、JR経営から分離される新潟県の区間は2つあります。一つは、信越本線です。ここは単線で、直江津から長野県境までが38.1キロ。輸送密度は01年度で3,848人です。県の予測によりますと、これが開業30年後、2,098人という数字になります。で、きょうの本題の北陸本線ですが、ここは複線で、直江津から富山県境まで60.6キロ。01年度で1,547人。県の予測でも30年後で873人。06年の1月に県が組織しました並行在来線のあり方懇談会が報告を出しました。この並行在来線のあり方懇談会の報告の分析といいますか、受け止めをそのまま入れておきました。つまり、県はどういう認識をしているか、信越本線についてはこういうふうにのべております。「輸送密度は、北陸本線の2.5倍だが、先行する長野、岩手などの並行在来線と比べて決して多くない」「01年で定期外利用は6割」「観光やビジネスでの不定期需要、直江津・長野以遠へ抜ける通過需要が多い」。「優等列車、寝台特急は運行されてい」ません。この時点で「貨物列車は1日数本」。県は「新幹線が開通してもこの収入構造は変わらない」、したがって「イベントと誘客が必用」と強調しています。これが県の認識です。
 北陸本線の方は、「輸送密度は信越本線の5分の2。先行する他県の並行在来線と比べても最も経営環境が厳しい路線の一つ。6割が通勤通学利用で地元の生活交通による需要が高い」そして特徴は、「貨物列車や優等列車の運行割合が高」くて、「北陸新幹線金沢開業後も運賃収入は4割」とみています。そして、2つは、「JR貨物の路線使用量が4割、寝台特急収入1割」。これは変らないだろうとして「誘客とともに線路使用料の維持・拡大、寝台特急収入維持」が大事だと強調しています。07年1月のこの報告の時点での収支見通しについて一応そろばんを入れているのですが、こういう数字になっています。信越本線の場合は、JRの資産は、簿価での購入です。そして、運賃6割アップ。人件費は類似の3セクなみと見て公共費負担が30年後、50.4億円です。北陸本線も同じです。JR資産を簿価購入して、6割運賃アップをして、類似3セクなみの人件費で、公共費負担が82億。つまり、この両線、新潟県内の並行在来線を合わせると、30年後には、386億円の大赤字になります。これは、県民1世帯当たりにすると、47,100円。大混乱になったのですが、これを沿線3市1世帯あたりに割ると、391,900円です。沿線地域から猛烈な反発が起きました。「なんだよこれ!(笑い)冗談じゃない!」ということですね。
 つぎに、最近の知事や県当局の動きについて、簡単に報告しておきたいと思いますが、08年度、つまり現在は需要予測調査、経営計画基本調査をやっています。そしてなるべく早く経営委員会を立ち上げたいとしています。もう6月末ですが、6月ないしは7月に開業準備協議会に名称を変えていますが、開業準備協議会の総会を開いて、この経営計画基本調査の中間報告を予定しています。私たちの方は、この総会の結果、報告の内容を見て、これからの運動をどう組み立てるか検討することにしています。今後の県の計画は、10年度に利用促進計画、経営計画、11年度から設立準備、先ほど、開業の2年前に設立になるという話がありましたが、新潟の場合もまったく同じペースで進もうとしています。
 もう一つ報告をしておきたいと思いますのは、最近の新潟県知事の言動です。随分マスコミの注目を浴びています。大きな見出しが毎日のように載っていたのですが、特徴的なことを資料に入れておきました。今年の2月、知事は、北陸新幹線の建設負担金の追加、42億円の支払いを保留しました。払わない。国の説明が不十分だということで、突っ張り始めたのですが、5月29日には一転支払いに変りました。それから、3月には、北陸新幹線の新潟県内の全駅つまり、上越駅と糸魚川駅に全列車を止めろ、全列車停車を要求し始めました。担当課は、「ハードルが高い」としています。もう一つは、新幹線の貸付料の地方還元を要求しました。新幹線建設費のうち地方負担が3分の1なのだから、新幹線貸付料も3分の1をちゃんと還元してほしい、地方に返せ、こういい始めました。これに対しても担当課は「ハードルが高い」としています。政府・与党合意の見直しやJR資産の無償譲渡を国に要求するなどというのは「愚の骨頂だ」と知事はずっと一貫して言っていますが、担当課はJRではなく国に求めていきたいと言い出しています。ちょっと変ってきてはいるのですが、新自由主義者の見本みたいな知事でその特徴は、JR擁護がはじめから終わりまで徹底していることです。そして、2014年が近づくにつれて、関係県との協力・共同、こういったものからはまったく離れて、負担金追加支払いの留保だとか、全列車停車だとか、貸付料の還元、こういったものでパフォーマンスを繰り返している状況です。
 「新潟日報」の特集といいますか、「北陸新幹線―負担金問題の波紋(上)(下)」という記事を資料としてつけておきました。ご覧になってください。新潟日報の報道はこういう言い方をしています。「泉田知事が、国直轄事業負担金への反対で名をあげた橋下大阪府知事のように、新幹線負担金問題を通じてアピール(をはじめた)」。泉田さんは橋下知事とエールを交換しているのです。「沿線各県の関係者に『新潟はスタンドプレーが過ぎる』」との不満が渦巻いた」。これは、北陸新幹線の促進会議が東京であったわけですが、そこのところの記事です。知事のこういった行動に対して県の幹部、新潟県庁の幹部の声として報道されていることを2つ3つ指摘すると、「あの突っ張りはなんだったのか」「全国放送で6月初旬のオンエアが決まった。これで闘う知事のイメージづくりは一段落ということではないか」「全国区になりたい知事の野心がある。民主党政権に変るだろうということを見越して政府批判でアピールしているつもりでは(ないか)」。県の幹部がこう言っているとマスコミが報道しているのです。知事のこういう態度で、新潟県の場合は、沿線各県から大きく浮き上がってきているなということを感じます。県内でも、「ぶざまの極み」、新聞への投書ですね。というような声が出るなど、大変大きな問題になっているのが特徴だと思います。
 2つ目のテーマですが、県境分離問題です。肝心要の沿線住民や市町村は、どんなふうに受け止めているか、糸魚川市が出した文書のなかから、抜粋をしてみました。糸魚川市の場合は、隣接県と新潟とのつながりをどんなふうに整理をしているかということですが、98年10月現在でつぎのように述べています。「直江津・長野間(「妙高」運行区間)の沿線市の人口より、糸魚川・金沢間(「北陸」運行区間)の沿線市の人口が2倍以上」になる。特急「北越」の利用者は「北陸方面8割、信越方面2割」。各県の企業の支店配置状況をみると、新潟県は長野県との経済交流が盛んであり、石川県、富山県は新潟県との経済的つながりが強いことを強調しています。
 新潟県の場合は、事業所数が10,793、このうち富山に支店を出しているところは198、石川へは132、長野へは242です。富山の場合は4,540事業所あるけれど、新潟へ支店を出しているのは93、石川へは654、長野へは26。以下。長野の場合は、8,727あって、新潟に214出している。富山に68、石川に46、こういうふうな結びつきになっているとしています。  北陸本線の駅別乗車人員の変化を見てみました。89年と08年ですから、20年くらいの変化です。市振駅の乗車人員は約6割に減少しています。親不知は25%ぐらいにまでに減り、一番多い糸魚川でも47%に減っています。以下ご覧になってください。08年の市振、谷浜間の乗降者数は2209人、そのうち、普通が757人、定期が1,452人です。相当減ってきています。
 3点目ですが、糸魚川市の場合は、並行在来線が残されたとしても、どういう問題が起こってくるかという問題をたてて、いくつかの問題を整理しています。4点です。1つは、新潟方面への利便性が大変なことになるのではないか。一つは直江津駅での乗換えが必要になってくるし、本数は減少するだろうし、どう解決するか。それから、富山県方面への通勤・通学列車、これが大事なのだけど、県間の扱いは、これも不透明。どうすればいいのかというところにとどまっています。それから、デッドゾーンへの対応。交直両用車輌が必要になってくるだろう。それから、さっき申しあげましたように、乗客の減少。これに基く運賃値上げの危険がさらに深まるのではないかというふうに見ています。沿線住民のところでは、県境分離問題は、市町村や県から何の提起もないもとで、県域の3セク会社設立が自明の前提になっていますから、ほとんど意識はされていません。
 一般的に県境分離をして、新潟県としての3セク鉄道会社がつくられるのでないかと受け止めている人が圧倒的に多い状況です。そういうこともあって、この6月12日に県境分離問題で県の交通政策課は何を考えているのかと思いまして、レクチャーを受けてみました。新潟県の交通政策課と話し合ったことを整理すると、まず新会社の構想と県境分離では、1点は、新潟県は、「住民参加型の3セク」を考えているとしています。住民参加、県は「4セク」といっていますが、住民からも出資を募るというそれだけのことです。それから、信越線と北陸線でよもや3セク会社を分けるということは考えていないのでしょうね。と念を押したら、「それは非効率ですから、県内1会社が効率的だと思う」としています。県境分離そのものについては、「長野、富山、石川とも考え方をまったく公表していません。今後経営計画をつくっていくなかで、必要があれば関係県で協議していく問題だと思っています」としています。
 そして「いま旅客流動調査をとりまとめていて、6月か7月に開業準備協議会の総会を開いて調査結果を報告したい。これから有識者経営委員会をつくり経営自体をどうするかという検討に入ります。他県も来年度あたりからようやく経営計画の検討に入る段階だと認識しています」というのが1つ。それから、県境分離した場合の安全や運行、運賃体系、これはもう、ほとんど問題意識はゼロの状況です。「安全は最優先されるべきこと、運行では、相互直通運転だとか、県境での接続をよくすることなども関係県で必要であれば今後協議することになるでしょう」の一言です。それから「JRからの技術的人的支援も必要になるかもしれません」とも言っています。
 このレクチャー全体を通じて、県が一番言いたかったのは3セクの経営問題です。新潟県は、県域を想定して次のことが実現すれば3セクの経営基盤はつくられる。見通しは立つというふうに考えていて、いま全力をあげています。3つあります。1つは初期投資への起債充当、2つ目は線路使用料・調整金制度の充実、3点目が新幹線貸付料の還元です。地方は新幹線建設費3分の1を負担しているのだから、それに見合う3分の1を地方に戻すシステムをつくるべきだとしています。しかし、その実現の可能性については、担当課は「見通しがありません」といっています。全体としてみれば、新潟県の場合は、はじめから県域を想定して「住民参加型」として、3セク鉄道会社の立ち上げの準備をすすめている状況です。
 知事は、先ほど新聞の報道で報告しましたように、私らの目から見ると、無責任なパフォーマンスを繰り返しているというふうに見えます。県当局には、6月にも開業準備協議会の総会を開催したいとしています。県には、「各県の共同運行」や上下分離方式でいろいろな態様など考えられないのか、私たちはさまざまな提起していますがまともな反応はありません。現時点では、新潟県は、まだ各県にまたがる「一体運営」の思想や、その重要性の理解は持ち合わせていません。沿線の地域住民や市町村は、隣接県との結びつきは大変強い関係にあるわけですから、私たちの側が早急に問題点を提起していくことが大変重要になっているというふうに思っています。以上です。
 
司 会
 ありがとうございました。新潟県では、この6月6日と6月7日にかけて、信越本線の沿線行進というのをやりました。北陸本線と信越本線を残せということを掲げてですね、大行進が行われました。私も一応参加して参りましたけども、そのことについてのちょっと簡単なPRがございます。その実行委員会の事務局長の大平(おおひら)さんのほうからちょっと一言お願いいたします。
 
大平(信越本線沿線行進の実行委員会事務局長)
 ごくろうさまです。貴重な時間、若干報告をお願いさせていただきたいと思います。ただいま話がありましたように、去る6月6日、7日、私たちはまず一つ、在来線の存続・充実、それから2点目はそのことにともなう地域の振興・発展、そして先ほど来からお話ありましたけれども、新幹線の停車駅の問題、工事費の問題、この問題についての沿線市民の納得できる解決、それから、新幹線開業、在来線の運行、これをふまえて利用者、それから地域、鉄道事業者、この3者による協議制度の確立。この要求スローガンを掲げて、6月6日、信越線沿線行進、これ6地区、のべ、それと翌7日は国民集会ということで680名、1都6県からの代表も含めて680名の参加のもとで、行進と住民集会を行ってきました。この成功の一番大きな力っていうのは、地域の会、3者のなかで4月19日に「直江津区域の会」ということが設立されて、糸魚川の会、直江津区域の会、それから妙高の会。地位の会といっしょに実行委員会をつくってとりくんだことで、沿線行進・住民集会を成功に導くことができました。富山公共交通をよくする会をはじめ、北陸のそれぞれの団体・組織からも物心両面にわたる支援をいただきました。本当にどうもありがとうございました。それで、今回この記録映画ということで、30分にまとめたDVDつくりましたので、ぜひ、財政的にも大変な情況もありまして、カンパも含めて、1枚1000円、後ろのほうに用意してありますので、ぜひご購入を、ご協力をお願いしたいと思います。以上です。
 
司 会
 どうもありがとうございました。それでは、最後の報告になりますが、「石川県から県境分離をみれば」ということで、中川さんの方からお話をいただきたいと思います。中川さんは、公共交通を守る石川県の会の幹事をしておられます。お願いします。
 
中川裕二(公共交通を守る石川の会・幹事)        
 公共交通を守る石川の会の中川でございます。公共交通を守る石川の会は、在来線の問題だけじゃなしに、県内におけるすべての公共交通の問題、バスの問題であるとか、鉄道の問題であるとか、あるいは町づくりの問題も含めて、いってみれば幅広くそういった活動もやっています。例えば、今、問題になっておりますのは石川県の北陸鉄道石川線(金沢市野町駅~白山市加賀一宮駅)の鶴来駅から加賀一宮駅までの2駅間約2qほどですけれども、これ、北陸鉄道が廃止申請を出したということで、昨年の秋ごろから廃止反対の運動を取り組んでいます。今年の11月に1年になるということで、11月になりますと自動的に法律にもとづき廃止になるということで、今は法廷協議会の設置を含めて、重大な時期を迎えているという段階であります。
 それで、北陸線の第3セクターの問題でありますけれども一応ここに書いてみました。それで先ほどらいからの富山県の岡本さん、それから渡辺さん、そして酒井さん、いろいろとお話されました。それがそっくりそのまま石川県に当てはまるというような中身でもございますんで、私としてみれば最後に報告をするということで、あまり報告することが(笑い)ございません。それで県のほうですけれども、現段階で需要予測調査を終えて、本来、当初の予定ですと、本年度に経営・運行の基本方針を出すという予定であったわけですけれども、これが来年に延びるということで、これはどういうことかというと、新聞によると国のほうがですね支援策であるとか、そういうものがまだはっきりとしたものが出されてこない。今ここでこういう方針を出すのはいかがなものかということで1年間先送りをしたということで、先ほどらいからから聞いていますと他県のほうがもっと進んでおるのかなと思ってたんですけど、さほど違いはないという情況がわかりました。それで石川県の場合、新幹線金沢開業すると県の問題点といいますか、一つはこの、県内が金沢を基点にして分離をされる。これは経営分離ですね、経営分離分離されるということで先ほどらい岡本さんから話がありましたように、そういう運賃の問題が出てきます。そしてこの金沢駅・富山県境が20.6q第3セクター。それから金沢駅から福井県境が約51.5q、これはJRが運営します。そして七尾線の関係ですけど、津幡〜和倉温泉駅間59.5qこれはもうJRが行っております。それからそのさきに、和倉温泉駅から穴水駅という区間が、現在のと鉄道が運営を行っています。ということで、一つは、この七尾線の問題を同時に進めています。それで、私どもこれまで2度県に対して要請を行ってきたんですけれども、七尾線の扱いについて、われわれの考えとしては、引き続きJRが運営すべきだということで主張したわけなんですけれども、県としてはこの、JRが運営できない、放棄をするということであるならば、県としても考えざるを得ないというのが現時点での情況であります。そういう点で、県内が分離をされるということと同時にこの七尾線の問題、これが複雑に絡み合って現在進んでおるということで大きな問題点が出ております。そのことによってどういうことになるかということで、先ほどらいから出ております、経営分離による運賃値上げ、初乗りによる運賃加算そういうものが当然生じてきます。そういうなかで、運行とかダイヤ、乗り入れ等の問題が県内の中でもそういうものが生じてくるんだということで、それから指令、車両基地とか検修、施設・設備等の問題これも第3セクターになる前に、JRとの共有の問題であるとか、あるいは第3セクターで持つのかいろんな問題でのこういった施設・設備の保有、重要な資産の問題が発生してくるということで、これらについても現在のところ県としては調査・検討の段階であります。
 それから、県のほうとして現在のところ需要予測調査、あるいはその収支の計算。こういうものも一応出ておりますけども、例えばですね、県の試算では、輸送密度1万3000人というふうに出ております。しかし、当初は新幹線の金沢認可が下りた時には1万5000人というふうに出ていたと思うんですね。これがつまり、人口減少のなかで2000人も減らされたなかでの試算ですよということで、収入としてはですね、旅客収入、それから線路収入。支出はこの人件費とか施設保存費、車両保存費、運転費とか。そういうことで開業初年度で2.2億円の赤字が出るということが言われておりますし、開業から10年後には25.2億円の赤字という数字も出されております。そういうなかで、37%の運賃値上げをしないと収支が均衡しないということが出されております。そういうなかで、いろいろ起きるであろうこうした運賃加算、運賃格差であるとかそういう運賃値上げの問題について、大変これから県民・利用者にとっての重大な関心事になってくるだろうというふうに思っております。
 それから「石川県から県境を見れば」ということでありますけれど、第3セクターでの県境は今回は富山県のみであり、金沢以西はJRが運営していますから。県が01年の11月13日に旅客流動調査というものを行いました。これは一つには、終日、全列車利用者数これ67,377人ということで夜行列車は除いてあります。それで普通列車を利用された方がこのうちの70%、それから特急列車を利用された方が30%ということであります。そこで県境の関係で見ますと普通列車では、県内から富山県方面へ5,321人、11.3%。それから、北陸本線から富山県方面は11.1%、七尾線から富山県方面は0.2%であります。そういう点で、県内のほうから富山県方面へ移動される方が11.3%ある。というわけで県のほうもですね富山県に対しての旅客流動調査といいますか、そういう点での情報交換をしてはどうかという隣接県に対する対応が出ております。
 それから福井方面ですけども、普通列車では、194人、4.2%で、特急列車では、富山県方面は20%、福井県方面が47%ということで、福井県方面への特急列車の利用者が富山県方面よりも多いということが、倍以上ですねこれを見ると。ちなみに県内通過線利用は28%となっており、その点この新幹線開業時であるとか、それ以降の利用者数というのはかなり減少してくるであろうというふうに考えられます。サンダーバード、しらさぎの富山乗り入れも重要になってきます。そういうなかでもっと、この需要予測調査というものをさらに細かく進めて、県の方としてはそういうものを基にしながら、来年この運行・経営に関する基本方針、これを作り上げていきたいというのが県の考え方であります。
 それから、2番目3番目として運賃が割高になる。これは先ほどらいお話がございましたその通りでございます。経営分離による運賃の値上げ、それから県境分離による初乗り運賃ということで、2乗あるいは3乗の初乗りですけども運賃の値上げが利用者に重くのしかかるということで、運賃値上げがさらにこの利用者数の減少につながる。減少するから運賃を値上げするというこの悪魔のサイクルではないんですけれども、これが繰り返されるんではないかという懸念を当然県も持っております。これに対してどうするのかというと、経営の合理化といかにしてたくさんの利用者を作り上げて行くかということが検討されています。あと利便性の問題で一応出しました。先ほど渡辺さんのほうからも話がありましたように、県境分離によって現在の優れた鉄道システムが壊されるということが当然考えられます。指令、運行、ダイヤそういったものが各県の事情により一体性・一貫性というものが当然なくなってくるということであります。それから運賃の割高になる場合によっては県ごとの運賃格差というのがどんどん出てくるんではないかということも考えられます。
 それから5番目として災害時ですね、あるいは異常時、そういったときの対応、あるいは車両の運用というのが県単位で果たしてどこまでできるのか、うまくできるのかということでありますけど、これも先ほど佐藤さんのお話がありました。どこまで指令が集中的にできて、いろんな対応をする。早急に、速い復旧活動をするためには、どうしても一本の指令で集中的に具体性を持ってやることが、円滑にコントロールができて復旧が速く見込めることが出来るのではないかといふうに思っております。
 それから6番目に、車両基地とか検修設備、その他の施設・設備等の維持管理に大変なコストがかかるということであります。石川県の場合、車両基地であるとかあるいは検修設備、各県にもあるんですけども、現在の金沢総合車両所、全般検査であるとか要部検査であるとか、そういった重要な検査を行っております。車体と台車を分離させて、解体をして、必要なものを取り外して、それで検査をする。そういう修繕を車両所でやっております。これが各県にそういった施設・設備というものが果たしてあるのかどうなのか、先ほどいろんな話が出ましたけれども、そこまでの設備というのは私はないと思いますし、もしそういう設備を、施設を作るということになりますと、財源が、経費・コストがかかるということになると思います。その点では北陸線、現在のように、車両全部すべてをですね、そういった一箇所で検修・修繕するようにして委託をするというやり方のほうがまだベターなんではないかというふうに考えます。
 最後に7番目としては、県単位では国、JRに対して物を言っても力にならない。やはり県単位ではなく、それぞれの県が一緒になってやったほうがより効果的に力を発揮できるんじゃないかということで書いてみました。だいたい以上ですけれどもこれで終わります。
 
司 会
 それではこれで、5人の方々のご報告をいったん区切りをつけたわけでございますけれども、何か本当は一区切りいきたいなと思いますけども、時間もかなりすぎておりますので、ここでフロアからのご質問やら意見やら、そういうもがありましたら、ぜひお出し願えればなと思います。どなたからでもよろしゅうございますので、率直なご意見やら、意見やらありましたらよろしくお願いしたいと思います。挙手でお願いいたします。いかがでしょうか。
 
フロアからの発言・質問
 
Aさん
 富山新聞の「高岡400年」特集でも並行在来線についてですけど、今日お話されたことが課題としてあげられています。一つは、並行在来線の県の考えですけど、県によると、運行ダイヤだけでなく、運行を支える施設やシステムなど検討課題が多いと。開業まで課題山積みということか、これから大変そうだ。ということで書いてありますので、運行ダイヤだけでなく、運行を支える施設やシステムも検討課題が多いということで、並行在来線問題を県も訴えているよと。私は運賃の問題で、岩手の、あこのもんで。学生割引とか学割とかそういう運賃システムが導入されているのか、なんかあの、地元のニュースを見ますと、学生さん高校生ですけど、運賃がものすごく、学割がきかなくなって、高いもんで、なんか宿舎や寮とかそういうところに引っ越そうということを岩手日報かなんかで聞いたんですけども、そういうことをなんかちょっとお聞きしたいんですけど。
 
司会 
 ほかにございませんでしょうかね。どうぞ。
 
Bさん
 にいがた自治体研究所の〇〇です。先ほどの渡辺さんのご報告を聞きながら、明らかに北陸新幹線開業時の最初の国やJRの言い分が破綻をしている姿がよくわかりました。しかし、今の状況は、それを解決する県という知事を中心とした行政体が解決能力を持たないでどたばたしているというような状況です。それで、どうやればいいのか、また渡辺さんのほうに教えていただく内容に戻るのですが、九州新幹線では政府・与党合意を破っているのだというご指摘がありました。そうではない。つまり自治体が下をつくって、上をJRが運営します。渡辺さんがおっしゃられたように、この北陸新幹線もJRに経営をさせる以外には、いま願っているような最低限の住民の要望をかなえる道はないのではないかと思います。それはすでに政府・与党合意が決められた後、九州では実現したわけですね。私たちは、政府・与党合意を見直せという運動をずっと続けてきましたが、それをもう一歩、政策的に前出しをする段階にきたと思います。14年開業で場合によってはもう少し早まるかもしれないという状況のなかで、時間が迫ってきているわけですから、われわれの運動の側ももう少しテンポを速めないと立ち遅れるのではないかと心配しています。みんなで検討しあって、各県それぞれに必用な対応策を考えて動き出すような、そういう組み立てをすべき段階ではないかと思います。
 
司会 
 よろしいですか
 
Cさん
 富山市民です。岡本先生に1点お尋ねします。先ほどベルリンのバリアフリーの話をされました。大変参考になったんですが、あれは歴史的な、文化的な状況から生まれたんでしょうか。それとも法的な市の条例とか、市の法律とか、そういうことでできたのでしょうか。ご存知でしたら。それから、もう1点は、どなたか、いまBさんが言われたことに関連しますが、交通基本法というお話がありました。これはどんなものだろうか。そして、それには、いま私がいいましたような、いま今日お話があったような状況を、変えるというか、変えさせる法律になる可能性があるんだろうか、その方法というのはどういう形で実現するんだろうか。ご存知の方がありましたら、お聞かせ願いたいと思います。
 
司 会
 いろんな角度からありました。とりあえずいままでの質問やら、意見があったわけです。またご提案もあったわけですが、どちらからでも結構ですけれども、とりあえず守備、多い岡本先生の方からいかがでしょうか。
 
岡本勝規さん
 最初の方の「学生の運賃が上がるのか」についてですが、いわて銀河鉄道になると通学定期代が馬鹿みたいに上がるので、それでは費用負担に耐えられないという問題があって、そのことで、緩和措置がとられたんです。でも、それは暫定的なもので、激変緩和措置というのが2,3年、(?)とおもいますが、ようするに極端に上がらないように、ということで通学定期とかの値上げを若干押さえ気味にするという措置がとられました。これは恒久的なものではないものですから、いまでは、運賃値上がりが100%反映された状態になっているわけです。ですから当然、通学の足として利用していた学生には、家計に大きな負担が生じて、さきほどご指摘がありましたが、通えなくなる問題がおきています。この富山や石川、新潟の並行在来線での通学の問題に関しましては、経営分離されるだけで運賃が値上がりする可能性が多々あります。その上、県境分離されますと…。たとえば私の勤務校ですと、けっこう多くの学生が金沢から通ってきています。それから以前、黒部市の方へお話を伺いに行ったら、糸魚川の方面から新川地区に通学している学生もいるそうです。そういった県境を越えた通学利用客は、二重の運賃値上げでものすごく打撃を受けて、減少していくということは大いに考えられるわけです。ですので、県境分離の問題は、もしかしたら教育問題になるかもしれない。(笑い)それとでですね、先ほどベルリンの例でお話がありましたけれども、あれは文化的な問題でありますだろうかというお話ですが、もともとその、ドイツにおいて公共交通が発展していった段階では、やっぱり会社ごとにばらばらに路線を延ばしましたから、会社ごとにばらばらに運賃設定がされておったわけでございます。しかしながら、1980年代ぐらいになってきてですね、公共交通、利便性ということを考えて、それにまあ、どこも赤字になってですね、やっていけないということがありました。それで、公けでバックアップしなければいけないという方向の中からできあがっていったんですね。ですので、ご質問に対する答えとしては、文化的な過程でできあがったのではなくて、やっぱり、行政側の指導と基本的な政策の裏づけがあってできたと言えます。できれば日本もああいうふうにすることによって運賃障壁が低くなれば、お客様も増えるという考え方に見習うべきで、また県境分離して運賃高くしてどうするんだ(笑い)という話ですよね。そのようなところですか。
 
司 会 
 あと、交通基本法についてはいかがですか
 
岡本勝規さん
 交通基本法はですね、よく交通権学会とかでも議論になっているものでして、その法案自体は出ていて、民主党が国会に提案したものもありますね。ですから、国会審議の対象にはなっているわけです。提案しているのはですね、交通権という移動する権利を保障しろということが主眼の法律です。フランスにおいては、こういう権利が法律上保障されておってですね、それゆえに公共交通を重視しようというような話の流れになっていくんです。まあ、人間が生きていくうえで社会権の一つとして交通権というものを認めさせようという、そういう運動の末に誕生した法案であります。この法律ができれば利便性の向上につながるのかということに関しては、つながる(笑い)ということにしております。ようするに、法的に移動する権利が侵されてはならなくなるわけですから、当然、交通サービスの維持という面で違いを発揮するはずです。おそらく必要最低限のものは維持しなければならないということになると思います。少なくとも例えばですね、県境分離をしたあげくにしなの鉄道みたいにちょん切って廃線にしてしまうとかというようなことは食い止められる可能性がある。こんなところです。
 
司 会 各パネラーの方でいまの質問のなかで何か。
 
渡辺眞一さん
 いまの交通基本法の話、もう少ししたいと思います。誰もが、どこへでも安全で移動できる権利を持っていると。その権利を保障する、法体系をつくることです。日本には鉄道事業法ですとか、バスの運行に関する法律ですとか、さまざまなものがありますけれど、その上位法がないんですね。私たちはその上位法をつくってはどうかと。先ほど岡本さんが言われたように、県境分離をして、会社をまたいでいるから、次々と初乗りの運賃が変わるようなことは許さないんだと。人の移動する権利というのが、運賃の上でも、移動の上でも保障されていく、ていう発想なんですね。この問題は法をつくる、どんなものをつくるかっていうのは、国民合意が必要なものですから、そういう国民の運動も起きなきゃならないですね。
 それともう一つ、鉄道の場合には駅があって、街ができ、その駅はコミュニティバスがあって、街をぐるぐるっと回って、駅に人を集めてくるということも大きな仕事であると思います。そのへんまでの仕組みとしても考えていく必要がある。岡本さんは運賃制度の問題を話されましたが、ドイツのテンプリン市(旧東ドイツ、ブランデンブルク州ウッカーマルク郡)では、市内を走っている都市バスをすべて無料にしている。なぜ無料にするかっていったら、街へ人が移動し、ものを買い、人が元気に歩けば、それだけ自治体としては間接的には市の税収も上がるなどという考えであります。そういう考え方も世界には出てきているわけですね。ですから、移動機関っていうのは、どういう役割を果たすかというのは、どちらかというと社会の進歩の中で考えなければならない、というのがありますので、そういったものを法の中に組み込んでいくという方法をとったほうがいいのではないかというので、先ほど交通基本法という話に触れました。
 それから、今日のシンポジウムをやるのにですね、私たちの会で沿線自治体全部訪問したんですね。できるだけ対話をしてきました。そこで感じるのはね、自治体によってすごい温度差がある。その温度差の中には、経営が大変だっていうところから、それから、県境どうなっとるがかと心配されとるところから、それから、これは県で話されているんだから県がどういわれるかで判断してるんだ、とかですね、自治体によって違うんです。しかしですね、経営が大変になるというのは一致しています。ですから、先ほど言われるように、新たな面での政策が必要なんだと思いますね。
 並行在来線の運営にとって県境問題は、一つの壁になってきているんだと思うんです。県境をつなぐにはいろいろな困難があるんだけれども。そのハードルをどう飛び越えるかということです。矛盾点を全部ついてですね、もう動きがならんのだと、国もJRも折れるしかないんだと、そういう段階にしていきたいですね。
 今日JR関係の方もたくさん来ておられますけど、富山県内ですべての列車検査をやってないんですね。大きなものは松任の工場でやってるんですよ。富山県だけで鉄道を動かすなんていうのは、やろうとすれば莫大な金が要る。青森県では約180億といいましたけど、それだけですむのかなという感じです。また、交流でしょ。もし直流っていうことを考えたら、さらにお金がかかるのです。
 
岡本勝則さん
 すいません、付け加えたいことがあります。その、ぶった切られるという話でちょっと付け加えていきたいんですけど。県境で分離して、新潟は新潟、富山は富山、石川は石川とかいう具合に別会社になりますと、県境のむこうについては口出しできなくなります。富山県とか富山の人は新潟のことで口出しできませんし、石川のことで口出しできません。富山と新潟の間が、富山と石川の間が廃止されることはあまりないとは思いますけど、新潟の方では、バス転換というような話が市議会ですら出てくるというふうに聞いております。したがって、万が一ですね、新潟のほうがもうやめるわ、というふうに手をあげると、県境分離されている以上、何もいえない。そういう恐れがあることを、ようするに何もいえないんだということをわかっていて県境分離することは非常に危険だと思いますね。まだ県境分離していなければ、まあ、まあ、やめるなんていうなよとか言えますけど。その点は非常に気をつけたほうがいいです。
 
司 会
 あの、運賃の問題で高校生の話がね、どの場合にも大きな問題になっていると。身近な例でいいますと、ライトレールがJRから変わりましたね。あの時、運賃が一律200円になりました。最低運賃が160円から200円になるわけだから、学校の通学の範囲を、奥田中学、岩瀬中学、北部高校、みなあがってしまう。それで結局そのことが問題になって、1ヵ月定期1,000円、3か月定期3,000円、6か月定期6,000円という形で補助するということで一応決着ついたんですけれども、これはそのとき在学中の人はそういうことになったんだけど、翌年度に1年生になったという人はもう対象外ですからね。そういう形ですすんだというのも、富山県の例としてはあることを紹介しておきます。ほかに、はい。
 
Dさん
 今日はいろいろお話ありがとうございました。4つぐらい、簡単に感想を言わせていただければと思います。まず、新潟の知事さんのお話が佐藤さんからありました。大変、マイナスの評価のようでしたけれど、私は泉田さんの発言を2月議会でうんと使わせていただきました。実をいうと、富山県でも6月県議会で補正予算をくみました。そのなかに81億円の新幹線建設費の地元負担金が計上をされました。補正予算で新幹線の建設費がつくというのは初めてだと思います。新幹線の建設費を、借金でするわけですが、補正予算でつけますと、補正予算財ということになりますので、30年後に返すと100%かえってくるんですね。交付金として。だからいままでそんなことはしたことはありませんでした。しかもその上に、今度は政府の、総選挙まえですので、自民党は負けそうだということで、なんとかつかまらなければいけないということで、地方にばら撒き予算をいたしました。  その一つに公共事業の臨時交付金というのがあります。この新幹線地元負担81億円の9割をこれで補填されることになったんです。だから、30年後に借金返す時に、全部一応建前は返ってくるといわれながら、借金増やすことになるので、すぐ今年度、その9割をあげましょうということになったんです。だから、9割もらって、後で100%返ってくる。どうしてこういうふうになったのかというのは、やはり全国の運動によるものだと思います。直接は、昨年度末から、新しい建設費増にともなう負担金をどうするかということに対して、各県の知事が異論を唱えたと。しかも泉田さんの場合は、42億円出さないという予算措置を今回とられたということについては、一定の衝撃を隣県の知事に与えたっていうことは間違いないと思うんですね。あれは1,100億円補正予算で新幹線の建設費前出しをすると。42億円を払わない新潟県には箇所付けをしないぞというふうに恫喝をされて、周辺の知事が、新潟県が払わないせいで、北陸新幹線にお金がこなくなったらどうするんだということで、推進大会で、新潟県に批判のまとが集中したという経過があるので、泉田さんは、ちょっと積極的な発言をしたけれども、ぜひ、積極面も。よその県の県会議員がよその県の知事を擁護する(?笑い)けれど、富山県では前向きに使わせていただきましたので、よろしくお伝え下さい(笑い)。
 それから2つ目ですけど、Bさんのほうから九州新幹線の問題について、これを目標にしたらどうかというお話がありました。その賛否は、私はどうのこうのという立場ではありません。2月、6月の県議会で、県議会での知事の認識・答弁を紹介だけしておきたいと思います。九州新幹線方式については、富山とは条件が違うと。いろいろ参考になるということを前提のうえで、九州の場合は、九州新幹線の関係自治体の中の複数の首長さんが、新幹線はいらないとがんばってきたからそうなったんだと。いらないっていうがんばりがあって、着工が遅れていたので、どうにもならんようになったので折れたんだと。富山県の場合は、早々と沿線の首長が合意にサインしてはんこついてしまって、差し上げてるもんだから、あんたたちは合意したじゃないかというふうに国から言われたら、二の句も告げない立場なんだと。だからそんなに簡単にうまくいかないんですよ。っていうのは、知事の答弁です。
 富山県の。もう一つは、九州新幹線のその地域は、やっぱり単線、複線、長さ、利用者数、あらゆる面で違うと。貨物があるないということも含めてね。まったく違うので、参考にはするけども、目標にすることはできないと。これは直接は2月県議会のやりとりなんですが、そういう点でも今後、いろんな意見交換が必要かなというふうに思っています。 3つ目ですけど、私は今日のお話を伺いまして、やっぱり、5,6年前にこの会に結集されたみなさんが、富山県に提言されたようなことが、いまの知事の発言にかなり取り入れられているということに大いに自信をもっていただきたいというふうに思いました。北陸本線における貨物の役割を認識していませんでした。知事は、それから県当局は当初。貨物線の使用料の引き上げを図るべきだということに対する、私の質問に対する答弁も最初は半信半疑でした。一つひとつみなさんの会は、申し入れ書、政策提言、いろんなことを県の担当課を訪ねて、いろんなことを懇談と称してレクチャーをするなかで、県の担当課の認識が大きく変わってきたんだと思います。私たちがいま言ってることと、知事が言ってることと、この問題ではあまり決定的な違いがなくなってきているというのが、やっといまの時期の到達になったのではないかなと。上下分離もありといっていますし、最初私の質問に県境分離は、経営上は県境分離が前提だというふうに答弁を正式にしていましたけど、それもいまやありません。プラスもあるしマイナスもあると。今後考えていきたいと。隣県と協議をしていきたいと。あくまでも自分の県の計画を想定する作業が先だと。自分の県はどう考えるかというスタンスを持ちながら、JRと交渉し、他県と協議をする必要があるから、いまはまだやらないんだけれども、後は必用だと思っているんだというふうなスタンスで、準備を富山県は富山県でしてきたので、いよいよこれからかなっていう段階だと思います。共同という点では早くなかったのかもしれませんが、各県が、各県の住民のみなさんに働きかけ、各県の自治体にも独自に働きかける作業の積み重ねがなければ共同はないというふうに、私は今日改めて思いました。そういう意味で努力してきた甲斐はあると、出てきているんではないかなと思います。最後ですけど、私は今日のシンポジウム、とても印象的だったのは、どはしさんのお話でした。
 私たち、JR、乗せてもらうばっかりのもんは、どうやって列車が動いているのかというシステムについてはまったくわかりません。1つ1つの職場を細かく解説をしていただいて、どうやって電車がスムーズに安全に動いているのかっていうことを、私たちが教えていただくっていうのがこんなに大事なのかというふうに思ったことはありませんでした。JRのみなさんは、やはりこの問題で、県民や自治体や議員たちに対しても、積極的に乗り込んでいっていろいろ教えていただいて、運動の先頭にたっていただくということが、本当に有意義なことだということ、感じました。JRの仕組み、電車が動く仕組みを知らないんだっていうふうに思うんですね。で、現実をやっぱり知っていただくということはどんなにプラスかっていうことに対する誇りをもっていただきたいというふうに思って、感想にしたいと思います。終わります。
 
司 会  
 他に。
 
Eさん
 中越沖地震が、数年前にありましたのですが、そのときにJR貨物がどういう対応をとったかといいますと、その間、トラックの代行輸送を全部とったんですよね。ですんで、それから、雨だとか風だとか、早急なかぜ、強風のとき、そういうようなときに、代替輸送といって、何便も確保しておるんですよね。JR貨物は。そして、そのジャスト・イン・タイムということで、荷主に対して信用を確保していると。そういう対応もとっているんで、ことと場合によっては、廃止されたことを考えてでないと。その間はトラック代行輸送ということもやりかねないというのが、地震のときの貨物の対応ということで、そういうのを感じたことがありまして、あながちその、運輸局の人が言っているように、北陸線は日本海の縦貫線で、貨物の量だってあるから、なくなることはないんじゃないか、なんていうような、そういうことは通用しないんじゃないかということを、地震の際の代行輸送のなかで感じた点です。それから、運賃の問題なんですけど、先ほどいわて銀河鉄道のほうで、いわゆる知事と、利用者に対する便益ということで、いろいろなその、なんていますかね、いろいろな運賃システムなんかをとって、できるだけこの地域に還元していくという、こういうお話があったんですけれども、こないだ、〇〇さんと2人で、地域のFMの地域放送のなかでぜひ話してもらいたいということで呼ばれたんですけど、その際にやはりこの運賃制度といいますか、運賃問題が大きな話題になりました。そこで話し合われたのは、利用者が、距離によって運賃が定められるというようなやり方ではなしに、その共通点的な運賃てなことで、鉄道も、バスも、さらにそれを利用することによって、地域の商店街の商品を購入する際の割引の対象になるとか、さまざまな工夫をして、公共交通の運賃というふうに位置づけて、やっていくことが必用なんではないかというような立場で話し合われてきました。
 で、総合交通特別会計ですか。そういうことも指摘をされておりますけども、そのへんのことについて、県の報告とか、いろいろな報告の中では、もう利用者がどんどんどんどん減っていって、運賃を値上げすれば減っていく。そういう報告だけなんですよね。そうではなしに、いま言われたような、銀河鉄道のような、ああいう形での運賃制度といいますか、そういうものをつくっていくことによって、逆に需要なんかもある程度増えるということにつながっていくかどうか、未知数な部分もありますけれども考えていくことも大切だと思いますし、そういうことが、諸外国の中でも、現実のこととして出ているわけなんで、そういうことも、総合特別会計の中に含めて、どういう形で理屈立てなり理論立てなりやっていったらいいのか、ということをわかりやすく話してもらえればありがたいなと思うんですけれども。それでよろしいですか(笑い)。
 
司 会
 他に。それではあの、一応時間も過ぎておりますので、フロアからのご発言はこれくらいにさして、もしパネラーの方で最後に一言というのがありましたら。
 
佐藤一弥さん
 泉田新潟県知事が言い出している北陸新幹線の貸付料の地方還元の内容を報告しておきます。開業済の整備新幹線の年間のリース料は、長野新幹線は高崎・長野間で175億、東北新幹線の盛岡・八戸間は80億、九州新幹線の新八代と鹿児島間は20億です。長野新幹線の場合は、長野・高崎間の建設費の返済と貨物調整費に充てられています。北陸新幹線が開業した場合、新潟県内でJRが国に支払う貸付料はいくらになるのか。30年間で2,100億円です。このうち建設費の負担割合に応じて3分の1の700億円の還元を泉田知事は国に求めました。そういうシステムを新たにつくれということなのです。ですから、30年間で700億円の還元が実現をすれば、赤字が386億円ですから、らくらくペイするということなのです。ぶちあけた話(笑い)。しかし、県の交通政策課自身がこの実現は「ハ−ドルは高い」としています。いま大事なことは、政府与党合意を見直し、国とJRに将来も安定的に経営できる条件をつくらせることです。ここにむけて各県が力合わせて運動することです。思いつきでスタンドプレーばかりやることではないと思います。並行在来線を維持・存続させていくうえで一番大切なこと、矛盾の根源に向かって関係県が力をあわせ、集中してがんばっていくことが大事ではないでしょうか。
 
司 会
 他のパネラーの方いかがでしょうか。それでは、時間もございますので、このへんであのー、この会を閉じたいと思いますけれども、最後に代表世話人であります奥村先生の方からご挨拶をひとこと。
 
奥村義雄(公共交通をよくする富山の会・代表世話人、富山大学名誉教授)
 今日は大変暑い中を長い時間ご苦労様でした。昨日の新聞でしたか、4日連続の真夏日ということ書いてありますけれども、それからすると、5日目、6日目になりますか、とにかく暑い日が続いていますが、きょう報告していただいた方を含めて大変ご苦労様でした。
 新幹線の問題というのは5年後に迫っているわけですけれども、しかし、私たちはまだこういう形で論議しているのと比べると、といいますか、一般の人々、直接その地域に関する人々の間の関心というのがまだまだ低いと思うんですね。今日はJRからの経営分離とか、県境分離とかについて、そういうのを中心に報告してもらいましたけれども、そういったことについてもですね、直接関係がありそうだと思われるその地元の人びとの関心ていうのがもう一つ。で、この会としてもですね、これも確か、北陸新幹線の新規着工が決まった頃に発足したと思うんですけれども、あのー、運動体ではないなと。そして、自治体とかの関係、自治体とか議会等への問題の提起とか提言とかですね、これを中心としてとりくんでいくというわけで、今日までやってきたわけですね。しかしまだ、まだといいますか、いまいいました状態で、一般の人びとへの啓蒙というとちょっと重い役割でございませんけども、関心の喚起とかですね、どんどん現状がどうなっているのか、特に、すでに県境分離されてるいわて銀河鉄道と青い森鉄道と。そういうところでどうなっているのかといったようなことも含めて、まだまだ何も知られていないのじゃないかと思いますね。ですから、そういうことに今後、やはりもっと力を入れてとりくんでいく必要があるんじゃないだろうかというふうなことを思います。
 先ほどフロアからの発言もありましたけれども、直接関係する自治体だけじゃなくて、関係すると言いますか、地元のですね、自治体だけじゃなくて、いわば共同したとりくみですね、情報交換とか、お互いに総括して学びあうっていうこともやはり必要でしょうけども、やはり共同の形で、今後強力に、一般の人々へ、理解する働きかけも含めたとりくみに、これも今後とくに、あともう5年ていうことになっておるわけです。これからもお互いにこういう会を持ちながら、人々への関心の喚起とか、呼びかけとか、あるいは関係自治体にも働きかけるとか、可能な範囲のとりくみをやっていきたいと思います。今日はこのような長い時間、ありがとうございました。
 
司 会 
 どうも長い時間、本当にありがとうございました。
 
(文責:公共交通をよくする富山の会事務局)