公共交通をよくする富山の会は2003年9月29日、富山市長宛に下記の「JR富山港線の路面電車化について−『提案』」を届け、今後の富山市の検討のなかに加えて頂くよう要請をしました。
 
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JR富山港線の路面電車化について−「提案」
 
 JR富山港線を路面電車に変え新型路面電車(LRT)を導入する富山市の構想は、市内の公共交通に新たな展望を開くものです。私たちは、この路面電車化構想が、将来にわたって市民の暮らしのなかに息づくことを願い、さる7月21日には「富山港線探訪と路面電車を考える集い」の開催や、市民アンケートなどをおこなってきました。また、貴職に対して2度にわたる質問をさせて頂き、ご回答を頂きました。これらの内容などもふまえ私たちは、今の時点での「JR富山港線の路面電車化について−提案」をさせて頂きます。
 
1、自動車優先のまちづくりから、人と環境にやさしいまちづくりへ
 自動車交通に過度に依存した社会は大きな曲がり角を迎えています。一方、2013年に向けて北陸新幹線の建設工事がすすんでいます。この県内公共交通をめぐる新たな進展のもとで、富山港線と市電を結び、将来的には富山市郊外に向けて縦断する新型路面電車(LRT)が展望されることになれば画期的なことと期待をふくらませます。
 JR富山港線の路面電車化は、暮らしを支える足、人と環境にやさしいまちづくりの役割を
担い、富山市を縦断する公共交通体系の柱とする位置づけを明確にしたものでなくてはなりません。
 
2、市民の総意が生かされるJR富山港線の路面電車化へ
 多くの市民がJR富山港線の路面電車化に関心と期待を寄せています。それだけに、市民との合意形成を大切にし、将来にわたって日々の暮らしのなかにある路面電車として活気づくことを願い、次の提案をします。
@新設ルートの決定は、市民「公聴会」を開催して
 JR富山港線の路面電車化に向け、市民との合意形成のための努力をいとわないことこそ、持続可能な路面電車を生みだします。新設する路面電車ルートは、市の新設ルート案を示しつつも、沿線住民・市民の意見を汲み上げ、合意形成をはかることです。 そのために、市民「公聴会」をおこなうことを提案します。この市民「公聴会」は、新設ルートの策定とともに、工事期間を通じて開催し、工事に関わるトラブルなどの問題回避にも役立てます。
 
A「市民委員会」(仮称)の設置と新聞紙上での意見交換を
 JR富山港線の路面電車化に向けた基本計画・事業計画の立案、作成、計画の実施、そして工事過程、完成時も含めて、すべての過程に市民参加と合意形成をはかることです。
 その具体化として、市民、利用者、商店街、交通労働者、交通事業者の代表などによる「市民委員会」(仮称)を早急に立ち上げることを提案します。また、新設駅、ルート、施設などの事業完成までの全期間を通じて適時「公聴会」を開催するとともに、地元新聞紙上での意見交換の場を設け、市民とのコミュニケーションをはかることを提案します。
 
B富山駅・岩瀬浜駅までの15分間隔運行を
 沿線住民の多くが「路面電車化」に期待するのは、「現在の市電のようにフリークエントな、利便性の高い路線になる」ということであって、決して「電車が路面を走る」ということではないのです。この違いをふまえた上で運行計画を捉え直すことが必要であると考えます。
 路面電車となる富山港線の運行間隔については、「蓮町まで15分間隔、岩瀬浜までは30分間隔で運行」とのご回答を頂きました。市民の願いから、富山・蓮町間は15分間隔はもとより、岩瀬浜までも全区間同じ間隔で運行することを提案します。
 また、高架化完成時には、JR富山駅のなかに停留所をつくることを提案します。
 
C現行運賃を維持し、今から運賃体型は市電・JRとの通算を前提に
 路面電車化後の運賃体系については、2つの点を考慮する必要があります。ひとつは、将来的に運行が市電と一体化されるという点。もうひとつは、もともとJRとして運行されていたという点です。このことに対応して以下の3点を提案します。
 .運賃体系は市電と分離せず、今から市電との通算を前提とした一体的な運賃体系にすること。また、路線バス等も含めたゾーン運賃制などの導入を検討することを提案します。
 .現在、富山港線の各駅からは、JRの各駅まで通算で乗車券を購入することができます。仮に路面電車化後の富山港線の運営主体がJRにならなかった場合でも、富山港線の新たな運営主体が、JR各駅と運賃通算ができるかたちでJRと連絡運輸協定を結び、従前通りの乗車券が発行できるようにすべきです。
 .JR富山港線の現行運賃を維持することです。
 
D富山港線沿線にパーク・アンド・ライドの設置と循環バスの配置を
 路面電車と自動車の上手な組み合わせがあってこそ暮らしに便利な公共交通機関となります。私たちのアンケート調査のなかでも、適切な地域にパーク・アンド・ライドを設置し、交通不便地域に循環バスなどを走らせることを多くの市民が望んでいます。
 岩瀬浜駅にパーク・アンド・ライドを設置するとともに、各校下ごとに住民の合意のもとにパーク・アンド・ライドの設置をすすめ、交通不便地域をつなぐ循環バスなどに計画的に取り組む
こと。また、市内を循環する路面電車の復活を提案します。
 
E「最低限の施設」にも、しっかりとした安全対策を
 JR富山港線の路面電車化後、富山駅の連続立体交差が完成するまでの数年間は市電に接続しないことにより、新たな設備・施設を建設しなければならない問題が発生します。この問題について、「最低限の施設を建設する予定」とのご回答を頂きました。
 「最低限の施設」でといっても、変電所(600V給電)、車両の日常の検査・補修、定期検査を実施する施設と要員や、信号、踏切遮断機、ATS、電車線、通信線、線路の点検補修要員、それに運転指令も欠かせません。また、乗務員の詰め所や乗務員の研修体制などを確保することは当然です。
 路面電車の運行にあたっては、安全運行のための基準を確保し、労働者には労働基準法の厳守で、利用者が快適に安心して利用できるようにすることが求められます。
 
F富山駅高架化工事完成までは仮設線路等による市電との連絡運行を
 次第に明らかになるJR富山港線の路面電車化計画のなかで、沿線住民が最も関心を寄せたのは、富山駅高架化工事完了まで市電と接続されないということでした。これに対して、高架化完成までは「線路の仮設でも良いから市電とつなげてほしい」との要望が強く出されています。自動車優先のまちづくりから、人と環境にやさしいまちづくりへ踏み出すために、現在の道路網を生かして、市電との連絡線路を仮設できないかどうか検討することを提案します。
 特に連絡が可能となれば、路面電車化にあたって新設しなければならない施設・設備のいくつかを富山地鉄の現有施設・設備で賄うこともでき、この方面でのコスト削減につながることから、線路仮設のコストをある程度相殺することも期待できます。
 
G運営主体にJRを参加させるなど「JRの責任」の明確化を
 路面電車化後の運営主体についは、現在「JR富山港線路面電車化検討会」にてご検討中との回答を頂きました。また、「JRの責任は重い」との回答も頂きました。JR富山港線自体はいわゆる平行在来線ではないことから、様々な運営主体を、市民の願いを生かして自由に構想し、実現できる可能性があります。
 そこで、改めてJRとの関係を整理した上で、以下の提案をいたします。
 .私たちが行っている沿線住民アンケートでは、回答者の大多数はJRが引き続き運営主体となることを望んでいます。国の財産を受け継ぎ、鉄道の再生の夢を託されたJRが路面電車化後も運営をすべきであり、このことが自然なかたちであると考えます。
 .仮に富山港線の運営主体をJR以外の事業体が引き継ぐ場合、市は「上下分離」方式も視野に入れていると報道されていますが、事業体としてどのような形態がとられようともその事業体に必ずJRが参加し、富山港線の運営に携わることにすべきです。
 .もし路面電車化後の運営主体にJRが参加しない場合は、JRは路線の施設・車両などの富山港線の運行に関わるいっさいを、新たに富山港線の運行を引き継ぐ事業体へ無償で譲渡するよう、市はJRに要求するべきです。
 
HLRT化へ、新型車両の開発と国の補助制度の充実を
 市電とつなぐ路面電車に向けて低床、低騒音、スピード機能、登坂能力のある新型路面電車(LRT)の検討、鉄道総研が開発した架線不用の路面電車導入の検討も行うことを提案します。安くて高性能の一車両(単車)型LRTの開発、新たな法律の整備、路面電車運行補助制度の創設など、市民とともに国に働きかける運動をすすめることも大切です。