1.『マテリアル/糸地獄』を見て
1)ストーリー解釈について
帰りの電車の中でずっとある歌の一部がリピートしていました。
尾崎豊の『卒業』 「この支配からの卒業〜♪」
(こんな事を言ったら怒られるかもしれませんが。)
私は演劇というものが、全然わかりません。演劇という大きなくくりも、
『マテリアル/糸地獄』の持つストーリーもメッセージ?も・・・全然わか
りません。そもそも演劇ってなに???私の見たものは何なんだろう
…?って感じです。「う〜ん…、よくわからん・・・」と言うのが率直な感
想です。
で、私が記憶しているわずかな情報をちょっとずつ思い返していくうち
に、この歌が流れて来ました。
糸屋?娼家?での支配とか、親子という血縁関係との支配とか、時
代・国からの支配とか、繭を取り巻く環境を考えたり、繭の事を考える
と、何故かこの歌が浮かびました…。気になって改めて歌の歌詞を見
てみると、なんとなく繭のテーマソング(繭に限らず?)のように思えて
も来たり…。
♪幻とリアルな気持ち感じていた…
♪何に従い 従うべきか考えてきた…
街ふらつき 俺達は風の中
孤独 瞳にうかべ 寂しく歩いた…?
逆らい続け あがき続けた
早く自由になりたかった
信じられぬ大人との争いの中で…
この支配からの卒業…♪
卒業して いったい何解ると言うのか…♪
人は誰も縛られた かよわき子羊ならば…
俺達の怒り どこへ向かうべきなのか…
これからは 何が俺を縛りつけるだろう
♪あと何度自分自身 卒業すれば
本当の自分にたどりつけるだろう…
仕組まれた自由に 誰も気づかずに
あがいた日々も終わる
♪この支配からの卒業
闘いからの卒業…♪
勝手にそう思ったら、「よくわからん・・・」な感じだったのが、「全くわか
んないわけじゃないかも…」と思えてきて、あの「?意味不明(…のよう
に感じた)」な動きも、意味あるものとして感じられるようになってきて
…(いや、もちろん意味のない動きだとは初めから全然思ってないで
すよ! )。私みたいな、どこか冷めた心じゃなくて、尾崎豊みたいな熱
い心・感情(笑)で見ると、この世界にちょっとだけ近づける気がしまし
た。
壊れそうな心・体…それでも内にあるものを全力で発信(尾崎豊のラ
イブ映像的な…)
そう感じたのは見終わった後だから、もう一度見て確かめたいです。
全然違う??!
2)視覚・雰囲気的感想
なぜ演劇が好きではなかったのか?
→うさんくさい、大袈裟な表現とセリフの言い方がどうも好きになれな
い。なじめない。シリアスであればあるほど何か嫌!見ていてこそば
ゆい。特にミュージカルなんて、歌い出す意味がわかんない。(※偏
見??・・・ごめんなさい)
でもこの舞台はそんな私でも普通に見れた!!
普通に「ほわゎ〜ン」と見るどころか、考えたり感じたり?真剣に見る
ことができました。そんな自分にびっくり!!
私の偏見的な前述の嫌いな要因があまり無かったからでしょうか。あ
えて上げるならば、最初の方にあった3人の男の人の話し方が熱すぎ
てちょっと苦手かなってくらいです。(ごめんなさい)
女の人の動きは…最初は意味不明な感じでした。綺麗だけど…よくわ
かんない。
そこで、1.〜に書いたように「尾崎豊的熱いハート(笑)」でガツンと見
ると・・・(これも、ごめんなさい)
溢れる内面… 内側にあるもののアウトプット…。
言葉・文字ではない発信が、いつしか「すー」と入って来るようでした。
ひたひたと。不思議な感覚です。
「無駄に声を張り上げて、大袈裟なまでに表現する…」、演劇鑑賞苦
手な私との距離がさらに増す…。でも、その要素がない(?)と、不思
議なくらい私の中に入り込んできて、虜にする。食い入るように見るよ
うになり、考える。頭と肌で考える…。私の中にインプットされる…。
前述の演劇の嫌いな要素は変わりませんが、だからと言って『=演劇
嫌い』というのは撤回します!!!!!そうじゃないものもあるんだな
ぁ…っと。
ただ、内側にあるもののアウトプットだとするならば、あまりにも美しす
ぎるようにも思え…。内にあるものはもっと醜くてドロドロしてて、かっこ
悪いものだと思うし…。舞台という見せものだから必然的に美しくある
のか、あるいは内側から美しいのか、美しいと感じているのは私だけ
なのか、そもそも、内面のアウトプットという私の単純な見解が浅はか
なのか・・・、あまりにもしなやかで、美しかった。(美しいものに対する
嫉妬心?!)
あとは・・・、たくさんの言葉が次々に出てくると、頭の回路がパンクし
ちゃいそうでした。
もっとゆっくり、じっくり頭の中を整理しながら、徐々に見ていきたい。
ビデオを見る時に使える機能、一時停止とか巻き戻しとか、そんな機
能が欲しくなりました(笑)
本を読む時も、私はよく途中でもう一度前に戻って確認したり、読み直
してしまいます。単に、私の理解力が乏しいからと言ってしまえばそれ
までですが、舞台という一度始まってしまうと最後まで止められない、
どんどん進んでしまうものを見ることの難しさを実感しました。(自分の
ペースで見られない・・・・、それも苦手な要因の1つかもしれません。)
さらに、見終わった後に頭の中を整理しながら振り返るにも、言葉の
情報はほとんど残っていませんでした。聞き逃したり、聞き取れなかっ
たり、すぐに忘れてしまったり、他の言葉で記憶をかき消されてしまっ
たり…。
振り返り、頭を整理していくうちに、あの「意味不明」と感じた動きやそ
の他の視覚情報がいかに鮮明に記憶されているか… と言うことに気
が付きました。これは「意味わかんない、何これ?」とか、単純にイン
パクトがあったからと言うものではいように感じます。人間の記憶のメ
カニズム…?とか、そんなことは全く解りませんが、少なくとも私にとっ
ては、音声言語に関する記憶よりも、視覚的な記憶の方がより鮮明に
残っています。
また、言葉での発信は、私のペースに関係なく、どんどん押し寄せて
来て、「今、何て言ったの?」「どういう事、それは?」と・・・一度あれ?
って思っているうちにどんどん先に進んでて・・・「た、大
変!!!!!!」、「ガビーーん!!!(死語??!)」ってなってしま
うけれど、あの「意味不明な動き(もうそんな風に思っていませんが、
他に表現方法がわからないので、最後までこう書かせて下さい)」の時
間は、舞台を見る免疫?基礎体力?を持っていない私には、十分な
時間を与えてくれたように思います。自分のペースで見られる。考えら
れる。感じられる。
「何と良心的な…」とさえ今振り返ると思います(笑)。意図した事では
ないかも知れませんが、演劇鑑賞素人の私にはそう感じました。
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