061:飛行機雲
真っ青な空
真っ青な空
真っ青な空
真っ赤な空
いつも下を向いて歩いている、私はそんな子供だった。
学校の帰り道、私はいつものように1人で帰っていた。両親の都合で私は何度も転校を繰り返して来た私は、
一緒に帰る同級生などいなかった。それでも、最初の頃は頑張って友達を作ろうと思っていた。
だけど、仲が良くなっても直ぐに転校することになる。それでも、文通をしたりしていたが、そんな手紙も
いつしかぷっつりと途切れていた。そんな事を何回も繰り返している内に、私は友達を作るのをやめた。
寂しいと感じるぐらいなら、最初からひとりの方がいい。
友達と思っていたって、いつか別れ別れになってしまうし、それが私は少し早いだけなのだ。私の事だって
どうせ直ぐに忘れられるのなら、覚えてもらわなくたっていい。私は学校の中だけで当たり障り無く振舞って
いたが、いつも何処かに壁が出来ていた。今考えれば、それは私の中のでの防衛反応だったと思う。
当然、私は1人で帰ることが多かった。
別にそれは苦ではなかったし、一人のほうが色々楽しいことを考えることが出来る。
一人なら、誰かに振り回されることもないし、寄り道するのに反対されることもない。
寂しくなんて無い
寂しくなんて無い
それでも、何故か一人で帰るときにはそんな私の顔を誰かに見られるのは嫌だったのだ。だから、下を向いて
地面ばっかり見ていた。
そんな日常を繰り返していた私に、突然現れたのが彼女だった。
彼女はクラスのまとめ役とも言える存在で、皆からも嫌われることもなく私にも優しかった。クラス委員とい
うだけではなく、彼女は何処かお節介な部分があった。転校を繰り返し、内に閉じこもっていた私を皆にとけ
込ませたのは彼女だった。しり込みする私を輪の中に引っ張り込み、私の壁は崩れていく感覚を覚えた。
彼女に引っ張られているうちに、私は以前のように人に輪に入ることを思い出していった。
私は彼女と友達になった。
帰り道には一緒に寄り道をしたり、近所の猫にちょっかいだしたりとそれは自分の忘れていたことが徐々に思
い出されていくような感覚を覚えた。私は前を、上を向くことを思い出した。
私はまた転校することになった。
彼女と別れることが不安だったが、私一人ではどうしようもなかった。泣いて泣いて駄々を捏ねる私に彼女は
言った。
「いつかまた会えるから」
私は涙でぐちゃぐちゃでなった顔を上げて約束した。私はこの時、『絶対に忘れない』と固く心に誓った。
そして出発の日。
空港まで彼女と他の皆が私を見送りに来てくれた、それだけでも嬉しかった。彼女たちは最後の最後まで見送っ
てくれたから。私は大人になったらいつかまたこの町に帰って来て、彼女に会おうと決めていた。
それから数ヶ月後
彼女は青い空をじっと見つめていた。
視界に流れる飛行機雲。
彼女の瞳には涙が浮かぶ、、全身を震わせて、唇を軽く噛みしめて声を抑える。
右手には一通の手紙
それは
僕が不慮の事故で亡くなったということだった。
多分、文通をしていたので両親が彼女に送ったのだろう。
空が青から赤に変化していく
飛行機雲は消えていた
彼女の姿もその場から消えていた
2003/02/11 tarasuji
(C)2003 Angelic Panda allright reserved
戻る