037:スカート
私は小さな頃から男の子と一緒に遊んでばかりいた。
だから、遊ぶ時はいつもズボンをはいていた。
スカートだと皆と遊べないから、自然にそうなっていったのだ。
話し方だって、男の子のような口調だったから、うちにくるお客さんは私を見ると決まってこう言う。
「ボク、いくつ?」
「元気な男のお子さんですね・・・って女の子なんですか!?」
それが当然だったので、別に私も何も感じていなかった。最も、相手の方はそうでなかったらしいが。
そんな事が当たり前だったが、母はどうしても諦め切れなかったらしく時々はスカートを買って来て
私にはかせようとしていたが、私はいつもそれを拒否していた。ズボンの方が動きやすいし、洗濯も楽
だし、シワも汚れも気にしなくていい。
それに、どちらかといえば私は外で遊ぶのが大好きだったから。
母が買ってくれたお人形なんて一度も遊ばなかった。雨のなかでも泥んこになって戻る私に、その内
誰も何も言わなくなった。
大体、女の子だからというだけで何故、スカートをはかなくてはならないのかが私には理解できなかっ
た。そして、そんなものを喜んではいている女の子が私には理解不能な存在だった。
だけど、そんな事に拘ればば拘るほど私の視線はスカートをはいている女の子に向いていた。街に行け
ば、男の子と腕を組んで歩いたり、友達と楽しそうにしている。
私は、そんな女の子が大嫌いだった
だから、自分が男の子で無かったことが本当に嫌だった。
そんな私も成長して、中学に入る年になった。
制服はセーラー服……ということは勿論スカートをはくわけである。私は母に引きずられるように採寸
に行き、今日がその完成の日だった。
試着するように勧められ、着替える。セーラーを着て、そしてスカートを見た。
そして、私はスカートをはいた。
更衣室から出てきた私を見て、母は何も言わなかった。
やはり、スカートなんて変だ・・・そう言おうとしたときだった。
「よく似合うわ、やっぱり貴方も女の子だわね」
私は鏡を見る。
微かなふくらみのある胸、腰のくびれ、スカートから出るすらりと伸びた足。
そこには『子供』としてではなく、『女の子』としての私が確かにあった。
私が嫌いだった『女の子』がそこには居た。そして、気が付く。嫌いなのは『女の子』ではなく、
『女の子』になれなかった自分が嫌いだったことに。
私がスカートの似合う女の子であることと引き換えに、子供の自分を捨てることを余儀なくされた。
そして、今私はスカートの似合う『女』としてここに居る。
2003/03/18 tarasuji
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