013:深夜番組
真夜中だからこそ起こりうる異次元世界
その日は何となしに眠ることも出来ず、私は冷蔵庫から2リットルのペットボトルの水を取り出すと、
それをラッパ飲みで一気飲みを始める。
一先ず、喉の渇きが収まったところで本を読もうかと思ったがそれらしい本は全て友人に貸し出してお
り私はその辺に散らばっていた新聞のテレビ欄に目をやる。
「なんか面白いのやってないかな〜」
一応補足しておくが、これは私の独り言である。
私は適当に番組名をチェックして見たいものを決めるとリモコンのスイッチを入れる。テレビが瞬時に
映像を映し出した。最近のテレビは画像が表示されるのが早いな〜と、何処かの中年のようなことを考
えながら、2リットルのペットボトルを片手に私はテレビの前に座った。
流石に深夜だけあって、テレビから流れるCMもパチンコやローカル関連のものが多い。私は音を右か
ら左にスルーさせながら、目はぼんやりと画面を追っていた。
何故か、見たいと思っていた番組は放映されず、代わりに別の番組が流れる。
チャンネルを間違えたかと思ったが、確かめてみても間違いは無い。多分、何かの利由があって延長し
たのだろう。よくあることである。
「『とんでも大王!』レッツスタート!」
テレビで時々見かける、一昔前の売れなかったグラビアアイドルとお笑い芸人のコンビが司会を務めて
いる。今まで見たことのない番組だったので、一応試しに見てみることにした。
…
……
…………くだらない
………………………くだらなすぎるよ、この番組。
「莫迦だ………こいつらっていうより、この番組制作した奴、本当に莫迦だ」
私は呆然と、そう呟くしかなかった。そのあまりな内容は最早、言葉にすることすら莫迦すぎて私はそ
れ以上何も言えなくなってしまった。
私はもう一度深呼吸すると、ペットボトルの水を思いっきりガブ飲みした後布団に入って寝た。
あまりの衝撃にいつ眠ったかすら覚えていなかった。ただ、翌朝強烈に眠かったことだけ覚えている。
余談だが、その日の新聞にも、雑誌にも、テレビ局のスケジュールにも『とんでも大王』なる番組など
掲載されておらず、その番組の存在すら無かったことを知り、その番組のことは私の脳裏からも消し去
ることにした。
人生、考えすぎてはいけないこともあるのだ。