001:クレヨン




    足りない色は何処へ行った



    よく見る夢がある

    夢の中で子供の私はクレヨンで絵を描こうとしているのだ

    しかし、その途中でどうしても見つからない色がある

    最初は確かに入っていたのは何度も確認した

    なのに、いざ描こうとするとその色が足りないことに気がつく


    床下に転がったのだろうか

    それとも誰かが借りて持って行ったのだろうか

    何処かの猫が持っていったのだろうか


    子供の私はその色のクレヨンを必死に探し続ける

    けれど、何処を探しても見つからず

    半ば泣きべそをかきながら、それでもその色を探す

    他の色では駄目なのだ

    絵を完成させるにはその色が必要なのに

    何処を探しても見当たらない




    「はい、これ」


    泣き喚く私に差し出されたのは

    ずっと探していた色のクレヨン

    私は目を擦り、しゃくりあげながらお礼を言おうとして顔を上げる

    逆光の為に顔は見えない

    判るのは声だけ

    私が顔を見ようとするその瞬間・・・



    世界はおぼろげに揺らめき

    そこでその夢は終わる

    朝。

    朝の強い光と引き換えにおぼろな夢はかすむ

    そして、私はその夢の記憶を失う



    それでも私は夢見る度に願うのだ

    いつか、貴方に出会えますように






    2003/12/11 tarasuji
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    ※この話は【100:貴方というひと】に繋がっています。そちらも合わせてお読みいただけると幸いです。