【011 縁日 -STREET FAIR-】(テニプリ/柳乾海)
柳さんと今日の夕飯の買出しに出かけた時に、偶然通りがかった神社の前ではのぼりが立ち、屋台の準備が繰り広げられていた。 「薫、今夜行ってみようか」 隣の方から声がする。 「けど…」 俺の内心は全て柳さんにはお見通しのようである。3人で暮らすようになって、家計は柳さんが全てを握っている。親と今まで同居していた為に金銭感覚の薄い俺や、欲しい物を見つけると後先考えない乾先輩ではいろいろと問題が生じるらしく、会計士の父親を持つ柳さんが必然的に家計を預かるようになっていた。おかげで今の所毎月赤字にはなっていない。 それから柳さんは3人分の浴衣を箪笥から出してくる。この浴衣は以前俺と柳さんが縫ったものだ。柳さんが縫っているのを見た俺が、自分も縫ってみたいと言い出し柳さんは快く縫い方を教えてくれた。元々、昔から簡単な裁縫は出来るように母さんが教えてくれていたし解れた服などは簡単なものなら自分で繕える。柳さんにまでは及ばないが、自分でも納得のいく仕上がりとなった。 「これでよし」 柳さんは、いつでも親切で優しい。俺が返答を返そうとしたその時、向こう側から声が響いた。 「れんじー、俺のも頼む」 そう答えて柳さんが向こうに行った。乾先輩も器用そうに見えてこういう事には不器用だ。間もなく、俺と同じように浴衣に着替えた乾先輩と柳さんが現れ俺達3人は縁日へと出かけたのであった。
「これをやろう」 そう言って入っていったのは『らくがきせんべい』と書かれた店だった。薄焼きのえびせんべいに飴を溶かしたもので絵を描いて、その上に色とりどりのザラメを乗せるものだ。 「ほう、面白そうだな」 柳さんも興味深そうに見ており、早速筆につけた飴で何かを書いていく。俺もせんべいを前に何を書こうか悩んだあと書き始めた。書いたせんべいを店の人に渡し、俺は青いザラメを、柳さんは緑のザラメを、乾先輩は色々な色が混ざったザラメを付けてもらった。 その後、互いに何を書いたか見せ合うことになり俺は『猫』を柳さんは『花』を描いていた。乾先輩は『さだはる・れんじ・かおる』と書いており柳さんに「子供か」と突っ込まれていた。 04/07/15〜04/09/14 WEB拍手掲載 |