The world of image (聖剣伝説レジェンドオブマナ/女主)
世界は、私のイメージでつくられている
望むまま、必要とするままに世界は作られていく
夢を見る。
それは郷愁と、期待と、不穏と、憧憬と…様々なものが入り組んだかのような夢だ。私はその正体が判らずぼんやりとした霧がかった場所を歩き続けている。しかし、迷うことはない。何故かは認識していないが私の中にある感覚…第六感と通常は言うのであろうか。その感覚が私を導いているような感覚に襲われている。大丈夫だ、大丈夫だと頭の何処かで私は認識して歩き続ける。
そうして歩き続けた先に辿り着くのはいつも同じ場所。
私はその場所の名前を知っている。
聖なるもの、母なるもの、人々の希望の証、守護の証、慈愛の具現たるその存在。
全てにおいて与えるもの。慈愛の女神が姿を変えたその大木は、その大きさにも関わらず私を威圧することなどなく、私を迎える。そして最初に語りかける言葉もいつも同じだった。
「おかえりなさい」
何か、大きなものに抱かれている気がする。私の夢なのに、私は何を考えているのかわからない。嬉しいのか、悲しいのか、それともそれ以外の感情を抱えているのだろうか?お笑い種だが、本当に自分がどんな表情をして何を考えているかわからないのだ。けれども、目の前の存在はそんな私に何も動じていないようで、ただ、ただ私がここに居ることを受け入れている。
ここは、本当に何処なのだろう…
「師匠、しーしょーう!師匠ってば!!」
−ああ、いいところなんだから起こさないで−
「師匠、朝ですよ!!」
−大体、朝だからといって起きなければならない理由なんてないんだから−
「いいんですか?今朝は師匠の好物のマキガイカブの餡かけですよ!」
−だから…ん?マキガイカブの餡かけ!?−
「わーーっ、ちょっと待ってよ、残しておいて!!」
目が覚めれば、見慣れた木の天井が視界一杯に広がっている。そう、ここは私の家の私の部屋…そして私を呼ぶ声はバドの声だった。
「バド…」
「バド…じゃ、ありません。いつもいつも目覚めが悪いから俺とコロナがどんなに大変な思いをして師匠を起こしていると思ってるんですか!?」
「あはは、いつもご苦労さん」
そう言って笑う私にバドは呆れ帰った顔をしながらも早く支度をするように告げると、音を立てて階段を降りていった。
「参ったな〜、私そんなに目覚めがわるいかねえ。サボテン君」
いつもベッドの側に置いているサボテンのサボテン君に話しかけるが、返事が返ってくるはずもない。私はこれ以上怒鳴られるのも何なので急いで着替えて支度を始めた。もう、階下からいいだし汁の匂いが漂ってくる。今朝のおかずはバドの言うとおりマキガイカブの餡かけだ。食べられるのも何なので私は慌てて下に走って降りる。もう、あの夢の話など何処かに飛んでしまっていた。
「もう、師匠。準備出来てますよ」
「あはは、ごめん、ごめーん」
「今日はラルクさんが来る予定の日ですよ、ちゃんと準備してなきゃ」
「あ、そっかー」
そんな私の受け答えに二人は溜め息をつきながらも、食事の準備を整えてくれていた。
バドとコロナは双子のきょうだいで、私を師匠と呼ぶ割にはその態度に尊敬もへったくれもないことは明らかである。それでも、今まで1人で暮らしていた頃よりも、毎日が退屈しないので私は彼らとの生活が嫌ではないのだろう。そう、誰かと一緒に生活しているのは、時々嫌なこともあるが、それ以外にいい事も半々であるのだ。…私は以前、誰かと一緒にこうして暮らしていたのだろうか?そうでなければ、時々頭の隅っこに残る感覚を呼び戻すようなことは無いだろう。
私には以前の記憶がない。気がつけば、この家の前に立っていてそして疑いもなくここで暮らし始めていた。そして、様々な人々に出会い危険な目や楽しい目に遭いながらこうして暮らしていた。
そして、この家に来てから今朝の様な夢を何度も繰り返し見るようになっていた。何処かの誰かが私を呼ぶ、あの大木の夢を。最初はおぼろげだったその夢はだんだんとはっきりとしてくる。そして決まって私を呼んでいるのであった。だけど、その場所が何処かはわからない。一度ガイアに聞いてみた時に彼はこう言った。
『君がその場所に辿り着くには、沢山の人々と出会い、沢山の出来事を経験しなさい。そうすればいつかそこに辿り着けるであろう』
全く見当もつかない答えはいつもの通り。
けれども、私はいつかあそこに行かなければならないことは感じていた。私の夢に何度も現われるその光景が、私の記憶の失われた欠片を補う物であれば、その記憶は補われなければならないものなのであろう。
けれども、今はこのまま、もう少しだけこのままで
この穏やかな時間と出会った人々と共に過ごすことが出来ますように
記憶の中のあの温もりへ
私は、もう少ししたらあなたに会いに行きます。
だから、もう少しだけ待っていてください。
私の中のイメージで世界が作り上げられるまで。
オリジナルといっても通用しそうなLOM(聖剣伝説)話ですな。
一応主人公は記憶を殆ど失っているけれども潜在的に記憶は残っていて、
深層意識的に夢を見ているという設定になっています。
このシリーズは2と3とLOMが好きですね(というかそれ以外プレイしていない)
こうした日常のほのぼのの中に潜む何気ないような違和感の話が好きです。
ちなみに女主人公の名前はマイマザール(笑)
03/09/12 tarasuji
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