2013新春インタビュー 大阪都構想とは一体何?

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○ 2013新春インタビュー 「大阪都構想とは一体何?」と題して鶴田廣巳関西大学商学部教授・大阪自治体問題研究所理事長にお聞きしました。聞き手は吉田副委員長です。

吉田副委員長
 明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
さて、衆議員選挙では、日本維新の会が比例区で民主党を上回って第2党に躍進しました。
維新の会発祥の地である大阪では、橋下大阪市長の強い「リーダーシップ」によって大阪
都構想が進められています。そもそも、大阪都構想とは大阪府と大阪市をどのようにしよ
うとしているのでしょうか。大阪都構想の目的を含めてご説明ください。

鶴田教授
 大阪都構想とは、橋下徹現大阪市長が府知事であった当時(2010年3月)に主張し
始めた構想で、2015年までに大阪府を大阪都とし、大阪市、堺市などを特別区に解体
・再編して大阪都を構成する内部の特別地方公共団体として再編成しようというもので
す。「大阪維新の会」のホームページでは、大阪都構想は「究極の成長政策、景気対策・
雇用対策」であると説明されています。つまり、この構想の最大のねらいは大阪市や堺市
などを解体し、これらの都市自治体がもつ財源や資産を大阪都に吸い上げ、その資金を活
用して大阪における経済開発を進めるための「1つの強い司令塔をつくる」(上山信一『大
阪維新』角川SSC新書)ことにあるのです。これまで、大阪では大阪府と大阪市が開発
行政を競い合ってきました。しかし、大阪という大都市圏の行政を進めるうえでは大阪市
は大阪市内、大阪府は大阪市内を除く大阪府域を分担することとされ、大阪府は大阪市内
の都市行政には口出しできない状況が続いてきました。このため両者は開発行政の進め方
をめぐって競争と対立を繰り返し、その状況は「府市合わせ(不幸せ)」と評されてきま
した。これに対して、橋下氏は「広域自治体は開発、基礎自治体は安心・安全」という地
方自治体間の単純な行政区分論を持ち出し、太田房江知事(当時)時代に唱えられていた
「大阪新都構想」を化粧直しして、基礎自治体である大阪市や堺市は成長戦略に口出しす
るなと迫ったのです。その口実とされたのが、いわゆる「二重行政」によるムダが大阪の
発展を阻害しているという理屈でした。「二重行政」論に根拠があるのかどうか大変疑問
ですが、大阪市のこれまでの行政運営にはさまざまの問題が累積しており、市民の行政不
信はピークに達していましたから、橋下氏の煽動的話術はきわめて効果的でした。しかし、
大阪の開発行政の司令官を1人にしたからといって大阪の経済再生が可能になるのかどう
かには根本的な疑問があります。開発行政の中身は旧態依然たる高速道路や関空と大阪都
心を結ぶリニア新幹線などのインフラ整備や各種のイベント開催にすぎません。その開発
効果については、「維新の会」のホームページでも「広域行政を一本化するだけで、本当
にそんなバラ色の大阪が待ち受けているのかと言えば、それは証拠では裏付けられません」
などと無責任な論評をしている代物なのです。

吉田副委員長
 橋下大阪市長は、道州制を提案しています。大阪都構想は道州制には直接結びつきませ
ん。むしろ道州制を実現するまで余計な時間がかかるかもしれません。なのに、あえて大
阪都構想を打ち出したのはどうしてなのでしょうか。

鶴田教授
 橋下氏は、知事就任早々の2008年6月、『「大阪維新」プログラム(案)』を公表し
ましたが、これは府政運営の基本的枠組みを示すだけでなく、現在に至る「統治機構改革」
なる彼の主張の片鱗をすでにうかがわせるものでした。そこでは、財政再建・政策創造・
府庁改革と並んで、「大阪発"地方分権改革"」が謳われ、「"市町村優先"の徹底と府県を越
える"広域的な行政組織"の実現をめざす中で、大阪府の"発展的解消"が将来目標」だとさ
れていたからです。そのために、「関西広域連合」の早期実現、国の出先機関で実施して
いる事業の移譲を進め、将来の「関西州」へのステップを確かなものとするとされていま
した。つまり、橋下氏の「統治機構改革」なるものの一番の目標は、知事就任の当初から
関西州などの道州制の実現なのです。2009年3月には『大阪発"地方分権改革"ビジョ
ン』が正式決定されますが、このなかでは府内市町村を中核市に再編する「分権」と、大
阪府が「近隣府県と一体となって"関西州"を創っていく」「集権」とを一体的に推進する
とされていましたが、大阪市をどのように扱うかはまだはっきりしていなかったように思
います。そこでは、恒常的「協議の場」を新設して「広域的な調整、重複事務の整理」を
行ったうえで「新たな大都市制度」を実現することが謳われていました。大阪市などの解
体を企図する大阪都構想が登場するのは2010年3月のことですが、そのきっかけは府
市の水道事業の統合が挫折した後のことです。その意味で、大阪府・市の「お互いの力を
最大限に発揮できる」「より効果的・効率的な行政運営が可能」な「大阪市との新たな関
係づくり」を謳った『大阪発"地方分権改革"ビジョン』の構想の一部に大きな変更が加え
られたことは明らかです。そしてこのことは「大阪都構想」の最大のアキレス腱のひとつ
ともなっているのです。なぜなら、いったん大阪都のなかに大阪市を含む大都市を解体し
た後に、大阪都を解消して関西州を作った場合、大阪市という関西圏域の一大中核都市は
消滅し、中核市程度の特別区の寄せ集めが残るにすぎないからです。はたしてこれで関西
州のなかで大阪の強みを生かすことができるのかどうかはまったく疑問だといわざるをえ
ません。加えて、大阪府民に対して大阪都の実現が大阪再生の切り札であるかのように説
明してきたにもかかわらず、それを突然、関西州に解消していくことは府民に対する背信
行為といってよいのではないかと思います。これでは、「大阪都構想」なるものは単なる
政治的マヌーバーでしかありません。

吉田副委員長
 大阪都と東京都とでは違いはあるのでしょうか。また、東京都には都と区の関係−大阪
で問題にされた二重行政や財政−について、どのような問題があるのでしょうか。

鶴田教授
 昨年8月、国会で「大都市地域における特別区の設置に関する法律」が成立し、9月か
ら施行されました。この法律によって、一定の要件を満たし、一定の手続きを経て総務大
臣が認可すれば、地方自治法上、本来、東京都にしか置けない特別区を道府県も置くこと
ができるようになりました。これは「維新」の影響力の広がりに迎合する民主党など与野
党7会派が国会に提出したものです。しかし、この法律は一定の要件等が満たされれば、
道府県が特別区を設置できることのみを定めたものであり、道府県の名称の変更を認める
規定は置かれていません。したがって、「大阪都」ができるのではなく、「大阪府」のも
とに特別区を設置できるというだけにすぎません。「都」という名称は、あくまでも東京
都だけに限られるのです。橋下氏は「名前がすべて。都がダメなら州ぐらいでもいい」な
どと言っていますが、大阪府の名称変更は不可能なのです。ところで、東京都と特別区と
の間には、さまざまな問題があり、特別区の側は発足以来長きにわたって自治権の拡充の
運動を続けてきました。特別区は特別地方公共団体として、普通地方公共団体たる市町村
と比べて事務事業の範囲と権限を制限されており、23区で構成する特別区協議会は今日
でもなお、「市」への移行を求める自治権拡充の要求と運動を続けているのです。自治権
の制約は財政面にも及んでおり、本来なら市町村税である都民税(市町村民税法人分)、
固定資産税、特別土地保有税、事業所税、都市計画税は都税とされ、このうち都民税など
前三者についてその一部が調整財源として特別区側に交付されているのが現状です。特別
区側からすれば本来自身の財源を東京都に吸い上げられているわけであり、財政自主権を
制限されているのです。このようにしくみは、東京都のような裕福な団体であればまだし
も、府市ともに巨額の財源交付を受けている大阪では府下の特別区は財源不足が深刻にな
り、とうてい運営できなくなるでしょう。

吉田副委員長
 大阪都は、今のところ大阪府と大阪市が取り組んでいます。大阪都が実現した場合、高
石市を含む大阪府内の衛星都市にはどのような影響があるのでしょうか。

鶴田教授
 「大阪都」になった場合、大阪市や堺市などの政令市が特別つくに組み入れられること
は確実でしょうが、他の衛星都市がどのようになるのかは必ずしも明確にはされていませ
ん。「大阪維新の会」のホームページでも、「大阪都」のもとで府下市町村がどのように
なるのかについての記述はどこにもでてきません。「ウィキペディア」の「大阪都構想」
の項では、讀賣新聞などで報じられた維新の「内部資料」として大阪市8特別区、堺市3
特別区を含む20区構想が紹介されていますが、公式には現在に至るもなお不明です。高
石市は20特別区の領域外とされていますので、大阪都のもとでどのようになるのかはっ
きりしません。しかし、さきにふれた『大阪発"地方分権改革"ビジョン』では、府下市町
村に権限委譲を進め、遅くとも2018年までに府内の市町村を中核市にするとされてい
ますから、このプラン通りに進められるとすれば、府下衛星都市のうち人口30万人を下
回る36市町村を11市に合併・統合する必要があることになります。このような強権的
な市町村合併は府下市町村に大きな混乱をもたらし、住民福祉の後退を招くことは避けら
れないだろうと思います。

吉田副委員長
 話は変りますが、維新の会は激しい公務員バッシングに特徴づけられます。公務員バッ
シングと強力な「リーダーシップ」で支持を集めています。しかし、福祉国家は、それを
担う民主的な公務員組織があってこそ成立すると思います。公務員の不適切な行為は批判
されるべきですが、今の激しい公務員バッシングについてどのようにお考えでしょうか。

鶴田教授
 大阪自治体問題研究所では、「大阪発 地域再生プラン研究会」を組織して、橋下「大
阪維新改革」の実態分析を進めています。その第一弾として、昨秋、『橋下「大阪維新」
と国・自治体のかたち』を自治体研究社から出版しました。そのなかでも強調しましたが、
橋下「維新改革」の本質は、日本政治の低迷を打破する「希望の第三極」どころか、時代
の歯車を逆転させる政治反動にすぎません。「維新」なるものの特質が、人権の蹂躙、見
せかけの「地方分権」と地方自治の否定、「民意」を錦の御旗とする政治的独断と民主主
義の破壊にあることを正確に見抜く必要があります。
 橋下「維新」の政治手法の特徴が、ものごとを極端に単純化し、いわゆる二項対立の図
式に持ち込んでいわゆる既得権層を攻撃し、マスコミを利用した劇場型政治により一定の
政治的目標を実現しようとする「自治体ポピュリズム」にあることはこれまでも多方面か
ら指摘されているとおりです。この点で、橋下流ポピュリズムは、数十年来日本政治の底
流に流れる強い官僚不信、公務員や教員・教育制度などに対する不満や批判、高齢社会の
もとでの高齢者と現役層の間での世代間対立を利用して、公務員・教員、公務員組合、高
齢層などを既得権者に仕立て上げ、「既得権の破壊」と称して日本国憲法に保障された基
本的人権や民主的権利、戦後民主主義の制度全体を破壊しようとしているといわざるをえ
ません。まさしく、人権の「グレート・リセット」であり、「統治機構のグレート・リセ
ット」を進めようとしているのです。しかし、公務員の削減や賃金カット、懲戒で脅しつ
けることで首長に従順に付き従う官吏を育成する「人事マネジメント」などを進めれば、
はたして住民福祉は向上するとでもいうのでしょうか。
 3.11の東日本大震災の後、被災地住民の生活の再建、真の復旧・復興が進まない大
きな原因のひとつは、被災地の自治体が大きな人的・物的被害を受けただけでなく、それ
以前から進行する市町村合併による地域の衰退や公務員減らしがあることは厳然たる事実
です。もともとわが国は先進国のなかでも住民千人当たりの公務員数が最も少ない国の部
類に属しています。その国で公務員を削減すれば公共サービスの水準がさらに引き下げら
れ、デフレ・経済不況や雇用不安などによって脅かされている住民生活がいっそう困難に
なることは自明です。公務員の人員削減・賃金カットと民間部門でのそれが競争させられ
れば、公務員、民間被用者ともに一層の生活困難に陥ることは避けられません。公共部門
の拡充と公務員の人権・民主的諸権利の保障と民間労働者の人権・生活保障は車の両輪で
す。「既得権」攻撃による公務員・公務労働組合と住民との離間・対立を煽る政治的意図
を見抜いて、公務(員)・労働(者)・生活(者)の連帯と団結を取り戻すことが今ほど
求められているときはないでしょう。公務労働者、公務員労働組合は未来に希望をもって、
今こそ住民の中に入り、住民と連帯していくあらゆる手立てを尽くすことが必要とされて
いるのです。

吉田副委員長
 私たちも仕事でも運動でも住民とともに進んでいきたいと思います。
 本日は長時間ありがとうございました。

(2013.1.4 掲載)

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