人口減少下におけるまちづくりの課題

戻る  新着情報

         講演記録:人口減少下におけるまちづくりの課題

 この講演記録は、2010年12月3日に行われた高石市政白書づくり運動中間報告会
(職員向け)における中山徹奈良女子大学教授の講演を高石市職員労働組合の責任でまと
めたものです。

 日本は今大きな分岐点に

 日本は今大きな分岐点に立っています。1960年代から70年代の高度経済成長期に
日本の骨格が形成されました。ここ泉北コンビナートも1958年から造成が始まり、高
石市でも宅地開発が進みました。大阪府でも十大放射三環状の道路や千里ニュータウン、
泉北ニュータウンの開発が進められました。しかし、この高度経済成長はオイルショック
で破綻し、その後1980年代半ば以降のバブル経済期に企業の国際化、多国籍化が進み、
製造業は次々と海外進出しました。バブル経済が破綻して以降は工業地帯の工場が次々と
欠けていく状況が顕著になってきました。そこで、従来型の公共事業拡大路線による経済
刺激策が採られ、10年間にわたって膨大な公共投資が行われたものの経済は向上せず、
次に登場したのが小泉構造改革でした。
 小泉構造改革は、新自由主義に基づいて多国籍企業の活動にふさわしい政治経済体制に
日本を作り変えることを目的とし、雇用の見直しや規制緩和、市町村合併、三位一体改革、
郵政民営化などを行いました。雇用の見直しでは、高度経済成長を支えた終身雇用、年功
序列賃金を、企業の高コスト体質の原因として縮小、廃止しました。その結果、大量の低
賃金、不安定雇用労働者を発生させることになりました。また、それまで政権党の自民党
は、都市部における圧倒的な弱さを、地方で多数の議席を確保することで補い、政権を維
持してきました。地方において保守票を集める手段として公共事業が位置づけられました。
しかし、国際化、多国籍化した経済において地方における公共事業は意味がないため、地
方における公共事業を縮小、廃止し、市町村合併、自治体リストラ、職員削減による自治
体の「効率化」を進め、都市部での票の獲得を目指しました。これが小泉元首相の「自民
党をぶっ壊す」だったのです。
 小泉構造改革の結果、地方は、1次産業が衰退し、公共事業が減り、製造業も商業、サ
ービス業も成り立たないという厳しい状況に陥っています。そして、前々回の参議院選挙
で自民党が大敗する結果となりました。また、生活保護受給者の急増、止まらない少子化、
不安定・低賃金の派遣労働の蔓延、後期高齢者医療制度や自立支援法による障害者政策な
ど人々の生活の破綻も顕著になってきています。日本という国の根底部分が変化してきて
いるといってよいでしょう。

 100年で3倍に増え、100年で3分の1に減る日本の人口

 日本の人口は高度経済成長期に爆発的に増加し、消費も大きく拡大しました。高齢化率
も5%以下でした。人口の増加は都市部に集中し、産業の立地やこの人口増加をどう受け
止めるかというのが高度経済成長期の大きな政策課題であり、コンビナート、ニュータウ
ン、道路、鉄道などまちの骨格が整備されてきました。
 ところが、21世紀に入り、日本の人口は減少に転じました。20世紀初頭の1900
年の日本の人口は4300万人でした。その後人口は大きく増加しましたが、2004年
の1億2700万人をピークに減り始めました。政府の予測では、今の出生率が続くと仮
定すると、22世紀初頭には5000万人を割り込むとしています。日本の人口は20世
紀の100年で8000万人の増、3倍に増え、21世紀の100年で8000万人の減、
3分の1に減るということになります。まちづくりの方向性が根底から問われる事態です。
国際化はこれからも進みます。その中で日本の生き残りをどう考えるか、大きな分岐点に
立っているといえます。

 雇用の立て直しで経済発展を展望

 小泉構造改革のバックボーンである新自由主義は根強く生き残っています。道州制、大
阪都構想がそうです。都道府県単位の大型公共事業を関西州に移管し、大阪都が国際競争
の戦略本部を引き受けるという構図です。このため、さらなる市町村合併や総合特区など
の新自由主義的改革が進められようとしています。新自由主義は雇用、社会保障などの面
に破壊的な影響を与え、国政選挙での自民党の大敗という結果をもたらしましたが、今再
び民主党政権に新自由主義的傾向が強まってきています。日本経済はヨーロッパと比べて
落ち込みが激しいものとなっています。これは、国民の消費が落ち込んでいるためで、そ
れは、雇用破壊による所得低下の結果です。今の経済を立て直すためには、雇用の安定、
賃金の増加による消費の拡大が必要です。日本の雇用は、医療、福祉、教育の分野がヨー
ロッパと比べて圧倒的に少なくなっています。したがって、雇用の安定、賃金の増加によ
る消費の拡大は、特に医療、福祉、教育の分野において行われる必要があり、そこに経済
発展の展望が見出せます。

 計画的縮小の必要性

 ヨーロッパの一部の国、アメリカの一部地域では、日本と同じように人口の減少期に入
ってきています。これからは、人口の減少を前提にまちづくりを考える必要があります。
人口が減っても生活水準を落とさないという目的で計画的縮小を行うのです。
 若い人の交通手段はマイカーが中心ですが、高齢者がすべてマイカーの運転ができると
は限りません。公共交通の再生が必要です。また、大型店舗の立地で商店街が衰退してい
ます。日常の買い物をどうするかという問題もあります。20世紀に破壊した自然をどう
再生するかという課題もあります。
 日本は、ヨーロッパと比べて新自由主義の弊害が顕著で、人口も早く減少し始めていま
す。しかし、まちづくりにおいてこれらのことが考慮されていません。高度経済成長期と
同じ絵を描いています。堺市では新日鉄が撤退し、跡地に財政を投入してシャープを誘致
しました。高石の臨海コンビナートも今後とも安定的に操業を続けるかどうか保証は全く
ありません。コンビナートは高石の地元経済とあまり関係がありません。市民の手でコン
ビナートをどうするか考えるときにきています。
 雇用の変化によるまちづくりも考慮する必要があります。これまでの雇用の中心であっ
た工場、オフィスは居住地とは別のところにあり、居住地から工場、オフィスへ一定の距
離を通勤するというのが一般的でした。しかし、医療、福祉、教育は直接住民にサービス
を提供する事業所であるため事業所は住宅地にあり、事業の従事者は居住地で働く可能性
が高くなります。20世紀に増えた工場、オフィスは21世紀では減り、地域に医療、福
祉、教育の事業所が増え、電車や自動車の通勤者も減るということになります。住んでい
る地域で働く人が増えるということです。

 新自由主義に基づく規制緩和などの弊害は既に明らかになっています。一方、人口は減
少期に入っています。高石のまちづくりも従来型からの転換が必要な分岐点に立っている
といえます。

(2010.12.27 掲載)

戻る  新着情報

 

高石市職員労働組合 「高石まちづくり情報」
http://www5e.biglobe.ne.jp/~t-joho/
E-mail sroso-takaishi@mse.biglobe.ne.jp