大阪発地方分権は地方自治なき地方分権
大阪府の大阪府による道州制・関西州のための地方分権?

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○ 高石市職員労働組合機関紙(2009.8.5付)から転載しました。


          大阪発地方分権は地方自治なき地方分権
      大阪府の大阪府による道州制・関西州のための地方分権?

 7月28日、企画課から各課に対して、大阪府からの事務移譲について、問題点の把握
等のための予備調査がありました。大阪府からの事務移譲は、道州制・関西州の実現を目
指す橋下大阪府知事の「大阪発地方分権改革ビジョン」に基づくもので、当面、大阪府内
市町村は特例市並みの事務を担うことを目標に行われることとされています。この事務移
譲については、地方自治の充実、発展という点から見過ごすことのできない問題がありま
すので市職労の見解をここに明らかにするととともに、市当局には慎重な対応を、各職場
には積極的な議論を要請するものです。

1 事務移譲の目的は道州制・関西州の設置

 大阪府は、2009年3月に「大阪発地方分権改革ビジョン」を策定し、それを具体化す
るものとして2009年7月に「特例市並みの権限委譲に向けた基本的な考え方」を策定し
ました。「特例市並みの権限委譲に向けた基本的な考え方」はその名のとおり大阪府内市
町村に一律に特例市並みの事務を移譲するという内容です(大阪版特例市として法定特例
市よりもやや広い事務移譲が想定され、高石市を含む一般市に対する移譲事務数は81と
なっています。)。また、「大阪発地方分権改革ビジョン」によると、特例市となった大阪
府内市町村は、ゆくゆくは中核市になり、大阪府は廃止し、道州制・関西州を実現すると
されています。すなわち、事務移譲は、これまで大阪府が分担してきた事務を市町村に移
譲して減らし、大阪府自身が身軽になり、国の出先機関から事務移譲を受け、道州制・関
西州を実現することを目的にしているのです。

※ 特例市(地方自治法第252条の26の3、第1項)
 政令で指定する人口20万以上の市(以下「特例市」という。)は、第252条の22第1
項の規定により中核市が処理することができる事務のうち、都道府県がその区域にわたり
一体的に処理することが特例市が処理することに比して効率的な事務その他の特例市にお
いて処理することが適当でない事務以外の事務で政令で定めるものを、政令で定めるとこ
ろにより、処理することができる。

※ 中核市 地方自治法第252条の22
 政令で指定する人口30万以上の市(以下「中核市」という。)は、第252条の19第1
項の規定により指定都市が処理することができる事務のうち、都道府県がその区域にわた
り一体的に処理することが中核市が処理することに比して効率的な事務その他の中核市に
おいて処理することが適当でない事務以外の事務で政令で定めるものを、政令で定めると
ころにより、処理することができる。

2 大阪発地方分権は地方自治の侵害

・ 多様な市町村

 市町村は、いずれもその置かれた自然、歴史、文化、社会、規模等の条件は全て異なり
ます。規模一つをとっても大阪府内(政令指定都市の大阪市、堺市を除く。)では、人口
最小6200人(千早赤坂村)から人口最大50万7200人(東大阪市)まで、面積最小4.03km2
(忠岡町)から面積最大109.61 km2(河内長野市)までまさに千差万別です。

・ 多様な市町村を一律に特例市並みに=市町村合併

 多様なこれらの市町村を全て特例市並みにするというのはかなり乱暴な話で、法定特例
市が人口20万人以上とされているところから、特例市並みの事務を分担することができ
る市町村とできない市町村とが存在するであろうことは容易に想像できます。そこで、用
意されているのが市町村合併です。「大阪発地方分権改革ビジョン」は、「市町村合併は
極めて有効な手段」と市町村合併を推進する方針を打ち出しています。

・ 平成の市町村合併で多くの問題が−平成の市町村合併の検証を

 平成の大合併で市町村の数は約3200から約1700へと激減しました。その結果、市町村
合併を推進した総務省が設置している第29次地方制度調査会答申ですら「住民の声が届
きにくくなっているのではないか、周辺部が取り残されるのではないか、地域の伝統・文
化の継承・発展が危うくなるのではないか等の懸念が現実化している地域もある。」と平
成の市町村合併の問題点を指摘しています。道州制・関西州設置のための事務移譲、市町
村合併をいう前に、まず平成の市町村合併の検証がきちんと行われなければなりません。
 なお、道州制には、第29次地方制度調査会答申にあるような平成の市町村合併と同様
の問題が生じるであろうことは想像に難くありません。

・ 事務移譲の押し付けは地方自治の侵害

 市町村は多様です。それぞれの市町村で必要とされる事務が異なるのも当然のことです。
住民や市町村の意向を無視して、また道州制・関西州に対する市町村の意向も明らかにな
っていないのに、一律に事務移譲を押し付け、事務移譲を受けない、受けられない市町村
に合併を押し付けるのは、地方自治の侵害といわざるを得ません。さらに、特例市と中核
市の指定を受けるためには、地方自治法により市議会の議決を経て申出るという手続きが
必要ですが、大阪発地方分権はこの手続きを省略して事実上の特例市と中核市を設けるこ
とになり、市町村の意向無視、議会の意向無視の脱法行為にもなりかねません。大阪発地
方分権は、地方自治なき地方分権です。

・ ヨーロッパでは人口数百人の自治体があたり前に存在

 大阪発地方分権は、市町村優先の原則を掲げ、「市町村が住民に身近な行政サービスを
総合的に担い、市町村ができないことを都道府県、そして国が担う」と説明し、ヨーロッ
パ地方自治憲章まで持ち出して「公的部門が担うべき責務は、原則として、最も市民に身
近な公共団体が優先的に執行する」と同憲章を引用しています。しかし、ヨーロッパには
人口数百人という自治体があたり前に存在しています。すなわち、「公的部門が担うべき
責務は、原則として、最も市民に身近な公共団体が優先的に執行する」のですが、それを
担う自治体は多様なのです。ヨーロッパ地方自治憲章は、人口数百人の自治体があたり前
に存在していることを前提にしているとすれば、大阪府内市町村を全て特例市にし、ゆく
ゆくは中核市にするといういわば「一律自治体構想」ともいうべきものとは全く異なり、
それぞれの地方の自主性を尊重する仕組みを宣言したものと思われます。ヨーロッパ地方
自治憲章の精神に沿って地方自治の充実、発展を目指すのなら、「一律自治体構想」では
ない、それぞれの市町村の置かれた自然、歴史、文化、社会、規模等を考慮し、かつ住民
の意向に沿った構想でなければなりません。

3 事務移譲の必要性と移譲にともなう人員措置、財政措置の見極めを

 以上のとおり大阪発地方分権には根本的な部分に問題があると考えますが、高石市のま
ちづくりにとって必要な事務の移譲を受けることまで否定するものではありません。した
がって、今回の事務移譲にあたっては、予定されている移譲事務が高石市のまちづくりに
とって必要なものかどうか、移譲は予定されていないが移譲が必要な事務があるかどうか、
移譲された場合の人員措置、財政措置が妥当か等を各職場において慎重に見極め、判断す
る必要があります。移譲予定の事務の中には、年間処理件数が0件というものが多く含ま
れ、このような事務まで移譲を受けるのは、むしろ効率的な事務執行に反するということ
も考えられます。
 財政措置は、事務費の他に1事務につき人件費を6時間分算定するとされていますが、
これで実際に必要な経費が確保されるのか、慎重に検討される必要があります。また、将
来も財政措置が継続されるのか、事務移譲前の大阪府に配分されている地方交付税や法定
受託事務の場合の国庫委託金との関係で妥当な水準かどうか等の検討も必要です。

4 市町村から大阪府への事務移譲の検討は?

 後期高齢者医療広域連合は全ての都道府県で、都道府県ごとに、当該都道府県内のすべ
ての市町村で構成されています。国民健康保険が市町村の事務であるところから、広域連
合という方法が採用されたと思われますが、都道府県が後期高齢者医療広域連合の事務を
担当するという方法もあったのではないかと思われます。また、賛否は別として国民健康
保険の都道府県移管の議論もあり、国民健康保険と後期高齢者医療を都道府県に移譲する
という議論があっても不思議ではありません。すなわち、大阪府から市町村の事務移譲だ
けではなく、市町村で処理している事務で大阪府へ事務移譲することが適当であると考え
られる事務も今回の大阪発地方分権の事務移譲とセットで検討されるべきと考えます。

5 拙速を避け、慎重な検討を

 「特例市並みの権限委譲に向けた基本的な考え方」によると、事務移譲の実施は2010
年度から始まることとされ、それにあわせて事務移譲のスケジュールも策定されているこ
とと思われます。しかし、大阪発地方分権による事務移譲は、特例市並みの事務移譲から
将来の市町村合併や中核市が展望されており、その是非については住民意向の把握も含め
て慎重な検討が必要です。事務移譲を住民や市町村の意向を無視して拙速に強行するよう
なことは絶対にしてはならないことです。

6 職場での積極的な議論を

 人員が大幅に削減されてきた中での事務移譲であり、移譲を受けるとした場合、受ける
職場では相当な困難を抱えるおそれもあります。人員配置、財政措置を含めて各職場での
積極的な議論をお願いします。

○ 議論の要点

@ 移譲予定の事務は高石市のまちづくりにとって必要な事務かどうか。
A 地方自治の充実、発展のために必要な事務かどうか。
B 必要な人員(専門職員を含む。)が確保されるかどうか。
C 必要な財政が確保されるかどうか。
D 高石市が現に執行している事務で大阪府に移譲するのが適当である事務がるかどう
 か。

(2009.8.5 掲載)

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