CHAPTER-8                        
           美の法則Top Page
New Theory of Beauty


 新しくページを開くのは久しぶり。暫くお逢いしていないあなた、その後いかがお過ごしですか?
 とうとう寒い冬がやってきました。動物にとっても植物にとっても一年で一番つらい季節です。
 このページでは色彩についてお話しようと思っています。本来美しさとは形が基本で、色彩は美しさの本筋から離れているため、 いままで避けてきましたが、ただ色彩は美しさにたいして重要な意味を 持っているのでここで触れておこうと思います。
 あなたはどうして色を認識できるのですか。どうして赤は赤、青は青と、みんなと同じように 色が判別できていると思うのですか。そして、色とは我々の生活の場にどんな影響を与えているのか 知りたいと思いませんか。  ここでは、どのようにして人間に色彩の認識が生まれたのかと、色彩が我々にどんな価値を与えてきたか についてお話ししたいと思います。   
                 花の精チャシーより  

2005.12.13        
      

この ホームページは最初から連載で公開しています。 以下を見る前に必ずCHAPTERー1〜3をお読みください。 (TopPageへ)

2005.10.1改

ひまわりと私
花の精チャミーです  私は
約一億年前に花と一緒に生まれました







「このページの内容をもとに無断で他の出版物を発行することは著作者 の権利侵害になります」

1.色彩の起源

(無色の世界)

恐竜
ジュラ紀から白亜紀にかけての恐竜とその自然

 花が姿を現すまえ、今からおよそ一億年前には地球上の動物は色をどのように認識していたので しょう。結論だけ先に言いますと、すべての動物はまだ色盲で、右の絵のように彼ら動物の目から見た地球はほとんど白と黒の世界で、わずかに緑色を認識できるていどだったでしょう。
 地表のほとんどは鉄分を多く含んだ赤色土に被われ、ところどころでシダ類やソテツ類が群生をつくり、水辺には丈の長い水草が茂り、そして澄んだ青い空が天井を被っていて、それはあまりにも単純な景色だったのです。大きな恐竜や翼竜類そして始祖鳥などの鳥にとって、緑色の植物すべてが食料であったり、動く物すべてが餌食であったり、色別する能力は何ら必要なかったのです。
 当時の恐竜はどんな色をしていたのか、といろいろ想像する人がおりますが、そのときの自然環境が彼らの肌の色を決定するのであって、全身のほとんどはイグアナのような少し青みがかった緑で、地面に接する胸の部分は赤茶けた土色であったのです。もちろん棲む環境により多少の色彩の差はありましたが。
 

2004.10.1

(最初の色の認識)

 動物が色彩感覚を必要になったのは動物と植物の共存関係が始まってからです。いままで、海の中 の海草や陸上のシダ類など多くの植物は、無性殖の胞子として空間を浮遊して子孫を残すだけで、なんら 動物とのかかわりを持っていなかったのです。それが、「花」の出現により動物と植物とは切っても切れない仲へと発展し,それが色彩の認識へと進行していったのです。
 いま地球上に生存する生物の大部分はこの時期から、全く新しい姿への進化を開始したのです。ジュラ紀の終わりころ始まったこの大変革は白亜紀後期、今から6,7千万年前にほぼその全容を現しました。 うっそうとした大木のシダ類や巨大な恐竜は姿を消し、美しい花を咲かせる、被子植物の木や草花が地を被い、その木の実や草を食べるできたての哺乳動物が地上を闊歩していたのです。
 このように花の誕生は生物の進化に重要な転機を与えたわけですが、現在の動物が持つ色彩感覚から類推 される動物の色の認識時期というものは、どうしてもこの花の誕生時期にぶつかるのです。この時期以前に、たとえば恐竜が色を認識していたとするなら、その遺伝子を継いで、いまの動物のほとんどは人間並の 色彩感覚を持っていたでしょう。
 それでは色彩認識はどのようにしてわれわれにもたらされたのか、これから一緒にその辿った道を歩んでみましょう。その前に、Chapter-1で「蜂や蝶の色彩認識」についてをお読み下さい。また、Chapterー9では「花の誕生」について説明する予定ですので、ここでは色についてのみ系統たてて説明していきたいと思います。下に表したのは人間が認識する色と光の波長の関係です。

2004.10.23


 
             
 色のプリズム
人間の色覚領域

 動物が最初に光の中に色の存在を認識したのは遙か昔、三〇億年以上も前のまだ海の中の単細胞であったころです。当時は紫外線が強く、この紫外線に当たるとまだ軟体動物であった細胞は遺伝子を破壊され死亡しました。そのため、細胞はいつしか光の波長を認識するようになり、紫外線が届かない海の深さまで待避して生活するようになったのです。いまでも殺菌するときに太陽光にあてるのはこのためです。
 単細胞動物はそれから二〇億年ほどを費やして多細胞動物に変身、やがて五感をもった動物へと進化しました。細胞が動物の五感を造るときに一番苦労したのは目でした。触覚、味覚、臭覚、聴覚については単細胞のときに圧力、振動、化学反応などで知覚できたのでそれほど難しくはなかったが、目については像を結ぶ物理的構造に到達するまでに途方もない時を費やしたのです。今のカメラだって、もし人間の目の構造というものが先になかったら、発明にもっと苦労したでしょう。
 最初の目はレンズ、いわゆる水晶体はありませんでした。光の明暗と波長を感じる網膜があるだけで、 像として認識できなかった。そのうち小さな孔を通る光は像を結ぶことを経験的に知り、ピンホール構造の目が現れ、そして、透明なある曲面をもった石もやはり像を結ぶことを学習して、今の動物の水晶体をもった目の原型にたどり着いたのです。
三葉虫-方解石の目
三葉虫の模型
方解石でできた目
オウム貝の目
オウム貝
レンズのない目
 それは多分レンズの持たないオオムガイの目のようなものであったろうし、または、方解石でできた三葉虫の目のようなものであったろう。とにかく、細胞は長い年月、今お話しした目の構造に気づくまででも数億年、こつこつと色んなことを試しながら我々の祖先の原型をつくっていったのです。それは今から五〜六億年前のことです。(右の写真参照下さい)
 そして二度目の全球凍結、地球全体がアイスボールになる氷河期が過ぎ、大気の酸素が濃くなり、太陽の紫外線が弱くなると、海の中にはいろいろな生物が出現し、それらがより進化してやがて一斉に陸地めざして進出を開始したのです。このときを五億三〇〇〇年前の”カンブリア大爆発”と呼んでおります。
 さて、これ以降の歴史につきましてはCHAPTER-9(美しさと生物の進化) をお読みいただくとして、次からは動物の系統別の色の認識について具体的にお話していきたいと思います。

2005.3.30

2.色々な動物の色彩感覚

(魚類の色彩感覚)

 およそ四億年も前、多くの海の生物が陸に進出をはじめた。酸素が満ち溢れ、紫外線が少なくなった地上を様々な動物達、魚類達が、おっかなびっくり上陸していった。一個の細胞が二十数億年という月日をかけて、この地球上で生きるための様々な創造と改造を加えて新たなる世界へ巣立っていったのです。人間が生まれてからの五百万年にたいし、魚類ができるまでの何十億という長い時の中で、動物の持つほとんどの機能は造られたのです。ただ、魚類が陸に上がってから動物の世界には大きな変革あったが、細胞そのものの機能はほとんど変わってはいない。
魚の目
魚の目
 海や川に棲む動物、いわゆる水中動物を総称してここではすべて魚類と言うことにしていますが、この魚類のほとんどは目、いわゆる視覚を持っています。我々日本人がよく食べるカツオやヒラメ、タコ・イカそしてホタテ貝、食べることが少ないがクラゲやヒトデ、鯨やイルカ、みんな、レンズのあるちゃんとした目をもっていて構造的にも人間の目と大きな違いはありません。また目がない場合も光を感じる色素細胞により周囲の状況を把握することができるようになっています。
 右の絵にあるように、角膜、虹彩、水晶体そして網膜部分には桿体細胞と錐体細胞を持ち、ここで得られた情報は視神経を経由して中脳で映像として知覚される。水晶体レンズが球形なのは水中での視野を広くするためもありますが、有害な紫外線が網膜に達するのを防ぐ目的の方が重要です。ちなみに人間の幼児の水晶体も球形に近い。魚の視力は0.1〜0.2程度で、はっきり識別できるのは距離2mぐらいまでで、15m以上離れると見えなくなる。魚の視力はすこぶる悪い。
 さて肝心の 魚類の色彩感覚ですが、いままで多くの研究者の方々が専門的に調べてこられた。網膜の細胞の、色彩を見分けるといわれている錐体細胞に電極を刺し、魚に色々の波長の色を見せて、その時に反応する電位差を記録して色覚を判定する方法があり、また、直接的に網膜の視細胞の感光色素を化学的に調べる方法があります。その結果、海洋のみをすみかとしている魚類、たとえばクロダイ、チダイ、カツオ、キハダ、マグロ、カジキ、タコ、イカ、カニ、ホタテガイなどは色覚がなく、一方陸上の河川や湖沼にすんだり、川で生まれたか祖先が川で生活していた魚類、コイ、フナ、キンギョ、アユ、アマゴ、ボラ、サケ・マス類、スズキ、マハゼ、ブラックバス、エビ、ザリガニ、マダイなどには二色以上の色覚があるというデータが上がっています。もっとも、海洋とか河川とか、魚のすみかを二つに分類したのは私の勝手な判断で、多少違いがあるかもしれません。
水深による色の変化
海の深さにより色彩は変化する

 さて、右の写真は海中での目に感ずる色彩の変化を表しています。水の中では光は波長に応じて水に吸収される度合いが違うため、深さにあわせて色彩が変化します。
 水深5mまでは陸上で見るのとほとんど変わらない色風景です。
 5mをすぎると赤が、10mでオレンジが、30m近くでは黄色が消えて、緑と紫の混じった青系の世界となる。

 さらにこのあとは緑が消え、紫が消えて、50mをこえると水中は青一色になる。この後、水深400m近くでは月明かり程度の明るさまで減光し、600mでは人間の視覚の限界となるが、光は水深1000m近くまで到達します。


 人類の祖先たる海の魚類は目を持ちました。それは多少ぼんやりしていましたが、相手の姿を認識することができ、そしてそこから出る光の波長を感じる能力を持っていました。ほとんどの魚類は錐体細胞と桿体細胞を持っていたのです。ただここで重要なことは、当時の魚類および魚類を形作る細胞にとって最大の敵は紫外線であったということです。紫外線に当たると一瞬にして細胞の遺伝子は破壊されました。まだ強かった紫外線は海面下10mていどまで浸透していたため、魚類は目に入ってくる光の波長で深さを察知し、それ以上海上へは浮上しなかったのです。上の写真のように、光の波長480ナノメーター(青)あたりが最も安全な領域で680ナノメーター(赤)を感じるようになると危険であった。
 すなわち当初魚類は錐体細胞で光の波長を感知してはいたが、それは、いま人間が感じている色の認識とは違うものだったのです。それに、海の中は青一色のような状態でありカラフルではなく、色彩を認識する必要もなかったし、また脳の容量も十分ではなかった。
 約四億年前に魚類の一部は紫外線よけの厚い甲羅をつけて陸に上がった。そして陸は陸で別の進化の道を歩み、人間の祖先となったかもしれない。いっぽう海に残った魚類達はそれぞれ分化し、多くの種類が発生したが、地核の変動などにより絶滅するものもあり、いろいろ整理、変遷して今から約二千万年前に今の種類が出現して、ほぼ現在に至っている。その間魚類の色覚はほとんど変わっていない。なぜなら、海の中の景色は今も昔も何ら変化がなく、色彩を感じて空間を色分けする必要がなかったからです。
 それでは色覚がないとされる生来海に棲んでいる魚類は景色はどのように見えるのでしょう。色覚がないから何もかも灰色の無彩色に見えるかというとそうでもありません。色盲で、三色のうち一色しか見えないのです。海洋を泳ぐ魚のほとんどは視界がうすい青色に見えるでしょう。それらの魚が海面近くに上がってきたときには全体がより明るい青に見えるとともに、赤は黒く見えます。
 一方、川や湖底に棲んでいる、色覚を持った魚はどうでしょう。川の魚、淡水魚は実は海の海水魚よりその生い立ちは古いのです。それぞれに色々な変遷はありましたが、今の海水魚の種類が現れる前に、すでに淡水魚の多くの種類は川に棲息していたのです。淡水魚は海水魚と逆に5m以上深いところにいることは少なく、光の波長も十分透過する水位で、そして、川はほとんどの場合薄暗く汚れて透明度が悪く、白黒の世界ではものを判別するのが難しかった。そこで川で棲息する魚は色覚を持ったのです。時期的には六千万年前ころで、恐竜たちに代わってほ乳類が現れ、すでに色覚を持った蝶や蜂そして鳥たちが地上をおう歌していた。ではどのように見えるのかというと、魚の種類により一概にはいえませんが、色彩そのものは人間と大きな差はない。エビ・カニのように二色しか見えないものやコイやキンギョのように紫外線まで見えるもの、サケのように海洋と川では視覚が変わるものなどあり、詳しくはまだまだの研究が必要である。
 魚類全般にいえることですが、静止したものを見るときの解像度は人間より非常に悪い。ただし、動くものを見るときの動体視力は人間の数十倍の解像度になるという。
 さてもう一つ重要なことですが、魚のウロコ(鱗)と肌の色についてお話しします。ウロコは一般的には塩水などとの浸透圧差の調整とか、外圧から身を守る目的であのような形状になっている、とのことですが、最大の目的は太陽からの紫外線防止です。ウロコは石灰塩でできていて衣服のように紫外線から魚の皮膚細胞を守っているのです。さらにウロコには色素細胞と光彩細胞があり、魚は棲む環境にあわせて好きなように体色を変えているのです。とわ言っても魚が紫外線に完全に強いかというとそうではなく、浅いところで直射日光に何時間も当たっていると皮膚(うろこ)細胞が犯されるので、池にはヨシズをするとか、日陰のところをつくってやるとかの配慮が必要です。特に金魚鉢などは日の当たる窓際に置かないほうがよい。
青い海洋を泳ぐ魚の群
真っ青な海を、 タカサゴの
群を追うイソマグロ---
----日本動物大百科より
 ニシン、サンマ、イワシ、カツオ、シイラ、サワラ、ブリなどの海の表層近くを泳ぐ魚は背側が青黒色か青緑色で腹側が銀白色ですが、これは、上から来る光や乱反射の青い光についてその波長を肌が感じとって反射し、腹側は光を感じないからです。海の表層を泳ぐウロコのない鯨やイルカは黒い肌で紫外線を完全に反射しています。マダイとかタラなど、色彩の波長がとどかない海底を泳いでいるのに赤とか茶の色なのは、稚魚のときに三十メートル以下の浅い海とか河口に棲んでいて、そのとき最も敏感に受ける光の波長を反射するためです。ヒラメとかタコとかが海底の砂の色に合わせるのも同じ現象で、よく保護色とか擬態という表現を用いますが、魚の細胞にそのような感覚はありません。みな、光を意識しての防御策なのです。人間の肌の色についても同じことが言えるのですが、これについてはもっと後でお話しします。

2005.4.26


(昆虫の色彩感覚)

 

 今から約四億年前、この地球上で、最初に海から陸に進出してきた動物は昆虫でした。約六億年前の全球凍結という大氷河時期を乗り越えた海は、たくさんの生物を育んだ。特に約十億年前から登場したゾウリムシのような単細胞動物はその細胞の組合せにより何千万種類という多細胞動物を生み、それぞれが海中で小さな生物として独自の進化をとげていた。そして、植物が陸上に広がりはじめるとその後を追うように、あるものは潮の干満でできた沼地から、あるものは流れ来る川をさかのぼってその岸辺から、陸にあがった。ただ、みな背中に黒い甲羅のようなものかぶって異様なカッコウをしていた。なぜなら、まだ紫外線が強く、細胞の素肌のままではとても生きられなかったからで、その姿がイヤなら陸に上がってもミミズのように土中にもぐっていなくてはならなかった。
ニリンソウとカミキリモドキ
ニリンソウの白い花にとまる
甲虫のカミキリモドキ
「花と昆虫がつくる自然」
より
   その最初の昆虫とは甲虫でした。甲虫の最古の化石は古生代ペルム紀、今から二億八千年前の地層から発見されており、今は、地球上にいる三千万から五千万種類と推定される昆虫のうち約四十%をしめ、動植物の種類全体の約四分の一に達する。主なものとして、カミキリムシ、オサムシ、ハムシ、コガネムシ、タマムシ、ホタル、テントウムシ、クワガタなどで、普通は紫外線を避けるため黒っぽい体色で、飛ぶのはあまり得意ではなく、物かげにかくれたり、地中や枯葉の下、木の中などにひそんでいるので、人目につくことが少ない。
 甲虫の次には一億二千万年前ころ、花の誕生とともに現れたとされるハチである。正確にはハチ目といい、分類学的には甲虫から分化したのではないかとされ、仲間であるアブやアリを含んで現在学名のつけられている実在数は約三〇万種に達し、地球上の植物と動物の共存に重要な役目をはたしてきました。
 もう一つ大切な昆虫にチョウ(蝶)があります。チョウもどのようにして、いつ現れたのか分かりません。ただ、一億年以上前の化石は発見されておらず、甲虫や蜂が現れたあとの一番最近、八千〜九年万年前に、ミツバチと同じ頃かその後に出現してミツバチとはちがう方法で花の生殖を助けてきたのです。
 さて、このへんで本題の昆虫の色覚についてお話ししましょう。

紅葉 甲 虫 の 色 覚 カブト虫

 甲虫が陸に現れたときの地表は、岩石だけの灰色の世界で、そのなかにわずかに胞子植物の林と地衣類が点在するていどであったが、白亜紀に入ってから、地上のそこここに花らしきものが姿を現した。長い地質時代を生き抜いてきた甲虫は、地上に花が現れてもその色覚能力ほとんどかわらず、現代にそのまま原型を引き継いでいるものが大部分である。植物に寄生する甲虫はわずかに緑を意識できるであろうし、動物の死骸などをあさり、いつも土の上で生活していた甲虫はうすく赤色を認識したであろう。それまで花といえばすべて白色の胞子であったが、甲虫にとっては現在も、花粉や蜜を食べにくるのはほとんど白い花にかぎられる。甲虫にとって白色が一番わかりやすく、そしてなによりも白い花は大抵紫外線を吸収してしまうので安全であった。いまわれわれの前にいる甲虫の多くは、その生活環境に合わせた、緑とか赤とかのただ一色の色覚ををもつものと考えられる。ただ甲虫はものすごく種類が多く、なかには突然変異的にまったく違う形態へ進化し、ハチのように新しい昆虫種となってからすぐれた色覚を持つようになったものもありました。

紅葉 ハチ(蜂)の色覚 ハチ

 つぎにハチについてお話しますが、これも種類が非常に多いのでここではミツバチを対象とします。ミツバチについてはノーベル医学・生理学賞を受賞したフォン・フリッシュ氏の実験などにより、ある程度その色覚能力が解明されています。

ミツバチの色覚
ミツバチの色覚領域

 ミツバチは波長が300ナノメートルから650ナノメートルの間の光を認識できるという。300から400の間は紫外線領域なので人間には見えませんがハチには見えることになり、一方650から800は人間には赤と認識できる領域であるがハチには逆に認識できないということになります。さらにミツバチは400から480ナノメートルの間の人間では青からスミレに見える範囲、480から500ナノメートルの間にある青緑の光の色、500から650ナノメートルの間の人間では緑、黄、オレンジの範囲について、上図にあるように単に青、青緑、黄色と三つの色彩しか感じない。すなわち、細かく色を区別することができないのです。
 現在のミツバチはハチ目のなかで最も新しい類に属し、ここまでくる前にハバチ、ヤドリバチ、カリバチ、ハナバチという進化をへて、その間色覚の面で大きな変化を経験してきたのです。カリバチまでのハチはシダ類や木の葉そして同じ昆虫の死ガイなど何でも食べ、甲虫とちがうのはより器用に飛べるようになったことであった。ところが一億年ほど前、突然花が現れたのです。
 花は花びらとオシベ、メシベを最も目立ち、見やすい黄色で飾った。今までの胞子による種の保存からオスメス交配の種子による種の保存へと、花は大変革を始めたのです。ところが、ハチは当初黄色い色を知らなかった。ハチの棲んでいた環境はほとんど青緑一色で、地面の赤と空の青はほとんど目に入らず、黄色い花はただ少し明るい緑に見えた。そこで花はハチを受粉に利用しようと考え、花粉に高い栄養価をもたせ、さらに花弁の奥にあまい密をほどこした。いままで木の葉と死骸ばかりを食べていたハチは生活の糧を花へと移した。それがハナバチです。ハナバチは黄色い花と長い間生活しているうちに、いつしか黄色を新しい色彩として認識するようになった。ただ、花のオレンジ色とか黄緑とか、微妙な色の区別は難しく、同じ色と判断した。そして、ハナバチのなかから、密だけを求めて集団を組む種が現れ、それが今のミツバチとなった。
 このころすでに地上には四季が訪れるようになり、野には種子をもった草花がじょじょにその勢力を拡大し、恐竜時代とまったくちがう花と緑の世界が広がりつつあった。ミツバチはせっせと密を巣に運んだ。ミツバチの見える世界はエサのありかを示す黄色と、草の葉の青緑と、空の青だけであった。そしてハナバチの多くはその後も進化を続け、青より若干波長の短い紫も認識できるようになった。

紅葉 チョウ(蝶)の色覚 チョウ

 植物、とくに花にとってはまだまだ大きな目的があった。それはもっともっと広く、地球上のありとあらゆる場所にに草や木を植え、そして植物と動物が共存することであった。そこで花は赤い花と青い花をつくった。いままでの黄色のカロチノイド類色素にたいし、アントシアンケイ類色素をくわえ、さらに花弁の美しさやメシベ、オシベなどの構造も変えた。

チョウの色覚
チョウの色覚領域 

 この花の期待にこたえて生まれたのがチョウであった。大部分の昆虫の目は複眼という、小さな目がたくさん集まってできていて、視力は悪いが一つひとつの目が像をとらえるので、相手の動きがよくわかようになっている。チョウはその複眼に、丁度テレビのブラウン管のようにハチより多くの色を識別する視細胞をもっていて、上の絵のように紫、青、青緑、黄色、赤と紫外線を認識する。
黒ハゲハチョウ
彼岸花にとまる黒アゲハチョウ
「日本動物大百科」より
   それではチョウはこれら五色のほかの中間色、たとえば橙色、桃色、赤紫、青紫その他の色を識別しているかというと、私の想像ではハチと同じように中間色は区別できないと考えています。花は美しく装うことにより受粉を昆虫にゆだねています。それゆえ、その色彩はわりと目立つ原色が多いのと、受粉行為に微妙な色の変化は必要ないからです。それと最も重要なのは、目から送られた情報は脳の中枢に送られ、そこで色として認識されるわけですが、チョウには目からの情報を組み合わせてさまざまな色を認識する、脳の解析能力はないと思われるのです。人間は色の種類(色相)だけでも約240種、明るさ(明度)・あざやかさ(彩度)を含むと約500万種、これに光沢・透明度・地肌などを含むとその数無限に近い色を認識可能という。これに近い視覚性能をもっているのは鳥類であり、このあとに触れたいと思います。
 チョウの出現はまた、花の咲く植物を遠くまで運ぶ役目をもになっていた。チョウの特長は、ハネや体が花粉のつきやすい0.05〜0.5ミリほどの長さの鱗粉(りんふん)でおおわれていることと、巣をもたないので子育ての必要がなく、遠くまで自由自在に飛び回ることができたことです。日本には毎年、南西の季節風や台風にのって南方から多くのチョウが飛来し、そして寒くなると南の島へ帰ります。
 その他の昆虫については、たとえば身近なものでは、ハエ・トンボ・クモなどは多少色違いがあるが、2色から3色を認識できるであろうし、ゴキブリは一色で色盲に近い。それぞれ、動物一般にいえることことですが、その生活圏の環境色がそのまま識別できる色と解釈してまず間違いないでしょう。

2005.9.21


紅葉 昆虫は実際にどのように見えるか 

人間 の見る花 人間の見る花

甲虫 の見る花 甲虫の見る花

ミツバチの見る花 ミツバチの見る花

チョウの見る花 チョウの見る花
 右に四枚の写真があります。
 最初のものは人間が見たときのバラ園の様子で、手前にThe Pilgrimという名の白と黄色の二色のバラが咲き、奥には少しピンクがかった赤いバラが咲いています。
 二枚目の写真、多くの甲虫のなかで、コガネムシ、カミキリムシ、ハムシ、ゾウムシ、ハナムグリなどの種類は蜜や花粉を求めて花に集まりますが、その大部分は少しの緑色を感知できる程度の色盲で、もっぱら白い花に好んで集まります。
 昆虫はおもに複眼で色を認識しますが、小さな目の集合体でものを認識するため、動きには敏感でも,よほど近くにこないとものをはっきり見ることができません。
三枚目の写真、ミツバチは青、緑、黄色の認識だけで、黄色には特に敏感に反応する。ただ、ハナバチの一部は紫色も識別できるようです。
 四枚目の写真、アゲハチョウは赤色も認識でき、甲虫やハチに比較して複眼を構成する個眼の数が倍以上(12000〜18000個)に多いため最もよく見えるが、それでも遠くのものには焦点が合わない。
 以上の写真はあくまで標準的な昆虫について仮想したものであり、アフリカなどにはまだ未発見の昆虫が何千万種類と棲息していることなども考えると、今後の研究によってはもっとすぐれた色覚能力をもった昆虫が発見されるかもしれません。 

2005.11.22追記

紅葉 昆虫は色や形をどのように認識しているか 

(1)昆虫の色彩への感受性

 -★-昆虫が最も好む色は黄色といえるでしょう。ミツバチにとっては黄色は食料のあり家を示すものであり、 チョウにとっても、紫や赤のあざやかな色彩に惹かれるが、その花の中の黄色い部分にミツや花粉があることをよく知っている。黄色は動物が認識できる光の波長のほぼ中間にあって、物を最も鮮明に見ることができるとともに、なによりも花が最初につくりだした色彩であり、色素なのです。昆虫にとってはオレンジ色や黄緑も黄色に含まれ、自然界では色素として最も多く存在します。
 -★-赤や紫色は花が、チョウによってもっと遠くまで花粉を運んでもらうために造り出した、黄色よりもより鮮明で刺激的な色なのです。チョウはハチよりも気まぐれです。卵を生むだけで子育ての必要がない。いつもあっちの花こっちの花と、一カ所に長居をしない。それにチョウは種類にもよりますが、赤や紫以外に白や黄色の花も好んで訪問するのです。そんなチョウを引きつけるにはチョウを刺激し、そして興奮までさせる色彩が必要であったのです。
 -★-青は空の色であり、海や湖の色であった。空は、太陽が顔を出すと同時に広い空間を占めて頭上を被い、昆虫にとっては母の懐のようでもあり、地平線をあらわす標識でもあった。また、青は貴重な水のあり場所も示してくれた。
 -★-白色は光のすべてを反射する。ところが、昆虫にとって白色という色は存在しません。自然界にも白色は特殊な岩石か燃えカスのようなものに時たま見られるだけで、白い花のもつ白さは花弁の繊維が光を乱反射して生じているのです。そのため色素のいらない白い花(?)はそのむかし、胞子植物としての古生代の鱗木(うろこぎ)などにも見らたように、古くから黄色にも劣らないほど昆虫たちに親しまれてきたのです。ただし、白色の花に密や花粉があるとは限らず、昆虫にとって「白」とは目印的存在でもあったのです。
 -★-黒色はあまり好まれない。太陽が落ちると回りは黒一色になり、陽が当たる物陰はみな黒で、黒い物体からは光の刺激は何一つとどかず、昆虫にとって黒色は得体のしれない不気味な存在なのです。そのため、昆虫は紫外線を防ぐ目的だけではなく、捕食動物にたいする威嚇や自分をカモフラージュするために、我が身を黒く装うことがあるのです。また、黒はすべての物体や景色に必ず存在し、色彩を引き立たせる役目ももっているのです。
 -★- ところで、昆虫が紫外線を認識していることについては今まであまり触れませんでした。多くの文献を見ると、昆虫は紫外線を色として認識し赤色を知覚すると書かれていますが、これは正しくありません。もしそうなら、赤色を普通の色として認識できるチョウや鳥類などは、紫外線の赤と普通の赤を重複して見ることになるし、色彩について最も敏感な人間が、たとい目の構造上紫外線を見られなくしているとはいえ、まったく紫外線を色として感じないはずがありません。
 人間は紫外線をまぶしいような単なる光として感じています。金属を溶接するとき、そのアーク(arc)から強烈な青っぽい光がでますが、それは強い紫外線であるときいています。また、水銀灯の青白い光にも紫外線を多くふくんでいます。ハチやチョウも紫外線を見たときは色として感じるのではなく、より明るいまぶしいような光として見ているのです。そして前から述べているように昆虫は紫外線を怖がっているのです。四六時中太陽を背にして飛び回っているハチやチョウにとっては、紫外線を反射して明るく見えるものよりも、紫外線を吸収して濃い黄色や赤に変色した花びらに、安心して密を求めるのです。
    女郎グモ(蜘蛛)
女郎グモ(蜘蛛)
ミツバチ(蜜蜂)
ミツバチ(蜜蜂)

(1)昆虫の模様への感受性

 右にミツバチの尻の部分と女郎蜘蛛の写真がありますが、いずれも黒の横縞で身体を装飾しています。これは、彼らの捕食者または捕えようとする獲物にたいして、紫外線の輝きと目の錯覚を利用して、威嚇またはカモフラージュしているのです(黒と黄色の組合せがベストのよう)。この横縞模様がなぜ昆虫を興奮させるのでしょう。
 みなさんは頭を動かしながらものを見るのに、見ている像はなぜ動かないのでしょう。それはフイルムの画像のように像が連続してスクリーンに映るのではなく、瞬間瞬間の像が脳に記憶され、つぎつぎと記憶が更新されてゆくからです。人間の場合一秒間に十コマ程度の残像特性をもち、テレビや映画はそれ以上にコマ数が多いので映像が連続してみえるのです。いつも空中を飛びまわる昆虫は視力は劣っても、動く物体にたいしては敏感で、多分人間よりこの残像特性がよく、空中を飛びながら見る横縞模様は多分チラチラと動く横線に見えるでしょう。また、黒色は紫外線を反射して青白く不気味に輝いて見えるのです。
 みなさんがお家で飼っている可愛いネコ、ネズミを捕る特性から細かい動きも瞬時に反応します。犬はテレビを見えてもネコには、ただ横線がブラウン管を下から上に移動するだけにしか見えないのです。ネコは人が抱っこして歩いたり、車に乗せたりすると、外の景色におびえて逃げだそうとします。
 どこかの動物園(?)で、熊をオリから出して車で誘導しようとして、サポーターの人がその熊に襲われて亡くなる事故がありました。その記事をみて、その時の四輪駆動車の塗装は白地に黒の波形の縞模様だったので、もしかしたら走って追いかけられた熊が興奮したのかもしれないと思いました。
 このように縞模様というのは昆虫の世界からはじまって、広く他の動物にも、強さとカモフラージュという両方の使い分けをしながら、伝承していったのです。アゲハチョウのハネの模様、トラ、シマウマ、蛇、ヒョウなどの身体の紋様など。

2005.12.11追記

 ハチやチョウは花などの形をどのように見ているのでしょう。物理学者ヘルツや生物学者のユクスキュル、グールドなど多くの人が色々な実験をしています。それによると、昆虫とくにミツバチは単純な形よりも複雑な形に興味をしめし、花のツボミやバラのように丸い形にはあまり注意を払わないが、咲いた花などには星のような形状と認識し、好んで集まるという。昆虫は複眼であるため物体をモザイク調にとらえ、形を連続した曲線とは見ない。単純な形の丸も四角も三角も単に点のつながりで同じ形状としてとらえるし、人間や他の動物もみな動く同じ有害なものとして扱い、人間には別の生き物に見えるものも識別することはない。それでは昆虫はまったく形に無頓着かというとそうではなく、
 花はどんな昆虫にでも密や花粉を供給するとは限らない。花にはその受粉に適した昆虫がいて、紫外線を巧みに使って嫌いな昆虫を遠ざけることが多い。甲虫はモクレンのように白い花にはとまるが、紫外線の多い黄色い花にはとまりたがらない。ハナバチやアブはもともと紫外線に強い皮膚をもっているので黄色い花によくとまるが、花の中心部だけ紫外線のないものにも好んでとまる。
 それと、人間の色の感覚はどのようにして生まれたのか。残念ながらこの問題に真剣に取り組んでいる人は非常に少ない(もし間違っていたらゴメンナサイ)。人間の色彩感覚誕生の起源を知ろうとするとき、陸上における最初に黄色を感知したハチ類の存在が最も重要であるが、これを立証したノーベル賞受賞者フリッシュ氏や別の学者キューン氏以外、その後は目立った研究が行われておりません。色々な文献を調べてみますが、動物の色覚を議論することがむしろタブーであるかのように、みな書物のなかでは避けて通っています。日本動物百科やNHKの生命ー40億年はるかな旅その他、知りたいと思う色彩の部分になると、なんら記載がありません。唯一私が期待しているのは、横浜市立大学大学院総合理学研究科蟻川謙太郎教授グループが進めるチョウの研究「チョウ類の光感覚に関する研究」です。
   私たち人間の色彩感覚はどこからきたのかとその源流を探るとき、一億年ほど前のこの昆虫と花の関係にたどり着かざるをえないのです。そしてそれは、人間がどのように生まれたかと深く関わりをもっているのです。

2005.9.21

 

(鳥類の色彩感覚)


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