CHAPTER-5

美の法則Top Page
New Theory of Beauty
                  


 

花の精チャシーです


 すべての漢字が簡単な形に変えることにより美しく変身する。


 ハーイ 花の精チャシーです。このページでは文字の美しさについてお話します。
誰もみな美しいものを見て美しいと感じますが、その美しさを書くことはできますか? それは非常に 難しいことです。ところが文字だけは誰にでも簡単にそれを形として表すことのできる唯一の手段なのです。これから、その文字の美しさの法則についてお話します。
 さてまず最初に、日本のひら仮名文字の美しさについてお話します。平安時代に、花を愛する女性達が、あの素晴らしい「ひら仮名文字」をあみ出したのです。
みなさんは人が書いた文字を見て、”うまい”だとか”へた”だとか勝手に決めちゃいます が、どうしてそう思うのですか? 何の基準があるのですか? その謎を解いてゆきます。
 花の精の私は病気になりませんが、みなさんお身体を大切に。
            バイバイ! 花の精 チャシー
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2003.12.28---20010.1.6改
カウンター 2011.1.1より
カウンター



  紀貫之古今和歌集写し

 みなさんが日頃書いている「ひら仮名」は世界一美しい文字です。
そのむかし、日本には文字といえば中国から伝来した漢字しかあり ませんでした。ところが平安時代、当時の宮中に仕えるたくさんの 女性達が、過ぎゆく時と、切々たる愛執のはざまで創り上げたのが この「ひら仮名」文字なのです。
 庭には花咲き競う豪しゃな館で、いつ訪れるかわからないオノコ をじっと待ちつつ、和歌(うた)を詠みながら、漢字を原型とした 美しい文字を一字一字仕上げていったのです。
 当時、かな文字は女性のものとして公的な場所には登場できな かったのですが、それを歴史の表舞台に飛躍させたのが「紀貫之」 で、参考として左にその古今和歌集の一節を載せました。

2003.11.3

それではなぜ「ひら仮名」文字は美しく見えるのでしょう。

1.文字曲線の美しさ


ひら仮名には中心線がありません。すべて左右非対称なのです。たとえば漢字の場合、 「木」,「来」,「目」,「本」,「春」などのように左右対称なものが多く、くずしすぎると 文字性が失われると同時に、左右のバランスがくずれると異常に見えます。(美の解析参照) これにたいしてひら仮名は何ら制約がなく、自由奔放に書きなぐることができるのです。
 また、文字を構成する線はどれをとっても直線とか円の部分がなく、ラセン形曲線に なっているということです。平安女性が漢字からひら仮名へくずす過程において、より美 しい曲線を描くべく苦労した痕跡がうかがえます。
 ひら仮名文字は四八文字あり、この文字ができた経緯は正確には解らないが、漢字を草 書体にくずし、それをまたくずしたものであるという。結果としての文字には元の漢字の 原型はほとんどないが、それがまた字を描くときの制約をなくしている。そして、紀貫之 の和歌のように連綿体で書いた場合には、木にたくさんの花が咲いているような雰囲気を つくりだすのです。                 

2003.11.5

        あの字

 ひら仮名のなかで最も複雑な字体となっている「あ」の字を代表 として左に掲げてあります。
 この「あ」の字の一本一本の線をよく見て下さい。三本の線が交 叉し合い記号のアイウエの四つの曲線で構成されていますが、どの 曲線も点線で示すようなラセン形の一部から成り立っています。
中心となる(エ)の曲線は「つ」の字に似ていますが、の起点か らまでは曲率半径を大きくして、そこからCへは逆に小さく曲げ、 そして終点までの間は大きく広がっています。ア、イ、ウについて もそれぞれがラセン形の一部で曲率半径を増減させて美しい曲線を 作っています。いずれの曲線も円とか直線または平行部分はありま せん。

2003.11.6

2.バランスの美しさ

 次に全体のバランスですが前章「人間の美しさ」で述べたように、形あるものはすべて三 角形に変換して見ようとします。「あ」の場合は下が底辺の三角形で、線の広がりや高さの 特徴点を三角形の重心近くにもってきます。最も幅広のC点近くに変化点があります。(ア) の線を横に大きく伸ばしたり(エ)を小さく書くと美しく見えません。
この場合の三角形の描き方は色々ありますが、要は文字の高さの中心より上下どちらかへ二 割ほど中心となる線をずらして書くことです。それほど位置については厳密ではありません。

      はの字

 代表的な「あ」の字について分析しましたが、ひら仮名はどの字 をとってもほぼ共通して今までの考えが通用します。ただ、「は」、 「に」、「ほ」、「け」は左右の線は交叉せず、曲線が離れて配置 されています。これは漢字のツクリとヘンをそのまま変形して生ま れたものです。
 漢字というのは印を押すために都合がよいように四角い配置にな っているが、四角は見やすくはあるが平行になっているので美しく は見えない。このような場合には左右の曲線に高低差をつけ、平行 を外すことが必要である。枠外方向に三角形ができるが、その例と して「は」の字を左図に示してあります。ただ、あまり偏重させる と文字ではなくなります。

2003.11.8

3.美しい(上手い)文字の書き方

 ひら仮名のなかで特長的なのが「し」の字で、単体でなく連綿として書く場合「し」 の字は中心線の役割を持っている。すなわち、文字としての表現力は劣っているが木の幹のよう に真っすぐに書くことにより文字の流れに芯を入れることになり、全体を美しく見せる。
 以上がひら仮名の美しさであるが「美しい曲線」でも話した通り毛筆の場合には、その曲線 そのものの太さの変化もラセン形に合致することが必要である。ただボールペンとか鉛筆の 字はそれが難しいが、できるだけ太字用のものを使い、線にアクセントをつけると美しい文 字が書ける。
 女性の間で丸文字といって何でも丸い線で文字を書く風潮があるが、自分たちの祖先があ み出したひら仮名のことを思い、ただ丸くするのではなく、「つ」とか「う」のようにラセ ン形にそう丸文字を書いて欲しいと思う。

2003.11.10

  


では漢字はどう書けば美しく見えるのでしょう。

空海の書

 先に述べたように漢字にはヘンとツクリがあり、四角い配置に なっている。正方形は平行線の集まりであり、整った感じは受ける が美しくは見えない。しかし、どうしても四角形になるものもある が、文字としての表現を残して三角形にアレンジできる文字が多い。
 左は平安時代初期の真言宗の大開祖空海の書である。各漢字の運 筆も素晴らしいが「雲」、「書」、「天」、「恵」、「止」などの 字は活字にすると四角いところ、三角形配置として書いている。
 次に運筆上のことであるが、漢字には多くの直線部分を含んでい て、これをすべて美しく書くことは難しく、多種多様な組み合わせ をいかにバランスさせるかである。
 まず、ヘン、ツクリについていうと、それが一つの形を表してい る場合にはその中心線はあくまで直線として書くべきである。人間 の鼻、花や木の幹のように、中心線を曲げずに真っ直ぐに書いた方 が字として美しく見える。空海の書では「雲」、「書」、「披」、恵」などの縦の線である。
 さらに横線の平行についてであるが、その線が中心線の左右に対称に配置されているもの は平行に書くべきである。これを、それぞれの勾配をバラバラにすると、美しさを論ずるよ り先に左右のバランスがくずれ、異常に感じるものである。
 かく言う私は書き物はまるで下手である。どう書けば美しい字になるかは解っていても、 いざ書こうとすると指先が今までの書き方を覚えていてうまく書けないものです。特に縦線 を真っ直ぐ書くのが非常に難しい。日本字にはやはり伝統的に美しい形というものが決まって いるから、それを何回も練習して手が一字一字を記憶する方法が最良である。

2003.11.14



 ここで漢字の美しい書き方についてもっと具体的に説明いたしましょう。
 書道の本を見てもペン習字の本を見ても、美しい文字の基本形らしきものは何も書いていません。ただ、ハネ、オサエ、起筆、 運筆、終筆などの線の引き方や、個々の漢字について線と線の空間のとり方などを説明するだけで、それでは全体としてどのような 形が美しいのか、納得いく講釈はありません。場合によってはただ有名な書家の作というだけで、その形が美しいと教えられ、 訳のわからぬまま納得していることが多々あるのです。
 
それでは古今東西、文筆家は何も分かっていないのかというと、そうではない。いつも美しい文字を書こうと努力し、結果として 美しい形にたどり着いているが、それが何であるか分からないのです。漢字を楷書から行書、そして草書へと形を崩してゆくとき、 いつのまにかその形が三角形にだんだん収れんしていっているのです。その代わり、文字としての形は崩れていきます。
文字の三角形
美しい文字の基本形---三角形

  美しい文字を表す三角形は基本的にはどのよう形でもよいのです。 常に字の外形に沿った形が三角形になる ように意識して書くことにより、自然と美しい字が生まれます。
 右に1から4までの四つの三角形があります。これらが書くときの三角形の主な基本形と考えて下さい。
逆三角文字の例
逆三角形の文字の形

1の三角形

 最初に空海の書にもありました「雲」と「書」ですが、左のHS明朝で書いた字は四角い型にはまった形ですが、 これを行書、草書と右に移るにしたがって三角形に納めようとしていることがよく分かります。
 さらに一番下の「市」の字。みなさんが年賀状を出すとき一番多く書く字で、なんとかうまく書こうと苦労した経験がおありかと 思いますが、これも底辺が上の逆三角になるように書くと、ハットするほど美しく見えてきます。それぞれの線の長さ、間隔のバラ ンスは何度も書いてみることで感覚をつかみます。
 このように逆三角形に書いた方が美しく見える漢字は、「ウ」、「山」、「草」など頭に冠(かんむり)を載せた字に効果的ですが、 あくまで字としての形を失わないことが大切です。「万、京、室、宝、官、安、峯、草、菓、古、学」などたくさんの漢字があります。
下広がりの三角形文字の例
正位置三角形の文字の形

2の三角形

 右に「東」、「志」、「天」の三つの漢字があります。これらの漢字はいずれも、底辺が下の正位置の三角形で書いた方が美しく 見えます。特に「東」と「志」は典型的な三角形描画見本で、非常に美しい形態をなしております。字の下部に「心」、「大」、 「点」などのような末広がりのツクリをもつものや、「金」や「命」などのように形そのものが三角形的な漢字がこの正位置三角形 の部類に入ります。
いままで無意識に書いていても、これらの漢字はなんとなく書きやすいと思ったことがおありでしょう。 それはもともとの形 そのものが美しいからなのです。「忍、忠、息、悪、志、夫、失、央、未、奈、冬、巻、蒸、黒、鳥、晃、全、今、谷、北」など日 常よく使う漢字の多くがあてはまります。
色々な三角形
どんな三角形でも

3の三角形

 文字を描く三角形はどのような形になってもよいのです。ただ、人は左右対称の形の方が抵抗なく自然に受け入れることができ、 多少非対称な骨格の字でも、前のような三角形のなかに納めた方がよいでしょう。右の「和」、「吹」、「竹」は左右対称にはなり えない字で、この場合は当然非対称の三角形として描きます。「和」と「吹」は直角三角形になります。
どんな漢字でも三角形にぴたりと収まるということはほとんどありません。 本来の字の形を損なわない程度の三角形にとどめると、たいていは線の延長上に三角形ができます。これに類する漢字は口、日、土、 山などの部首を持つ漢字で、他に「知、味、呼、咲、唯、時、暗、暖、堤、峡」などたくさんあります。
70%の位置にポイントを
字にも形のバランスが

4の三角形

 きままな漢字の中で、最初から黄金比率で形が整っているものもあります。それは右の「幸」とか「喜」という漢字です。 「幸」は下から70%の位置に中心となる横線がくるのが最も美しい書き方です。「喜」は逆に上から70%の位置に中心線がきます。 両方の漢字はともにほぼ左右対称で、それほど無理しないでバランスがとれるのです。(この「黄金比率」については本ホームページ のCHAPTERー1とCHAPTERー8をお読み下さい。)  同じような漢字としては「受、妻、章、童、苦、貴、辛」などがあります。

二つの線を外で交差させる
四角い文字も美しく
四角い漢字

 漢字とはだいたい四角く配置されている。そのうちでも形そのものが四角い字の書き方をどうするか。右の「口、日、目、田」 ような字は下を狭めて書く。これらの字はそれ自体を三角形に書いてもそれほど違和感なく正しく読むことができる。これに当ては まる漢字は他に「自、臼、国、園、団」などあり、形は異なるが「内、両、角、周、同、由、月、用」なども同じ感覚で書け、 四角い形の応用


さらに右のように「思、向、見、省、申、南、間、聞」なども部分的な組み合わせとしてそのまま応用できるのです。



 今までお話ししたのが美しい漢字を書く基本です。色々な漢字をあれこれ三角形に変形してみて、1から4の どの形にすると最も美しく見えるか、自分の感覚でトライしてみてください。それと、形については何も筆で書かなくてもよいのです。 鉛筆でもボールペンでもなんでもかまいません。
 これまで登場した漢字はそれ自身が三角形に近い形をしていたり、単一な左右対称に近い形をしたりで、比較的三角形に変形しや すかった。ところが多くの漢字は偏(へん)と旁(つくり)をもっていて、またそれらが線として連続していない場合が多い。 次にはそれら込み入った漢字の書き方とか、若干のより美しく書くテクニックについてお話ししたいと思います。

ヘンとツクリ

(1)ヘンとツクリは独立
 ヘンとツクリは漢字としての意味や読み方でつながりを持っていても、美しい文字の表現のためには何の配慮もされていません。 元来漢字というものはそうゆうもので、美しく書こうという意識は漢字ができてから芽生えたものなのです。ですから、ヘンとツ クリは、両方一緒にして美しい形にできることが理想ですが、大部分の漢字はそれが難しく、それぞれ独立して美しく描くように 考えるべきです。 美しい終の字
最も美しく書ける字

 ヘンのうちで最も形がとれるのは糸ヘンで、みなさんも糸ヘンはいつも描きやすく感じているでしょう。そして、糸ヘンのなか でも最も美しいのは「終」の字です。日本映画の最後の字幕に必ず登場する字で、ヘンとツクリはともに同じ方向の三角形で、 さらに全体も丁度バランスのとれた美しい三角形となります。それはまるで富士山を現しているようにも見える。しかし残念ながら 実際に「終」の字をこのように書く人はいない。

(2)色々なヘンに対応
   右に代表的なヘンを持つ漢字をいくつか掲げてあります。 美しい終の字
最も美しく書ける字

 ヘンにしてもツクリにしてもその大部分は底辺が下の三角形になりますが、字によっては底辺をどちらにしてらよいのか迷うものが あります。たとえば「穂」の字の禾(のぎへん)とか「接」の字の手ヘンとかで、その場合にはその漢字に合うと思うバランスで 書いたらよいでしょう。
(3)字形ごとに形を整える
   三角形に形を整える場合、すでに形として決まっている字体が何個も重なってヘンなりツクリなりを構成している場合には、 その字体ごとに三角形を作った方がよいでしょう。右の漢字では「語」のツクリの五とか口、「接」の字の立とか女という字です。 一般に「日」、「口」、「田」「目」などが入るツクリがこれに該当します。ただし、「鏡」の字のツクリのように全体が三角形の方が よい場合もあります。人は美しい形を好みますが、過去の経験則より著しく奇妙な形をしているものには不自然と解釈します。
 漢字を美しい三角形に描くためには、書道の専門用語でいう「払い」の部分を長く引っ張るほうがよいようです。右の字では 「猿」や「族」の右下のしっぽの部分です。ただしペン字のときはやめたほうがよい。
 普通の漢字ではどうしてもヘンとツクリの頭をそろえて書きたくなりますが、いずれか一方を少し下げた方が美しく見えます。 それぞれの漢字によりますが、ヘンを下げた方がよい場合が多いようです。

特殊な漢字
  連の字
シンニュウ


 冠(カンムリ)や偏(ヘン)を持った漢字以外に特殊なものにシンニュウやソウニュウの部首を持ったものがありますが、 これらの漢字もやはり三角形を意識されたほうが美しく書くことができます。
 右の「連」の漢字は楷書では四角い配置ですが、 起の字
ソウニュウ
草書で書くとシンニュウ部分は非常に簡単になり、真ん中の字のようにシンニュウ部分を短くして 三角形に近づけたほうが美しく見えます。少し極端に書いてありますが。
 逆に、「起」の字の場合はソウニュウ部分を大きく書き、ツクリを小さく書いたほうがよく見えます。


複雑な文字
  飛,慶の字
複雑な文字


 漢字の中に含まれる字画が多くなるほど美しく書くことが難しくなるもので、どうしても四角形にしないとおさまらない こともあります。ここですべての漢字について解説するのは難しいが、右の漢字のように、いろいろ積み木細工のように重なって いても、全体を見たときに、三角形に近い形へもっていくこともできます。
 とにかく、三角形を頭に入れいろいろ形を工夫してみることです。

運筆の基本
   春の字
横線は平行に

 漢字はすべて自然の造形でなりたっています。
(1)横線は平行に
 多くの字は山野に存在する樹木を模して形造られ、その姿は真っすぐとのび、そして横に広がる。すなわち漢字の多くは 直立し、水平にその枝を横に伸ばしている樹木の姿で、そこにはCHAPTERー1やCHAPTERー2でお話しした 「対象の理論」が成り立つのです。すなわち右の「春」は真ん中に中心線をもつ左右対称の字であるため、上の三本の線は 平行でなくてはなりません。同時に下の「日」という字も対称であるので、横線はそれぞれ平行になります。
 漢字は、全体として左右対称の場合もありますが、ヘンとかツクリの中の構成要素として単体で左右対称の場合も多く、 いずれの場合も横線は平行に書かねばなりません。もしこれを避けるためには、草書のように極端に字形をくずすことです。 様の字
中心線は真直ぐ

(2)中心線は真っ直ぐに
 次の「様」の字はヘンとツクリの両方とも左右対称な線形で成り立っています。そのため、それぞれの中心線は上から下へ 真っ直ぐに引かれ、かつ、両方の線は上下について平行でなければなりません。また、ツクリの方の上の三本の線も平行になります。 「様」というのは特に書くのに厄介な字ですが、他に棟、輔、種、柱などがあります。とにかくここでは、中心線は真っ直ぐに引く ということを覚えて下さい。不思議と文字が引き締まります。
 上の(1)と(2)に共通していえることですが、左右対称ということは中心線で二つ折りするとそこに書かれている線形 が重なり合うことを意味します。そのため、平行でない線は折ったとき重ならないのです。実際の肉筆の漢字は右肩上がりに 書かれるため厳密には左右対称でないのですが、人間の脳は多少の誤差があっても左右対称と解釈するのです。
(3)永字八法
永の字
永字八法
 さて、それでは一本一本の線はどう書けばよいのでしょう。昔から書道の手本として右の「永」の字を使った「永字八法」 というのがあります。原理は「ラセン曲線」からきているのですが、起筆、送筆、収筆でできていて、漢字を書くときの 線の処理の仕方を表しています。毛筆を書くとき必要ですが、ペン(ボールペン)字には無理に必要はないでしょう。バランス がよくなったら、チャレンジしてみてください。


2006.5.14

美しく見えるとは?


ここで美しく見えるとは について重要な説明を加えておきます。
人間がものを見て美しく感じるのは、記憶にある形を想像するからで,完全に形の決まったものは美しく感じません。 そのため、文字にしても教科書通りに四角く切れ目なく書かれたものは美しく感じないのです。それは整った感じがするだけで 美しさではないのです。
線の間隔と文字の美しさ
線の間隔と文字の美しさ

右に「目」と「大」の字があります。左側が標準的なゴシック体で書いたもの右が行書で書いたものです。いずれも行書の場合には 赤丸の部分に隙間があいています。左のゴシック体の文字を美しい文字と感じる人はいないと思います。それに対して右の文字には 動きが感じられ、頭脳に刺激を感じます。
線の間隔と文字の美しさ
線間を大きくとった文字の美しさ

右の例はもっと複雑な文字にこの考え方を取り入れたものです。
どの文字もその字形を損なわないギリギリのところまで線の交点に間隔をあけています。もちろんでたらめにあけているわけではなく、 一定のルールに従ってあけているのですが、常識的には右の文字の方が美しく感じると思います。
左に行書の文字がありますが、もしこれがなかったらあなたの脳は、これは「町」という字だ、これは「夏」という字だ、という風に 想像を交えながら模索したことでしょう。
詳しくはCHAPTERー3美しい線形で述べておりますが、この自然界には三本以上の線が交わることはありません。 そこで三叉で結ばれている線の交点に隙間をあけたのです。十字に交わった線を分断すると、多くの場合文字としての形を大きく損なうと同時に書くことが非常に困難です。ここでは3線の交点のみ間隔をもたせました。

間隔はその文字の形の判別ができれば、その判別の限界まで広げるのが最も美しく見えるのですが、芸術に挑戦するつもりでない以上 それほど空けなくても充分美しい文字の感覚を得られます。要は自然界に抗することなく、同時に脳に想像という刺激を加えることによりものが美しくみえるのです。
俺はいつもきちんときちんと揃えて字を書いているのに、字がきれいに見えない。隣の奴はささっと適当に書いているのに、なぜか字が きれいに見える。そんなことないだろうか。難しく考えないで線と線の間隔を認識できる程度にちょっと離して書いてご覧なさい。全く雰囲気が変わると思います。

2009.9.23

いかがでした! 少しは美しい文字を書く手助けになりましたか?  二次元の平面に展開する文字については、 「ものの美しさを表すバランスの基本形は三角形である」ということを理解し、そして、 「美しさを表す曲線はラセン形である」ということを認識し、さらに、人は 「ものはみな対称にできている」と認識しようとする、というこの三つの法則をつねに念頭におけば、美しい文字が書けるのです。 一字ずつ書き方を教わる必要は何もない。いろんな字について自分で試してみるのです。織田信長や坂本龍馬などの昔の人の手紙は、 漢字がみな草書で書かれていて、今のわれわれにはとても読みこなせない。昔の人は文字にこだわりがあり、本来四角い漢字を できるだけくずして美しい文字を書くことに喜びを持っていたのです。四角いということは読みやすくはあるが、美しくはないのです。

2006.5.28

4.世界の文字と芸術文化について

 人類が道具を使うようになった100万年前ごろにはすでに記号としての文字は存在した が、一般に広く用いられる文字として出現したのは紀元前5000年ころである。
 今のイラクの南部に最古の都市国家を築いたシュメル人がまず「楔(くさび)型文字」を 発明し、次にエジプト人は「聖刻文字」を、そして中国は殷(いん)の時代に「漢字」を発 明した。その後幾多の変遷をへてエジプトの聖刻文字がローマ字に発展し、中国の漢字は多 少の改良を加えたが原姿を残したまま現代に引き継がれている。
 この世界を代表する二つの文字の出現は後に民族の美的感覚と文化の発展に大きな影響を 与えた。
 楔型文字も聖刻文字もその筆記具としては木の棒や草の茎を使っていたため、必然的によ り書きやすい字体となり、、最初の象形文字としての複雑な形状のものが順次簡略化してい き、最後に最も書きやすい表音文字であるローマ字へと変化していった。後に中世では筆記 具はペンに変わっていて、筆記体やロマンタイプとかイタリックタイプができたがローマ字 が美的鑑賞の舞台に上がることはほとんどなかった。
 一方漢字はそれが発明された中国殷の時代の後期には毛筆が考案され、周や秦の時代から は単なる象形文字の域を超えて絵画的な待遇を受け、字のうまい人は聖人扱いされるまでに なった。そして漢字は中国の漢の時代、おそくとも三世紀には朝鮮半島を経由して日本に伝 来し、平安時代にはひら仮名、かた仮名を生み、さらにアジア全体に広く形状美術の礎石を つくった。歴史も判然としない古代にどうせ考えるなら美しいものをと、漢字を考案した中 国の先人には深く敬意を表すとともに、このときすでに現代人と同じ美意識を持っていたこ とに驚異を感じる。
欧米人とアジア人では美意識と文化に大きな差がある。その発端は文字を書く筆記具にペ ンを使うか筆を使うかにあった。イタリアを中心としたルネサンス美術でわかるように、欧 米の美は色彩と華やかさを重視したものであったのにたいし、中国や日本の美は水墨画や陶 磁器のように無彩色の形を重視し、むしろ質素繊細で荘重なおもむきを好んだ。そして重要 なことは漢字文化圏では美しく文字を書くことが古くから教育の場に入り込み、その美意識 がすでに各種民芸品、料理、菓子、衣裳、什器にまで浸透していることである。
 色彩バランスを重視する服飾などの装飾品では欧米人にかなわないアジア(特に日本・中 国・韓国)人も色の定まった建築、及び工業製品のデザインでは優位であるとともに、物づ くりの分野でも形にたいする繊細さが生かされてきているのである。
 その他の文字としてロシア語やユーロ各国の文字があるがすべてローマ字の変形である。 イスラム教コーラン文字として特徴的なアラビア文字は宗教色が強すぎる。朝鮮半島のハン グルは最も独創的な文字であるが漢字との併用であり、その歴史は浅く、むしろ漢字文化の 影響が強い。
 最後に、美しさへの貢献度は低かったが見た目には整然として誰でもが容易に書けるロー マ字は、意思伝達手法として世界の文化に最も貢献した文字であることを申し添えます。
                            

2003.11.19


 単なる文字と思えど、万人に供するものはいかにその影響力が大きいか、中国人が生み だした漢字はその偉大さを教えてくれた。その漢字をさらに書きやすく美しく改良して いった日本人の 祖先は中国人に劣らず優れている。
だがいったい、何人がこのことを認識しているだろう。毎朝読む新聞の文字はなぜゴ  シック体ではなく明朝体なのですか? 見出しはともかく本文はどの新聞も明朝体です。
ゴシック体の方が線が単純で狭い範囲の文字としては整然として見やすい。ところが新 聞のように広い紙面を素早く読もうとするの場合、一字一字に個性がないゴシック体は判 読にとても疲れるのです。文字は美しい創造物として我々の頭脳のなかでいつも生きてい るのです。
 次の章は建物の美しさについてです。建物のデザインを全く新しい視点からとらえています。ぜひお読み下さい。また、 いままでのこと、ご意見をお待ちしてます。

2003.11.22

ボタン 「建造物の美しさ」 ●ご 感 想<
Copyright t-hayashi 2003     登録 11/22/2006