そう告げるエザリアの目に涙が溜まっていって、一滴流れ落ちる。
「えっ?!イザークが、、、どうして??あんなに隠し通してたじゃないですか?」
エザリアを責めてるわけじゃないが、突然のイザークへの真相発覚に憤りを隠せない、自分があんな辛く心苛まれながらも必死に隠していたコト
だったから。
どうしてイザークに知れてしまったのか知りたかった。
「どうやらあのコ、検査の待ちの間ここのファイルデータを経由して、裏ファイルがあるホストデータにアクセスしたらしいの。幾重にもプロテクト掛けた
 はずなのに、あのコったらものの数分で抉じ開けてしまってて。私が気付いた時にはもう手遅れ、皆知ってしまった。
 …貴方の事も例の遺伝子も、自分が余命宣告を受けてたことも。」
ひと通り話したエザリアの目から堰が切った如く涙が溢れ、細い肩を震わせながら泣いていた。
自分の描いたイメージとイザークからの話でバリバリ仕事をこなす強い女性の印象を色濃く受けてたから、今目の前にいるエザリアがただのか弱い
女性、いち母親なのだなと心の片隅で痛感した。
そんな痛々しいエザリアの姿に見るに見かねて、そっとその震える肩に手を差し伸べる。
ディアッカの心遣いに察して、
「ごめんなさい。有難う、ホント貴方って優しいのね。あのコが好きになるのは当たり前だわ。」
ハンカチで目頭を拭いながら、心配そうな顔のディアッカに微笑を向ける。
エザリアの言葉に?マーク。
(イザークのヤツ、いつオレ達のこと小母さんに話したんだ??)
エザリアの話では休暇で自宅に戻ったイザークの話が殆んどオレの事ばかりで、直接好きだ何だと言葉にせずとも自分の息子の思考力は判りきってるからと。
母は、強しといったところだ。
それはさて置きイザークに真相がバレた以上、今後如何イザークと接したらいいか考え揚げ句。
エザリアは、
「普段どおりにあのコと接してあげて。もしこの真実にああだこうだ言い出すようだったら、殴ってても判らせてあげて。」
と、かなり武闘派な意見が飛び出した。
「殴っててもって…そんなことしたら余計傷つくんじゃないですか?アイツこのこと知って、かなりショック受けてるはずです。女のコとして望まれてた自分が結局
 男のコで産まれてしまって、しかもオレとの遺伝子の件もあるし…。
 オレだって真実を知った時かなり動揺したし、憤りも感じたから。アイツの今の気持ちは判ってます。」
とりあえずオレ自身の意見も述べてみた。
「やっぱり、貴方は優しい…今のあのコには、貴方が不可欠なのよ。共に心の痛みを分かち合える者が…。お互いの距離が近ければ近いほど。
 ごめんなさいね、こんな打算的な母親でかなり失望したでしょ?」
言い終えたエザリアは苦渋とも悲壮とも取れる表情をし、ディアッカに苦笑を向ける。
「いえ…、小母様の言ってること判ります。それが一番の解決方法であることも。けど、、、」
イザークと同じサファイア・ブルーのエザリアの瞳を真っ直ぐに捉え、言葉を紡ぐが最後まで続かない。
「どうしたの??」
今度はディアッカの方が俯き、肩を震わせて涙を流し始めた。
「オ、オレも…イザークが好きです、愛してます。でもこの感情は、、、あの遺伝子によるものだから…オレは、、、。」
どうしてもオレは最後まで言葉を言えない、皆まで言わずともその言葉の先を察したエザリアは、依然肩を震わせ言葉を詰まらせるディアッカを包み込むように、
そっと抱きしめる。
「ホント、ホントごめんなさい。有難う…ずっと貴方には、辛い思いさせてきたわ。あんな我儘で自己中心で甘ったれなコ、よくここまで想ってくれて守ってくれた。
 感謝したくても、感謝仕切れない。こんなにもあのコを想う貴方の気持ちは、決して"偽り"ではないわ、ましてアレによって操られたのではなくてよ。
 そしてあのコの貴方に対する想いも然り。遺伝子が如何のこうのと囚われていたら、皆人を愛することなんて出来ないわ。
 もっと自分の人を想う心を信じなさい!!」
この言葉の最中ずっとオレを抱きしめ背に廻した手で、ポンポンと優しく叩いてくれてた。
小さい子をあやす様に、自分も幼かった頃だぶんいつもこんな感じであやされてたのかな?とふと頭を過ぎる。
あんなに張り詰めていた緊張の糸がプツリッと切れた感じで、今まであんなに思い悩んでいた自分がバカらしく思えた。
エザリアに"もう何にも悩まなくていいのよ"と叱咤激励され、微かながら今後のイザークと関係に一筋の光が差したようだった。
とにかく見っとも無いトコロを未来の御母上に見せてしまった手前、すごく恥かしかった。
こんな人目を憚らず泣いたのは、ガキの頃以来か?
恥かしくも涙を拭い、エザリアに満面の笑みを向けた。
「すいません、見っとも無いとこお見せしちゃって。オレ、これからイザークに会いに行ってもいいですか?寝顔だけでも見れたら、安心するので。」
先程まで思い詰めたようなディアッカの顔が打って変わって、晴れ晴れとした表情をしていたのでエザリアは安堵する。
「イイのよ、こっちだって泣き顔見せちゃったから。私が泣いた事はイザークには内緒よ。あのコ小さい頃から私が悲しいそうにしてると、めちゃくちゃ心配するのよ。
 これ以上あのコの心を掻き乱したくないし…こんな事言えた義理じゃないけど、あのコの事これからも宜しくね。」