東宝特撮映画感想文

〜東宝特撮映画編〜

透明人間 
公開日 1954(昭和29)年12月29日
スタッフ 監督/小田基義、脚本/日高繁明、原作/別府 啓、特技監督/円谷英二、
音楽/紙 恭輔
第2次世界大戦末期に、軍部の実験によって透明人間となり、戦後も生き残り、周りにも
正体を明かすことの出来ない男の悲劇に「透明人間」を名乗る窃盗団との戦いを組み込ん
だ作品で、上映時間が70分しかないせいか、少々説明不足の部分があったような気はし
ますが。第1作「ゴジラ」といいこれと言い、公開された時期を考えてみると、まだまだ
日本人に戦争の記憶が生々しく残っていたんだな、と言う気がしますね。後の「変身人間」
シリーズや「マタンゴ」の原典とでも言うべき作品なんですが、あの実験のあと、祖父を
失ってしまった目が見えない少女は一体どうなったんでしょうか…(^^;。

空の大怪獣ラドン
公開日 1956(昭和31)年12月26日
スタッフ 監督/本多猪四郎、脚本/木村 武、原作/黒沼 健、特技監督/円谷英二、
音楽/伊福部昭
とにかくこれを見てびっくりしたのが、今から48年前の作品だと言うのに特撮のレベル
が凄い高いことでした。背景の合成は言われて見なければ合成とわからないし、ミニチュ
ア一つとっても精巧に作りこんであるな、というのが第一印象でした。ラストの阿蘇山の
シーンもカラーでなければあれだけのシーンにはならなかったのではないか、そう感じさ
せる出来でした。ストーリーの方も前半の炭鉱の作業員の怪死事件からメガヌロンの出
現、そして後半のラドンの登場に至るまでのストーリー展開も丁寧に作ってあり、好感が
持てました。

大怪獣バラン
公開日 1958(昭和33)年10月14日
スタッフ 監督/本多猪四郎、脚本/関沢新一、原作/黒沼 健、特技監督/円谷英二、
音楽/伊福部昭
最初に見た感じが「なんだか『モスラ』に似てるな…」ということでした(「東北の山奥」
をインファント島に、バランをモスラに変えれば…、ね)。実際はこっちの方が公開は先な
んで「モスラ」が「バラン」に似ているんですが。とはいえバランはある意味可哀想な怪
獣ですよね。この作品では結局羽田空港に上陸しただけでこれといった破壊をしないで倒
されてしまいますが、その後「怪獣総進撃」では顔見せ程度に終わり、バラゴン、アンギ
ラスと共に「護国三聖獣」として出るはずがバラゴン、モスラ、キングギドラにされてし
まうし…(アンギラスは「GFW」で登場した、っつーのに…)。

電送人間 
公開日 1960(昭和35)年4月10日
スタッフ 監督/福田 純、脚本/関沢新一、特技監督/円谷英二、音楽/池野 成
そもそも仁木博士は物体電送機をあんなふうな形で使うために研究していたわけでは無い
んでしょうが、どんな機械でも使い方(及び使う人)によってはこんな風な形で悪用され
てしまうんだな、と言うことがよく解る作品です。今じゃ召集令状の赤紙とか軍隊の認識
票、と言われてもピンと来ない人も多いでしょうが(私もそうですけど)、そもそものこと
の発端が終戦間際におこった出来事、と言うことからわかるとおり、まだまだ(戦後15
年、と言うことがあったかもしれませんが)、戦争というのが日本人に重くのしかかってい
たんだな…、というのを見てて感じました。

モスラ(1961年版)
公開日 1961(昭和36)年7月30日
スタッフ 監督/本多猪四郎、脚本/関沢新一、原作/中村真一郎・福永武彦・
堀田善衛、特技監督/円谷英二、音楽/古関裕而
ゴジラシリーズの常連、とでも言うべき(笑)モスラのデビュー作なわけですが、この作
品のモスラは考えてみれば別に好きで荒らしまわってるわけではなくて、単に小美人を連
れ戻しに来ただけなんですよね。その結果が建造物の破壊となってしまうわけですけど…。
この作品だってどう見ても悪いのはネルソンたちですし。まあ、その辺が以降の作品でも
モスラが「守護神」として描かれていることに繋がるんでしょうが。それにしても「モス
ラ対ゴジラ」にしろ「ゴジラVSモスラ」にしろ、どうしてモスラというと悪人が絡んで
くる作品が多いのでしょうか?(笑)

世界大戦争 
公開日 1961(昭和36)年10月8日
スタッフ 監督/松林宗恵、脚本/八住利雄、特技監督/円谷英二、音楽/團伊玖磨
誰も望んでいなかったのにひょんな行き違いから核戦争にまで発展してしまう悲劇を一庶
民の視線から描いた作品ですが。ラスト近くで江原炊事長が「人間は誰でも生きていく権
利が〜(中略)〜一人もいなくなるんですか、地球上に…」と言う台詞は彼自身が生きる
か死ぬかの目に遭っているから説得力がある台詞として受け取れますよね。今も世界の
どこかで紛争が起こっているのは皆さんご存知だと思いますが、少なくともこのような悲劇
は避けて欲しいですね。そりゃ私もいつか人類は滅亡すると思っていますけど、少なくとも
映画のような滅亡の仕方だけは御免被りたいです。

妖星ゴラス
公開日 1962(昭和37)年3月21日
スタッフ 監督/本多猪四郎、脚本/木村 武、原作/丘美丈二郎、
特技監督/円谷英二、音楽/石井 歓
アメリカ映画の「アルマゲドン」「ディープ・インパクト」が地球に衝突するのを避けるた
めに小惑星や彗星を爆破してしまおう、とするのに対してこっちはゴラスの地球衝突の危
機を避けるために地球を動かしてしまおう、という大胆な発想の作品なわけですが。計画
に現実性があるかどうか、なんて言う前に「アルマゲドン」「ディープ・インパクト」より
30年も前にこういう作品があったのには驚いてしまいますね。それと、全然関係ないで
すけど「俺ら宇宙のパイロット」は「未知の世界にゃ 夢がある 夢がある」といったよ
うに歌詞を繰り返す部分がやたらと印象に残るような…(笑)

マタンゴ
公開日 1963(昭和38)年8月11日
スタッフ 監督/本多猪四郎、脚本/木村 武、原案/星 新一・福島正美(ウイリアム・
ホープ・ホジスン「闇の声」より)、特技監督/円谷英二、音楽/別宮貞雄
孤島に流れ着いた7人の男女達が極限状態の中で次第に己のエゴをむき出しにしてい
く…、という特撮映画、と言うよりはどちらかと言うとサイコホラーと言った方がいいかもし
れませんが(何せ特撮の場面はそれ程ない)、ホラーとしても楽しめる作品でした。私自
身もあのような状態に置かれたらおそらく登場人物たちのように精神に異常をきたして
しまうでしょうね。それと、以前「これを見てからキノコが食べられなくなった」という投書
をある雑誌で拝見したんですが、食べ物の好き嫌いはなくすようにしましょう(笑)。

フランケンシュタイン対地底怪獣(バラゴン) 
公開日 1965(昭和40)年8月8日
スタッフ 監督/本多猪四郎、脚本/馬淵 薫、特技監督/円谷英二、音楽/伊福部昭
何でフランケンシュタインとバラゴンが戦うことになったのかその辺の説明がもう少しあ
ればよかったかもしれませんが、もともと「フランケンシュタイン対ガス人間」→「〜対
ゴジラ」というボツ企画を経て製作された作品ですからある意味仕方ないかもしれません
ね…。現在発売されているDVDには「海外版」と「劇場公開版」が収録されていますが、
確かに「海外版」のラストで出てくる大ダコはそれまで何の伏線も無くいきなり出てくる
から唐突と言う感は否めませんが(笑)。となると同じラストでも「劇場公開版」の方が説
得力があるのかもしれませんね。

大冒険 
公開日 1965(昭和40)年10月31日
スタッフ 監督/古澤憲吾、脚本/笠原良三・田波靖男、特技監督/円谷英二、
音楽/広瀬健次郎・萩原哲晶
特撮場面は少ないので厳密には「特撮映画」と言えないかもしれませんが、最近起こって
いる「ニセ1万円札事件」のニュースを聞いてこの作品を思い出したので番外編、という
ことで(笑)。偽造紙幣を使って世界を混乱に陥れようとする国際的な陰謀に巻き込ま
れてしまった男の活躍をコメディタッチで描いた作品で、ラストの展開も怪獣映画でやっ
たらどう考えてもファンから顰蹙買いそうな「反則技」といっていいやり方なんですが、
この作品だと許せてしまうんですよね。まあ、おもちゃ箱をひっくり返したような「コメ
ディ映画」と割り切って見るのが一番正しい鑑賞法なのかもしれませんね。

ゲゾラ・ガニメ・カメーバ 決戦! 南海の大怪獣  
公開日 1970(昭和45)年8月1日
スタッフ 監督/本多猪四郎、脚本/小川 英、特殊技術/有川貞昌、音楽/伊福部昭
話の舞台のほとんどがセルジオ島という太平洋上に浮かぶ小島だから、どうもゴジラシリ
ーズなんかと比べるとスケールが小さいように思われますが、突如現れた怪獣を相手に人
類が力を合わせて撃退する、というパターンはある意味「ジュラシック・パーク」などに
も通じるような気がしますね(ま、あっちはハイテク技術で蘇った恐竜が最初から島に居
るけど)。できればタイトルにあるように怪獣同士の絡みを入れて欲しかったような気もし
ますが…。ちなみに私はどういうわけだか知りませんけど、DVD見るまで土屋嘉男氏演
じる宮博士と佐原健二氏演じる小畑の役割が逆だと思っていました(^^;。

日本沈没 
公開日 1973(昭和48)年12月29日
スタッフ 監督/森谷司郎、脚本/橋本 忍、原作/小松左京、特技監督/中野昭慶、
音楽/佐藤 勝
「地殻変動で日本列島が沈む」という大ボラを綿密な計算とデータ考証で成立させてしまっ
た小松左京氏のベストセラーを映画化した作品なわけですが。日本国土消滅、という未曾
有の大災害がもしも本当に起こったとしたら、この作品に出てくる山本総理のような決断が
今の日本政府に出来るかどうか心配になってきますが(笑)。それと、作中の東京を襲
った大地震の描写を見ると――先日の新潟で起きた地震に対してもそうですが――
日本の災害対策はまだまだ甘い気がしますね。

エスパイ 
公開日 1974(昭和49)年12月28日
スタッフ 監督/福田 純、脚本/小川 英、原作/小松左京、特技監督/中野昭慶、
音楽/平尾昌晃・京 健輔
前年の大ヒット作「日本沈没」と同じ小松左京氏原作の小説を映画化したわけですが、オ
ープニングテーマの尾崎紀世彦「愛こそすべて」が流れた瞬間、私はひっくり返ってしま
いました(笑)。そのせいかどうか知りませんけど、作品そのものもSF映画と言うよりも
なんだかメロドラマを見ているような感じがして…(^^;。さらにウルロフとの最終決
戦も展開そのものがちょっと強引とも思えるやりかたで、本編が終わっても暫くぽかん、
としてしまいました。時間の制約、と言う問題もあるのかもしれませんけど、小松氏原作
の作品、と言うのは映像化か難しい作品かも知れませんね。

ヤマトタケル 
公開日 1994(平成6)年7月9日
スタッフ 監督/大河原孝夫、脚本/三村 渉、特技監督/川北紘一、音楽/荻野清子
当時TVスポットなどで「この夏、劇場はRPG体験ゾーン」と銘打っていた通り、RPG
みたいな展開だと思えば(主人公の旅立ち→パーティー集め→中ボスを何回か倒す→最
強の武器を手に入れる→ラスボスとの戦い)納得できる作りなんですよね。よく「日本誕
生」と比較されてますけど、あちらは「歴史絵巻」なのに対し、こちらはあくまでも「フ
ァンタジー」に徹した作品で、それをどう取るかは人それぞれでしょうが…。それにして
も当初の構想通り3部作で作られていたら(実際「第2部」の1996年製作が企画され
ていた)どうなっていたか見てみたかった気がしますね。

モスラ(1996年版)  
公開日 1996(平成8)年12月14日
スタッフ 監督/米田興弘、脚本/末谷真澄、特技監督/川北紘一、音楽/渡辺俊幸
自衛隊は出てこない、破壊描写もない、超兵器も出てこない、と前年までの「平成ゴジラ
シリーズ」とは全く違うことをやろうとした意気込みは買えるんですが、何だかそれがこ
とごとく裏目に出たような気がしますが(苦笑)。とは言えこれに限らず所謂「平成モスラ」
3部作は怪獣映画として見るよりは、ゴジラシリーズよりさらに「子供向け」と言うのを
意識したファンタジー映画なのかもしれませんね。一応主役はエリアスの二人とベルベラ
ですけど、3作とも子役が主演で出てきますし。余談ですけど、当初の予定通りモル役が
宝生舞で彼女が歌う「モスラの歌」が聴いてみたかったです(^^;。


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