東宝特撮映画感想文

〜ゴジラシリーズ編〜

ゴジラ(1954年版)
公開日 1954(昭和29)年11月3日
スタッフ 監督/本多猪四郎、脚本/村田武雄・本多猪四郎、原作/香山 滋、
特殊技術/円谷英二、音楽/伊福部昭
何といっても全ての作品の原点であり、これを見ないと全てを理解できない、というとち
ょっと大げさですが(笑)。怪獣映画でありながらドラマ部分もしっかりと作ってあり、よ
く言われる「大人の鑑賞に堪えうる作品」であることは間違いないでしょう。上映当時は
「ゲテモノ映画」とか揶揄された作品ですが、これがヒットしたお陰でゴジラの50年の
歴史があるわけだし、50年経った今でも評価が高いのが単なる「ゲテモノ映画」では
ないことを証明している、と思われますが…。

ゴジラの逆襲 
公開日 1955(昭和30)年4月24日
スタッフ 監督/小田基義、脚本/日高繁明・村田武雄、原作/香山 滋、
特技監督/円谷英二、音楽/佐藤 勝
第1作「ゴジラ」から僅か半年、と言う今となっては信じられない速さで製作された続編
で、確かに第1作と比べれば、少々インパクトに欠ける部分があるかもしれないし、折角
シリーズ初の対戦相手であるアンギラスを出したと言うのに、中盤で退場してしまうもの
ですから、話の前半と後半が少々繋がりに欠ける部分があるとは思いますが、それでもこ
の作品がなければ「キンゴジ」もなかったわけだし、後の怪獣映画の基本とでも言うべき
「怪獣同士のバトル」もなかったか、出たとしてももう少し遅れたかもしれませんね。そ
ういう意味ではもう少しこの作品も評価されてもいいかもしれません

キングコング対ゴジラ
公開日 1962(昭和37)年8月11日
スタッフ 監督/本多猪四郎、脚本/関沢新一、特技監督/円谷英二、音楽/伊福部昭
円谷監督は1933年公開の「キングコング」に相当影響を受けたようで、いわば円谷監督長
年の夢が叶った作品、とでも言ってもいいでしょう。前2作とはうって変わってコメディ
タッチで話が進んでいく異色作なわけですが、見てみるとあちこちで伏線が結構貼ってあ
るんですよね(主人公がドラムの名手だとか、人間がぶら下がっても切れない糸だとか…)。
今でもこの作品のリメイクを求める声(権利関係がクリアできればすぐにでもできると思
う)が大きいのはそれだけこの作品に「怪獣映画の面白さ」というものが備わっていると思
われますが…。

ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘 
公開日 1966(昭和41)年12月17日
スタッフ 監督/福田 純、脚本/関沢新一、特技監督/円谷英二、
特技監督補/有川貞昌、音楽/佐藤 勝
もともと「ロビンソン・クルーソー作戦 キングコング対エビラ」として企画されていた
作品をアメリカ側が難色を示したこともあり、キングコングをゴジラに変更して制作され
た作品、ということもあってか、南海の孤島が舞台だから破壊描写は無いに等しいし、怪
獣たちが活躍するのは後半に入ってからですから、どちらかというと主役はゴジラという
よりもレッチ島に漂着してしまった良太や吉村たちだと思いますね。まあ、怪獣映画とい
うよりは冒険映画にアクション映画の要素を加え、怪獣はオマケ程度だと思えば何とか鑑
賞には堪えられる作品だと思います(おい!)。

怪獣総進撃 
公開日 1968(昭和43)年8月1日
スタッフ 監督/本多猪四郎、脚本/馬淵 薫、特技監督/有川貞昌、
特技監修/円谷英二、音楽/伊福部昭
ストーリーを見てみると、地球侵略を企む宇宙人が出てくる、怪獣が宇宙人に操られ世界
各地で暴れる、地球人側が超兵器を使って戦う、という風に結構最新作「ゴジラ FIN
AL WARS」に似ている部分が多いんですよね。ま、こっちは最後は1対1ではなくて
キングギドラを7頭の怪獣で袋叩きにしてますが(笑)。「GFW」は上映時間が2時間5分
もありながらストーリーが少々まとめ切れていない印象がありますが、こっちは1時間29
分しかないから、「GFW」よりも大変だったでしょうね。ま、逆に言えば、よく89分でまと
められた、というべきかも知れませんが…。

ゴジラ・ミニラ・ガバラ オール怪獣大進撃  
公開日 1969(昭和44)年12月20日
スタッフ 監督/本多猪四郎、脚本/関沢新一、特技監修/円谷英二、音楽/宮内國郎
巷ではこの作品の評価は余り高くないようですが(笑)、一寸視点を変えて見てみるとこれ
が中々よくできた作品なんですよね。というのも「ゴジラ」をはじめとする怪獣映画というの
は「怪獣が当たり前にいる世界」を舞台にして描かれているわけですが、この作品の場合、
怪獣たちは一郎君の夢の中に出てくるだけ、つまり「怪獣が存在しない」我々の日常生活
を舞台にした怪獣映画、と言う異色作な訳でして。確かに怪獣映画としてみると「?」な
わけですが、「ミニラとのふれあいを通して一郎君が成長していく物語」として見てみると
そんなに悪いとは思えない作品に見えてきますね。

ゴジラ対ヘドラ
公開日 1971(昭和46)年7月24日
スタッフ 監督/坂野義光、脚本/馬淵 薫・坂野義光、特殊技術/中野昭慶、
音楽/真鍋理一郎
1960年代の高度経済成長期が終わり、この作品が公開された(1971年)頃から公害問題
というのがクローズアップされ、そんな時期に製作されたわけですが…。とにかくこの時期
でなければ製作できなかった作品かもしれませんね。よく「ゴジラはその時代時代を映し出
している作品」と言われていますが、別の見方をすればこれほど人類にメッセージを残し
た作品もそう多くはないでしょう。でも考えてみたらこれって「東宝チャンピオンまつり」
で公開された作品。当時の子供達はこれ見てどう思ったかしら…?

ゴジラ(1984年版)
公開日 1984(昭和59)年12月15日
スタッフ 監督/橋本幸治、脚本/永原秀一、特技監督/中野昭慶、音楽/小六禮次郎
「メカゴジラの逆襲」から9年を経て製作された作品はゴジラを「恐怖の対象」として描
く原点回帰を目指して制作された作品です。当時は東西対立が深刻となっていた時期であ
り、その背景を知らないと面白さが半減し、ストーリーの方もやや政治的ドラマに流れす
ぎて肝心のゴジラの破壊描写がほとんどなかったのが残念ですが、逆にそれが「現代にゴ
ジラが出現したら果たして政府はどのような対応をとるか」がリアルに描かれてる作品だ
とは思います。…とは言え、この後また5年間「ゴジラ」は製作されないんですけどね(笑)。

ゴジラVSビオランテ
公開日 1989(平成元)年12月16日
スタッフ 監督・脚本/大森一樹(原案/小林晋一郎)、特技監督/川北紘一、
音楽/すぎやまこういち
最初TVで見たときは余り面白いとも思えなかったのですが、その後にLDを買って見て
みたらこの話の面白さがわかりまして(笑)。ビオランテ戦以降の話の展開がちょっと長か
ったような気がしますが(そのためかラストバトルがちょっと盛り上がりに欠けた気が…)、
それでも対ゴジラ作戦を自衛隊が次々と展開していくのは見ていて飽きが来ないと思いま
す。それとこの作品のDVDのオーディオコメンタリーはゲストが大森監督と川北監督な
んですが、大森監督の「ここまで言っていいのかいな?」と思うくらいの裏話が面白いの
で機会があったら一度聞いてみてください。

ゴジラVSキングギドラ 
公開日 1991(平成3)年12月14日
スタッフ 監督・脚本/大森一樹、特技監督/川北紘一、音楽監督/伊福部昭
所謂「平成ゴジラ」シリーズがこれ以降1995年まで毎年公開され、東宝の正月映画の主力
となった(何せ毎年配収15億を超えていた)最初の作品なわけですが。怪獣映画に戦記
物やらタイムスリップ物を無理やり詰め込んでいるからか、確かにあちらこちらにアラが
見える作品ではありますが「エンターテインメントとはこういうものなんだ」と言う大森
監督の考えがよく現れている作品だと思いました。これもオーコメが面白いのでこれだけ
のためにDVD買ってもいいかもしれませんね。

ゴジラVSモスラ 
公開日 1992(平成4)年12月12日
スタッフ 監督/大河原孝夫、脚本/大森一樹、特技監督/川北紘一、
音楽監督/伊福部昭
ストーリーを見てみると「モスラ」(1958年版)及び小説の「発光妖精とモスラ」をベース
に所々「モスラ対ゴジラ」の要素を足した作品、と言う感じがするんですが、確かに新怪
獣としてバトラまで出ていることから、ゴジラが出てくる必然性が少ない気がするんです
よね。例えばモスラとバトラの戦いを止める為にゴジラが出てくる、とでも言うのであれ
ばまだ必然性もあったかもしれませんが、それじゃどうしてもゴジラが善玉になってしま
うし…。ある意味(「GMK」や「GMMG」がそうだったように)「モスラ=善玉怪獣」
と言うのに囚われすぎた作品だったのかもしれませんね。

ゴジラVSメカゴジラ 
公開日 1993(平成5)年12月11日
スタッフ 監督/大河原孝夫、脚本/三村 渉、特技監督/川北紘一、
音楽監督/伊福部昭
ゴジラとラドン、それからメカゴジラがベビーゴジラを巡って三つ巴の戦いを繰り広げる
話、と考えればわかりやすい話なんですが、よくよく考えてみると地球をゴジラの脅威か
ら守るべく設立されたGフォース(というか人類)が悪役となってしまった珍しい話なん
ですよね(何せ当時映画館でメカゴジラ爆発後、無念の表情を浮かべる麻生司令官に向か
って「ザマーミロ」と言った子供がいたのを今でも覚えている)。それはそうと、Gクラッ
シャーで倒れたゴジラにファイヤーラドンが乗っかって風化していくシーンを見て「なん
だか『VSモスラ』のモスラ(風化はしないけど)みてーだな」と思ったのは私だけかしら…?

ゴジラVSスペースゴジラ 
公開日 1994(平成6)年12月10日
スタッフ 監督/山下賢章、脚本/柏原寛司、特技監督/川北紘一、音楽/服部隆之
前半部の新城、佐藤、結城の3人が「自分たちの手でゴジラを倒そう」ということでバー
ス島で罠を仕掛ける〜ゴジラ登場〜ゴジラとスペースゴジラの1回戦という前半部は意外、
と言っては失礼なんですが、私自身は面白かったんですが(関係無いけどなんとなく「南
海の大決闘」を思い出した)、後半部の福岡決戦の部分がちょっと長かった印象があります
ね。それに対G兵器として開発されたMOGERAも結局ゴジラと一度も戦う事はなかっ
たわけで…。もしかしたら脚本の柏原氏は「怪獣映画」を書きたかったのか「アクション
映画」を書きたかったのか迷いがあったのかもしれませんね。

ゴジラ2000 ミレニアム 
公開日 1999(平成11)年12月11日
スタッフ 監督/大河原孝夫、脚本/柏原寛司・三村 渉、特殊技術/鈴木健二、
音楽/服部隆之
「ゴジラVSデストロイア」から4年経ち、今までの設定をリセットして新しく製作され
た「ミレニアムシリーズ」第1作なわけですが、う〜ん、新しいゴジラ映画を作ろうとし
た意気込みは見えるんですが、スタッフのほとんどが「平成VSシリーズ」と同じだから
か、イマイチ平成VSシリーズとの違いが見られない作品でしたね。今までのゴジラの設
定に囚われずにもう少し冒険してもよかったのではないでしょうか? まあ、この前年に
公開されたハリウッド版がああいう出来でしたから日本のゴジラの復活を早めたのかもし
れませんが…(当初は2001年に復活の予定だったしね)。

ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃 
公開日 2001(平成13)年12月15日
スタッフ 監督/金子修介、脚本/長谷川圭一・横谷昌宏・金子修介、
特殊技術/神谷 誠、音楽/大谷 幸
平成「ガメラ」シリーズでおなじみの金子監督が悲願であった「ゴジラ」の演出をした作
品なわけですが、見てみるとスタッフ・キャストともに「ガメラ」シリーズにかかわってい
る人が大勢いて、劇場で見たときになんだか「ガメラ3」みたいな感じがしたんですよね。
この作品は破壊神ゴジラに護国三聖獣が立ち向かう、というストーリーなんですが、ゴジ
ラがイマイチ悪者に見えなかったのが辛かったですね。もうちょっと徹底的にゴジラに破
壊活動をさせればよかったのかもしれませんけど、まあお正月映画という性格上、そこま
で徹底的に出来なかったのかもしれませんが。



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