ゴジラ ハムラ キング・ギョー 出動!怪獣対策本部
(準備稿)



西暦200X年、四国・香川県高松市にある「国立海洋生物研究所」。そこでは日夜魚類の
成長を促進し、食糧問題を解決すべく研究が進められていた。そこに勤める青年・小田切
は雑誌社のインタビューにこう答える。
「確かに我々の研究も一歩間違えれば悲劇が起こる事はわかっています。水爆実験を行っ
た結果がゴジラという悪魔の怪獣を誕生させ、東京を破壊しつくした昭和29年の出来事
のように…。しかし我々が作りたいのはゴジラではありません。我々は将来人類にとって
有益になるように研究を進めているのです。我々は決して同じ過ちを繰り返してはいけな
いのです」

  *

東京。こじんまりとしたビルの一室。かつては生物学でその名を轟かせ、今は昔から好き
だった怪獣の研究をしている野々村博士が主宰する「怪獣対策本部」がある。野々村は少
年だった昭和29年のゴジラ襲撃時、その生命力の強さに感動しゴジラの研究に一生を捧
げようと決心したのだ。メンバーは元自衛官の小松田、新聞記者の河西、河西と同じ新聞
社に勤める女性カメラマン(カメラウーマン?)のももこ、そして川に落ちたところを救い出され、
それ以来本部のペットとなった猫のネコンタ。彼らは日々、怪獣の情報収集に明け暮れていた。
そんな折、かつて野々村が大学で教鞭をとっていた時代の教え子であり、現在は四国の「国
立海洋生物研究所」に勤めている小田切から野々村宛にメールが来る。研究の成果を見て
欲しいというのだ。それを見て高松へ出かける野々村。

高松。小田切が自慢げに研究の成果を発表する。「この通り、ここで研究している魚は従来
の成長速度より数倍の速さを見せています」その異常な速さに不審を抱く野々村。彼は小
田切から研究所で使用していると言う飼料を自分の知り合いの科学者に分析を依頼するた
めに東京の怪獣対策本部に送る。

同じ頃、怪獣対策本部に1通のメールが届く。送信者はかつて野々村が大阪に行った際に
仲良くなった小学生の少女からで、飼っているハムスターが最近元気ないので何とかして
欲しいとのことだった。高松に問い合わせたももこは「棚に置いてあった、ネコンタが元
気が無い時に食べさせている栄養剤入りの餌をその子に送りなさい。」と言う指示を受け、
棚に入っていた袋を送る。ところが、ももこは間違えて高松から送られてきた餌を送って
しまう。袋の形が似ていたことと、高松から餌が送られてきた日、ももこは風邪をひいて休
んでいて、そのことは知らなかったのだ。このことが後になって大事件を招くのだが…。

  *

野々村が高松に着いて数日後。池で飼っている金魚が全ていなくなる、と言う事件が発生
する。何者かが侵入した形跡もなければ、荒らされた形跡もない。文字通り「消えて」し
まったのだ。この不思議な事件に首を傾げる小田切。その直後から瀬戸内海沿岸の住民か
ら「巨大な魚」の目撃例が相次ぐことになる。

大阪。小学生の少女・夏樹の飼っているハムスターは東京の「野々村のおじさん」が送っ
てくれた薬のおかげで元気を取り戻したが、不思議なことに数日で体調が30センチ近く
なってしまった。ハムスターはどんなに大きくなっても20センチを超えることがないか
らこれは異常なのだが…。それからまもなく夏樹の飼っているハムスターは針金製のケー
ジを噛み砕きどこへともなく姿を消した…。その日から大阪中の畑から野菜やヒマワリが
何者かによって食い荒らされる、という事件が頻発する。
同じ頃、東京ではももこが送った餌袋のことでひと悶着が起こっていた。そんな折、野々
村から東京に残っていた3人に「見せたいものがあるから高松に来い!」と召集が掛かっ
た。

  *

「紀伊水道にゴジラ出現!」の一報を受け自衛隊が出動。ゴジラは鳴門海峡を北へ向かっ
ていた。ついにゴジラは今まで一度も来た事のない四国に上陸しようとしていたのだ。で
は今までの「巨大な魚」はゴジラだったのか? しかしゴジラと魚ではその形状が大きく
違う。では一体何者なのか?

ゴジラはついに高松に上陸した。高松市を蹂躙するゴジラ。その時、海から巨大な魚の怪
獣が出現し、2匹の怪獣は乱闘を始めてしまう。魚型怪獣の口から出す泡状の物体の攻撃
に苦戦するゴジラ。しかし、魚型の怪獣は陸に上がれないのか、海からしかゴジラを攻撃
できなかった。ゴジラはそれを見破ったのか、陸上を縦横無尽に使い、魚型怪獣に攻撃を
加える。ゴジラの放射能火炎が魚型怪獣に襲いかかる。吹っ飛ぶ魚型怪獣! ゴジラが止
めを刺そうとしたその時、巨大なハムスター形の怪獣が襲いかかり、争いは中断してしま
う。何とか逃げ出す魚型怪獣。ハムスター形の怪獣とゴジラの2匹の怪獣の争いは自衛隊
が2匹の怪獣に攻撃を加えたことにより2匹とも退散し、中断してしまった。

  *

高松市。野々村博士が怪獣対策本部の3人に国立海洋生物研究所での研究結果を教える。
実は研究所で使っていた餌の中にある種の放射性物質が含まれており、それを食べた金魚
が突然変異を起こし怪獣になったのではないか、ということ、突然出現したハムスターは
ももこが大阪の少女に贈った餌を食べたハムスターが怪獣化したのではないか、と言うこ
と等…。すでに研究所はこのことが判明した時点でその放射性物質入りの餌を使用の中止
を決定したが、時すでに遅し。人類は昭和29年と同じ過ちを繰り返そうとしていたのだ
った。
その時「大阪湾にゴジラ出現!」との報告を受けた怪獣対策本部は大阪に向かうことを決
めた。自分の研究がこんな事態を引き起こしたことに責任を感じた小田切も大阪に同行す
ることを伝える。

大阪湾から大阪に上陸したゴジラは自衛隊の攻撃をものともせず、大阪を破壊し尽くす。
通天閣、大阪ドーム、大阪城といった大阪の名所も次々と瓦礫の山と化していく。ゴジラ
はその足で兵庫へ向かおうとしていたその時、淀川の河口から魚型の怪獣が飛び出し、ゴ
ジラに襲い掛かった。高松でゴジラに敗れた魚型の怪獣がゴジラの放射能火炎を浴びたこ
とで更に進化を遂げ、飛行能力を身に付けたのだ。その体も今までの魚の形からより戦闘
的なスタイルへと変わっていた。…これぞ魚の王、キング・ギョーだ!

ゴジラとキング・ギョーの第2ラウンドが始まった。目から色鮮やかな7色の光線をゴジ
ラに浴びせかけるキング・ギョー。キング・ギョーは飛行能力ばかりか、目から光線を発
射する能力を身に付けていた(と、野々村博士が説明してもいいかもしれない)。しかし、
そこは百戦錬磨ゴジラ。キング・ギョーの攻撃を耐えるだけ耐えると反撃を開始。次第に
追い詰められるキング・ギョー。放射能火炎で吹っ飛ばされたその時、高松でも見かけた
巨大なハムスター怪獣…ハムラがキング・ギョーの手助けをする。ゴジラに噛み付くハム
ラと悲鳴をあげるゴジラ。ハムラもまた進化を遂げ、犬歯が鋭くなっていた。

淀川河口は3匹の決戦場と化していた。空と陸の2方向からの攻撃に手こずるゴジラ。
しかし、ゴジラ起死回生の体内放射が2匹の怪獣を吹き飛ばす。2匹もすでに体はボロボ
ロの状態だった。最後の力を振り絞り、ゴジラに向かって同時にボディアタックを敢行す
るハムラとキング・ギョー。3匹の怪獣はそのまま海に転落。その後の行方は杳として知
れなかった…。

「ゴジラは死んだのかしら?」「いや、あの位の事で死ぬはずがない。しかし…このまま海
の底で静かに暮らしてほしいものだ」「そうですね…でも、もし人間が科学を誤った方向に
使おうとしていたら…ゴジラはそれを諌める為にまた我々の前に姿を現すかもしれません
ね…」

大阪湾から遠く離れた海底でゴジラの咆哮が聞こえた。

〈追記〉
実はこの「準備稿」を書いている間、
「行方不明になったハムラの身を案じる夏樹。しかし『巨大ハムスターが南のある島で
目撃された』というTVのニュースを見て『ハムラだ…』と笑顔を見せる」
という「もうひとつのエンディング」を考えていたことも明記しておきます。


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