聖夜の宝石盗難事件
(Original Version)



「ねえ、コナンくん」
 12月22日、帝丹小学校の休み時間。吉田歩美が江戸川コナンに話し掛ける。
「なに、歩美ちゃん?」
「クリスマスプレゼント、何もらう?」
「…そういえば、明後日ですね」
 円谷光彦が言う。
「…そういえばオレさあ、サンタクロースについてちょっと疑問があるんだよ」
 小嶋元太だった。
「疑問、ってなんですか?」
「ほらさ、サンタクロースって暖炉の煙突から入って子供たちの靴下の中にプレゼント入
れる、っていうよな」
「…それがどうかしたんですか?」
「12月っつったら冬だろ? 当然暖炉は燃えてるよな。サンタ本人は不死身の体だとし
ても、何でプレゼントは燃えねえんだ?」
(…おいおい、燃え盛る暖炉の煙突から中に入る物好きなサンタが何処の世界にいるん
だ?)
 コナンは思った。
「…いくらサンタクロースでも煤だらけの身体で暖炉から現れたら、泥棒と間違えられる
んじゃないの?」
 同じことを考えてたか、コナンの隣で話を聞いていた灰原哀が呟いた。
「ハハハ、それもそうだな」
    *
「ねえ、蘭」
 同じく12月22日、帝丹高校の休み時間。鈴木園子が毛利蘭に話し掛ける。
「なに、園子?」
「あさってのクリスマス・イヴにウチの伯母さまの家でクリスマスパーティーやるんだけ
ど、来ない?」
「クリスマスパーティー?」
「そ。伯母さま、そういうの好きでさ。私も姉貴と一緒に招待されてるんだけど、蘭のお
父さんのこと話したら『ぜひお呼びしなさい』って」
「お父さんの?」
「そ。あれで伯母さま、おじさんのファンなのよ。それで直接、おじさんの話を聞いてみ
たいんだって。それから…」
「それから?」
「伯母さまって実は子供がいないのよ。で、ついでにコナン君のこと話したら、ウチに呼
びたい、って言ったのよ。…伯母様、って3年前にご主人――つまり伯父様ね――が亡く
なってから一人暮らしだから、多分コナン君くらいの歳の子供が気になっちゃうのね。だ
から合わせてやりたいのよ」
    *
 12月24日、クリスマス・イヴ。
 朝から雪が降り、夜になるとあたり一面に降り積もり、町はすっかりロマンティックな
ホワイトクリスマス…だったらいいのだが、東京じゃそんなことなんてめったに起こるも
のじゃない。しかし、さすがに町はクリスマス一色である。
 さて、事務所の前で鈴木姉妹と合流したコナン達三人はその足で園子の伯母である鈴木
美佐枝の家に向かった。

 カーステレオから聞きなれたイントロが聞こえてきた
 クリスマスソングの定番「クリスマス・イブ」。しかも英語詞バージョンだった。

    All alone I watch the quiet rain
    Wonder if it’s gonna snow again
    Silent night,Holy night

    I was praying you’d be here with me
    But Christmas Eve ain’t what it used to be
    Silent night,Holy night

    If you were beside me
    Then I could hear angels
    And I’d give you rainbows,
    For Christmas

    Somewhere far away the sleighbells ring
    I remember when we used to sing
    Silent night,Holy night

          (「クリスマス・イブ」作詞・作曲/山下達郎、英語詞/Alan O’Day)

「クリスマスか…」
 コナンは園子の姉・鈴木綾子が運転する車の中からクリスマスの賑わいを見せる町を見
ていた。この一週間後には年越しソバを食って、初日の出を拝んで、初詣をするのだから
日本人というのは面白い人種である。そういえばもう門松が立っている店もチラホラと見
かける。
(…もう今年も終わりなんだな…)
 コナンは思った。
    *
「そろそろ着くわよ」
 助手席の園子が言う。車は郊外を走っていた。

「でけえ…」
 玄関の前に立ったコナンはつぶやいた。何せ園子は鈴木財閥の次女である。その伯母、
すなわち園子の父親の姉がこのような家に住んでても不思議はないのだが、それでも圧倒
されてしまう。

「あらあら、綾子さんに園子さん、いらっしゃい」
 玄関に入るとひとりの女性が出迎えた。
「伯母さま、お邪魔いたします」
 鈴木姉妹が言う。ということはこの女性が園子の言ってた伯母か?
「…伯母様、紹介するわね。私の親友の毛利蘭とお父様の小五郎さん。それから蘭の所で
預かっている江戸川コナン君よ」
「はじめまして、毛利です」
「毛利さん。お噂はかねがね園子さんのほうから伺っておりますわ。外は寒いでしょう?
ささ、中へ入ってくださいな」
   *
 客間に通されると、そこには2人の男女がいた。
「…また来たんですか?」
 美佐枝が男に話しかける。
「…すみません、もう伯母さんしか頼れる人がいないんですよ」
「…それは紀一郎さん自身の責任でしょ? 悪いけど、私ももうあなたに貸すお金など残
っていません」
 …その時、家の中の電話がなった。
「…奥の部屋の電話が鳴ってるんですわ。ちょっと失礼」
 そういうと美佐枝は奥に引っ込んでしまった。
 それを見送る男。…と、小五郎たちに気付いたか、
「これはお恥ずかしいところをお見せしました。…あなたが毛利さんですか」
 男が小五郎に近付き、握手を求めた。
「ああ、はじめまして。…あなたは?」
「私の従姉妹の旦那さんで橋本紀一郎さん。会社を経営してるんですって。で女性の方は
紀一郎さんの奥さんで私の従姉妹の成美さんよ」
 園子が説明した。
「…あの二人も招待されたの?」
 蘭が園子に小声で聞いた。
「…まさか。たぶんお金借りに来たのよ。紀一郎さんの会社、今経営危ないんですって。
このままじゃ年明け早々には潰れるんじゃないか、って言われてるのよ」
 園子が小声で言う。
(…だろーな。とてもじゃねえけど呼ばれたようには見えねえぜ)
 コナンは思った。

「蘭、ちょっといい?」
 園子が蘭に話しかけてきた。
「どうしたの?」
「伯母様が料理運ぶの手伝って欲しい、って言うのよ。蘭も手伝ってくれる?」
「…私があ?」
「お客様使うのもなんだけど、いいじゃない、ね。お願い」
「…わかったわよ」
 そういうと蘭、園子、綾子の3人は厨房に消えていった。
   *
「お父さん、コナン君、準備できたわよ」
 程なく蘭がコナンたちを呼びに来た。
 それを聞いた二人は食堂に入った。
 既に正面に美佐枝が座っており、その右隣に鈴木姉妹が、左には蘭が座っていた。
 コナンは蘭の隣に座り、その隣には小五郎が、そして鈴木姉妹の隣に橋本夫妻が座った。

 程なくクリスマスパーティーが始まった。
 蘭、園子、綾子の3人は女同士で話が盛り上がっており、園子の従姉妹の橋本夫婦は小
五郎にこれまで関わった事件について色々と聞いていた。小五郎も小五郎で今までコナン
が解決してきた事件をさも自分が推理してきたかのように吹聴するものだから、コナンは
聞いてて「それはオレが解決してきた事件だ」とツッコミを入れたくなるのをこらえるの
に必死だった。
「…どうしたの、コナン君。もっとお食べなさいよ」
 そんなコナンを見たか、美佐枝が話しかけてきた。
「え? あ、うん」
 そう言われてコナンはフォークを動かし始めた。
「…そういえば、コナン君のお父様とお母様は何してるの?」
「あ、その…、仕事の都合で外国に行ってるんだ」
「そう…、それで、お正月には帰ってくるのかしら?」
「い、いや、その…。仕事が忙しくて帰って来れないらしいんだ」
「そう…。お正月くらい帰ってくればいいのにね…」
(…そういえばあの二人、今頃何やってんだ?)
 コナンは両親――勿論父親で推理作家の工藤優作とたまに毛利探偵事務所の電話に「コ
ナンの母親である江戸川文代」と名乗って電話をかけてくる母親で元女優の有希子の事だ
が――、を考えていた。

 食事が終わりに近付いて来た頃だった。
「毛利さん、実はあなたにお見せしたいものがあるんです」
 美佐枝がいきなり小五郎に話しかけてきた。
「私に…ですか?」
「ちょっとお待ちくださいな」
 そう言うと美佐枝は何やら小箱を持ってきた。
 その小箱の形状から何やら宝石らしきものが入っているのは、小五郎でなくともわかる。
「宝石…ですか?」
 小五郎が聞く。
「その通りですわ」
 そう言うと美佐枝は蓋を開けた。中にはかなり大粒のダイヤが入っていた。
「…これは…」
「主人が亡くなる前に私に買ってくれたダイヤですわ。時価3千、いえ5千万円はするの
ではないか、といわれてるんですわ」
「5000万円?」
 小五郎が素っ頓狂な声を上げる。
 それを聞いたその場にいた全員が驚きの表情を浮かべた。
「ええ、これだけの宝石めったにないものだから売ってくれ、と言う人が多いんですが、
私にとってこれは大切な主人との思い出の品ですから、どうしても手放す訳には行かない
んですよ」
「…しかし、これだけの宝石、管理するのも大変でしょう」
「ええ。いつもは金庫にしまってあるんですが、時々はこうして眺めてるんですよ」
「…でも、それを何故私などに?」
「それはですね…」

 と、その時不意に部屋の中が暗くなった。
「停電だ!」
 慌てふためく一同。
「でも、外の明かりは付いてるよ!」
 コナンが言う。
 と、小五郎が持っていたライターの火を点ける。小五郎の周辺が明るくなった。
 小五郎が辺りを見回す。…と、部屋の隅に電灯のスイッチがあるのを見つけた。
 小五郎はそこに近付いた。
「…ははあ、スイッチが切れてただけですな。大丈夫です、今点けますよ」
 そういうと小五郎は電灯のスイッチを入れた。
「…!!」
 明かりがつくと同時にその場にいた全員が絶句した。
 宝石箱に入っていたダイヤが跡形もなく消えていたからだ。
   *
 程なく目暮警部達が現場に到着した。
「…というと、犯人はその停電の間に、ダイヤを盗んだ、とこういうわけか?」
「…恐らくそうだと思います」
  事情聴取を受けた小五郎が言う。
「…で、停電の時間はどのくらいだったんだ?」
「…そうですねえ、1〜2分くらいだったのではないでしょうか?」
「となると、犯人はその間にダイヤを盗んで隠した、とこういうわけになるな」

「…奥さん」
 目暮警部が美佐枝に話しかけてきた。
「盗まれたダイヤというのはどれほどの価値のものなんですか?」
「…はい、死んだ主人に買ってもらったもので…。時価5千万はする、と言われてるもの
ですわ」
「…それはここにいる全員が知っていることですか?」
「はい。私が直接皆さんに見せましたから。…いえ、勿論念のために保険には入っていま
すが、それよりもアレが無くなった事の方が…」

「警部」
 目暮警部の部下である高木刑事が話しかけてきた。
「何かわかったか?」
「はい。犯行が行われたと思われる時刻前後には怪しい人影を見かけた、と言う目撃証言
はありませんでした」
「となると、内部のものの犯行の可能性が高い、と言うわけか?」
「…恐らくそうではないかと」

「…意外とあんたがやったんじゃないの?」
橋本成美が夫の紀一郎に話しかける。
「…なんだと?」
「あの宝石、5千万円、とか言ってたじゃない。それだけのお金があればあなたの会社も
助かるものね」
「そういうおまえはどうなんだ! オレに黙って方々から借金しているそうじゃない
か!」
「なんですって?」
「オレが何も知らないと思ってるのか? オレのところに借りた覚えのないところから借
金の督促が来ているからおまえが借金している、って言うじゃないか!」

「…やれやれ、また始まっちゃったわ」
 そんな二人の言い合いを見ていた園子がつぶやく。
「また始まった、ってどういうこと?」
 蘭が聞く。
「…あのふたり、随分夫婦仲冷え切ってたらしいわ。紀一郎さんが会社の事にかかりっき
りで成美さんのこと構う暇なんかなかったそうなのよ」
「…それから成美さん、凄まじい位の濫費を始めて、余計に借金が増えてしまったのよ。
私の家にも借金のお願いに来たことが何回もあるし…」
 綾子が言う。二人とも橋本夫妻の事を冷めた目で見ているようだ。

(…結局仮面夫婦、ってヤツか…)
 蘭たちの会話を聞いて、コナンは思った。
(…確かにあの二人なら動機は十分にあるな)
 しかし、である。今はあの二人のどちらかが犯人だとしてもそれを示す証拠がない。
(…まずは、現場をよく見て見ないと…)

 その時、再び家の中の電話が鳴った。
(…? なんだ?)
 美佐枝がそれに出る。
 コナンは足音を忍ばせ付いて行った。

 何やら美佐枝が電話をしている。
 家の中だから普通の声で話してもよさそうなものだが、何やら誰にも聞かれたくないの
か小声で話している。
 コナンは聞き耳を立てた。
「…だからそれは…はい、大丈夫です。…ですから…ええ、明日には何とかなりますから
…」
(…明日には何とかなる?)
…と、不意に電話が切れた。
(…やべ!)
 コナンは急いでその場を離れた。
   *
 再びコナンは食堂にいた。
(停電が起きてからおっちゃんがライターを点けるまで1、2分位だった筈だ。そんな短
時間で宝石を盗んで、隠すとしてもそんなに手の込んだ事は出来ないはずだ。となると…)
 コナンはテーブルの周りを見回していた。
「…? コレは何だ?」
 何やらテーブルに四角い切り込みのようなものがあるのを見つけたのだ。
 コナンは上からそれを触る。
(確かここに座っていた人は…)
 コナンはさっきのパーティーでの席順を思い出していた。
(…そうか、解かったぞ。宝石を盗んだのはあの人だったんだ)
 そしてコナンは麻酔銃を小五郎に向けた。

「高木君!」
 目暮警部が高木刑事を呼んだ。
「…どうだ、宝石は見つかったか?」
「いえ、室内の何処にも見当たりません」
「そうか…」
「…警部、どうします? こうなったらここにいる全員の身体検査をしますか?」
 高木刑事が目暮警部に聞いた。
「止むを得んだろ。至急本庁から婦警を2、3人呼んでだな…」
「…その必要はありませんよ、目暮警部」
 いきなり小五郎の声がした。
「なんじゃと?」
 目暮警部はテーブルを見た。
 小五郎がテーブルに座っていた。そしてその陰にはコナンが座っている。
「…お父さん、犯人がわかったって言うの?」
 蘭が聞く。
「ああ、その通りだ。…まず今回の事件、思い出して欲しいのは電気が消えてから私が電
気を点けるまで1〜2分ほどしか時間がなかったことですよ」
「それがどうかしたのかね?」
「わずか1〜2分ですよ。その間に美佐枝さんから宝石を奪い隠す事が出来るなんて、ど
う考えても内部の者の仕業としか思えませんね」
「…となると」
「その通り。犯人はこの中にいますよ」
 その場にいた全員がお互いの顔を見る。
「…犯人の手口はこうでしょう。まずリモコンか何かを使って室内の電気を消して美佐枝
さんの持ってきた箱の中から宝石を奪い、あるところに隠す。勿論何者かの手によって電
気が点けられる事も計算に入れてですが。…まあ、そんなのは30秒もあれば出来るでし
ょう。…ところで蘭」
「何、お父さん?」
「…あの食事の時の席順を覚えているか?」
「勿論よ。美佐枝さんの右に私が座って、その隣がコナン君。で隣にお父さんが座ってて
…。美佐枝さんの左に綾子さんが座って、その隣が園子でしょ? でお父さんの隣が――
つまり美佐枝さんの正面が橋本さんで園子の隣が成美さん…」
「その通り。もしあの時に何者かが電気を消して美佐枝さんから宝石を奪ったとすれば、
何も見えない真っ暗闇の中で奪うわけですから何やら争いや物音が起こってもおかしくは
無いでしょう? …しかし、あの電気が消えてから再び電気が点くまでの間、何も争う形
跡が無かった…」
「…毛利君、まさか君は…」
「…その通り、今回の事件の犯人は美佐枝さん、あなたと言う事です!」

 それを聞いた美佐枝がいきなり笑い出した。
「…何をおっしゃるんですか、毛利さん。何で私がそんなことを…」
「単純な消去法ですよ。まず私やコナンが犯人だとしたら手を伸ばさなければいけない。
しかし、一瞬にして起こった暗闇の中で目が慣れるには少々時間がかかるから、手を伸ば
したとしても何かに接触してしまうかもしれない。勿論これは蘭や園子君達にも当てはま
るし、第一宝石を奪う動機が無い。となると、動機があるのは橋本夫妻です。二人は借金
があるから5000万の価値がある、という宝石を奪ってもおかしくは無いでしょう。し
かし蘭が言ったとおり、二人の席は一番遠く離れている。もし宝石を奪うならかなり手を
伸ばさなければいけないし、席を立ったとしたら物音がするはず。しかし物音はしなかっ
た…。となると、犯人は美佐枝さん、あなたしかいない、とこうなるわけですよ」
「…ちょっと待って下さいよ、毛利さん。何故私が自分の持っている宝石を盗まなければ
ならないんですか?」
「…あなたの目的は宝石じゃありませんよ。宝石にかけられた保険金です」
「保険金?」
「先ほど、捜査中にあなた宛に電話がかかってきたようですが…。コナンが言うにはあな
たその電話を誰かに聞かれてはまずいかのように小声で話してた、と言うではありません
か。…それ、ってもしかしたら借金の返済を求める電話じゃありませんか?」
「…そ、それは」
「どうやらそのようですね。…あなたも実は借金をしていてその返済に困っていた。そこ
で今回の狂言を思いついた。宝石が盗まれた事にすれば保険が下りるし、宝石は後でヤミ
のブローカーにでも流せばいい、こう思ったんじゃありませんか?」
「…毛利さん、今まで、あなたの仰ったことはただの想像ですよ。もし私が犯人と言うの
であれば、宝石が何処にあるか教えて欲しいですわね」
「…もうすでに隠し場所はわかってますよ。…高木刑事」
「はい?」
「美佐枝さんが座っていた席に隠し戸棚があるはずです。そこを調べてみてください」
 そういわれた高木刑事がテーブルを調べる。
「毛利さんの言う通り、引き出しがありました。調べてみます」
 そこで何分か高木刑事が格闘していると、
「…あ、開いた…」
 引き出しが開いた。と、中から宝石と電気のリモコンスイッチが出てきた。
「毛利さん、ありました!
 戸棚の中には音がしないようにするためか、中敷までが敷いてあった。
「あなたは今回の狂言を思いついた時に私を証人にしよう、と思ったんでしょう。私のよ
うなものが証人となればいつでも宝石がなくなったことを証明できますからね。…しかし
ですね、美佐枝さん。この毛利小五郎の目はごまかせなかった、とこういうわけですよ」
   *
「で、結局どうなるの?」
 蘭が園子に聞いた。
「ああ、あれね。結局狂言は仕組んだけど、警察も大目に見てお咎めだけで済んだみたい
よ」
「ふうん…」
「…ゴメンネ、蘭。おじさんたちを呼んだばっかりにこんな事になっちゃって…」
「いいのよ、気にしてないから。それよりさ、カラオケにでも行こうか」
「そうね。じゃ姉貴、いつものところお願い」
 イヴの夜はまだ始まったばかりである。

(終わり)


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