バンディッド.ブレイド

  

「・・・・・・」宮内の意識は徐々に薄れ始めていた、相手が妙に歪んで見えたと思うと次の瞬間鈍い衝撃が顔面を走る。

「ホラホラァ!!オバハンはとっとと寝ちまいなよ!!」対戦相手の罵声が耳に響く、「だ・・・誰がオバハンだって・・・このクソガキが・・・」

気持ちとは裏腹に宮内の声は悲しい程弱々しく漏れた、踏ん張ってる足も相当ガクガク悲鳴を上げてる

それだけに今回の対戦相手のパンチは痛烈に宮内にダメージを与えていた、若いながらかなりの豪腕の持ち主だ。

それだけでは無い、フットワークも軽い為宮内の攻撃をヒラリと避けてはカウンターを打って来る、お陰で宮内は打たれる一方であった。

「アッハハ!!何時まで持ち応えられるかしら?」相手がもう勝ったも同然に宮内を攻め立てる、宮内の方は防戦一方で反撃のチャンスが来ない。

「うぐ・・・・・・腕が・・・・・」ガードしてる腕が段々痺れて感覚を失い始めている、バシィ!!とすかさず相手がフックでガードしてる腕を跳ね上げる

「しまっ・・・・た!!」宮内がそう思った瞬間、顎に強烈な一撃を貰い凄い勢いで後方に飛びキャンバスに倒れ伏した。

「フン、ババァのクセに根性出してんなよ、一生寝てな!!」相手が薄笑いを浮かべつつ罵倒の言葉を倒れた宮内に浴びせる

「・・・・・・・クソ・・・身体が・・・・・・」宮内は必死に意識を振り起こして立とうとするが身体がいう事を聞かない、カウントは無常にも5

「フ・・・・アタシとした事が・・・・・情けないね・・・・・・」宮内は半ば諦めたように呟く、これが年齢の限界・・・・・所詮若い連中にはもう敵わないのか。

思えばスカルメールジャパン発足時からいた古株で向かう所敵無しと言われた自分だが・・・・最近負け続けが多く体力も徐々に落ち始めている

もうすぐ年齢も25を過ぎる・・・・・・・もうこの辺が自分の限界という奴か・・・・・・・・・・そして今日もまた負けちまうのか・・・・・情けない・・・・・

宮内の瞳は弱々しい光を湛え闘志も失い始めている、カウントは8を過ぎもう抵抗は止めようかと思った時・・・・・・・・

宮内の耳に聞きなれた声が飛び込んで来た

「かぁちゃん!ガンバレ!!」

ハッ!・・・と宮内が上体を起し観客席を見るとそこにはいつの間にか自分の子供二人が声援を送っていた、「朋子!!まだまだいけるぞ!!立つんだ!!」

「アンタまで・・・・」よく見ると夫の真吾の姿もある、いやそればかりでは無い・・・・・

「朋子!!お前も武道家の端くれなら見事勝ってみせい!!倒れる事はこのワシが許さん!!」 「お・・・親父まで」

八極拳の使い手で宮内の父でもある宮内龍之介までもが観客席で激を飛ばしていた、「・・・・・・フン・・・・そう来るならまだまだ寝てるわけにはいかないねぇ!!」

宮内が勢いよく飛び起きた、カウントは9でストップし試合続行を聞いてくるレフェリーに「いいからさっさと始めろ!!」と宮内が叫ぶ

「ボックス!!」再び試合再開、両者中央で再び打ち合いが展開する、宮内の動きは先程とは格段に良く相手を逆に押し始めていた。

「いいぞかぁちゃん!!そこだ!!」 「焦るな朋子!!」 「相手を見てこれぞという一撃を放つのだ!!」家族達の声援もより一層熱くなる。

「クソ!!このババァがぁ!!」相手が一瞬の隙をついて宮内の顔面に一撃を見舞うがニヤリと宮内はソレを喰らいながらも笑う

「コレで通算5度目のクソババァ呼ばわりかぁ・・・・お前もう生きて帰れないね・・・・・・フフ」 「何が可笑しいんだぁ!!」

相手が腕を振りかぶる、その瞬間宮内の上体が一瞬下に下がる「極意の1・・・・隼のように舞い上がり・・・・・・・・・」宮内が呟く

ビュン!!と相手から痛恨の一撃が繰り出される、瞬間宮内が身体を捻ってかわし大きくジャンプする「荒鷲の如く勢いで腕は刃を下ろすが如く!!」

そして空振りしバランスを崩した相手に勢いよくパンチを渾身の力を込めて打ち下ろした

「敵を穿つ!!」ドゴォ!!と凄まじい音を立てて一気に相手の顔面を捕らえそのままの勢いでキャンバスに後頭部を叩きつけた。

失敗したのはジャン○風にしようとした背景(しつこい)

相手は悲鳴を上げる事すら出来ず一撃でピクリとも動かなくなった、それを見ていたレフェリーはすかさず手を交差させ相手の試合続行不可能を告げる

同時に鳴り響くゴング音に包まれながら宮内はゆっくりと起き上がって呟く「・・・・・で?もう一度聞くけど誰がクソババァだって?・・・・・・ん?」

顔面が凄い事になってる相手を軽く蹴り飛ばして観客席の方に腕を高々と上げる宮内、同時に駆け寄ってくる家族の面々

「やった!やったよ!!やっぱりかぁちゃんは強いや!!」 「朋子・・・・やったな!!」 「ああ、アンタ達のお陰さ・・・・有難うね」宮内が子供二人を抱きかかえて真吾に微笑む。

「やりおったな朋子・・・・・・しかも何時に間に(降雷斬)を会得しておるとは・・・・・・全く我が娘ながらやりおるわ!!」龍之介も嬉しそうに言う

「は?何言ってんだよクソ親父、ありゃ(バンディッドブレイド)っていう技だ、お前のクソ拳法の技じゃねぇよ」 「何!!い、いやあれはれっきとした降雷斬・・・・・」

「うっせーなクソジジィ!!違うって言ってんだろうがこのボケ老人がぁ!!」 「何だとー!!親に向かってその口の聞き様はなんだぁー!性根を入れ替えてくれる〜!!」

「まぁまぁ二人とも落ち着いて・・・・」真吾がなだめる「アンタもこのバカ親父になんか言えよ!家長だろうが!」 「えと・・・・あの・・・・・その何だ・・・あ、帰って飯にしよう!」

「はぁー・・・・・・かぁちゃんに比べて情けない男・・・・・・」子供二人が呆れて顔を見合わせる、「まぁいいか・・・・・・じゃ帰って飯の仕度でもするかぁ〜」

宮内はそう言うといきようようと家族と共に会場を後にした。

  

  

退場