「一発」の重み
リーグ戦初戦で見事に勝利を収めた克己の次の対戦相手は西岡だった、昨年第2位の西岡を倒せば一気にポイントを獲得できる。
克己にとっては願っても無いチャンスだった、しかも西岡は初戦のルフ戦でまさかの敗北をしていて精神ダメージも抜けてない
「アタシって運がいいかも・・・・・・一気に決めてやる!」自信満々で挑んだ試合は予想通り克己のペースで進んでいった。
西岡は次々に繰り出される克己のパンチを防ぐ事で精一杯、ジリジリとコーナーに追い詰められ額からは汗が噴出している。
「やっぱりスタミナが回復してないのか・・・西岡先輩には悪いけどこの勝負貰ったわ!」克己のフックが西岡の頬を綺麗にえぐる。
「ぐ・・・・!」一瞬脳震盪を起こしたらしく西岡が揺らいだ所にすかさずボディーがめり込む、「ごあ・・・・・!」
「効いてる・・・・後一息だ・・・・沈め!沈め!沈めぇ!」克己が狂ったようにラッシュを西岡に浴びせる、西岡の体がグラグラ揺らぐ。
しかし・・・・克己は気が付いていない、ラッシュを喰らいつつも西岡の瞳はじっと一点を見続けてる事を、
それは・・・・・克己の顎の部分だった、実は克己は顎が非常に弱い弱点を持っていたが今回に至ってはすっかり有頂天になってしまい
自分自身それを忘れてしまっていたのだ、「良く見えるわ・・・・・この子すっかり舞い上がってるみたいね・・・」西岡の右拳がググッと握られる
「止めよ!」克己が渾身の右を浴びせんと繰り出した瞬間、西岡が瞬時に一歩力強く踏み出す「残念だね、克己・・」
次の瞬間、西岡の繰り出したショートアッパーが克己の顎を正確に捕らえ思いっきり克己を揺らがせる
「ぐはっ!!」克己は脳に激しい衝撃と口から鮮血の華を噴出した、そしてそのままキャンバスに轟音と共に倒れ伏した。
レフェリーがすかさずカウントを取り始める「1・・・2・・・・3・・・・・4・・・・・」
「うぐぐ・・・・ぐ・・・・・・」克己は暫くキャンバス上で這いずり回っていたがようやく上体をゆっくり起こし始める、
「まだ・・・・・一発喰らったぐらいで・・・・・・ぐぐ・・・・・」しかし克己の身体は言葉とは正反対にまるで言う事を聞かない
「5・・・・・・6・・・・・・・7・・・・・・・」カウントは終盤に近づく、焦る気持ちとは裏腹に克己の脳内は白い霧がかかったみたいに霞み始める。
「な・・・・何で?・・・・・・一発・・・・一発しか喰らっていない・・・・の・・・・・に・・・・・」苦しそうに口から言葉が漏れると同時に
克己の意識は完全にブラックアウトして再度キャンバスに顔を埋めていった。
レフェリーがカウントを止め両手を交差して克己の試合続行不可能を告げる、試合時間僅か一分30秒、西岡のストレート勝利である。
「まだまだ甘いね克己・・・・・どんなに手数を繰り出しても結局自分の弱点を晒してれば・・・・勝てる訳がないわ・・・」
こうして克己は2回戦にして完全敗北の味を嫌と言うほど味わう事になった、
そしてたった一発で克己を沈めた西岡は新たな伝説を築き上げたのである・・・・・・