スカルメールジャパンに所属する加納那美(かのうなみ)と中村沙耶華(なかむらさやか)は

同年齢でデビューもほぼ同時期だった事もあり互いに激しい対抗心を持っていた

「いつかあのリングで決着を・・・」と思っていた二人だったが

加納の不慮の事故による入院生活と中村の海外遠征等重なり対戦は実現せずにいた

そう、今までは・・・・・・

今夜、二人が願って止まなかった対決が遂にリング上で実現しようとしていた

 

「リハビリも終ってコンディションも良好・・・今日は必ず勝つわ」と紺の水着の加納

「海外でならしたこの拳で沈めてやる・・・・覚悟しな!」と紫の水着の中村

互いに一歩も引かず中央で激しく睨みあう二人

既にリングからはモヤのような闘気が篭り始めてきてるような雰囲気だ

そして・・・・決戦を告げる鐘が一際大きく鳴り響いた、会場内、そして二人の心に・・・・

 

お互い発射された弾丸のように飛び出した1RDは終始中村のペースに加納が翻弄された

リング内を中央、コーナーお構いなく動き回り円を描くが如くフットワークと

そこから打ち出される予測不可能位置からの鋭いパンチ

「は、速い・・・」いきなりの全開攻撃に出鼻を挫かれ上段ガードを固めてる加納が呻く

「ふふふ・・向こうの奴等相手に闘ってきた私のこの動きが見える?」中村が嘲笑する

ビシッビシッと鋭い衝撃が加納のグラブに当たり加納の身体が揺れる

「く・・!身体が思い通りに動かない!」加納もこの状況からフットワークで脱したいが

いざという時に身体が重くなかなか動かない、3ヶ月間の入院の代償だった

「残念だわ、出来れば完璧な状態の貴方と闘いたかったけど・・・これで終わりよ!」

と中村が一気に懐に飛び込んでグラつく加納の顎に鋭い一撃を見舞う

グシャッ・・!と加納の青いマウスピースが血飛沫と共に軽やかに宙をまった

と同時に加納もキャンバスに倒れこむ、凄まじい衝撃が背中を襲う

「ワーン、ツゥー、スリー・・・」レフェリーが取るカウントの最中勢い良く起き上がる加納

既に口内が切れ鮮血が止め処なくゴボゴボと溢れている

「まだ・・よ・・まだ」加納の続行状態を確認しレフェリーが試合続行の合図を送る

「ふ、そうでなくちゃね!」と中村も再び構えをとった

 

続く2RD、ダウンを奪われスタミナも失った加納は中村の動きを伺いつつ必勝策を考えていた

「あの動きを一瞬でも止めて・・そこから一気に接近戦に持ち込められれば・・・・」

密着気味の接近戦なら加納の方が圧倒的にパンチ力が上なので勝つ自身がある

その反面中村は素早いフットワークとトリッキーな攻撃に頼る分一発の破壊力は小さい

何とかあの動きを止めて打ち合いに持っていければ絶対勝てる、加納は隙を伺っていた

ヒュンヒュンと風を斬るようなパンチを防御しつつその一瞬を加納は遂に捉えた

「あの子・・・必ず大きい一発には振りかぶってる・・」

パンチ力が低い中村は強打の時大きく身体を振りかぶり勢いを乗せる必要があった

そして・・・3発目のストレートを打ち込む一瞬を加納は猛然と突いた

ドスゥッ!と中村の脇腹に重いボディーが突き刺さったのだ「う・・・!ぐぁ!」

ピタッと中村のフットワークが止んだのを加納は逃さず一気に接近し次々に強打を放つ

加納の重い一撃は一発また一発と中村を攻め立てガード越しにスタミナを削ぎ落とす

「うぅ・・ぐぇ!」中村のガードが緩んだその刹那

「貰ったぁ!」バキィ!!と加納が渾身のフックを中村の顔面に見舞った

「ぐはぁ!!」と中村の口内からも鮮血がドロリと溢れかえって来た

「まだまだぁ!!」と立て続けに右のフックがグラついた中村の顔面にクリーンヒット

「ぶぇ!!」短い悲鳴を上げて中村がキャンバスに勢い良く倒れこむ

「ワン、ツゥー、スリー、フォー・・・・」カウントの中再度中村が立つ

「まだ・・・・まだぁ・・・」

「流石に気力はまだ温存してるようね、でも勝つのは私よ・・・!」

加納もやる気満々な態度で迎え撃つ

 

オーラス3RD、お互い出血量も多くスタミナも底をつき始めて来ている

すっかり足にもダメージが及び展開はお互い殆ど近距離での応酬となっていた

「ぐふ!」加納のパンチがヒット、「ぐぇ!」中村ががら空きのボディーにグラブを突き刺す

「さ・・流石私が思ってた相手だけはあるわ・・でもこれでお終い!!」

中村の渾身のストレートが息も絶え絶えの加納の顔面を完璧に捉えたと思った次の瞬間

「あ・・!」同時に蓄積されてた足のダメージが一気に襲い掛かり重心がずれた

「・・・・!」ストレートを頬にかすめ加納の腕が一気に上に飛び出して行った

それも無意識に

リング中央で鈍い砕ける音と一際の紅に染まったマウスピースが宙に舞った

  

加納の意識が戻ったのはキャンバスに轟音が響いた直後だった

「・・・私、一体どうしてたの・・・?」

ふ、とおもむろに下を目線を移動してみた

答えがそこに横たわっていた

すっかり身体をキャンバスに投げ出し目を完全に白目にしてピクリともしない中村

濁った鮮血だけが半開きの口からドロリ、ダラリと溢れて零れている

「や、やった・・・・私・・・・勝ったの・・・?勝ったんだね・・・」

そう呟くと同時に鳴り響く勝者を称えるが如く鐘の音と観客の歓喜の声

「はは・・・やったわ・・・私が・・・貴方より私の方が強いんだ・・・・・」

大音響の中、安堵の笑みをこぼした加納は満足げに中村の横に崩れ落ちていった

 

ばっきゅ