ト ド 問 題
<漁師の苛立ち> 漁業被害額が増加し続け、これを何とかして欲しいという漁師の願いは切実です。この対策として、猟銃による駆除がありますが、トドも年々賢くなり、うまく効果が現れてきません。駆除数は1994年の捕獲枠が設けられるまで年々増加傾向にありましたが、被害額も同様に増加してしまっています。つまり、駆除数を増やしたからといって被害額が減少するというわけではないと言うことです。むしろ、手立てが駆除しかなく、その努力量を増やした結果と考えるのが妥当と思います。 <被害とは?−その定義−> 漁業被害についてもう少し見てみると、まず犯人がトドであると考えるのは、「トドが網を破っているところや羅網した魚を食べているのを目撃した。」、あるいは、「被害発見時に付近にトドがいたから」という、目撃例がその理由です。 「漁業被害状況」は、1.被害件数、2.被害網数(反数)、3.漁具被害額、4.漁獲被害額、5.被害総額で表されています。1,2はすぐに分かりますが、3,4は具体的にはどうなっているのでしょう。3.漁具被害額は、「トドが破損した漁網の新規購入額又は補修額」と定義されています。また、4.漁獲被害額は、「トドの食害による漁獲物の損失額等」で、「(被害網の反数)×(当日の無被害網1反当たりの水揚げ額)×(当日の平均単価)として推定する」と定義され、その申告が集計されています。 <捕獲枠116頭> 駆除数は1994年より、年間116頭という枠が設けられ、駆除しすぎないような取り組みがなされています。この116頭という数字は、1989年から1993年までの5年間に駆除した数(毎年の平均値)の80%ということで、特に生態学的な根拠があるというわけではありませんが、その姿勢自体は評価できるものと言えます。 <正確な捕殺数> では、捕獲枠が設けられ、うまいことトドの管理がなされているかというと、やはり問題は残っています。捕獲枠が設けられるまでは、駆除数(死亡させ揚集した数)の他に、海没させた数および傷だけ負わせた数というのが集計として上がってきていました。しかし、1994年からは駆除数(死亡させ揚集した数)のみになり、その他の数字が上がってこなくなってしまったのです。何頭海没して、何頭が傷を負ったのでしょうか。正確なところは知る術がないのです。 <死亡個体の情報> また、死亡した個体の雌雄、年齢、妊娠/非妊娠、などの情報も明らかではありません。そこまで求めるのは欲張りかもしれませんが、今後駆除によってトド個体群がどのよに個体数変化を起こすのか、その研究をする上では極めて重要な知見です。これらの情報も入るような体制にならないかと夢見てしまいます。例えば、駆除した個体から犬歯を抜いて大学等に送は付する!こうすると、犬歯ら性別や年齢が分かるだけに、死亡個体の情報は格段に充実してきます。 <ハンターさんのイメージ> もう一つ。ハンターさんへの悪いイメージについてです。トドWGでは、5年以上、トドの駆除が行われている場所に行ってハンターさんが撃ってきた個体からサンプリングを行っています。羅臼、礼文、積丹、浜益、どこに行ってもはじめは怪しい目で見られますが(WGの問題?)、次第に理解してくれると共に、全面的に協力して下さるハンターさんばかりです(本当)。管理目標を考えたときに、ハンターさんの協力なくして成されるものではありません。 それぞれの立場 研究者の問題点として、昔から一貫した調査項目がなく、単発的な調査が多い。マネジメントに関する提言ができないでいる。予算が少ない。専門の研究機関がない・・・。研究者は研究者で多くの問題を抱えています。問題が見えないと、それこそ問題です。同様に、行政、漁業者も完全ではありません。行政にはもっとこうして欲しい、漁業者にはもっとああして欲しい、それぞれの立場で見ればそれぞれの問題点があることと思います。でも、立場が違っていても、同じテーブルでトド問題を語れたらと思います。そこには、共通の目標となりうる様なものがあったらよいでしょうか。共通ゴールです。 共通のゴール いろいろな問題を起こすトドですが、ここで一つ考えねばなりません。シンプルな質問です。「つまり、トドをどうしたいのか」。被害を多く発生させるトドを全滅させれば事は済むのか?保護ばかりを考えていて良いのか?どちらでもないとしたら、じゃーどうしたいの?となってしまいます。この問いに答えるのは簡単なようで難しいかもしれません。近日中に、トドWGではトドをどうしたいのかをアップします。
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