#DOWN

死者たちの都(4)



 次の街まで、数時間の距離だった。セティアは野宿より、歩き続けることを選ぶ。草原の中の一本道は、普段は遮るものがないはずだが、今は霧がかかっていた。月光に照らされた霧に包まれた周囲は、どこか神秘的ですらある。
(あの老人、誰と話していたんだろう? 守護霊?)
「やっぱりテレパシーに近いものかもね」
 興味なさそうに応じて、後ろを振り返る。霧のために、門はとうに見えなくなっていた。
「どんな人も……相手によって、共感の能力を発揮するものらしいしね」
 独り言のようにつぶやき、視線を上に向けたそのとき、彼女は、一筋の煙が立ち昇っているのを見つけた。
(あれ……あの街から?)
 煙は、やがて夜空にいく筋もの白い線をひいた。
 それが夜空を埋め尽くし、霧と混じり合ってそれとわからなくなるころ、再びセティアは歩き始めた。

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