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2章 神はときには荒れ狂う嵐のごとく……

数年前に愛する妻に先立たれ、その妻が死後も生き続けている証拠を求めてきた英国の下院議員が、ある日の交霊会に招かれてシルバーバーチと長時間にわたる意義ある対話をもつことができた。

その議員は動物への虐待行為を中止させる運動に大きな貢献をしている人で、シルバーバーチから引き続き頑張るようにとの励ましを受けて、魂の高まりを覚えながら会場をあとにしたのだった。

まずシルバーバーチから語りかけた。

「地上世界は、洞察力に富む一部の人を除けば、大きな悲しみの体験をさせられる前に霊的真理の必要性を知る人がほとんどいませんね」

「でも、その洞察力はどうすれば得られるのでしょうか」

「もとより容易なことではありません。たとえば、こうした霊言や自動書記などの手段によって通信霊が自分はかくかくしかじかの霊であると述べた場合、それだけで直観的にその通りか否かを得心できるようでなければいけません。あなたもそう努力なさって来られました。もちろん、わたしたちとしては物質界の人間が要求する証拠性の基準に合わせる必要があることは認めます。が、それにも限界がありますから、これまであなたがなさってきたように、与えられたものを真剣な批判的態度で判断し検討しなければいけません。偏見を混じえずに心の扉を開き、理不尽な懐疑的態度さえ取らなければ、わたしたちとの連絡はラクになります」

「私が欲しくてならないのは、この地上を去った人たちが今も間違いなく生き続けていて、地上の人間とつながりをもち、現実に影響を及ぼしていることを立証してくれるものです。それを得るにはどうしたらいいのでしょうか」

「そのためには、わたしが使用しているこの霊媒よりも立派で、あなたの求めているような万全の証拠が提供できる波長に感応する霊媒を見出すしかないでしょう。ただし、そういう証拠を求めているのはあなたの魂ではありません。頭の中でそう思ってあがいていらっしゃるだけです」(※)

――この一節には大切なことが含まれている。人間側からすれば、その霊が地上で誰であったかを立証する具体的な証拠くらい簡単に出せそうに思えるが、実際には具体的なことになるほど地上臭が強くなり、それだけ波長が低くなるので、それが受けられる霊媒は程度が低いことになる。ということは低級霊が感応しやすいという危険性があり、うまくハメられやすいことにもなる。“感激の対面”をして親子が抱き合って涙を流すその裏側では、イタズラ霊がしてやったりと、ほくそえんでいることが多い。シルバーバーチはそのことを露骨に言わず、いかにもシルバーバーチらしく、ちょっぴり皮肉も込めて述べている。

最後の一文はさらに大切なことを教えている。人間は大ざっぱに言えば肉体と精神と霊とで構成されているが、成長するにつれて意識の中枢が肉体から精神へ、そして霊へと移っていく。理屈ばかりこねている人間は精神的段階に留まっている証拠であり、まだ真の自我には目覚めていない。その段階を抜け出ると直観(直感ではない)で理解するようになる。理屈や証拠を超えて真相を洞察してしまう――わかるのである。霊的能力というとすぐに霊視や霊聴を思いうかべる人が多いが、最高の霊的能力はその直観力である。

「では、その魂がもっと意識できるようになるにはどうしたらよいのでしょうか」

「それは霊的開発の問題です。より精妙な波長が意識できるように、霊的次元にチャンネルを合わせる方法を会得することです」

「チャンネルを合わせるにはどうしたらよろしいのでしょうか」

「地上世界が活気にあふれている時にこちらの世界は静まり返っていることがあり、そちらが静まり返っている時にこちらでは活気にあふれていることがあるものです。ですから、精神活動を止めて静寂の世界へ入り、受身になってみられることです。じっと待っていると魂が活動を開始するのがわかるようになります」

「特殊な考えが浮かんだ時、それが自分の考えなのか霊界から送られてきたものかを見分けるにはどうしたらよいでしょうか」

「そうしたことはすべて、精神をいかにコントロールするかに係わる問題です。精神があてどもなくフラフラしている状態から、意識的にきちんと支配下において、完全な静寂の中で高度な波長がキャッチできるようになることです。直観がひらめくのはそういう時です。波長が高く、速く、そして微妙だからです。地上的な思念はのろくて、不活発で、重々しく感じられます」

「地上で最高といえるほどの魂にも同じことが言えるのでしょうか」

「言えます。すべての魂に当てはまります。よくお考えください。人間は本質的に二重の要素をそなえているのです。動物時代の本能の名残りと神の分霊とがあって、それがあなたの存在の中で常に葛藤しており、そして、そのいずれかを選ぶ自由意志を持つあなたがいるわけです。そこに進化の要素があるのです。あなたとしてはなるべく動物性を抑え、潜在する神性を発揮する方向で努力しないといけません。

神、わたしのいう大霊は、人間をはじめとしてあらゆる生命形態に内在しております。すべてが神であり、神がすべてなのです。ある人にとって神は優しいそよ風のごとく感じられ、又ある人にとっては、ときに荒れ狂う嵐のごとく感じられるものです。すべては各自の発達程度の問題です。

あなたの場合も魂の内奥の神性がうごめき、奥さんの死という悲しみの体験が触媒となって一段とその顕現の度合を増しつつあります。他界後の奥さんのことを求め続けられているのもそのためです。今夜こうしてこの交霊会に出席されたのもそのためです。これからのちも真理を求め続けられることでしょう。なぜなら、今やあなたは霊的真理への正道を歩んでいらっしゃるからです」

「ということは、発達の第一歩は願望を抱くことから始まるとおっしゃるのでしょうか」

「そうです。まず謙虚に、真摯に、そして敬虔な気持で知ろうとすることから始まり、今度は、そうして得た知識を自分の信念の確立のためだけでなく、他人のために役立てようという決意が出てこないといけません。

あなたはその願望をお持ちであり、これまでそう努力なさってこられました。そして、あなたが気力を無くしかけ、闘う意欲を失いかけ、いっそのこと第一線から引退して美術でも楽しむ生活を始めようかと思われた時などに、背後霊が懸命にあなたを鼓舞してまいりました。が、結局はあなたの魂の奥の神性がじっとしておれず、霊界からのインスピレーションにも鼓舞されて、恵まれない人たちのための闘いを続ける決意を新たにしてこられたのです」

このあとシルバーバーチはその下院議員の背後霊団について述べてから、さらに言葉を継いで――

「背後霊団のことを申し上げたのは、あなたもこちらの世界からの愛の保護下にあることを知っていただきたかったからです。人のためと思って努力している人々はみな霊界からの愛とエネルギーに取り囲まれていることを自覚し、仕事においてどれほど励まされ、勇気づけられ、感動させられ、そして支援されているかを知れば、いっそうの熱誠と情熱と集中力とをもって闘いに挑んでくださることと思うのです。人のために為された努力が無駄に終わったことは一度もありません。たとえ本来味方であるべきだった者から誤解され曲解され嘲笑され、あるいはこの人だけはと思って信頼していた人から裏切られることがあっても、あなたの奉仕の仕事は生き続けます」

「そのためのアドバイスをいただけたらと思うのですが……

「あなたには細かいアドバイスはいりません。あなたはご自分で自覚しておられる以上に大きな仕事をなさっておられます。すでに立派に人のために役立つことをなさっている方から“私に何かお役に立つことがあるでしょうか”と聞かれると、わたしの心はうれしさでいっぱいになります。なぜなら、それは立派に人のためになることをしていながら、さらに大きな貢献をしたいと思っておられることの証拠だからです。

これまで同様に弱き者、無力なものを助け、力が不足している人に力を貸し、暗闇にいる人に光明をもたらし、足の不自由な人、あるいは何かの苦しみを抱えている人に救いの手を差しのべてあげてください。残虐行為――とくに魂が怯(おび)えるような残酷な行為、つまり人類の最大の友であるべき動物への虐待行為を止めさせるために闘ってください」

そう述べたあとシルバーバーチは、指導霊として霊界から地上での人間活動に影響力を行使することの難しさを次のように説明した。

「指導霊は自分の意図するところを物質界に感応させねばなりません。それが容易なことではないのです。なぜかと言いますと、ご存知のとおり物質界から放散されている波長は、およそ感心できる性質のものではないからです。現在の地上界は、光のあるべきところに闇があり、知識のあるべきところに無知があり、叡智のあるべきところに無分別があり、豊かさのあるべきところに欠乏があり、幸福のあるべきところに悲劇があり、優しさのあるべきところに残酷があり、愛があるべきところに憎しみがあります。霊がその威力を届けるための通路である霊的能力者はいたって少数です。しかし、その数は着実に増えつつあり、潮流はわれわれに有利な方向へ進みつつあります。

ところで、あなたの魂が目を覚ましたのは悲しい体験のお蔭だったのですよ」

「あの悲劇もある目的のためにもたらされたとおっしゃるのでしょうか」

「大きな悟りは大きな悲しみから生まれるものです。人生は“埋め合わせ”の原理によって営まれています。日陰のあとには日向があり、嵐になれば避難所が用意されます。光と闇、嵐と晴天、風と静寂――こうしたものはすべて大霊の配剤なのです。大霊は生命活動の全側面に宿っております。闇があるから光の有り難さがわかるのです。争いがあるから平和の有り難さがわかるのです。人生は比較対照の中で営まれています。魂は辛い体験、試練、苦難のるつぼの中で真の自我に目覚め、純化され、強化されて、より大きな人生の目的と意義を理解する素地が培われるのです」

「では、苦難は霊性の開発に必要なことを気づかせるために意図的にもたらされることがあるということでしょうか」

「そうです。魂がその深奥にあるもの、最高のものを発揮するには、さまざまな体験を必要とするからです。魂は永遠の存在であり、それまでの思念の一つ一つの結果、口にした言葉の一つ一つの結果、行為一つ一つの結果をたずさえており、結局今のあなたはあなた自身がこしらえた――一秒ごとに、一分ごとに、一時間ごとに、一日ごとに、一週間ごとに、一ヵ月ごとに、一年ごとに築いてきたことになるのです。自我の成長は自分で達成するのです。そして、行う行為の総決算があなたの現在の進化の程度を決めるのです。自分以外の誰にもそれはできないのです」

「意図的行為と無意識の反射的行為とは別のものでしょうか」

「反射的に行われたからといって、そこに因果律が働く余裕がなかったということはありません。その行為そのものが、因果律の存在を厳然と示しています。あなたの行為は現在のあなたという人格全体から生み出されるのです」

「その現在の人格は各自がこの地上で行ってきた行為の総決算だとおっしゃるのでしょうか」

「その通りです。これまでに行ってきたことの結果が今のあなたであり、今のあなたが行うことが未来のあなたをこしらえるのです。因果律は一瞬の途切れもなく、しかも完ぺきに働いています。完全にでき上がっていますから誤るということがありません。人間界では国家が定めた法律をごまかすことができますが、大自然の摂理をごまかすことはできません。なぜなら、魂にはそれまでの行為の結果が永久的に刻み込まれており、その有りのままの姿があなたであり、それと違うものに見せかけようとしても通用しません」

「間違ったことをした時は必ずそれに気づくものでしょうか」

「そうとは限りません。良心の声が聞こえない人がいますし、心が頑(かたくな)になっている人がいますし、魂が悪想念に取り巻かれて大霊の生命力の通路が塞がれている人がいます。人間は必ずしも自分の間違いに気づいているとはかぎりません。もし気づいているのなら、地上に戦争は起きないでしょうし、残酷な行為も見られないでしょうし、飢餓に苦しむ人もいないはずです。これほど多くの病気はないでしょうし、一方に飢えている人がいるというのに食べ放題のぜいたくをするということもしないはずです」

「それを改めるにはどうすればよいのでしょうか」

「あなたやわたし、ここに集える者と霊団の者全員が利己的な物質中心思想が生み出す不平等を撃破して、代わって大霊の恩寵をすべての子等に行きわたらせ、病気やスラム街、不健全なものや貧困、そのほか人間の魂と身体とを拘束するものすべてを何としてもこの地上から駆逐しようと固く決意することです。それらはみな間違ったことだからです。各自に内在する神性を自覚させ、人間として為すべきことは何であるかを、この地上を去る前に自覚させてあげないといけないのです」

ゲストの下院議員は多くのスピリチュアリストと同じように、動物愛護運動に深く係わっていた人である。そこで本章の締めくくりとして、かつてシルバーバーチが改革運動に係わった人々への霊界からの働きかけについて語ったものを紹介しておこう。

「わたしが説いていることは、過去のあらゆる時代に人類のために精励したすべての改革者、すべての聖人、すべての予言者、理想主義に燃えたすべての人々の先見の明がとらえた気高い崇高な考えと、まったく同じものです。

彼らはその霊格の高さゆえに霊眼をもって地上生活のあるべき本来の姿を垣間みることができ、その美しい未来像が、逆境と闘争の中にあって心の支えとなってきたのでした。彼らには、いつの日かきっと実現される霊的計画がわかっていたのです。そこで同胞である物質界の子等にとって、今のうちに少しでも霊性を高めることになる仕事に貢献したのです。奉仕です。

彼らは、皮肉にも、その奉仕的精神から正しい人の道を説いてあげた当の相手から貶(けな)され、抵抗にあい、嘲笑の的とされましたが、彼らの仕事は立派に生き続けました。それは今日世界中の無数の国において、この交霊会のようなささやかな集いの場において行われていることが引き継がれていくのと同じです。それにたずさわった人々は次々と忘れ去られていくでしょうけど……

大霊の強大な勢力が今ふたたび地球という物質の世界へ向けられているのです。地上のいかなる勢力をもってしても、その強大な潮流を遮ることはできません。

地上の人間は流血によって問題が解決するかに考えるようですが、かつて流血によって問題が解決された例(ためし)はありません。無益であり、何の解決にもなっていません。

人間はなぜ神から授かった理性が使えないのでしょうか。なぜ唯一の解決法が一人でも多くの敵を殺すことだと考えるのでしょうか。いちばん多くの敵を殺した者が英雄とされる――地上というところは不思議な世界です」

祈り

ああ、真白き大霊よ。

わたしたちはあなたを永遠の生命のあらゆる現象の背後に働く無限の法則として説き明かさんとしております。古き時代にはあなたは歪められた眼鏡を通して見られておりました。嫉妬に狂う神、腹を立てる神、好戦的な神と思われたこともございました。

しかし、わたしたちは無限なる霊、あらゆる生命現象を通じて息づき、あらゆる自然法則の働きとしてご自身をお示しになっている存在として説き明かさんとしております。無限の叡智と理解力、愛と真理の大霊――弱き者、悩める者、挫折せる者を鼓舞することに精励する人々の生きざまを通じて顕現している大いなる霊として説くのでございます。

ああ、大霊よ。

あなたはたった一冊の書物の中にいらっしゃるのではありません。たった一つの教会(チャーチ)、たった一つの寺院(モスク)、たった一つの神殿(テンプル)、たった一つの礼拝堂(シナゴーグ)の中にいらっしゃるのでもありません。物質界の子等の有限なる理解力によって規定することも制約することも圧縮することもできない、広大無辺の霊でいらっしゃいます。

とは申せ、あなたは断じて子等とは無縁の遠き存在ではございません。まさに子等の内奥にましますのです。あなたの分霊(わけみたま)としてでございます。その分霊を通じてあなたはご自身を顕現なさらんとしておられるのでございます。子等の奉仕的生活を通じてあなたのご意志が発揮され、あなたの摂理が理解され、かくしてあなたの造化の大業の目的と同胞とのつながり、そしてあなたとのつながりについて子等が理解を深めるのでございます。

その理解の深まりとともに地上世界に新たなる光明、新たなる希望がもたらされます。平和が行きわたり、闘争が無くなります。利己主義が消え、悲しみが喜びに置き換えられ、生きるための必需品に事欠いていた人たちが真実の地上天国に生きることになるのでございます。

それがわたしたちが説き明かさんとしている大霊でございます。そのあなたの摂理を子等に教えんとしているのでございます。それを理解することによってこそ子等は俯仰(ふぎょう)天地に愧(は)じない生き方ができるのでございます。自らの力で束縛を解き放すことができるのでこざいます。奴隷のごとき卑屈な生き方を止め、膝を折ってあなたに媚びへつらうことなく、あなたからの生得の遺産を主張する――すなわちあなたのご意志を日常生活の中で発揮していく権利を堂々と主張できるのでございます。