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2章 テーブル現象

我々が物理的心霊現象と呼んでいるのは、物体そのものの動きや移動(一つの部屋の中での移動ではなく、別の部屋またはどこか分からない場所からの搬入)、あるいは物体によって出される音などのことであるが、それには日常での突発性のものと、それを目的とした実験会において見られるものとがある。これから扱うのは後者の実験会において見られるものについてである。

本章ではその中でも実験会が開かれるようになった当初からよく観察されてきたものの一つで、しかも現象として最も単純である“テーブル現象”を取り上げる。

物体が動くという現象ならどの物体でもよいのであるが、日常的に使用しているテーブルが扱いやすいことから自然に試みる人が多くなり、物理現象の中でもごく一般的な現象となっている。

この現象が当初からよく観察されてきたというその“当初”とは、ハイズビル現象が騒がれた一九世紀半ばのことであり、学者による研究・調査を目的とした実験で観察されたのであるが、突発的ないし自然発生的な心霊現象ならば太古から語られているし、西暦二〜三世紀の神学者テルトゥリアヌスが書き記したものにテーブル現象のことが出ていることからも、間違いない事実である。

このテーブル現象は、当初は学者だけでなく、どこの家庭でも応接間などで気軽に行われたものだった。それが次第に行われなくなったのであるが、それには二つの理由があった。一つは、面白半分にやっていた者がすぐに飽きていったこと。その本当の意義も知らずにすぐに飛びつく人間は、何をやっても長続きしないものである。

もう一つの理由は、真剣な態度で臨んだ学者や知識人は、そのテーブルによって伝えられたメッセージの内容にただならぬものを感じて、テーブル現象そのものよりも、その現象を演出している霊たちそのものへと関心の焦点が移っていったことである。要するに霊の世界とはどういう所なのか、地上生活との因果関係はどうなのかといった思想的なものへと変わっていったのである。

思想面については改めて扱うとして、テーブルという道具は単純であり、そして、それによる現象も幼稚そのものに思えるが、それがその後、空前絶後といってよい大思想の誕生の基盤となっていたことは事実で、その意味でこのテーブル現象がいかなるものであったかを見ておく必要があるであろう。それがその後の複雑な現象の解明のカギを提供してくれるからでもある。

テーブル現象を発生させるには特殊な体質をした人物、いわゆる霊媒が一人ないし二人必要である。それ以外の出席者は、証言者ないし観察者としては別として、現象に関するかぎりは必ずしも存在しなくてもよい。

と言っても、十人も十二人もいれば、その中の何人かは霊媒体質をしていて、自覚なしに協力していることがあることも事実である。それ以外の人物は、人間的性格ないし身体的体質によっては、サークルに悪影響を及ぼすことすら有り得る。

一口に霊媒といっても、いろいろなタイプがある。パワーがすごくて普通の霊媒を二十人集めたよりも驚異的な現象が見られる霊媒がいる。そういう霊媒だと、出席者は一切関与せず、霊媒一人が手を置くだけでテーブルがすぐに動き出し、上昇し、一回転したり、物凄い勢いでスピンしたり(コマのように回る)、そこら中を動き回ったりする。

霊媒的素質があるかどうかは外観を見ただけでは分からない。実際にやってみないと分からない。だから、最初は出席者全員が両手の掌(てのひら)を下にしてテーブルに置く。きつく押さえたり筋肉を使ったりしないで、そっと置くだけでよい。

実験会が催されるようになった当初は、まだ原因が解明されていないこともあって、さまざまな工夫がなされた。たとえば男女が交互に座るとか、隣どうしが小指をつなぎ合って輪をつくるといったことだった。輪を作るのは人体の電磁気がエネルギーを出すのではないかとの推察からだった。

が、結局は何の工夫も要らない――必要なのは“忍耐”であることが分かった。つまり、現象が起きるまでに二、三分の場合もあれば三十分の場合もあり、時には一時間も掛かることがあるが、それは霊媒の力量と出席者の体質に係わることで、小手先の工夫でどうなるというものではないのである。

また、テーブルの形とか材質、時間帯、照明の強弱、さらには貴金属類や衣類の天然・合成の別といったことも関係ない。唯一問題となるのはテーブルの重さであろう。つまり霊媒のパワーが弱すぎると重いものは動かせないであろう。が、これも相対上の問題で、幼い年齢の霊媒でも、パワーがすごくて、途方もなく重いテーブルを軽々と動かすことがある。

テーブルが動き始める前にかすかに軋(きし)む音がしたり、木材の繊維が震えているような感じが掌に伝わってくることがある。

そのあと、いかにも動こうと努力しているような雰囲気がして、やがてゆっくりと旋回しはじめ、その動きに従って、手を置いている出席者もいっしょに回るのであるが、時にはついて行けないほどのスピードになることがある。そうなると手を離さざるを得ず、テーブルだけが回転しながら自在な動きをする。

また、空中でテーブルが片方に傾き、そのまま降下して、まず一本の脚で床に立ち、次にもう一本の脚を下ろし、そして最後に残りの二本の脚も置いて、元の位置にきちんとおさまる、ということもある。

時には、まるで船がタテにヨコに揺れるのを真似しているような動きをすることがある。そうかと思うと――これは霊媒がよほどパワーがある場合にかぎられるが――重いテーブルが天井近くまで浮揚して静止し、その下に出席者が立って見上げたり通り抜けたりしたあと、まるで紙切れがひらひらと落ちるような感じでゆったりと揺れながら降下したり、反対に猛烈な勢いで落下して大音響を立てたり、その衝撃で砕けたりする。

オーク材やマホガニー材でできた重いテーブルがである。この事実だけでも、テーブル現象を目の錯覚とする説が論外であるとするに十分である。

いわゆる叩音(ラップ)現象については次章で言及する。