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はじめに

十九世紀半ば、欧米に“スピリチュアリズム”という一つの思想的流れが起こりました。それまで死後の世界の問題は、もっぱら宗教(キリスト教・仏教など)で扱われるものと考えられてきました。

しかし“スピリチュアリズム”は、科学者が中心となって死後の世界を明らかにしようとするところから出発しました。この研究は当時の知性を代表する多くの人々――「ウィリアム・クルックス」「オリバー・ロッジ」「シャルル・リシェ」(ノーベル生理学賞受賞)などによって進められました。死後の世界は宗教者が扱うもの、という常識が崩れ、科学者が研究するテーマになったのです。

その結果、死後の問題は、従来の「信仰の問題」から「事実の問題」へと変わりました。それと同時に、これまで宗教で説かれてきた死後の世界に対する教えが、ずいぶん間違っていることも明らかにされました。科学者によって厳密に追求された研究は、それまでの宗教の壁を根本から崩してしまったのです。スピリチュアリズムは宗教ではありません。しかし最も深い宗教的世界を扱っています。

スピリチュアリズム研究の結果“死”は、何ひとつ恐れる必要のないこと、それどころか“死”は、むしろ待ち望むべき素晴らしい出来事であることが分かりました。地上人生がいかに辛く、不公平で、地獄のような生活であっても、死後、各自に待ち受ける世界は本当は素晴らしいものなのです。誠実に地上人生を送った者には幸福が約束されているのです。欧米や日本では、こうしたスピリチュアリズム研究の成果は一部の人にではありますが、かなり以前から知られていました。

先のオウム事件後、東京の大学生を対象とした意識調査が行われました。それによると七十パーセント近くの学生が、死後の世界の実在を信じているという結果が出ています。若者の心が、これまでの既成宗教から単純素朴な「霊的世界」に対する関心へと向かっていることが明らかにされています。

これはスピリチュアリズムの影響が日本国内で、相当なところまで浸透してきているためであると思われます。

今日の社会では、多くの人々がお金に最大の信頼を寄せています。しかし、お金の威力が及ぶのは地上人生という限られた時だけなのです。そうした人間の煩悩は、従来の宗教では、解決することはできません。スピリチュアリズムを通して霊的な事実を知らないかぎり、根本的な「精神革命」は起こり得ないのです。

私たちはこれまで、スピリチュアリズムを一人でも多くの方に知っていただきたいと願ってきました。なぜなら人類の幸福にとって、スピリチュアリズムは最も大きな力を持っているからです。そして、スピリチュアリズムの入門書にふさわしい本書を翻訳する機会を与えられました。

この本には、あの世にいるスピリット(霊)が、地上の霊媒を通じて伝えてきた死後の様子が書かれています。地上サイドから神秘体験を扱った本は多くありますが、残念ながらそれらの大半は、きわめて低俗な現象のみを取り上げ、興味本位に流されています。

それに対し、この本では、あの世における霊たちの体験が、実にリアルに豊富に取り上げられています。それは、まるであの世の「現地報告」そのものなのです。これほど豊富で詳細なレポートは、本書が初めてではないかと思います。このレポートによって誰もが、死後の世界の様子をありありと実感できるはずです。

さらに本書の優れた点は、そうした実例の豊富さばかりでなく、その上に立ってスピリチュアリズムの問題点を絞り出し、検討を加えていることです。その優れた理論考察によって哲学的内容にまで問題を深めています。

この本を初めて読まれる方は、たいへんな驚きと感動を持たれることと思います。人生に大転機が訪れるかもしれません。この本がきっかけとなり、スピリチュアリズムに関心を持ってくださる方が現れるとするなら大きな喜びです。