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13.十年後のローズ・・・次なる世界への不安

一九六三年九月九日、聞き覚えのあるロンドン訛りの女性の声で沈黙が破られた。

「ウッズさん、グリーンさん、こんにちは」

「こんにちは、ローズさん」グリーン女史は答えた。

「私の声が分かりましたか? 長い間ご無沙汰しておりましたが」

「すぐ、あなただと分かりましたよ」

「まあ! じゃあ私の声は、きっと普通の人と違うんですね。皆さん方が私を覚えていてくださるとは知りませんでした。先回お話ししてから、長い長い時間がたちました。私はてっきり、皆さん方が私のことを忘れてしまったものと思っていました」

「私たちはローズさんのことを決して忘れていませんよ」とウッズは答えた。

「こちらにいるさまざまな人間が、毎週毎週、あなた方の所にきて語っています。皆さん方は、本当に素晴らしい集まり(サークル)をつくっていらっしゃいます」

「私たちは今でもあなたの声を聞いているんですよ」

「どのようにして聞くのですか?」

「ローズさん、私たちはいつもテープであなたの声を聞いているのです」

「皆さん方は、いつもこちらの世界にいる多くの人々を惹きつけているようです」とローズが言った。

「ローズさんがここへきてくださるときは、いつも大勢の仲間が集まります。私は長い間、あなたと会うチャンスがありませんでした。それでも私はローズさんのことを忘れませんでしたよ」

「あなたは今、そちらで何をしていますか?」とウッズが尋ねた。ローズが答えた。

「私はわずかな時間ですが、小さな子供たちと過ごしています。私は子供が大好きなのです。私は多少なりとも彼らの役に立っているようです。そしてなぜだか自分でも分からないのですが、そうした片手間に時々する仕事が好きなのです。

こんなことを言うと馬鹿げて聞こえるでしょうが、私は部屋の中に座って針仕事をしたり、本を読んだりして静かに時間を過ごすのが好きなのです」

「ローズさん、あなたは以前と同じ家に住んでいるのですか?」

「はい、そうです。そして私は今とても幸せです。私は特別どこかへ引っ越したいと思うようなことはありません。もちろんこちらの世界には、たえず前進し続けたいと思っている人々もいます。しかし今の私には全くその気がありません。

でもそのうち、ここからどこかへ行くように言われるような気がします。私には、なぜそうしなければならないのか分かりませんが……。私は今のままでいいのです。私だけの素敵な小さな家があり、私の気に入ったすべてのものがあり、友だちもいます」

「あなたはどのような家に住んでいますか?」

「ごく普通の家です。小さくてきれいな家で田舎にあります」

「私は生前ずっと、ロンドン郊外の田舎で生活したいと思っていました。私はいつも自分の小さな家が持てたらいいと思っていました。田舎に移り住んで、すべての喧噪から逃れた生活をしたいと思っていました。今、私は自分が願っていたような家を手に入れました。これ以上ほしいものはもうありません。

でも私は、それはある点ではよいことではないと思っています。こちらの人々も私にいつも“もっと意欲を持つべきだ”と言います。しかし私は、自分の小さな家にいるだけで本当に幸せなのです」

「そちらには庭がありますか? ローズさん」

「あります。そのお蔭で私は大地に親しむことができます。私は自分で花を育てます。しかし私は決してそれを摘みません」

「花を採らないのですか?」

「ええ、私は花々を自然の環境の中にそのままにしておきます。花の世話をしたり、花を眺めるだけで、私は最高の幸福感と喜びを感じます。こちらの花々は枯れることがないのです」

「花には生命があるのですか?」

「もちろんあります。活力と生命力が宿っています」

「あなたは多くの場所を訪問しますか? ローズさん」

「私はあちこちと出歩くことは好きではありません。ただし時々、外出して友人に会ったりおしゃべりをすることはあります。しかし友人たちと遊び回りたいというような気持ちはありません。

友人の何人かはしばらくここにいました。それから彼らはどこかへ行ってしまいました。その後、彼らと再び会ったことはありません。どこか別の場所へ行ってしまったのです。しかし私は行きたくありません」

「今の状況に満足していますか?」

「満足しています。ある人は満足することは悪いことだと言います。しかし私には、どうしてなのか分かりません。私は、不満を持つことの方が悪いと思うのです。でもこちらの人々は、もし不満足な気持ちが持てないなら進歩することはできない、他の所へ行くことはできないと言います。たぶん、いつか私は他の所へ行くように勧められるでしょう。

でも私は、どうしてこれまでに得たものを手放さなければならないのか分かりません。こちらの人々が時々きて、私に他の世界について話をしてくれます。それはとても素晴らしい所のように思えます。しかし私には“そこへ行きたい”という気が起こらないのです。今の所にいるのが幸せなのです」

「あなたの住まいはどのようですか? 説明してください」ウッズはローズを、彼女の頭の中を占めている次の世界への不安から現実の問題に引き戻そうとして質問した。

「何についてですか?」

「あなたの住まいについてです。あなたは以前、ご自分の住まいについて話してくれたことがありますが、あなたの今の住まいは家のようなものですか? それとも別のものですか?」

「それは田舎の小さな場所にあります。四つの部屋があって私にとっては十分です。面白いことに、こちらにはチリもホコリもありません。それで雑巾を持って掃除をする必要はないのです。いつもきれいなのです。

……先程の話に戻りますが、どんな人が私に次の世界へ移動するように言うのかお分かりですか? 私にはその方の言うことを無視することはできません。しかし私は、それが全く納得できないのです。

その方々は“人間の心が悪いと、そこにチリやホコリが現れる”と言いました。

私は本当にこちらの生活に満足しています。すべてのものを思い通りに育てることができ、自分のしたいことが何でもできるのです。そして誰もそれを妨げないのです。鳥たちは庭にやってきます。鳥たちは本当に人間に馴れています。誰も破壊行為をしようと思いません。ここは本当に素晴らしい所なのです」

「そうですね。本当に素晴らしい所ですね」

「彼らは高い世界へ行くことについて話してくれます。しかしそれは、私とは違った方法で進歩したいと思う頭のいい人にはふさわしい道だと思います。でも私は、今のままで幸せなのです。なぜ、ここを離れなければならないのでしょうか? 彼らはいつも私に“変化したいと考えるようにしなさい”と言うのです。しかし私は、そうしたくありません」

ローズは再び、先ほどの悩み事の中に戻ってしまった。ウッズはもう一度、ローズを引き戻そうとした。

「ローズさん、先回の最後の話の中で、あなたは海を見たことがないと言いました。今でも海を見たことがありませんか?」

「見たことがありません。私は海を見たいと思いません」

「あなたは今でも湖へ行きますか? たしかあなたは湖へ行くと言っていましたが」

「そこでボートに乗ると言っていたようですが……」とグリーン女史が促した。

「はい、湖へ行ったことがあります。私は湖が好きです。海は私の好みではありません」

「町に行きますか? ローズさん、あなたはそちらに町があると言ったことがありますが」

「たしかにあなた方が言うような大きな町や都市があります。しかし町の様子は地上とは全く違っています。商店はありません。“人が集まっている”という点は同じですが、他の点では地上とは違っています。もしあなたが多くの人々の中にいたいと思うなら、あなたは自動的に町に住むようになるでしょう」

「あなたの家の隣には、人が住んでいますか?」

「もちろん私の家のまわりには人々が住んでいます。彼らは考え方が、私ととても似ています。おそらくそれが、彼らと私がすぐ近くに住んでいる理由でしょう。時々、私たちは集まりを持ちます。私たちは私たちなりに幸せなのです。

私はリラックスして静かにしているときが、本当に好きなのです。私はこちらで本を読むことを覚えました。私は地上にいたとき、本が読めませんでした。私は字も覚えましたし、自分の本も持っています。私に本を持ってきてくれる人がいるのです。私は時々、彼らに自分の本を貸してあげます。私たちは座って話をしたり本を読んだりします。

こんなことを言うときっと驚かれるでしょうが、映画を観に行ったこともあるのですよ」

「そちらの映画について教えてください」

「地上世界にあるもので、面白いものはこちらの世界でも見ることができます。その映画には、道徳的要素が含まれていて、とても面白く役に立ちます」

「野原のような所がありますか? そこは美しいですか?」

「とても素晴らしいです。本当に美しい緑の草が生えています。これもまた皆さんを驚かせるでしょうが、こちらの世界にはトウモロコシ畑もあります」

「あなたは畑仕事をするのですか?」

「はい、とても楽しい仕事です。ここには地上のような季節はありません。また雨が降るのを見たことがありません」

「雨が降らないのですか?」

「私は曇り空も見たことがありません。気温が暑すぎるということもありません。いつも快適なのです。ちょうど心地よく暖かいのです。また私は太陽を見たことがありません。こちらの世界の明るさと光は、太陽からくるものではありません。なぜならこちらには太陽はないからです」(先の交霊会では「太陽が輝いている」と言っていたが、霊的自覚の深まりにともない霊界の事実を理解できるようになり、「地上のような太陽はない」ということに気がつくようになったことが分かる――訳注)

「ローズさん、そちらの芝生は地上のものと同じですか? それとも、もっときめ細やかですか?」

「こちらの芝生は、とても踏み心地がいいです。とても細かく、美しい緑色をしています。私は背丈の高い花々が生えている所に行ったことがあります。その花々は背丈が七、八フィートもあろうかというほどでした。まるで花の林の中を歩いているようでした」

「本当ですか! ローズさん。そちらでは大きくなったトウモロコシを何に使うのですか? トウモロコシを刈ったり、それで何かをつくったりするのですか?」

「いいえ、よく知りませんが、そのようなことはしないと思います。私は刈り取られたトウモロコシを見たことがありません。トウモロコシはいつも畑に植えられたままのようです」

「トウモロコシでつくられたパンはないのですか?」

「ありません。他に面白い話があります。こちらではもちろん食欲がわきません。最初こちらの世界にきたとき、私は食事をしました。食べたものはほとんどが果物でした。こちらではしばらくすると誰も食欲を感じなくなります。食べることがそれほど大切ではないことを悟るようになります。それから食べることをやめてしまいます。

しかし私は、お茶を飲むのが大好きな人間でした。そして今でも好んでお茶を飲んでいます。皆さんは、どこからそのお茶を手に入れるのかと考えられるでしょう。どこからそのお茶はくるのだろうか、そのお茶は当然こちらの世界でつくられたに違いないと思っていらっしゃるでしょう」

「どのようにしてお茶を手に入れるのですか? お茶を飲みたいと思うと、それが手に入るのですか?」とウッズは聞いた。

「不思議なことですが、私もよく分からないのです。台所へ行くわけでもなく、ヤカンを置くわけでもなく、自分でお茶を入れるわけでもありません。しかし私がお茶を飲みたいと思うと、すでにそれが目の前にあるのです」

「それは素晴らしいですね」

「地上人ばかりでなく、こちらにいる人でさえ言います。“それは実在物ではない。それはただ、あなたが必要だと思うから存在するようになるのだ”と。私はこれまでずっとお茶を飲み続けてきましたが、お茶を飲みたいという欲求を失ったとき、お茶は私の目の前から消え失せるでしょう。でも本当のことを言うと、それが私が別の世界に行きたくない理由の一つなのです」

ローズは他の世界へ移るようになるかもしれない不安から、しばらく独り言を口走っていた。ウッズは根気よくそれを聞いてやりながら、話題を変えるチャンスをうかがっていた。それから、

「そちらには木とか花はありますか?」と質問した。

「こちらの木々はとても美しいです。そして花も同様です。とてもよい香りがします」

「そちらの世界には美しい音楽がありますね?」

「はい、あります。私は何度もコンサートに行きました。とても美しい音楽でした。こちらの音楽は気取ったようなところがなく本当に素晴らしいです。地上のジャズのようなくだらないものはありません。すべて心地よいものばかりです。私は地上にあるような宗教音楽は聴きません。それはいつも私の気を滅入らせるからです」

「ローズさん、あなたは以前、針仕事をすると言いました。何かご自分の服をつくることがありますか?」グリーン女史が言った。

「はい、つくります。これまで数枚つくりました。こちらにいる人が私に材料を運んでくださるのです。その方はとても素敵な紳士で、私はその方とこちらにきてから知り合いました。彼は、ここよりも少し高い世界に住んでいらっしゃいます。そしてわざわざ、私やここの友人を訪問してくれるのです。

彼はいつも何かもってきてくれます。彼はとても心が広いのです。彼はつい最近、私に美しい布を持ってきてくれました。それは輝くような青色で、まさに私の好きな色でした。“これはあなたのために持ってきました。これで服をつくれば、あなたはもっと素晴らしくなるでしょう”と、彼は言ってくれました」

「そちらの田舎には、何か動物がいますか?」

「もちろん野原には動物がいます。しかし怖くはありません。こちらでは動物はとてもおとなしいのです。そしてこれらの動物たちは人間に話しかけることができるのです。

私はヘビとかカエルのようなものはぞっとしますが、こちらではそうしたイヤな動物を見たことはありません。そうした生き物はとても低いバイブレーションの世界にいると聞きました。私はそれがどういう意味かよく分かりませんが、気味の悪い動物は、私のいる世界にはいないことは確かです。またブヨとかハエのようなものも見たことがありません。しかし面白いことに、私は蝶は見たことがあります」

「そちらの蝶はきっと美しいでしょうね」

「とても美しいです。そして死ぬこともありません。おかしく思われるかもしれませんが、こちらには地上のような死はありません。何ものも死ぬことがないのです。

私は最初こちらの世界にきて落ち着くと、“ここでの生命はどのくらい続くのかしら”と思いました。“これまでとは別の生命なのかしら、また以前のような生命を持ち再び死ぬことになるのかしら、ここでの生命以上のものがあるのかしら”などと考えました。

しかし、ここでは死ぬことはないのです。それはこれまでの常識では全く考えられないことです。人はこちらにくると、しばらく同じ状態の生活を続けるようです。やがてその生活に退屈するようになります。そうでないとしたら、ここでのすべてのことを知り尽くしてしまったと思うようになります。すると一種の眠りのような状態に入って行きます。それから別の世界に行くのです。

私はある意味でそれを恐れています。私は他へ行きたくありません。多くの友人が“あなたは他の世界へ行くべきだ”と言います。しかし私はどうしても、それが納得できないのです」

「先回、最後に、あなたは髪の毛を長くしていると言いました」ウッズはローズの意識を交霊会の会話に引き戻そうと質問した。

「はい、以前と同様、長い髪をしています。私はこれまで髪を短くしたことはありません」

「あなたはドレイトン・トーマス牧師に会ったことがありますか? 彼は一度ここにきましたが」とウッズが尋ねた。

「彼を知っています。一時は何度も彼に会いましたが、その後は会っていません。彼はおそらく別の世界へ行ったのだと思います。地上では、誰それさんがいなくなった、というような言い方をします。こちらでも全く同じです――“誰それさんは、すでに行きましたよ”というように。それはもちろん別の所へ行ったという意味です」

「他の世界(界層)へですか?」

「そうです。何人かの友人が、そのようにしてここを去りました。彼らは行ってしまったのです。しかし私はここにとどまります」

「そちらには馬がいますか?」とウッズは尋ねた。それは以前の彼女の好きなテーマだったからである。

「います。とても美しい馬がいます」

「あなたは馬に乗りますか?」

「いいえ、乗りません。私は遠くから馬の姿を見るのが好きなのです。馬が怖くて乗らないのではありません」

「そちらの町はどのようですか?」

「美しいの一言です。私は町には住んだことはありません。しかし町はとても美しいです。庭園と公園と子供たちの遊び場は特に美しいです。建物は大きく、そこで人々は学んだりします。図書館もあります。娯楽のための建物もあります。それらはすべて素晴らしく、何ひとつ下品で不快なものはありません。本当に素晴らしく上品なものばかりです。そしてとても美しいのです。

私は一、二度劇場へ行ったことがあります。そこで多くの有名人と会いました。地上時代には、私はその人たちの舞台を見に足を運んだことはありませんでした。また何回か、美術館に行って、昔の有名な画家の作品を見たことがあります。地上時代の有名な画家は、こちらにきても引き続き同じ仕事をしています」

「町はカラフル(色とりどり)ですか?」

「はい、町はカラフルというより美しいと言った方がいいでしょう。もちろんカラフルという言葉の意味次第ですが。建物や家々がすべて赤や白や青色で塗られているということではありません」

「建物の形式や様式はどうですか?」

「いろいろな形の建物があります。またあらゆる建築様式の建物があります」

「そちらでは石はどのように見えますか?」

「私にはこちらの石はまるで真珠のように見えます。どうしてかは分かりませんが」

「すてき!」とグリーンが声をあげた。

「歩道のことを何と呼びますか? 地上と同じような石で舗装されているのですか?」

「石のようなものです。それが石なのかどうか分かりません。もちろん他のものもあるでしょう。こちらの世界には乗り物はありません。車やオートバイのような乗り物に乗ることはありません。ここの人たちは、みんな楽しんで歩いています。誰も乗り物に乗りませんし、その必要がありません。歩くことには何の努力もいりません」

「もし遠くへ行きたいときは、思念によって行くのですね? ローズさん」

「正確には、思念によるものかどうか知りません。ある所へ行きたいと軽く思うだけです。それだけで、そこにいるのです。何の努力もいりません」

「そちらには森がありますか? それは美しいですか?」

「あなたが言うようなものがこちらにあるといいですね」

「私は森や木のことを言っていますが……

「分かっています。ちょっとふざけただけです。もちろんこちらには美しい森があります。とても素晴らしい森です。こちらでは誰も死を恐れません。死はすべての人々にとって待ち望むような出来事ですし、誰もがそのことに気がつくようになります。ただし、もし心の中に、または過去に、他人に知られては困るようなことがないならばの話ですが……。もちろん誰にでも多少の秘密はあるものですが、普通の人なら死んでこちらにくることを、何も心配する必要はありません。

私がこちらで聞いたところによれば、悪事を働く人間は、結局はとてもかわいそうな人間であるということです。悪事を働くことは、彼ら自身に悪い結果をもたらすことなのです。しかし、そうした悪人でも見捨てられることはありません。いずれは彼らも助けられ導かれ、暗闇から救い出されることになります。

普通の人なら死を恐れる必要はありません。私も、特別善い人間だったわけでも悪い人間だったわけでもありません。

私はこちらの世界で、一人で快適に過ごしてきました。それが別の世界に行きたくない理由なのです。ある人は、一生懸命に人生を切り開いて新しい生き方を始めようとしたり、これまでの境遇を変化させようとします」

「今あなたは、ずっと望んできた生活を送っているのですね」とウッズが言った。

「はい、その通りです。そしてそれが今の生活を変える気になれない理由なのです」

「あなたはそちらでとても幸福なのですね」

「とても幸福です。そろそろ私は行かなければなりません。ではお元気で。皆さんのなさっている素晴らしい仕事の話を聞くと、いつも嬉しくなります」

「またここにおいでください」とグリーン女史が言った。

「分かりました、ベッティーさん。ジョージさんもお元気で。さようなら」

その後一度、彼女は約束を守って現れた。そのときの彼女は、以前よりずっと幸せそうであった。前回の深刻な悩みはどこかへ行ってしまったようである。自分の人生を変えることは、結局ローズにとって、それほど恐ろしいことではなかったようである。