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11.地上の男女愛のゆくえ

地上時代の配偶者との出会いは?

“死”が辛いというのは、何と言ってもそれが愛する人との永遠の別れとなるからである。ところが嬉しいことに他界直後、多くの人々はあの世に先立った夫、妻、両親、子供、友人の出迎えを受けることになる。これによって大半の人々は、自分が死んだことを自覚するようになるのである。

死後の世界の存在を頭から否定する人は別として、もしかしたら死後の世界はあるかもしれないと思いつつも、それを受け入れたくないという人もいる。その理由の一つとして、生前“顔も見たくないほど嫌っていた配偶者や知り合いと、また同じ関係を続けなければならない”ということがあるかもしれない。

しかしそうした心配は無用である。なぜなら、心から愛する人とはあの世でも一緒になることができるが、顔を合わせるのもイヤだと思うような人と一緒になることはないからである。

かつての花売りの少女「ローズ」は語った。「こちらでは心から愛し合い惹かれ合った者同士が一緒に住むようになります。夫か妻の一方が相手を嫌っているなら、こちらで一緒になることはありません」

「ビッグス」と「ハリー」は死後もしばらくパブをうろついていた。先にあの世に行った母親は、彼らの世話をしたいと心から思い続けてきた。そして彼らは、母親の出迎えを受けることになった。

また「アルフ・プリチェット」は長い間会うことのなかった姉と、「ジョージ・ホプキンス」も先に他界していた妻と、そして「マリー・イワン」も姉、両親、夫と、それぞれ死後の再会を果たしたのである。

もしあなたが二度と会いたくないと思う人がいるなら、あの世でその人と会うことは決してない。ハリーは母親と再会したが、その際、母親の語った内容は、地上で離婚を経験した者にとっては朗報である。

離ればなれになる男女・夫婦

(ハリー霊)

「ところでお父さんは今どこにいるのですか?」私は母に聞いてみました。

「私とお父さんは一緒ではありません」

私は、これは当然のことだと思いました。どう見ても二人は理想的なカップルとは言えなかったからです。しかし二人は地上人生を夫婦として通しました。

「こちらの世界でどうしてお母さんはお父さんといないのですか?」

「それについては心配しないでください。あなたのお父さんと私は、友人としてはよかったでしょうが、夫婦としてはよくありませんでした。実際、私たちは理想的なカップルではありませんでした。外見は少しは仲がいいように見えたかもしれませんが、本当は心が通じ合っていませんでした。それで私は今、お父さんとは一緒にいないのです」――母の話は私には少々ショックでした。

もし地上での人間関係がすべてあの世に持ち越されるとするなら、地上で気が合わなかった人ともずっと顔を合わせなければならないことになります。しかしこちらでは、本当に気が合う人とだけ一緒に暮らすのです。

あの世では、気が合わない人と一緒に生活することはないことを実証するような別の通信が送られてきた。

一九六〇年八月、女性の声がした。その声はかつてイギリスの新聞の一面を飾ったことのある女性からのものだった。「アミー・ジョンソン」は一九三〇年、オーストラリアへの単独飛行に成功し、イギリスのトップ女性飛行士として名を馳せ、一躍当時の英雄になったのである。その二年後、一九三二年、彼女は青い目の酒好きなスコットランドの飛行士「ジム・モリソン」とロマンチックな結婚式を挙げた。しかし結婚生活は一九三八年に破綻を迎え、アミーはもとの姓に戻ることになった。

一九四一年一月の寒い霧の日、彼女は戦時空輸飛行士としてブラックプールからオックスフォード近くの飛行場に向けて離陸した。彼女が操縦していたのはイギリス空軍の双発練習機オックスフォードだった。しかし彼女は飛行場に到着しなかった。夜の闇がテムズ川の河口を覆うとき、練習機オックスフォードとパラシュートが発見された。彼女は二度と帰らぬ人となったのである。

一九六〇年八月六日、ウッズとグリーンは暗闇の中で、あの世からの声を待っていた。女性の声がした。そして自分を「アミー・ジョンソン」と名乗った。彼女は自分が死んだことに気がついたときの衝撃を堰(せき)を切ったように語り始めた。

「ジムもここにきています」

「そうですか。ジム・モリソンさんは今、何か話すことができますか?」グリーン女史は尋ねた。

「私には分かりません。私はこちらでジムと会うことはあります。しかし一緒に生活してはいません。私はジムと仲が悪くなるのを恐れています。私たちはともに強い性格の持ち主だったと思います。私たちは、もうお互いに傷つけ合いたくありません」

彼女の話は尽きなかった。彼女の話には“男女愛”についてのきわめて意味深い内容が示唆されている。

あの世で結ばれる男と女

自由気ままな恋愛生活をしてきた男女が、あの世で一緒になる可能性はない。しかしそれとは反対に、結婚したいと思いつつもそのチャンスを逃した男女もいる。そうした者たちは、あの世でどうなるのだろうか? 地上で何かの事情で結婚できなかったり、性格的に気が弱かったり、ひっこみ思案だったために結婚の幸せを逃した人には、死後チャンスが与えられることになる。あの世においては、そうした男女の出会いが実現している。

先に「ジョージ・ウィルモット」のことを述べた。彼は地上で二度の離婚を経験し、あの世に行ったとき真っ先に愛馬の出迎えを受けたが、以下は彼のその後の話である。

秘かに心を惹かれていた女性との出会い

(ジョージ・ウィルモット霊)

私とガイドの男性は歩いて行きました。角を曲がってたくさんのポプラの木々のそばを通り過ぎました。そのとき突然、思い出しました。ここは私が戦争中――一九一四年から一九一八年まで過ごしたフランスの田舎でした。大きな美しい木々が道に立ち並んでいました。この道の遠く離れた所に古い家があって、そこには昔、私が親しくしていた人々がいるはずです。私は当時、兵舎に住んでいました。その家には父親と母親と娘が住んでいました。

今、私がその家に近づくと、彼らが道の突き当たりの門の所に立っているのが見えました。そして私に向かってちぎれんばかりに手を振っていました。私は「いったい、これはどうしたことか?」と思いました。たしかこの人たちは戦争で死んだはずです。私は、彼らと別れた後、ここに爆弾が落ちて全員が死んだことを聞かされました。私は戦争の間、ずっとそのことが頭から離れませんでした。

「私は死んであの世にいるのだから、この人たちもやはり死んでいるに違いないだろう」と考えました。それで彼らをよく見てみました。すると不思議なことに、父親と母親は地上にいたときよりずっと若く見えました。しかし目の前にいるのは紛れもなく以前と同じ人たちです。

私は当時、サイドボードの上に置いてあった二つの肖像画のことを思い出しました。それらは父親と母親の若い頃のものでした。二十代のものだと思います。今、目の前にいるのは、あの肖像画と全く同じ若いときの二人だったのです。娘は母親と同じくらいの年齢に見えました。

その頃、私はこの娘にとても惹かれていました。そしてもし状況が許すならプロポーズしたいと思っていました。もちろん実際には結婚しませんでした。今も地上にいたときも、自分が彼女にプロポーズしなかった理由をいつも考えてきました。たぶんその理由は、私の二回の結婚の失敗にあったのだと思います。

私は常に、彼女への思いを心に抱いていました。彼女は何てかわいくて優しく親切なのだろうと考えていました。私たちはほとんど言葉を交わすこともなかったのですが、私は、彼女こそ自分にふさわしい女性、自分と本当に結ばれる相手だと思い続けていたのです。

恋人の若死にで結婚できなかったハリーの場合

ジョージ・ウィルモットと同じように「ハリー・トゥッカー」も、あの世で愛する人と再会する喜びを得た。彼は生前、追いはぎをしていた。その彼が一九六八年の交霊会に現れ、地上の酒場を徘徊(はいかい)していた地縛霊の状態から救い出された話を語り始めた。

(ハリー・トゥッカー霊)

一人の少女が私に近づいてきて私の手を取りました。私は彼女の顔を見て驚きました。それは私が決して忘れることのできない人でした。彼女は昔、私がとても心を惹かれていた少女だったのです。

私と彼女はお互いに見つめ合いました。もし私が地上で彼女と結婚できていたなら、きっと今とは違った人間になっていたはずです。悪い仲間に入って悪事を重ねるようなことはなかったと思います。もし彼女が若くして死ななかったなら、私たちはたぶん結婚したでしょう。そして私は、もっとまともな人間になっていたと思います。追いはぎなんかせずに、農場で働き何とか生計を立てるような平凡な人生を送っていたでしょう。しかし彼女は若くして死んでしまいました。それから私の心はひねくれてしまいました。

彼女は私の手を取って言いました。「今から私と一緒にもう一度やり直しましょう。私はあなたの手助けをいたします。これから私はあなたを導いてまいります」

私と彼女は大きな建物を出てから、地上の町のような所へ行きました。その町外れにわらぶき屋根の小さな家がありました。その家はまわりを低い塀で囲まれていました。そこはまるでわが家に戻ったかのような心なごむ雰囲気に包まれていました。私は地上でそんな素晴らしい所を見たことがありません。私たちは家の中に入りました。すると彼女は先ほどとは違って見えました。間違いなく同じ彼女だったのですが……。彼女はさっきまでの美しいドレスの代わりにシンプルな木綿の服を着ていました。

彼女はこれまで私をずっと待っていてくれたのです。地上にいる私を見つめ、思い続け、何とか私を正しい道に引き戻そうとしてくれていたのです。

そして今、私はとうとう彼女と一緒になれたのです。

愛し合いながらも結婚できなかった男女の出会い

女性専門誌によく掲載されるような、最高に美しくロマンチックなラブストーリーがあの世から送られてきた。一九六九年一月二十日、交霊会の静けさがスコットランド訛りのある女性の声で破られた。

「私の名前はマリー・アン・ロスです」

「マリーさん、あなたが死んだとき何が起きたのですか? あなたはいつ亡くなったのですか?」グリーン女史は問いかけた。

(マリー・アン霊)

それは今からずいぶん昔のことです。私は台所のランプの明かりの下で縫い物をしていました。私はイスから立ったことを覚えていません。

「そのとき何が起きたのですか?」グリーン女史が話を促した。

とても不思議なことが起きました。部屋全体が光に覆われ、たくさんの人々がまわりにいるのが見えました。何と! そこに何年も前に死んでいるはずの父、母、兄弟がいたのです。そしてネリーもそこにいました。ネリーは私の数少ない友人の一人で、数週間前に死んだばかりです。彼らはみんな部屋にいました。

私は夢でも見ているのでは、と思いました。そのうちネリーが近くにきて私を抱きしめ、顔にキスをしました。それは温かでした。母もきて私にキスをしました。彼女たちが私の手を取ると次の瞬間、私の身体は宙に浮かび上がり窓を通り抜けました。まわりのすべてのものが消え失せました。

私は目覚めました。素敵なベッドにいました。その部屋の天井はタテ、ヨコに木が渡されていて古い家のようでした。とても心がなごみました。そして太陽の光(そのときの私はそう思ったのですが)が窓から射し込んでいました。母はずいぶん若く見えました。昔、寝室に結婚前の母の肖像画が飾ってありましたが、今、目の前にいる母は、その肖像画の中の若い頃の姿でした。私は「これは夢だ」と思いました。

「いいえ、これは夢ではありません。現実です。あなたは生きているのです。何も心配いりません。元気になったら、あなたが小さいときに会ったことのある人たちの所へ行きましょう」

「私は自分が死んだなんて信じられません。まだ美しい夢を見ているようです」と言いました。

そのとき犬が、ベッドの上に飛び上がってきました。これには本当に驚かされました。私は以前から犬が好きでした。この犬はずっと昔、私が飼っていた犬で、父親もとてもかわいがっていましたが、馬車に轢(ひ)かれて死にました。私たちはこの犬をニパーと呼んでいました。そのニパーが私のベッドに飛び上がってきたのです。私は何がなんだか分からなくなりました。すると母が言いました。

「もちろんこちらの世界にも動物はいるのですよ」

「私にはどうしても理解できません。とても信じられません。教会の教えでは動物は死後、天国には行かないことになっているのではないですか?」

しかし、ここに動物がいるのは間違いのない現実である以上、ここは天国ではないと思いました。ここは昔、絵や宗教の本で見た翼を持った天使のいる世界(天国)とは、あまりにも違っていました。

それから私は眠りのような状態に入りました。それは地上の眠りとは異なりますが……。気がついたとき私は、小道のような所を歩いていました。両側に木々が立ち並び、美しい野原や家畜が見えました。道をどんどん歩いて行きましたが全く疲れを感じませんでした。通りの終わりまでくると、そこに美しい白い家がありました。その家は真珠の光沢のような光で覆われていました。

私がこの家に近づくと一人の男性がドアから出てきました。彼を見たとたん、私の心臓は驚きで破裂しそうになりました。

何と! この男性は昔、大好きであったにもかかわらず、結婚の申し出を拒んだ男性だったのです。もちろん私は彼を愛していなかったわけではありませんが、もし私が結婚すると、だんだん年老いて世話が必要になる両親を見捨てなければなりませんでした。といって、他人に自分の両親の世話をさせるという重荷を負わせることはできませんでした。どんなに彼が好きでも、それはしてはいけないことだと思ったのです。私は彼のプロポーズを断りました。それ以後、彼は他の女性と結婚しようとしませんでした。やがて彼は町を離れ、その後長い間、彼と会うことはありませんでした。

その彼が家から出てきました。彼はかつての三十代の頃のままでした。ただ当時、彼は口ヒゲを生やしていましたが、それはありませんでした(こんなことを思い出すなんておかしなことです)。

彼は庭の通路を私の方に向かって駆けてきました。そして私を抱き締めました。私は最も深い愛情で愛されていることを感じました。ただそういう言い方はすべきでないかもしれません。なぜなら私は両親からとても愛されてきましたし、私も両親が大好きだったからです。しかし彼に対する気持ちはそれとは違う感情でした。

「とうとうあなたは私の所にきてくれました。今度はもう私を拒まないでしょう」

私は彼に何と言っていいのか分かりませんでした。

そのとき突然、庭中の花がいっせいに咲き始めました。こう言うと嘘のように聞こえるかもしれませんが、私にはどのように説明したらいいのか分かりません。しかしすべて本当なのです。花々がみるみる成長し始めました。庭全体がまるで生きているかのようでした。そこにはありとあらゆる種類の花がありました。地上にいたときから知っていた花もありましたし、初めて見る花もありました。

その中に特別大きなオレンジ色の花がありました。ケシの花のようでしたが、それがどんどん大きくなっていきました。私は、もしこのまま大きくなると家よりも高くなってしまうのでは、と思ったほどです。私はとても幸せな気持になり、心の底からくつろぎを感じ、平安な思いに満たされました。このケシのような花はぐんぐん大きくなって、やがて木のようになりました。

それから急に、花びらが開き始め、次にそれがうなだれたようになりました。うなだれたと言っても、しぼみ始めたということではありません。花びらが完全に開いて重なり合い傘のようになったのです。そして辺りは一面、美しいオレンジ色の傘のような花に覆われました。私たちはその下に立ちました。オレンジ色の花びらを通して美しい光が降り注ぎ、心地よい暖かさとまばゆいような光に包まれました。

「私は今までこんな大きな花を見たことがありません」と言うと、彼は、ほほ笑みました。

彼が言いました。

「あなたがこちらにくるまで、私は自分の思念で多くの花の種を育ててきました。でもあなたがきたのに、まだ満足できる庭にはなっていません。あなたがケシと呼んでいるこの花は、私のあなたに対する愛の象徴です。私はあなたをずっと愛してきました。私は地上のあなたをずっと見守り続けてきました。今や私たちは自由になりました。さあ、家の中に入りましょう」

歩いたのか空中を飛んだのか、はっきり説明できませんが、私の足は地面につかずに進みました。そして家に入りました。家の中は私がいつも憧れ夢見ていたようになっていました。その家は特別大きな家ではありませんが、私がこれまで地上で住んでいたどんな家より大きなものでした。

「これから私たちは一緒です。失われた時を取り返しましょう」彼が言いました。

私は今までこれほど幸福だと感じたことはありませんでした。それから父と母のことを思い出しました。

「あなたはすでに地上の人生を終えたのです。これからは私と一緒に人生を歩んで行くのです。しかし、あなたがお父さんやお母さんに会いたいときは、いつでも会うことができます。二人があなたの所にくることもできます。あなたはこれから多くのことを学ばなければなりません」と彼が言いました。

マリーは、「もうこれ以上、語ることはできません。エネルギーがなくなりかけています。私はここで皆さんにお話しできて、たいへん嬉しく思っています。できたらまたすぐにでもきて話をしたいと思います」と言った。

が、彼女はそれから二度と現れることはなかった。おそらくあの世での幸せな生活が忙し過ぎるためなのであろう。