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9.家族・友人の出迎えがないときは?

生前、深い愛情で結ばれていた人たちは、私たちが死んだとき、あの世で必ず待っていてくれると「マリー・イワン」は言っている。マリーがもう少し地上で生きていたなら、彼女はもっと多くの人々と愛の関係を築き、死後、さらに多くの人々の出迎えを受けたに違いない。

「アルフ・プリチェット」は早くに姉と死別している。また「ビッグス」は母親に、「ホプキンス」は妻に、「マリー・イワン」は両親・姉・夫に先立たれている。彼らより先に他界した愛情で結ばれていた人たちは、その後、彼らが死後の世界にやってきたときに彼らを出迎え、世話をしてくれたのだった。

では結婚前に若くして戦争で死んだ若者の場合は、いったいどうなるのだろうか? 誰があの世での面倒を見てくれるのであろうか? 両親や親しい人たちは、まだ地上にいるのである。

一九六六年六月十六日、若い男性の声がした。その声は自分を「テリー・スミス」と名乗った。大戦中、イギリス巡洋戦艦フッドはドイツ戦艦ビスマルクの砲弾を受け、北大西洋の冷たい海中に沈没した。テリーはその沈没した巡洋戦艦に乗っていて水死したのである。

「それは突然のことでした。誰ひとり生存の可能性はありませんでした。全くの絶望的状況でした」

ベッティー・グリーンは、いつものように質問を切り出す頃合いを見計らっていた。

「テリーさん、あなたがまだ自分が生きていることに気がついたときの様子を教えてくれませんか? どのようなことが起きたのですか?」

ガイドの女性との出会い

(テリー霊)

私は、どこかの通りを歩いていることに気がつきました。そこは今まで見たことがない通りで、本当に素晴らしい所でした。最初、私はそこが地上の通りでないことに気がつきませんでした。道の両側には美しい木々が立ち並び、小さな家々があちこちに見えました。その中に特別大きくて美しい家がありました。私は自分がどこにいるのか分かりませんでした。辺りは、以前行ったことがあるカリフォルニアの景色のようでした。

不思議なことに、そこには誰の姿も見えませんでした。そこにいたのは私一人だけでした。“自分はたぶん夢でも見ているのだろう”と思いました。私はその道を全く知りませんでしたが、心の片隅ではどこか見覚えがあるような気もしていました。とにかく私はただ歩いて行きました。辺りの家々は死んだように静まりかえっていて、物音ひとつ聞こえませんでした。

それから私はどんどん歩いて行きました。すると一人の婦人と出会いました。その女性は本当に美しく見えました。とは言っても、彼女はそれほど若かったわけではありません。彼女は小さな門の所に立っていました。それは私がここにきて初めて見た門のある家で、他の家々には門は見あたりませんでした。私は小さな通路を通って玄関まで行きました。どの家にもフェンスらしいものがないのが少し奇妙に感じられました。

この婦人は門にもたれて立っていました。不思議なことに、彼女は実際には年を取っているようなのに、とても若く見えるのです。私が近づくと彼女はにっこりと笑いました。私が立ち止まると彼女は言いました。

「何かご用ですか?」

私は言いました。

「はい、私は自分に何が起きたのか、今どこにいるのか全く分からないのです」

「心配いりません。私はあなたがくるのをずっと待っていました。中にお入りください」

私は何でもいいから早く中へ入ろう、今は彼女しか話相手はいないのだからと思いました。

彼女は私を応接間に案内しました。それは素敵な小さな部屋でした。きれいなカーテンとイスがあり、どれも素晴らしいものばかりでした。一つのイスの上にネコがいました。黒くてきれいなネコでした。

「こちらにどうぞ」――彼女がすすめてくれたので私は他のイスに座りました。

「何かお飲みになりますか?」

私は、「これは面白いことだ。何か飲めるなんて」と思いました。彼女はお茶か他の飲み物を出してくれるだろうと思ったので、

「はい、お願いします」と言いました。

「何をお飲みになりますか?」

私は、ここでは気をつけた方がいい、酒飲みのように思われない方がいいと思いました。それで、

「レモネードをください」と言いました。

彼女は部屋から出て行ってレモネードを持ってきました。

「何も心配する必要はありません。私はあなたがくるのをずっと待っていました」

「私を待っていた?」

「そうです」

私は彼女が何を言っているのか分かりませんでした。彼女は言いました。

「あなたは自分が死んだことをご存じですか?」

「何ですって!」

「あなたは死んだのです」

「冗談を言わないでください。私が死んでいるはずがないでしょう。今こうしてこの部屋にいて、ネコが横にいて、そしてレモネードを飲んでいるのに……。あなただってちゃんと身体があるじゃないですか。それなのにどうして私が死んだなんて言うんですか? 全く気違いじみています」

最初、私は夢でも見ているのだろうと思いました。すると彼女は、

「これは夢ではありません。あなたは死んだのです」と言いました。

「もしあなたが言うように私が死んでいるなら、どうやって私はここにきたのですか?」

「私はあなたのことを考え、あなたのために祈ってきました。そして私は、あなたを担当する役目が与えられました」

「どういう意味ですか? あなたが私の担当になったとは?」

「あなたの船が沈んだとき……

その言葉を聞いて私は突然思い出しました。船が沈んだとき、私は海の中で木の棒をつかもうともがいていました。それは絶望的状況でした。

「あなたは溺れ死んだのです」彼女が言いました。

「何百人という若者が、あなたとともに死んだのです。その死んだ若者たちは全員、こちらの世界で世話をしてくれる人たちに出会っています。ある者は地上時代の親戚や友人であったり、ある者はそれ以外の人であることもあります。そして私は、あなたのお世話をすることになったのです。

あなたにはまだ納得がいかないでしょうが、あなたはこれまでずっと導かれてきたのです。先ほどまで、ご自分でここまで歩いてきたと思っていらっしゃったでしょうが、実はあなたは一人で歩いてきたのではありません。あなたはこちらの世界にいる人々から放たれた“インスピレーション”によって助けられながら、ここまできたのです。その人たちは、あなたのように突然死んでこちらの世界にやってきた人々を助けることを使命としているのです。

心配しないでください。私はこれからあなたと一緒にいます。私があなたのお世話をいたします。私をあなたのお母さんのように考えてください」

私は、それはありがたいことだと思いました。それから彼女は私の身内について語り始めましたが、それは私にはかなりショックでした。なぜなら私の父親や母親について何もかも知っていたからです。二人の離婚のことも詳しく知っていました。そして妹や他の身内のことも知っていました。

「あなたは私たちと何か特別に深い関係でもあるのですか?」

「いいえ、あなた方のことを知っておくのも私の仕事の一部なのです。あなたをお世話する以上、あなたに関係のある人々のことを知っておく必要があるのです」

「あなたは私がどのようにしてこちらの世界にきたのか知っていました。どうしたら私のことがそんなに分かるようになるのですか?」

「それは簡単なことです。私の意識をあなたの意識と同調させるだけでいいのです」

「同調させる? それはまるで無線機のようですね」

「こちらの世界ではそうしたことができるのです。もし私たちが特別な仕事をしていて、その関係上どうしても相手のことを知りたい時があります。その際、相手との間に何らかの結び付きがあるなら、私たちは相手の心に自分の意識を同調させることができるのです。

話は変わりますが、私たちはもうじき地上にいるあなたの知り合いに会いに行きます」

「それは素晴らしい!」

「もちろん彼らは今はまだ、あなたが死んだことを知りません。そしてもし、あなたが彼らのそばに行ってもあなたの存在に気がつきません。いずれみんな、あなたが死んだことを知るでしょう。あなたは彼らに会いに行くこともできますし、彼らを見ることもできます。そのとき誰もあなたに気がつかないとしても、動揺したりしてはいけません。

私は地上に息子を一人残してきていますが、いつか彼がこちらの世界にきて再び一緒になれることを楽しみにしています。当分、私はあなたのお世話をいたします。自分の息子にするようにお世話をいたします。あなたが幸せになれるように、私ができることは何でもいたします。これからは心配は無用です。ですから独りぼっちで寂しいなどと思わないでください。

しばらくしたら、あなたには休息の時が訪れます。今のあなたには休息が必要です。その時になったら、私はあなたをご案内して仲間に紹介しましょう」

共同体の人々の歓迎

しばらくして彼女は、私を家の外に連れ出そうとしました。外は太陽が出ているようでした。後になって彼女が教えてくれたのですが、こちらの世界には地上のような太陽はないということです。こちらを明るく照らしているのは、全人類・全生命体にエネルギーを与えている“神”から放たれた光だということです。面白いことに(皆さんには奇妙に聞こえるかもしれませんが)、その光は影をつくらないのです。ですからこちらには地上のような物の影はないのです。すべてのものは繊細な光に包まれ心地よく輝いています。その光は辺り一面を快適に、ほどよい暖かさで包んでいます。

とにかく私たちは家の外へ出ました。彼女はドアを閉めただけで鍵を掛けようとしませんでした。

「ドアに鍵を掛けないのですか?」

「こちらではその必要はありません」

先ほど私が初めて通りを歩いたときは、人は誰も見あたらず、まるで死の町のようでした。すべてはきれいに片付けられ、さっきまでそこにいた人々が午後の休憩でどこかへ行ってしまったようでした。ところが今度は先ほどとはうって変わって、私は大勢の人々に取り囲まれました。

大部分の人々は若かったですが、その中の一部の人々は年配に見えました。その人たちは実際は年老いていたわけではありません。しかし彼らには年寄り臭さを感じさせるような何らかの原因があったため、そのように見えていたのです。私はこのことについて説明することはできません。とにかく私を取り囲んだ人々は次々に握手を求め、私の名前を呼んでくれました。

「これは不思議だ。みんな私の名前を知っている。みんな私をテリーと呼んでくれている。まるで彼らはずっと昔から私を知っているようだ……

後になって分かったことですが、地上からの新参者がここにきたときには、例外なくこうした歓迎を受けるということです。これもまた後になって知ったことですが、ここは特別な共同体で、ここでの仕事は地上からの新参者を助けたり導いたりすることだそうです。戦争になると多くの若者が、次々とこちらの世界に送り込まれてきます。

とにかくそこにいた人たちは私を取り囲んで心から歓迎してくれました。私は本当に昔からの友人の中にいるように感じました。考えてみればこれは異常なことです。何しろ私は地上の人々が“死”と呼ぶ場所にいるのですから……

「私が最初ここにきたばかりのときには誰も会いにきてくれなかったのに、どうして今はこんなにみんな出てきて歓迎してくれるのですか?」彼女に聞いてみました。

「それはあなたに対する配慮からです」

「どんな配慮なのですか?」

「それはとても大切なことです。あなたが直接、私の所にくることが必要だったからなのです。私があなたをお世話するために選ばれた人間であることを、あなたに知ってもらうためだったのです。もちろんみんな、あなたがこちらの世界にきたことは知っていました。あなたが家々を通り過ぎたとき誰もいないように見えたでしょうが、彼らはあなたに対する愛の思いから、わざと姿を見せなかったのです。あなたがこちらの世界に慣れ始め、私の手助けを受けながら少しずつこちらの世界について理解していくことを、みんな知っていました。そしてあなたに準備態勢ができたので姿を見せたのです。

もし彼らが初めからあなたを迎えていたら、あなたの準備にもっと時間がかかったでしょう。今あなたはこちらの世界に落ち着き始めました。あなたは、これから多くの人たちに会うでしょう。あなたが次にすべきことは“自分の仕事”――あなたがこちらの世界でしたいと思うことを見つけることです。しかしその前に一度地上に戻って、あなたの知り合いがどのようにしているのか、私たちにできることがあるかどうか見ておきましょう」

「テリー・スミス」の死後の生活は順調であった。彼はいつか将来こちらの世界にやってくる父親や母親を出迎え、彼らのための住まいを準備してあげるようになるであろう。しかしあの世に初めて入ってくる者の中には、地上時代に人間嫌いで、他人との関係をほとんど持たなかったような者もいる。そうした人間は、あの世ではどのような道をたどることになるのだろうか?

こうした問題に対する答えが、一九六五年十二月六日に送られてきた。地上の人々がクリスマスの買い物にあたふたとしている時期であった。しわがれ声によって沈黙が破られた。彼は自分の名前を「ジョージ・ウィルモット」と名乗った。

「私はこの場所(交霊会)に何度もきたことがあります。そして地上とこちらの世界のやり取りを聞いていました。私にも話をするチャンスが与えられるかもしれないと期待していました。本当にチャンスはいつやってくるか分からないものです」

「ウィルモットさん、あなたのことを教えてください」グリーン女史が言った。

人間嫌いだったある男の死後

(ウィルモット霊)

私はとても貧乏な商売人で、かろうじて生計を立てていました。何とか死なずに生きている、という状態でした。ある時期から少しはまともな生活ができるようになり、欲しい物も手に入るようになりました。また少しのお金なら手元に残せるようになりました。しかし人々が普通考えるような幸せな人生を送ったわけではありません。

とにかく私は地上からこちらの世界にきて本当に幸せです。私は地上時代、ずいぶん気ままに生きてきました。私なりに楽しんでいたにすぎないのですが。でもそのときは、それでも少しは楽しかったような気がします。私は二度離婚しました。二人の妻は全くたちの悪い女でした。しかしそれはこの私も同様だったのですが……

「ウィルモットさん、あなたはどのようにしてそちらの世界に行ったのですか? そしてそのとき、どのような様子でしたか?」

「私は冬のある日、肺炎を起こしました。少し咳がして胸に異常を感じました。気がついたときは、すでに病院に運ばれていました」

病院に運ばれて一週間後、ジョージ・ウィルモットは死んだのである。彼があの世に行って最初に出会ったのは、彼の古い知り合いジェニーだった。こう言って彼は笑った。

「実はジェニーというのは妻の名前ではないんです。私の愛馬の名前なのです」