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6.地上の家族・知人への訪問

地上の妻を訪問

「アルフレッド・ヒギンス」は地上にいる家族を訪問しようと決心した。そしてガイドに言った。

「それでは、どのようにしてそこへ行ったらいいでしょうか?」

「ただ私についてきなさい。この道を歩いて行きましょう」

(ヒギンス霊)

私たちは丘の中腹を上って行きました。歩きながら彼が言いました。「私の手を握りなさい」――私は少し変な気がしました。他人の手を握るなんて少々馬鹿げていると思いました。しかし彼はもう一度、手を握るように言いました。私は変に思いましたが言われた通りに彼の手を握りました。

するとその瞬間、まわりのすべてに変化が生じ、辺りのものが徐々に消え始めました。それは眠りの中に入って行くような感じでした。とは言っても眠ってしまうのとは違う感じでした。私は自分の思考力や理解力が失われたようになり、無意識の状態になりました。

次に気がついたとき、私は自分の家の台所に立って妻を見ていました。彼女はトマトの皮をむきながら洗い場にいました。「彼女は私がここにいることを知っているのだろうか?」と思い、彼女の名前を呼んでみました。彼女は何も答えませんでした。私の声は聞こえなかったようです。私の友人(ガイド)は言いました。

「彼女にはあなたの声は聞こえませんよ」

「何をしたらいいのですか?」

「今、あなたができることは何もありません。しかしそのうち彼女は、あなたがここにいることに気がつくかもしれません。しばらく待ってみましょう」

それから彼は言いました。「彼女に意識を集中して、強く念じてください。できるだけ強く。そして彼女の名前を呼んで!」私は言われた通りにしました。すると突然、彼女は立ち上がり、ナイフとむきかけのトマトを床に落としました。そして辺りを見回しました。明らかに彼女は当惑しているようでした。私は彼女を驚かせて少々申し訳ないような気がしました。彼女は台所から飛び出し、ドアを開けて外を眺めました。それからしゃがみ込んで、テーブルに顔を伏せ泣き始めました。私はそれを見て恐ろしくなってしまいました。

「心配しなくてもいいです」彼は言いました。

「彼女には霊感があるのです。彼女は心の中で、あなたが近くにいることを感じているのです。しかし、それがはっきりとは分からないのです」

「でも、もしこんなふうに彼女を惨めにさせるのなら、いつまでも私はここにいない方がいいです」

「そう悩まないでください。こうしたことはよくあることなのです。地上の人間は分かっていないのです。彼らは死後の世界について聞いたことがないのです。死者と交信できるなどということは教えられたことがないのです。しかし彼女には霊感があります。そして感じるのです。意識の深いところで、内面の深いところで知っているのです」

「私が彼女にしてあげられることはないのですか?」

「何もありません。今はまだその時期ではありません。待たなければなりません。おそらく後になれば何かしてあげられるようになるでしょう」

「今できることはないのですか?」

「ありません。今は元の世界へ戻るのが一番いいのです」

ガイドのユーモア

「分かりました。ただ帰る前に、できることなら一、二カ所、別の所へ行きたいのですが」

「どこへ行きたいのですか?」

「何人かの友人に会いたいのです」

「分かりました。いいでしょう」

「ところで、あなたをパブへ連れて行ってもかまいませんか?」私がそう言ったとき、彼は笑いました。

「本当にかまわないんですか?」私は聞き返しました。

「あなたはまるで天使をパブに連れて行ってもいいですか、と聞いているようでおかしいですよ。私たちはよくパブのような所へも行きます。それに私は天使じゃありませんから」

「あなたはとても立派な方に違いないとは思っていましたが、あなたに翼がないことに気がついていました」――彼はまた笑いました。

「もちろん私は天使ではありません。が、天使にだって翼などありません。それは地上の宗教者がつくり出した考えです。彼らは、善い人間なら死んだとき天国に行けると考えていました。そして空を飛ぶ唯一の方法は鳥のような翼を持つことだと考えたのです」

彼は素晴らしいユーモアのセンスの持ち主でした。それで私は彼といると、とても落ち着きました。私は言いました。

「私がいつも通っていたパブに行きたいんですが」

「分かりました」

私は少し馬鹿げたことを言ったと思いました。なぜなら私が行きたいと言ったパブを彼が知っているはずがないからです。そして私はといえば肉体のない存在で、どのようにしてそこへ行ったらいいのか分からなかったからです。しかし彼は言いました。

「私にはあなたの考えていることが、すべて分かります。あなたは目を閉じてただ行きたい場所のことを考えればいいのです。そうするだけで私たちはそこにいるのです」

「それは素晴らしいことだ」と思いました。彼は私の方に手を差し出しました。前のように彼の手を握るのだと分かったので、そうしました。するとその瞬間、私たちはそのパブに立っていました。

地上の友人を訪問

そこにはかつての三人の飲み友だちがいました。私はその中の一人のそばに立ちました。私はさっき、妻に意識を集中して強く念じたことを思い出しました。彼はビールの入ったコップを口に持っていくところでした。私は彼の名前を念じました。すると突然、彼はコップをカウンターに落としました。明らかに彼は動揺していました。彼はまわりを見回しました。そして他の二人に言いました。

「おかしなことなんだが、自分は何か声を聞いたような気がするんだが。いや確かに声がした」

「何を聞いたんだ。声が聞こえるはずがないじゃないか。われわれには何も聞こえなかったが」

彼は、自分はどうかしていたんだと考えたようです。

「いや、何でもなかった」――他の二人は笑って、

「いったい、どうしたんだ。神経が過敏になっているんじゃないのか」と言いました。

しかし彼は確かに私の声を聞いたのです。それは私の思念によって引き起こされたのです。私が最初に知ったことは、こちらの世界では話をする必要がないということです。強く意識を集中するだけでいいのです。誰かと接触したいとか、何かをしたいと思ったときは、いつでも思念を使うのです。そうすれば、それが実現するのです。地上時代のように、わざわざ言葉を用いて話をする必要がないのです。以上が、私が最初にこちらの世界で学んだことです。

ハリーとガイド

一九五七年、「ハリー」と名乗るかつてのロンドンっ子が交霊会に出現した。彼は生前、パブへ行くことが唯一の楽しみであった。

「私は酒を飲むのが好きでした。楽しみといえば馴染みのパブに行って看板になるまでワイワイガヤガヤと過ごすことでした。そして私は死んでからも依然として“パブに行って酒を飲みたい”と思い続けていました」

声の様子からすると、彼は生前の自分の人生をかなり悔いているようであった。しかし死の直後には悩みを感じることはなかったようである。

(ハリー霊)

私は死んだとき、初めは酒を飲むこともしゃべることもできませんでした。しかしどういうわけか、いつの間にかパブの辺りをうろついて、昔からの友人を見たり、彼らの会話を聞いたり、酒を飲んでいる他の仲間たちを眺めて、ある種の満足感を覚えるようになりました。やがて私はそうしたことがつまらなくなり、これまでの地上人生でできなかったことを取り戻そう、やり直そうと決心しました。いろいろな所も見ておきたいと思い、旅行に出かけました。

私は気ままな旅行に出たものの、そのうちしゃべる相手もいない旅に飽き飽きしてしまいました。そして教会の日曜学校のことを思い出しました。「私たちは教会で、天国のことなど多くのことを教えられてきました。しかし私は決して幸福でもないし……

私は心の深いところから「もっと何かが欲しい!」という強い思いが湧いてきました。そのとき誰かが、私の後からついてくる気配を感じました。「いったい誰なのだろう?」私は辺りを見回しましたが誰もいません。

突然、次のような考えが心に浮かびました。「もし自分が、こんな退屈な状態から抜け出て静かな所に落ち着きたいと思うなら、たぶん誰かが助けにきてくれるのではないだろうか」――それで私は子供のときに行ったことのあるスフォルクを訪ねてみました。

【ハリー霊の声中断】

「それで」とウッズは話を促した。

「どうぞ続けてください」とグリーン女史が言った。

「あなたの話はとても興味深いです」

ハリーは続けて話し始めた。

スフォルクの小川の近くに木がありました。少年の頃、よくそこに座って白昼夢に浸ったものです。その木の下にしばらく座っていると、目の前に若い人が立っているのが分かりました。彼は二十歳そこそこに見えました。ウェーブのかかった金髪で、素晴らしい顔立ちをしてスーツを着ていました。その青年は私の前に立って私を見つめました。私も彼を見つめました。お互いに一言も話はしませんでした。

私は「これは幻覚だ、こんなことがあるわけがない」と思いました。彼も私も黙ったままでした。突然、彼の思いが私の心の中に入ってきました。どうしてそんなことが起こったのか今でも全く分かりません。私は、彼の言っていることを自分自身の心で聞き取ることができたのです。

「それはあなた次第ですよ」と彼は言いました。「あなた次第というのは、いったい何のことなのだろうか?」と思いました。そのときの私は催眠術にでもかけられたかのような状態でした。

私は立ち上がりました。すると彼は、ゆっくりと川の方に向かって歩き始めました。私は、「もし彼がこのまま行けば水の中に落ちてしまう!」と思いました。実際、川はすぐ向こうにあったのです。しかし彼はどんどん川の方へ近づいて行きました。私は彼の後について行きました。彼は水辺に着きました。

私は「もうこれ以上は進めない」と思いましたが、何と! 彼は水の上を歩いて渡り始めたのです。私はどうしてそんなことができるのか分かりませんでした。しかしそれを見たとき、昔日曜学校で聞いた、イエスが水の上を歩いて渡った話を思い出しました。しかしこの男性がイエスであるはずはありません。私は不安になり、先に進んだらいいのか、このまま後に戻ったらいいのか分からなくなりました。

しかし彼は水の上をどんどん進んで行きました。そして私は一種の夢を見ているような状態で彼の後について行きました。私は抵抗できませんでした。後に戻ることもできず、ただ彼に従うしかありませんでした。

突然、誰かが私を持ち上げたように感じました。何と私は空中に浮かび上がったのです。思わず私は目を閉じてしまいました。私は不安になり混乱してしまいました。ところがそれから、さらに何マイルも上昇し始めたのです。すべてのものがみるみる遠のいて行きました。家々の煙突や木立がどんどん小さくなり、突然、私たちは雲の上に出ました。すると飛行機が真っすぐ私たちの方に向かってくるのが見えました。私はびっくりしました!

しばらく私は彼と一緒に空を飛んで行きました。さらに高く上るにつれ、お互いの心が親密になっていくように感じられました。これはどのように説明したらいいのか分かりません。それから歌声が聞こえて、私は意識を失いました。

私は眠りから覚めました。私はとても素晴らしい部屋の中にいました。必ずしも派手ではないのですが清潔で心地よい部屋でした。素敵なベッド、シーツ、すべてが美しく新鮮で清潔でした。窓から光が射し込み、戸外で鳥のさえずる声が聞こえました。「ここは、いったいどこなのだろう?」私には全く分かりませんでした。まわりはシーンと静まり返っていました。

そのときドアが開きました。何と!そこに母がいたのです。

ハリーは幸運にも最愛の母親に会うことができたが、大半の人々もこれと同じような結果を迎えるようである。しかしこうした経験を、誰もがするというわけではない。

地上でごく普通の平凡な人生を送った人間にとっては、地上からあの世への旅は、郊外の自宅からオフィスへの毎朝の通勤よりも簡単な出来事のようである。

バッキンガム地域に住んでいた「ビッグス」は、その過程を一九六六年の交霊会でウッズとグリーンに実に詳しく述べている。

「ウッズさん」と彼は呼びかけ静かに語り始めた。

「はい」とウッズは答えた。

「これはいいことです」とその声は言った。

「グリーンさん、これは本当にいいことです。あなた方のなさっている仕事についてはこちらで聞いてきました。とても素晴らしいことです」

その声はかなり年配の人間のものであった。地上時代のビッグスは、たぶん田舎の技能者か商人であったと思われる。彼はほとんど正式な教育を受けていないであろうから、生まれつきの表現能力以外には何も特別な能力は身に付けていないはずである。

「私の声を録音しているのですか?」

「はい、そうです」

「それはいいことです。私はこちらの世界にいるいろいろな人々から、あなた方のことを聞いてきました。あなた方はテープに声を録音しているのですね」

「そうです」とグリーンが答えた。

「それを他の人たちが聞いて、死後に何が起きるのかを知るのですね。素晴らしいことです」

「そちらの世界でお話のできる人を紹介していただけますか?」

「私? 私は皆さん方のように話ができる人間ではありません」

「私たちに、あなたが他界したときの様子を教えていただけませんか?」

「ご存じのように私は死にました」

「あなたは死後、どのようにしてご自身に気がついたのですか? また死んだことを自覚したとき、どのような様子だったのか教えていただけませんか?」

ビッグスの混乱

(ビッグス霊)

はい、そのとき私はイスに座って、届いたばかりの新聞を読んでいました。私は少し変な感じがして、メガネをはずしテーブルの上に置きました。それからしばらく静かに考えごとをしていました。(実は、彼はこの直後に死んだのである――訳注)

時間がたちました。そのとき不思議なことが起きました。イスに座っている私の姿を、私自身が見ているのです。私はイスのそばに立って自分の姿を眺めていました。テーブルの上には新聞とメガネが見えました。「これは妙なことだ、変だ!」と思いました。私は何がなんだか分かりませんでした。

それから私は、誰かがドアをノックしているのに気がつきました。私は相変わらずイスに座っている自分自身を眺めながらそこに立っていました。まるで私がドアを叩く音を聞いているようでした。私は部屋の中にいたにもかかわらず、誰がノックしているのかが見えました。それは私の妹でした。彼女は道路に沿って数軒先に住んでいました。

私はドアを開けようとしましたが、どうしてもできませんでした。「どうしよう、ドアが開けられない!」

私はひどく混乱してしまいました。ノックは続きました。私は焦りました。私は夢を見ているんだと思い、「早く目を覚まして妹にドアを開けてやらなければ……」と考えました。しかし、どうしてもドアを開けることができませんでした。それから彼女が道を慌てて駆けていくのが見えました。彼女は明らかに動転していました。「いったい、これはどうなっているんだ!」と思いました。

数分後、彼女は警察官を連れて戻ってきました。「どうして彼女は警察官など連れてきたのだろう?」突然、私は状況が分かり始めました。もちろん彼女は家の中に入ることはできません。たぶん彼女は私のことを心配して動転したに違いありません。しかし私には、どうすることもできませんでした。私はイスのそばに立っていることしかできませんでした。

こんなことを言うと馬鹿げて聞こえるでしょうが、もし彼女が部屋に入ってイスに座り込んでいる私を見たら、きっと怖がるだろうと思いました。私は必死に目を覚まそうとしましたが、どうしようもありませんでした。「自分はいったい、何をしたらいいのだろう?」と考えました。

そのうち警察官が窓から部屋に入ってきました。私は彼を知っていました。彼はこの管轄区域の警察官で何度も会ったことがあります。彼は部屋に入るなり私の体に刺激を与えました。私が寝ているとでも思ったようです。しかし私の身体は何の反応もしませんでした。彼は私が死んでいることに気がつき、ドアを開けました。もちろん妹は、すぐ部屋に入ってきました。

彼女はかなり動揺していました。彼らはすぐ医者を呼びに行きました。やがて年老いた医者がきましたが、彼には、なすすべがありませんでした。それは当然です。私は自分が死んだことが、はっきりと分かりました。私は妹の動揺を静めようとしましたが、彼女は私のことには全く気がつかないまま、そこにしゃがみ込んでしまいました。医者が部屋から出て行き、数人の男が入ってきて私の死体を運び出そうとしました。彼らは私の死体を、まるでジャガ芋の入った袋か何かのようにドスンと下に置きました。

「彼らの後について行くのはやめよう。私はこのまま家にいよう。今は誰も座っていないイスに座っている方がましだ」と思いました。それで私はイスに座り、いろいろ考えました。やがて妹は家から出て行って、私は一人部屋に残されました。

出迎えにきた母

突然、暖炉と壁が私の目の前から消えました。そのときの状況は、私にはこのようにしか説明できません。そして暖炉と壁があった所に美しい野原や木や川が現れました。そのうち何かが遠くの方から近づいてきました。最初、私はそれが何なのか分かりませんでしたが、やがて人間であることが分かりました。何と! それは母でした。昔、部屋の壁に、母の最初の結婚のときの肖像画が掛けられていましたが、そのとき私の目の前に現れた母は、その肖像画のような若い姿をしていました。彼女は幸せそのもののように満面に笑みを浮かべて私の所へ近づいてきました。

「さあ、行きましょう」と母は言いました。

「あなたはここにとどまっていてはいけません。ここにいつまでも座っているのはよくありません。誰もあなたには気がつきませんよ。妹も気がつきません。さあ、私と一緒に行きましょう」

「私には何がなんだか分かりません」

「あなたはすでに死んだのです。ここでいつまでも古いイスに座り込んでいてはいけません」

それから母は、私が今後、進むべき道について語り始めました。

私は何年間か一人暮らしをしてきました。私の飼っていた犬は死んでしまいました。しかし私は新しい犬を飼おうとは思いませんでした。私は新しい犬を最後まで世話をするほど長生きできないことを知っていましたし、もし私が死んだらかわいそうなことになると思ったからです。

「こちらにきなさい。ミックがいますよ」

「ミック!」それは本当に私が以前、飼っていた犬でした。

「ミックですよ。私たちは、あなたのためにミックの世話をしてきたんですよ」

「私はずっとミックに会いたいと思ってきました」

それから母と私は歩き始めました。

こうしてビッグスは、この世からあの世へと旅立ったのである。