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3.霊媒フリントとグリーン女史

霊媒のタイプ

死者からの通信は、今日でも疑いの目で見られることが多い。死によってすべてが終わると考える人々は、そうした現象を詐欺(さぎ)かトリックであると決めつける。また一般的なクリスチャンは、それを悪魔の仕業と考えている。

一方、心霊研究家は、死者からの通信は詐欺でもトリックでも悪魔の仕業でもなく、真実、死者からのものであるとの確信を持っている。そしてその通信が、どのようにして送られてくるかによって通信自体の価値を判断しているのである。また彼らは霊媒を二つのタイプに分けている。すなわち「心霊的霊媒」と「物理的霊媒」である。

心霊的霊媒は一般的によく見られるタイプである。彼らは、透視能力(千里眼)や霊視能力(一般人には見えない霊的なものを見る能力)や霊聴能力(一般人には聞こえない霊の声を聞く能力)を用いて、死者との交信をする霊媒のことである。エナ・トゥイッグのように際立った能力を発揮する霊媒は、こうした能力を複数組み合わせて用いていることが多い。

霊媒は、交霊会の参加者が見たり聞いたりすることのできない霊の姿や通信を知ることができるが、それをいったん翻訳して、自分の声によって地上の人々にその内容を伝えるのである。そのためメッセージの信憑性は、ひとえに霊媒の翻訳能力に左右されることになる。

もう一方の物理的霊媒は、その数がきわめて限られている。物理的霊媒による死者との交信では、前述した心霊的霊媒のような、本人自身による通訳のプロセスは不要である。このタイプの霊媒は、霊の姿を見たり霊の声を聞いたりすることはない。霊媒に要求されることは、自分自身をできるだけ受け身的状況において、素早く“トランス状態”(半眠りの状態)に入って行くことである。

しかし彼のなすべきことはそれだけではない。もっと重要なことがある。それは“エクトプラズム”と呼ばれる特殊な物質を提供することである(このエクトプラズムは、一般の人間の身体にもある程度存在している――訳注)

直接談話の交霊会時に撮影された赤外線フィルムには、霊媒から(そしてわずかであるが出席者からも)流出したエクトプラズムのコードが写っている。そしてエクトプラズムは霊媒の頭上、二〜三フィートの所で、もやの球のようなものをつくり出す。これは“ボイスボックス”と呼ばれたり、人間の発声器官の“レプリカ”(模擬声帯)と言われている。

通信霊は自分の考えを地上の低いバイブレーションにして、このボックスに流し込む。現代科学では考えられないようなこうした不思議なプロセスによって通信霊は、かつて自分が地上で用いていた声にきわめて近い音声をつくり出すことができるのである。

以上は、ボイスボックスを実際に使用する霊によるメカニズムの説明であるが、現実にそれを用いて地上にいるわれわれと話をするということは、たいへんな困難がともなうようである。

テープレコーダーによる交霊会の記録

一九四五年、ジョージ・ウッズが物理霊媒フリントと直接談話による霊との交信を始める以前は、その種の交信方法はほとんど見られなかった。また交霊会の記録は、参加者の記憶や暗闇の中で書き取られたメモに頼っていた。だがそうした形での記録は、内容自体が疑わしいとか、作り話で信頼できないものとして取り扱われがちであった。

しかし戦争が終わって決定的な変化が訪れた。それは持ち運びのできる小型テープレコーダーが発明されたことである。ウッズは最新型のテープレコーダーを手に入れ、それを交霊会に持って行くようにした。

これによって初めて、霊の語るすべての声を、そっくりそのまま記録し、それを関心のある人たちに聞かせることができるようになったのである。交霊会に参加できない人でも、まるでその場にいるかのように、霊媒の話を鮮明に聞くことができるようになったのである。

霊媒フリント

フリントはすでに人生の盛りにさしかかっていた。しかし外部のスピリチュアル・サークルには、彼の存在はほとんど知られていなかった。彼が『暗闇の中の声』という自叙伝を出すに至って、初めてその存在が世に知られるようになったのである。その本の中には、とても不思議でほとんど信じがたいような彼の少年時代の話が載っている。

フリントは救世軍の家庭で生まれたが、両親は不仲で彼が子供のときに別れている。そのため彼は貧困の中で育った。フリントには、幼少の頃から「死者の姿を見る」という特別な能力があったため、他の子供たちが怖がって彼に近づこうとはしなかった。

成人して職を転々と渡り歩いた後、スピリチュアリストのグループと係わりを持つようになり、ここで彼の特殊な能力が発見されるのである。そして報酬を得ながら、交霊会で「直接談話霊媒」として仕事をするようになったのである。

依頼者はますます多くなっていった。三十歳代の終わりになって彼の評判が広まるにつれ、有名人が彼の小さな家(最初それはセント・アルバンズにあったが、その後ロンドン北部郊外に移った)に足を運ぶようになった。

当時ドレイトン・トーマスと彼の牧師仲間は、一般のキリスト教会とは異なる考え方をしていた。彼らは、心霊研究をキリスト教会の中に取り入れようとしていたのである。そしてフリントによって語られるあの世からのメッセージを通して、キリストの言った永遠の生命・不死の生命に至る道が明らかにされると期待していたのである。

フリント自身の語ったところでは、ビクトリア女王が現れて、いまだ地上で生活している末娘ルイズ王女にメッセージを送ったということである。またルドルフ・バレンチノがベアトリス・リリーに語りかけたり、空軍元帥ドゥディング卿が司会を務める公の会合でレスリー・ハワードが人々に語りかけたり、マエ・ウェストがあの世にいる母親と、サボイ・ホテルの一室で話をしたということである。

新聞は交霊会に懐疑的であり、これらの出来事を公表しなかったため、一般人には知られずじまいであった。

ベッティー・グリーン女史との出会い

当時、ウッズは彼自身のサークルを始めたところであった。ウッズは他の一般の人々とは違っていた。あるとき彼は、汽車でクロイドンからロンドンへ向かっていた。その途中、無性に何かを書きたいような衝動にかられた。それはほとんど抗しがたいほどの衝動であった。

鉛筆と紙を用意すると、彼の手は目に見えない何者かの力によって支配され、猛然と文字を書き始めた。あまりにも早く手が動くので、彼はすっかり疲れ果ててしまった。それが止まってから、書いたものを見ると、そこには死後の世界についての哲学的な内容が記されていた。ウッズ自身が、実は心霊能力の持ち主だったのである。

彼はクロイドンへ戻って他の交霊会に参加した。そのとき「マイケル・フェアロン」と名乗る男性の霊の声が語りかけてきた。そして「自分は戦争前にはタウントン学校で生物学の教師をしていたが、一九四四年のノルマンディーの戦闘で戦死した。それはノルマンディー上陸後、二週間目のことであった」ということを告げたのである。

その通信の内容は簡単に確認できた。ウッズはフェアロンの母親を捜し出し、フリントの所へ連れて行った。再びフェアロンの声がした。母親はその声は間違いなく息子のものだと証言した。

フェアロンが引き下がって、別の声に代わった。今度は女性の声であった。彼女は自分は「パトリック・チャンベル」といい、エドワード時代の女優であったと言った。チャンベルはウッズに次のように語った。

「まもなく、あなたは一人の女性と出会うことになるでしょう。その女性はあなたとともに心霊研究に携わるようになり、あなたの録音テープを世に広める手助けをしてくれるでしょう」

そのときは、ウッズはチャンベル霊のメッセージを、単なる一つの通信程度にしか考えていなかった。手相見の言っていることぐらいにしか考えず、適当に記録に残しておいた。そして毎週日曜日、自宅で開いている“スピリチュアル・サークル”の活動に熱中していた。

そのサークルではフリントの交霊会で録音したテープを聞き、それについて議論をするということをしていたが、次第に人々が集まり始めていた。年月が過ぎ、彼は以前チャンベル霊が語ったメッセージのことなど、ほとんど忘れていた。

一九五三年六月のある日、一人の女性がウッズの所に電話をかけてきた。その電話は、彼が広告に載せたクロイドンのバークレイ通りの貸部屋についての問い合わせであった。しかしその部屋は、ほんの少し前に他の人に貸したところだった。ウッズは彼女の気持ちに配慮して、ひと通り彼女に部屋を見せ名前と住所を聞いておいた。そして、もしその部屋が空いたら彼女に連絡すると約束した。

彼女は「ベッティー・グリーン」という名前であった。彼女の父親はクロイドン銀行の事務員で、教会のオルガン演奏者であった。退職してからはポルペッロの漁村に住んでいた。彼女は一度結婚したものの離婚して、セント・ジョーンズ病院で秘書として働き生計を立てていた。

八月の公休日、彼女はバークレイ通りを新聞店に向かって歩いていた。ちょうどそのときウッズは庭仕事をしていたが、彼女を見かけて声をかけた。彼はグリーンに部屋のことを聞いてみた。「まだあの部屋に興味がありますか?」――二週間後、彼女はそこに引っ越してきた。

家主と間借り人はすぐに仲良しになった。彼は彼女に心霊関係の本を貸したり、フリントの交霊会のテープを聞かせたりした。彼女は、マイケル・フェアロンやローズと呼ばれるロンドンっ子や、アメリカ訛りのあるライオネル・バリモアと名乗る声のテープに驚いて聞き入った。

十月まで、ウッズはあの世の霊たちが霊媒を通して語るテープをグリーンに聞かせ続けてきたが、彼女にはもう次のステップに進む用意ができたと判断した。そしてウッズは、グリーンをロンドンの交霊会に連れて行った。

照明が消された。参加者はしばらく暗闇の中で待っていた。女性の声が沈黙を破った。

「こんばんは」その声は挨拶をした。

「こんばんは」参加者はいっせいに挨拶をした。

「皆さんお元気ですか」

ベッティー・グリーンはその声が、バークレイ通りで何度も聞いたテープと同じロンドン訛りのあることに気がついた。そして、

「ローズさんですか?」と尋ねた。

「そうです」とその声は答えた。

それはかつてのロンドンの少女ローズだった。彼女は生前、チャーリング・クロス駅の広場で花を売って何とかその日暮らしをしていた。

グリーンの矢継ぎ早の質問に促されて、ローズはあの世の生活について語り始めた。彼女は一瞬の滞りやためらいもなく、あの世の町や村の様子、またそこでの生活、衣服や仕事、さらには地上とあの世の関係などを語った。

その内容は、ウッズがかつて探し求めてきた死後の世界の実在証明以上の意味を持っていた。そして交霊会の参加者の誰もがこれまで明確に知ることのできなかった、あの世における日常生活のなまなましい「現地報告」でもあった。この出来事はウッズにとって、心霊研究のさらなる飛躍のための転機になったのである。

それ以来、ベッティー・グリーンは交霊会にとってなくてはならない存在となった。

重大な使命

それから二年後――一九五五年に、彼らに対する“重大な使命”があの世から示された。その日の交霊会にはローズとは別の女性が現れた。彼女は豊かで深みのある、威厳あふれる声をしていた。そして自分を「デイム・エレン・テリー」と名乗った。彼女はエドワード時代の女優で、一九二八年に他界したということである。

ウッズはあの世に関する新しい情報が語られるのを期待しながら、テープレコーダーのスイッチを入れた。しかしエレン・テリーはそういう話はせず、その代わり、彼らの今後の人生に対する目標を語り始めた。

(エレン・テリー霊)

「あなた方は、これからきわめて重要なこちらの世界との交わりをするようになるでしょう。皆さん方は、この交霊会を今後も定期的に続け、さらに力を高め、霊の世界とのつながりを強化してください。こちらの世界には、このチャンスを最大限に利用したいと願う多くの霊たちが集っています。そしてさまざまなメッセージや、二つの世界間の通信の仕組みについての情報を与えようとしております。

私たちは、心から喜んで私たちの手助けをしてくれる地上人を必要としています。誠心誠意、私たちのために自分たちの時間を提供してくれる地上人を必要としています。あなた方の録音するテープは、私たちが地上のあらゆる人々にメッセージを届けるチャンスを与えてくれます。

私たちは、こちらのさまざまな世界(界層)から、いろいろな霊をこの場に連れてきて話をさせましょう。あなた方は私たちにとって、とても大切な存在です。私たち全員が、あなた方の誠意を知っています。そしてあなた方を通じて、私たちは重大な仕事を成し遂げることができることも知っています。

ですからあなた方には、今後も定期的にこの交霊会を開いていただきたいのです。とても“重大な使命”が、この交霊会にかかっています。私たちは皆さん方に、ぜひともこの交霊会を続けていただきたいのです。絶対にやめないでいただきたいのです」

これはウッズには断ることのできない命令と同様であった。彼は六十一歳になっていた。しかし彼の“ライフワーク”は、今まさに始まろうとしていたのである。

それから五年間、一カ月に一度の割合で日曜日に、交霊会を持つようになった。その日には、ウッズとグリーンはテープレコーダーを抱え汽車に乗ってイースト・クロイドンからビクトリアに行き、それからバスでパディングトンに向かうのである。そして十一時から始まる交霊会に遅れずに参加したのである。

フリントが、日曜日には(霊媒の)仕事はしたくないと言ったとき、グリーンはそれまでの自分の仕事を替え、月曜日に休日を取るようにした。そのため二週間に一回のペースで交霊会に参加できるようになった。

交霊会の前夜は、二人は静かにテレビを見る程度で、日頃の煩わしさを心から取り除くようにした。汽車の中でも本は読まず、心の中の雑念を拭い去るように努めた。フリントの家に着くと飼い犬が喜んで出迎えてくれる。そして二人は真っすぐ交霊会の部屋に向かうのである。

そこにはフリントの座るイスがあり、その上の帽子かけにはマイクが取り付けられている。そのマイクはテーブルの上に置かれたテープレコーダーに接続されている。またウッズが特別にこしらえた三面衝立がテープレコーダーのまわりに置かれている。それはフリントを薄暗い光から守るためのものである。

フリントが席に座り、初めにその日の年月日と霊媒の名前、参加者の名前がテープに吹き込まれ、ライトが消される。それから彼らは暗闇の中で次に起きる出来事を待つのである。声が聞こえ始めると、グリーンはテープレコーダーのスイッチを入れ録音を開始する。そして地上と霊界(あの世)のやり取りが終わるまで、録音が続けられるのである。

霊界側に「ミッキー」というフリントの守護霊が控えている。彼は地上時代にはロンドンで新聞売りをしていたが車に轢(ひ)かれて死んだのである。交霊会はこのミッキーが、「フリントとウッズから引き出すエネルギーがなくなりかけてもう通信ができない」と言うまで続けられるのである。

声が聞こえなくなって数分間、彼らは暗闇の中にじっとする。それからライトがつけられる。交霊会の後はフリントは疲れ果てたようになっている。ウッズもエネルギーを使い果たしたようになっている。グリーンだけが、霊的体質者でないため交霊会の影響を受けないようである。ウッズとグリーンはテープを取り出し、テープレコーダーをしまい、フリントに謝礼を渡して家を出るのである。

こうしてまた新しい貴重なテープが一つ、ウッズの書斎に加わることになるのである。

五百本もの録音テープ

その後、フリントの病気のために時々しか交霊会は持てなくなったが、十五年間にわたってためられた録音テープは五百にも達していた。そのテープには、この世からあの世へ赴くときの体験や、人々が天国と呼ぶ死後の世界でどのような生活が営まれているかが、実に生き生きと、そして首尾一貫して矛盾なく述べられているのである。テープの声は、主に今世紀(二十世紀)ないし前世紀(十九世紀)に地上生活を送っていた者たちからのものである。

その中には「アルフ・プリチェット」のような、ごくごく平凡な人間もいる。彼らは死の直後には、いまだ地上で生きているものと思い続け、目の前に展開するあの世の生活に満足していることが多いのである。

「死の直後、彼らにはどんなことが起こったのか?」

「彼らはそこで誰と出会ったのか?」

「それからどこへ連れて行かれたのか?」

「彼らの新しい世界での住まいや庭は? 町や田舎は? 天気は?」

「彼らは食事をするのか? 何か飲むのか?」

「寝るのか? どんな洋服を着るのか?」

「どんな仕事をするのか?」

「動物やペットはどうなるのか?」

「あの世の人々が地上に戻って、私たち地上人に話しかけることが、どうしてそんなに難しいのか?」

こうした質問に、あの世からのメッセージは明快に答えてくれるのである。

一方、プリチェットとは違って、地上時代に名声と成功を手にしていた人々からのメッセージもある。死後の世界に赴いたとき、初めは彼らも驚き戸惑った。地上での先入観や常識など全く通用しない新しい世界で彼らは、どのようにして自分の考え方を変えていったのであろうか?

「ライオネル・バリモア」や「エレン・テリー」のような俳優、「オスカー・ワイルド」や「ルパート・ブルーク」のような作家は、あの世に行ってからどのようにして創造力を伸ばしたのであろうか? また「シェークスピア」や「バーナード・ショウ」のような人々は、今、何をしているのであろうか? あの世からのメッセージは、こうした問題についても回答を与えてくれている。

また、かつてのカンタベリーの大主教であった「コスモ・ゴードン・ラング」のような神学者で精神的指導者、そしてインドの聖人と言われた「マハトマ・ガンジー」のような人物も交霊会に現れた。彼らは、これまでの宗教における間違ったドグマから真理を取り戻すために帰ってきたのである。永遠不変の宇宙の自然法則を示すことによって、地上人類から肉体の死の恐怖を取り除こうとしたのである。そして私たち人類が長年求め続けてきた疑問のいくつかに、明確な回答を与えてくれたのである。