東宝模型工業株式会社
茨城県古河市下山三丁目

東宝模型は当時すでに集中化がみられた東京・静岡というプラスチックモデルメーカーの2大聖地ではなく
茨城県にその所在地があった。
設立が60年代前半といわれているようであるが、個人的には確認が出来ていない。ただ、64年の
プラモ見本市に参加していた記録があるので、それ以前に設立されていたことは確かだ。
企業イメージからすると当時一大ブームとなったスロット関係・ホームサーキット、いくつかの建築模型などが
思い浮かばれるが、我々が想像するより多岐にわたりプラスチックモデルを世に送りだしていたようである。

そんな中ではあるが、 東宝模型 というと 東京タワー これではないだろうか。
ベンツ 1/32
箱隅に TOHO の凸形のロゴマークがある
上面蓋はクリアーで、箱絵が見えるようになっている
モデル本体はどうというレベルの
物ではないが、パッケージが変って
いる。

パッケージ自体がALLプラスチック製
である。

プラスチックケースというとマルサンの
HO 戦車シリーズを思い出しますが
こちらはそれよりかなり大型のもの
です。

プラスチックモデルですからプラス
チックケースというのは、当然の発想
のようにも思えますが、もちろん主流
にはなりえませんでした。

でも組立て後、パーツ入れや文具
ケースにでも使用できるので案外便利
だったのかも知れない。
マルサン
HO 戦車
シリーズ

競馬ゲーム
 組立説明書 + 遊び方
 60年代当時はむろんTVゲームもPCなどもない時代であったが、野球盤・ボードゲームなど
アナログゲームは数々あった。
家庭内のゲームの他にゲームセンターなどもすでに存在し、大きな競馬ゲーム機などもあり
お遊びではあるが、ささやかなギャンブル雰囲気を味わえ人気があった。

おそらくその家庭版といったところのゲームで、東宝はそれを組立て式のプラスチックモデル
として発売した物であろう。
これらゲーム類は完成品で販売しているのが一般的であった。

 USS FORRESTAL 
当時多くの模型メーカーは輸出にも力を入れていた。

東宝模型もその例外ではなく、このホーレスタルもその一つである。


2色成形ではなく後から塗装された物である。

東宝模型の輸出版

空母

ホーレスタル



外箱は英語であるが

インストはなぜか

日本語のままである
東宝模型工業はその設立が60年代前半位
といわれはっきりしていない。

左の接着剤を見ていただきたい。
これはこのホーレスタル付属の物であるが
このアンプル形式による接着剤は、日本の
模型史からいうと59年代〜60年代初期に
存在していた物で最初期のモデルにしか
使用されていないのが一般的ある。

おそらくは、使い勝手・コストなどの面から
チューブ式または安価なモデルには三角形
のビニール形式のものに取って替わられた
のであろう。

この事実からすると東宝模型の設立は予想
よりもっと早い時期であったのかも知れない。

ノーベルの電池も懐かしいですね。

 フリーゲート 7 
 科学空想モデル

 ジェット水中翼低  水中を快速で走る という事だそうです。

 東京タワー 
 東宝模型が展開していた主な分野に建築模型がある。
フジミや相原などと違い国宝・神社仏閣・城などではなく、東宝は最新の(むろん60年代)の有名建築物をその
テーマとしていた。
東京タワー・霞ヶ関ビル・ゴールデンブリッジなどである。 当時ハトバスの都内周遊ツアーにはこのどちらかが
必ず入っていた。
東京タワーは世界で一番のテレビ塔・霞ヶ関ビルは日本初の高層ビルディングとして、国民誰もが胸を張って
世界に自慢でき戦後日本のプライドを最初に取り戻させてくれた記念すべき建築物であったと思います。
文化財的な建物ではなく最新のこれらをモデル化しようという着眼点は素晴らしいといえるのではないでしょうか。

 ”東京タワーのプラスチックモデル” といえば、 今も昔も東宝模型のことである。
”東宝の東京タワー” はオリジナルなのだろうか?
東宝模型の代表作 東京タワー。 60年代に発売され東宝亡き後もいろいろなメーカーに引き継がれ
今なお現役という超ロングセラー、シーラカンスである。

対象となった東京タワー自体が60年代ほどではないにしろ、今でも日本人にとって特別の意義をもって
いる。40年代以上の方々にとってはなお更であろう。
ただ、その割りにプラスチックモデルの時代に入っての発売が、ソリッド当時に比べ格段に少ないのは
残念であるが、東宝模型消滅後もその命脈を保っていてくれている事は嬉しいことである。

東京タワー = 東宝模型 の構図は今や完全に確立された定説となっている。
 <東京タワーの構成>

スケール的には 1/500 と 1/1000 の2種類が
あったといわれている。
現在も発売されているのは1/500のみ。

1/500には3種類のカラーバリエーションとデラックス版
とが存在していたようだ。

 ・赤クリアー (メーカーはエンヂとよんでいる)
 ・クリアー
 ・ゴールドメタリック (箱には 金色) 
 ・デラックスタイプ
 
1/500だと 元が333Mあるので、66.6Cm台座を含める
ると70CM近くの高さがあり堂々としたモデルだ。
電飾用に1つのランプが付属されていた。組み立て終へ
その日の夜暗い部屋で光を灯す・・・・、世界一のこの電波塔が
目の前で薄っすらと浮かび上がった様に、どれほど多くの子供達
がいいしれぬ感動を覚えたのであろう。

デラックスタイプはランプが10個はどに増やされ、よりゴージャスな
雰囲気を演出していたようです。
エンヂ 側面
ゴ|ルド
エンヂ
謎のメーカー
不二化学株式会社
不二科学
今井科学
ここに不二科学株式会社なるメーカーの、東京タワーのプラスチックモデルがある。
不二科学についての情報はほとんどない。
ソリッドモデルでも東京タワーは何社からも発売されていて、不二科学なるメーカーがそれをプラスチック化
して発売したとしても別段不思議ではない。
パッケージは明らかにソリッドの影響を受けているのが見て取れ、このような薄での箱はプラスチックモデル
時代に入って次第に姿を消していった。
箱の写真(らしき物)も色ズレが発生し、東宝のすっきりとしたものと比べると格段に見劣りする。

これだけをとっても、不二の東京タワーは東宝のそれよりも初期段階に発売されたのではないかと想像される。
同じテーマのプラスチックモデルを何社もが同時に発売するという事は珍しいわけでもなく、不二なるメーカー
の方が多少早く発売したのであろう、程度で済むところであったのだが・・・・・。

実は、ここで話が終わらなかったのである。

両社の箱を開けて比較してみて驚いた。 もともと333Mと大きさが確定している東京タワーである。スケール
さえ同じであれば、ほとんど同一なものであったとしてもさほど不思議ではない。

そこで2つを比べてみると、分割・展開までまったく同じ物であることがわかった。
この2つは間違いなく同じ金型によって成型されたプラスチックモデルであったのだ。

東宝模型の代表作といわれている 東京タワー。
不二科学なる会社が後に金型を譲り受け、再販した物だとばかり考えていたが チョット微妙になってきた。

はたして、どちらがオリジナルなんだろうか?
上が 東宝模型  下は 不二科学 のもの
電飾用の組図・・・・・不二にはこの設定がない
すっきりとした東宝版に対し、不二の方はソリッドに近い
少し詳しく見ていくと、どうやら不二科学の方が先に製作されたのではという可能性がみえてくる。

1) 箱の形態 (東宝のそれが初版・または初版と同じ形状のものという前提条件が成り立つ場合)

2) 組立説明図の違い
 東宝・不二とも社名の違い以外はまったくといっていいほど同じである。
 
 右上が東宝版・下が不二科学版であるのだが、厳密にいうと以下の違いがある。

  A) 説明図と明示された黒抜き部 

    ・東宝版には縮尺1/500という表示があるが、不二版にはない。
    ・東宝版 ”東京タワー プラスチック組立模型” に対し
     不二版 ”東京タワー プラスチックス組立模型” となっている。
       一般的にプスチックスという言葉を使用するのはかなり初期の
       プラスチックモデルの場合が多い。


  B) 組立指示の違い

     両社の組立方法は基本的に同じである。

      ただ、唯一の異なる点は
      B 展望台の中間の板に
         東宝版・・・・・@を接着する
         不二版・・・・・@及びAを接着する

      この点くらいであるのだが、これはどういうことかという
      と不二はタワーの真ん中を貫くエレベーターを頂上付近
      まで、まず最初に接着してしまいなさい、という指示です。
      一方の東宝はエレベーターは展望台までにして、
      基礎部の鉄骨をそれに組付け後、上部エレベーター部を
      組付けなさい、という指示なのです。

      どちらが合理的かというと、文句なく東宝の方です。
      全長が70CMにも及ぶ細いエレベーター部を単独で
      組上げるなど、瞬間接着剤などなかった時代困難を
      極めたことだろう。

      多分、組図通りでは組づらなどの苦情があり、東宝から
      発売の際に変更したのではないのだろうか。
      

    C) [注意事項] の違い

     説明図の下半分に [注意事項] の欄がある。

      接着剤使用に関しての注意事項なのであるが、
      不二版には
       @ なめたりせぬ事。
       A ねん着力はありませんから・・・・・・

      などと本当に基本的なことから書き出されている。東宝版にはない。

       つまり不二版の@Aを省略した形で抜粋されている。東宝版が発売された頃には
       接着剤を舐めようとする者などいなくなっていたということなのでしょう。
      
東宝模型版
不二科学版
不二版
東宝版
不二
東宝
3) 一部パーツの違い

 両社の成型は基本的には同じであるが、東宝のものは電飾の為エレーベータ−部の
 大きさが一回り大きい。金型を譲ってもらった不二が電飾を廃止したとしても、ことさら
 この部分を新たな金型を起こし小さくする意味はない。
以上の点から判断すると、現状のモデルをみる限りでは明らかに不二科学株式会社の ”東京タワー” の方が

東宝模型のそれより早い時期に発売されていたと判断できるのではないだろうか。

無論、東宝の更に古いバージョンが見つかれば、話は別なのだが。
書き込みが終了した後、、ふと気付いた。

東宝の組説の裏面が多分輸出も視野に入れていたのだろう

英語版の Explanation があった。

B Paste @ and A とあるではないか。

日本語版は修正してあるが、英語版の方は原文をそのまま訳して

しまった物と思われる。

やはり原文は 不二科学版のものであった。

ちなみに 東宝・不二科学とも所在地は 茨城県古河市 である。