島野製作所はもっとも早く艦艇モデルを市場に送り出した会社の一つでした。
ただ残念ですが一般的にはほとんど知られず、歴史の中に埋もれ消え去る運命にある会社でもあります。
せめて、ここにだけでも記録を残したい。
その後の、活動についてはほとんど分かっていません。
このことををテーマにするとき、艦艇モデルというジャンルの確認をしておかなければならないが、今回はあまり厳密な探求で
はないことを、先にお断りしておきたい。
”船” というのだから、海・川・湖 で活動とする船舶全てが対象となるのだろうが、これではあまりに広範囲となってしまう。
大戦艦からスポーツボートはては座敷舟に至るまで、プラスチックモデルは発売されてきた。
スケールもこれまたさまざまで、日本模型の1/200大和のように1Mを超える大作から、幼稚園児向けのオモチャモデルまで
千差万別である。
一般論はともかく、ここでは駆逐艦クラス以上のプラスチックモデルをその範囲としたい。
ただ、潜水艦も軍艦であり ご承知の通り模型史からいうとプラスチックモデルに参入する多くの初期メーカーが、その最初の
作品にこの潜水艦モデルを選んだという事実がある。
”日本最初のプラスチックモデルは?” にも通じるテーマであり、少しだけふれたい。
<艦艇モデルのパイオニアたち> ・・・・・・・ それは潜水艦モデルだった
このテーマをとことん追求することは、かなり困難な作業であろう。
プララスチックモデルが登場した1958年後半、参入メーカーは大方金型製作が容易である潜水艦やモーターボートを手がけている。
しかし、市場が求めていたのはプラスチックという素材を最大限に生かせる ”飛行機モデル” であった。 また、当時一般的にいうと
模型=飛行機 という時代でもあった。 熟練した技能を持った一部の人以外は、この分野に関してはソリッドモデルよりプラスチック
の方が圧倒的に精密なもの、そして見栄えのいいものが容易に完成できるのである。
58年・59年に発売されたプラスチックモデルは、この飛行機モデルが他を圧倒していた。
自動車モデル・戦車モデル そうして艦艇モデルは、その後を追随するかたちで市場に浸透していく。
特に艦艇モデルに関しては対象物自体が巨大な為、製作者が求めるものにその大きさというものが重要な要素となっていた。
この問題にはソリッドモデルは十分に対応し、田宮模型やにしき屋からは1Mオーバーの超大型モデルも存在していた。
だが、プラスチックモデルでこれらと同スケールを再現することは大変な作業である。
1959年にはすでに一部メーカーから発売があったようであるが、本格的に艦艇モデルが各社から発売されるのは1960年以降の
事となる。
ここでは、この艦艇モデル元年ともいうべき1960年中期 4月・5月の発売モデルについて少し触れてみたい。
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<田宮模型 重巡洋艦 愛宕>
セミプラスチックモデルと呼ばれる、船体がプラスチック製
でその他パーツが木製というもの。
モデル自体の不具合とオールプラスチック製のモデルが
発売されるにいたり、短命に終わった。
他社ではあるが、船体が木製・上部構造物がプラスチック
製という逆の発想の製品も発売されていた。
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<日本模型 戦艦 武蔵 1/750>
伊号潜水艦でメガヒットを記録した日本模型が発売した
1/750スケール・マブチNO15モーター使用・2スクリュー・
防侵装置つきという本格的なもの。
さらに吃水線から下が赤色成型されており、塗装がまだ一
般的ではなかった当時コンセプトの面でも他社を一歩リード
していた。 飾り台も付属していた。
(画像のボックスは再販品と思われる) |
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< 島野製作所 戦艦 大和 >
島野製作所から大和・武蔵が発売させたが、現物の確認
はできていない。 小型モデルだったようだ。 |
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<田宮模型 戦 艦 大和 1/800 >
すでに木製艦艇模型メーカーとして地位を確立していた、田宮
模型最初のオールプラスチックモデル。
紆余曲折はあったが、タミヤの原点ともいえるモデル。 |
<日本模型 戦 艦 大和 1/750>
4月に発売された武蔵の大和版。 金型はもちろん同じ物である。
同時期に発売された両社大和は、当然市場でバッティングする
事となる。 |
戦 艦
1/750
モーターライズではあるが、特徴的な
浮き輪形の飾り台がが付属している。
島野製作所の1/750 戦艦 陸奥
どんなラインナップがそろえられていたかは不明であるが、
おそらくは島野では最大級のモデルだったと思われる。
成型・組説等初期のプラスチックモデルの特長が見て取れる。
オールプラスチック製
<ケース付 コレクション
モデル>
箱側面
あまり実態がつかめていない島野製作所のモデルにあって、シリーズ化が確認されている
ケース付コレクション・シリーズ。
模型本体は小スケールのものだが、何といってもこのシリーズの特長は美しいケースにある。
当時としては贅を尽くしたモデルだったことであろう。 オリジナリティーあふれた楽しいシリーズだ。
箱絵も愁いをおび美しい。 扶桑・陸奥・榛名 が確認されている。
上が 扶桑 ・下が 陸奥 小さなモデルではあるが
別成型であることが分かる。
このコレクションシリーズには、後に発売されたと思われる廉価版が存在する。
このシリーズ最大の特徴ともいえる、ケースと飾り台を省いたもので単なる子供向け
艦艇モデルとなってしまっている。
オールプラスチック製
モーターファン 9センチ
シマノ モーターファンの浮彫り
島野製作所の扇風機模型
TKK15・単三電池2本使用。
扇風機のモデルとしては最初期のモノで、
後に発売されるこれらのモデルは大方
日立・サンヨーなどメーカー発売の現物を
模型化したものであったが、島野のこの
プラスチックモデルは独自のモノ。
70年代に入って発売され、この分野に力を
入れていた日東科学の扇風機は 1/3
スケールという見栄えの良いものであったが、
こちらは模型以外の何物でもない。
おそらくは、もう発売されることのないであろ
う、これら扇風機模型。
そして、もう二度と発売されることのない
島野製作所のプラスチックモデル・・・・・・・・
その痕跡だけでも後世に残していくことが
プラスチックモデルと共に育ってきた者の
使命 そんな気がしている。
三協模型製作所
(三共ではない)
発売の日立扇風機
発売年は不明
製品が発売された
大正14年の新聞の
写しが付属していた。