「tokyo.sora」 2002年  石川寛監督、本上まなみ ほか

留学生、売れないモデル、小説家志望、ウェイトレス、美大生、 美容師見習…東京に生きる6人の女の日常を淡々と描いている。 6人の女の子はそれぞれに生きている。部屋が隣同士であったり、 デッサンのモデルと絵を描く立場だったりするが、それ以上の 接点は無い。小説を書いているヨーコは、夜にランジェリーパブで 働いている。 美容院で働くユキ。何年もシャンプーばかりしていて、カットさせて もらえない。休みの日にランパブで働くことにした。二人は偶然 飲み屋で隣り合わせる。 「あなた、ユキちゃんでしょう…」 都会で多くの他人に少しずつ関わりながら、それぞれの生活を送る。 ドラマティックな事は起こらない。ちょっとした偶然が、それぞれの 日常に作用する。 終始淡いトーンのバック。美しい映画です。

ユリイカ 2000日本  青山真治監督 役所広司ほか

バスジャック事件から生き残った運転手沢井(役所広司)と田村直樹、 梢兄妹。沢井は2年間消息を消していたが、再び故郷に戻る。 そのころ、連続殺人事件が発生、周囲は沢井に疑いを向ける。 バスジャック事件の影響で田村兄妹の家庭は崩壊し、兄妹二人で 暮らしていた。沢井は家族との生活を選ばず、田村兄妹と暮らし始める。 立ち直れないほどの恐怖に出遭ったとき、人は何を選択するのか。 幼い田村兄妹には固定観念は無く、バスジャックという狂気からの生還は 端的な事実として刻まれる。沢井たちはバスに乗り旅に出る。 再生の旅なのか、記憶からの逃避なのか。3時間37分。

Dolls 2002年  北野武監督 西島秀俊 菅野美穂 ほか

社長令嬢との結婚を決めた松本(西島秀俊)は、挙式の日にかつての 恋人(菅野美穂)が精神のバランスを失った事を知らされる。自らの死が 迫っていることを予感する老境のやくざ、アイドル歌手の追っかけに すべてを傾ける男と事故ですべてを失ったその歌手。 社会の枠組みからゆるやかに離れていく人間たち。 映画でこういうことやってもいいんですか、という気も…おとぎ話か紙芝居の ような感覚。日本の伝統芸能をスクリーンに持っていった、みたいな解釈で いいんでしょうか。 映画の表現技法に寛大な人ならOKかも。音楽と映像美はスバラシイです。 シンクロする人、しない人、分かれるかも。今までの北野作品路線と決別した点で、 僕は拍手を送ります。

GO 2001年  出演 窪塚洋介、柴咲コウ ほか

日本で朝鮮の民族学校に通う主人公(窪塚)は、不良グループの一味。 駅に止まる地下鉄から、合図と共に全速力で逃げる度胸試しで、リーダー格の 不良生徒に認められるも警察沙汰になり、元ボクサーの父親(山崎努)に 袋叩きにされる。その後日本の高校に進学する道を選んだ主人公は あるきっかけからケンカ三昧の日々になり… 映画は日韓同時公開だったそうです。デリケートな民族問題、とは あまり関係なく進行する青春ドラマ。アクションとか構成も凝っていて 飽きさせない。が、別に映画じゃなくてもTVの2時間ドラマとかでも よかったんじゃない?という気も…日本の低予算映画(失礼) が映画である利点は、映像美とか叙情性とかだと、個人的には思います。 面白かったけど。(ビデオで観たし…)

ハッシュ! 2001年  橋口亮輔監督 田辺誠一 高橋和也 片岡礼子ほか

性に奔放で自堕落な生活を送る歯科技工士朝子(片岡礼子)は、子供が 生みたいと考えるようになる。ある日傘を借りた男勝裕(田辺誠一)が 「父親になれる目をしている」と、勝裕に精子を提供してほしいと迫る。 勝裕はゲイで、そのことを知った恋人の直也(高橋和也)は怒り出す。 香山リカに次々と病名を与えられそうな登場人物たちですが、3人の 主役以外にも面白いキャラが沢山登場します(斉藤洋介とか…)。 ストーリーも良いですが個々の役者とキャラが出すインパクトが全体で 調和していて、楽しく観れました。…この文章を村上春樹の「スプートニクの恋人」と 対比させて書こうかと考えたんですが、アチラはもっと静謐な世界だし、 難解なお題だったのでヤメました。