醸造家自身が物を通してソレイユワインを語るコーナー









第15回
 

樽No.03


 ナダリエ社
   アメリカンオーク

容量 225L
オーク材産地 ヴァージニア
トースト具合 ミディアム





更新をサボってから15ヶ月が過ぎました。15ヶ月間は2005メルローのもつソレイユ最長樽貯蔵期間に匹敵します。「ものソレイユ」を楽しみにされていた方にはたいへん申し訳ありませんでした。先日ソレイユ甲州2006の瓶詰めが終了しました。これは樽貯蔵中のワインと、無くなり次第瓶詰めするタフな三郎の葡萄酒を除き、昨秋仕込んだすべてのワインの瓶詰めが終了したことを意味します。タンクが空になったわけですからワインの酸化や微生物的汚染の心配から開放され醸造家としては最もほっとする時間でありますが、一年分の疲れもどっと出る近頃でもあります。ちょっと息抜きに久しぶりに書いてみました。

旭洋酒を引き継いではや5年が経ちましたが、今回はじめて、ワインを複雑にしてくれるワイン樽としての役目を終え、貯蔵容器として現役を引退する樽がありましたので感謝の気持ちを込めて紹介したいと思います。樽NO.03ナダリエ社製アメリカンオーク(ヴァージニア)ミディアムトーストの樽、仕込み最初の年2002年にいれた3樽のうちの1樽です。アメリカンオークの木の組織は緻密で捻れも少なく、また、チローズ(導管の周囲の柔組織が導管に膨出したもので、材にしたときに液体を通しにくくする)が多いため漏れが少ないのが最大の特徴であります。バニラ香、木香が強いこと、また安価であることもアメリカンオークの特徴でもあります。酸や青臭みの強い甲斐ノワールを丸みのあるワインに仕上げたいという思いから導入を決めたものです。甲斐ノワールだけではなく04メルローや05ルージュ・クサカベンヌの貯蔵にも活躍してくれました。フレンチオークの樽に比べて樽自体が重いのはわれわれの狭いコウバでは唯一の欠点といえたかもしれません。引退後はとりあえずテーブルとして残そうと思います。

ここのところ最高気温が20℃を超える日が続きましたので樽貯蔵庫の空調のスイッチを今シーズン初めて入れました。コウバもいよいよ夏モードです。19.5.2










第14回 

モノフレックスポンプ

購入先 山梨醸機
0.5インチホース用

 






コウバでのワインの仕事というとその殆どはある容器からある容器への輸送作業のことを指します。ものソレイユ第10回で紹介した水圧式圧搾機で得られた果汁やタンク底の固形分の移動はバケツで行いますが、それ以外の輸送作業の大役を担うのがこのモノフレックスポンプなのです。圧搾機からの果汁を醗酵タンクに送ることから始まり、果汁の澱引き、ワインの澱引き、樽入れ、樽出し、濾過時と瓶詰時の輸送作業等、まさにソレイユワインの心臓といえます。一時間に2,000リットル程の液の移動が可能です。これは私が2001年まで勤めていたワイナリーでその当時使っていたモノフレックスポンプの4分の1程度の輸送能力です。使い始めた当初はあんまりゆっくりでまどろっこしい感じもありました。しかし使い続けていくとそのゆっくりさ故、澱引き時に澱を吸わずにすんだり、樽入れ時に樽から溢れさせる心配がないということが分かりました。またポンプ自体軽く片手で運べるのでタンクとタンクの間の狭い空間も通れますし、ワインの生産量から考えてもまさにこのコウバサイズといえます。初めてこのポンプを見た印象は小さいというより可愛いという感じで、小柄で可愛いおじいさんだった故飯島三郎さんのイメージとぴたっと重なりました。
 
 構造はモーターで食品用のゴム製の羽(インぺラー)を回転させ送り出します。入り口、出口をそれぞれホースで接続し輸送開始です。このポンプは輸送液自身が潤滑の役目を果たすので、液のない状態で運転(空運転)させるとゴム製の羽が焼きつき、煙が出るという事態を招きますので、元のタンクが空にならないように気を配るのは醸造作業の基本中の基本といえます。また、粘性の澱は送れません。このポンプに限らずワインの輸送にポンプを使う以上、何らかの負担がワインにかかっているのは否めません。日本では未だないと思いますが、重力落下のみで輸送を行っているところが海外にはあります。ワイナリーの一番上部で仕込み作業を行い、最下部で瓶詰を行う全くポンプを使わないそうです。当然前もっての綿密な設計やそれなりの設備、投資が必要でしょう。

 現在のコウバでポンプを使わずにワインが作れるか考えてみますと酒税法で定められた最少年間生産量6000L程度でも瓶詰までの工程、かなり骨の折れる作業になるのは想像にかたくありません。品質にこだわった(こだわりすぎた)結果、全てが手造りゆえにワインが1本数万円ということになりかねません。そもそも手造りワインという文言のある看板や広告をよく見かけますが、何が手造りかはっきりさせてほしいと思います。日本一小さいワイナリーをうたう例も割と多いような気がします。生産量が一番少ないワイナリーのことだとすると、それは日本で一年に一ヶ所のはずです。ですから日本一小さいワイナリーをうたう場合、何が日本一小さいかを明確にすればいいのです。日本一敷地面積が小さいとか駐車場が一番小さいとか。我々も気がつけばここを引継いではや4年です。当初は日本一生産量が少ない日本一小さいワイナリーだと思いこんでいましたが一升瓶用に割と量を仕込んでいることが分かってきました。もちろん濃縮果汁や輸入ワインは使わずすべて地元のブドウからです。品質だけでなく可能な範囲の量も追求することにより、比較的求めやすい価格を実現することは大切と考えます。幸い、地元には経験豊富なブドウ農家がいるわけですからやる気のある農家と協力すれば質量ともに安定した生産が可能です。ということで、旭洋酒はポンプも駐車場も小さいですが質量ともにさらに充実したワイナリーになっていきたいと思います。因みにこの3月、自園メルロー2004を初めとする欧州種シリーズが発売になります。東京での記念ワイン会も企画中です。後日アップする予定ですのでそちらもお楽しみに。18.2.4









 
 
第13回 

水切瓶整理機

製造元 シンタクコウギョウ
形式 1.8L大
容量 312本






裏から光があたると凄くきれいに見えるコウバのステンドグラス、これは一升瓶をすすいだ後に水を切る水切瓶整理機と言われるものです。水を切った状態で充填作業まで衛生的に保管でき、また車輪がついているので工場奥の洗瓶場所から工場入り口にある充填場所までこのまま運搬することができます。前後の車輪にはショックを吸収するスプリングがついているので移動中の破瓶の心配もありません。これを第9回で紹介したレイメイ瓶詰機の横において葡萄酒夫人と二人で瓶詰をしています。1人が水切瓶整理機から瓶を取り出しレイメイに指す係、1人がキャップをする係です。1台で312本収納できます。茶瓶と緑瓶が混ざっているのは地元や常連のお客様が直売所に戻してくださる瓶やリサイクルステーションで回収した瓶を洗浄して再利用しているためです。三郎の葡萄酒には殆どこのリユース瓶を充てており、瓶詰当日のすすぎの前に予め、ラベルをはがすため、また瓶内部の汚れを落とすために60℃前後のアルカリ洗浄を行います。瓶の洗浄作業は洗瓶機が冷たい風のちょうど吹き抜ける場所にあるのでかなり厳しく単調な仕事ではありますが、リサイクルステーションから回収した瓶のラベルを見ると酒業界の動向を垣間見る事が出来ます。正月開けには金箔入りの日本酒や純米大吟醸の瓶が見られますし、ここのところは芋焼酎の瓶が増えており、そのラベルデザインは一升瓶ワインのそれより凝っているように感じます。4年前の旧旭洋酒閉店セールで大量放出した<WINE旭葡萄酒>の瓶がいまだに出てきたりもします。大手の日本酒メーカーのラベルは流通に耐えられるようにか、かなりしっかり貼ってありなかなか落ちません。旭洋酒のラベルはでんぷん糊で貼ってあり、水で簡単に落ちますのでリユースの点では環境に優しいといえます。

 ジャージのズボンの上にナイロンパンツで武装して臨むすっかり真冬モードのコウバでは11月中旬から春先まで瓶詰に追われるようになります。瓶詰で確かに忙しいのですが、ワインの酸味が安定したり、有害微生物の汚染がない等、醸造家にとってはちょっとほっとできる時期でもあります。何より日に日にワインの成長を感じ取ることができ、仕上がったワインにお客様が喜んでくれる姿を想像しながら、寒いコウバの中で作業をしています。

 ところで今年一年のの10大ニュースが新聞等で報道されている時期になってしまいましたが、今年を振り返りましてニュースではありませんが非常に驚いたことがあります。それは洗瓶の最中、ある瓶の中に「何か入ってはいるなー」と思い中を覗いたところ、ひえーなんとマムシがこっちを見ているではありませんか。思わず腰が引けてしまいました。きっと滋養強壮用のマムシ酒でしょう、酒がなくなった後そのままリサイクルステーションに出したものと思われます。醸造家からのお願いです。「マムシ酒を楽しまれた方は自分でマムシを捨てて下さい。」以上!!。17.12.24















第12回
 

箱洗い機


自主制作



 今年の仕込みも甲州種の樽醗酵、甲斐ノワールのマロラクティック醗酵が終了するのを待つだけとなりました。また欠品中だったソレイユ・クラシック赤の瓶詰も昨日終了し、やっと一段落といったところです。仕込み期間中にたまりにたまった机の上の書類を整理し、ようやくものソレイユにたどりつきました。気がつけば前回の更新が4ヶ月以上も前、ブログの時代だというのにああ情けない、せめて月刊ものソレイユとなるよう気合いを入れ直します。

 今年の仕込みは愛知県の豊田市でワイナリー開設を目指し畑から奮闘中の須崎君が助っ人として参加してくれ、最も忙しい時期の10日間、葡萄酒夫人と3人で乗り切りました。ブドウの破砕作業では、除梗破砕機にブドウを投入する人が1人、その人にブドウ収穫箱を渡す人が1人、収穫箱を洗う人が1人の構成です。ブドウ投入後の収穫箱の中には箱の内側や外側にブドウの花かす、微小な枝、果粒が傷んだ部分から垂れてしまった果汁、畑の土といったものが付着しますので洗浄が必要です。洗浄は箱洗い機を通過させ受け取る人がたわしでこするのです。

 箱洗い機と言ってもローラーのついたコンベアに穴の開いたパイプを収穫箱のサイズに合わせて組み立てたものです。穴の角度を変え、全体に水流があたるようになっています。以前勤めていたワイナリーで使っていたものを参考にさせてもらいました。不器用な自分なので一日がかりで製作、夏の自由工作レベルですがこれがソレイユのワイン造りには重要な役目を果たします。箱に付着した有害微生物の汚染から守ることはもちろん、原料農家にできるだけいい状態でブドウを箱に入れてもらうにはきれいな箱が必要なのです。「箱がきれいで気持がいい」「旭さんの箱が一番きれいだ」と言ってくださる農家さんもありますが、その農家さんのブドウはきちんと手入れされている場合が多いです。「良いワインは良いブドウから」と言われることは多いですが、「良いワインはきれいな収穫箱から」というのも一理あります。

ところで2005年の仕込みをざっとまとめておきます。
 ピノ・ノワール:仕込み量1862kg(内ロゼ用306kg)
猛暑の中、収穫応援隊の方ありがとうございました。香、アフターの酸味ともしっかりしていて、今まで一番ピノらしさがでていると思います。現在4樽に貯蔵中です。

 メルロー:683kg
今年で本格仕込み2年目。強さはありませんが果実味が前面に出て、渋味は柔らかです。今後もソレイユらしいメルローが造れると確信しました。現在2樽に貯蔵中です。

 シラー:56kg
スパイシーな感じがあり、興味深いです。メルローにブレンドの予定、一升瓶に貯蔵中です。

 マスカット・ベリーA:5952kg
チャーミングなベリー系の香は定番です。普段飲みに向くライトボディに仕上がりました。昨年に続きマセラシオン・カルボニック仕込みにも挑戦しました。

 甲斐ノワール:1500kg
例年のやや青臭い感じは少なくカシス様の果実味も感じられます。今後マロラクティック醗酵終了後、樽熟成に入ります。

 甲州:12658kg
ソレイユ甲州用、ソレイユ・クラシック用、千野甲州用そして三郎用、それぞれ特徴がよく出ていて今後の熟成が非常に楽しみです。


ちなみにソレイユの収穫箱は580個、1個当たり10kg入りますので仕込み量から計算すると1個当たり平均4回使われたことになりますが、収穫の重なる時期は不足することのないように箱のやりくりも大事な仕事になっています。なにはともあれ仕込み作業からは開放されました。と同時に瓶詰の季節が廻ってきました。ふー(終)。 17.11.26









第11回 

ナイキ・オレゴンシリーズ
アルチコンパス



私物

下が標高です


先日、あるワインスクールの講師で、自分が勝沼のワイナリーに入社する前から山梨をよく訪れているという地理の先生と、メルロー、ピノ・ノワール、甲州種の畑を回る機会がありました。さすがです、メルローの畑からよくみえる地図帳にも載ってる京戸川扇状地の名前も一発で出てきます。クローン、仕立て方法、裁植密度等色々なことに詳しいのでこちらも勉強になりましたが、やはり畑の標高は必須のチェック項目の様、しっかり聞かれました。自園のメルロー畑の標高については地図の等高線をたどって把握していたのですが他の畑についてはこの位だろうとしか返答できませんでした。こんなことも購入の言い訳の1つになったわけですが、視認性のよいラバーベルトの腕時計を探していたところ高度計、コンパス、気温計、水平器、水分補給アラーム等が装備されたアウトドア用のこれを発見、伊右衛門茶のおまけ缶に貯めていた500円玉貯金をはたいて購入しました。

ケース径が49mmとでかいので、配達先近くの富士吉田の時計店で実物を見てから購入、早速はめて御坂峠を下り、かなり下ったなーと数値的に納得しながらコウバに戻るとコウバの標高が想像よりかなり違いました。説明書を見ると校正が必要な事が判明し市役所に行ってみました。山梨市役所の標高は342.88mと閲覧コーナーにある統計書にかなり正確に出ているのですが、「市長室の標高なのかも」と疑問を感じつつ案内の方に「市役所の標高はどこを測定したものですか」と自由研究の子供のような質問をしてしまいました。そんなのすぐ分かると思っていたのですが案内の方も分からず、各課に電話で聞いてくれました。生涯学習課、建設課、水道課とたどってようやく水道の基準点であることが判明、その場所を教えてもらい校正を実行、標高の測定が可能となりました。

折角ですので各畑の標高をお知らせします(多少の誤差あり)。
  ・メルロー垣根、命名「風畑」(山梨市水口地区、風がよく吹き通る)
490〜495m、山梨市から甲府積翠寺に抜ける道の途中草餅屋の手前を上っていき、フルーツラインに突き当たる手前を左に上っていきます。

  ・メルロー一文字短梢、命名「陽畑」(山梨市北地区、日がよく当たる)
387〜388m、八幡小前の急な坂を上り、クリーニング工場の近くです。

  ・ピノ・ノワール一文字短梢小川畑(山梨市岩手地区)
440〜450m、国道140号沿い、笛吹川温泉の向かいのフルーツラインを上っていき途中の5又路を右に上ります。

  ・甲州種、シラー一文字短梢小川畑(塩山市千野地区)
540〜550m、大菩薩への入口、新千野橋手前を左折しフルーツラインに入りすぐUの字に右折し北側の山をひたすら上っていきます。

  ・ソレイユワイナリー(山梨市日下部地区)
365m、くろがねやさんの看板のある信号を上っていきます。

標高だけが畑のポテンシャルを表すのではもちろんありませんが、果実の熟期を把握する1つの指標とはなります。標高が異なると同じ品種でも収穫適期がずれますので収穫人員を分散することができます。今回、実際測ってみて改めて感じたことは、山梨は一直線に走る道が少ないので特に車で走っていると起伏が分かりづらいということ、盆地内で同じ平地で括られるような場所でもかなり標高が異なるということです。山梨市でも同じ平地といってよい笛吹市に近い日川地区とコウバのあるこの日下部地区でも50m以上の標高差があります。現在では数値的な違いを比べるに留まりますが、これが醸造技術、特に栽培技術が高レベルで平均化し、標高や土壌の違いがワインの品質差になって現れてくるようだと日本ワインの楽しみも成熟するのではと感じています。一般的に、今はどちらかというと造り手による違いの方が大きく、産地の特徴といったものを論じるのは容易ではないような気がします。我々もワインの楽しみを広げることができるように、「ブドウを感じるワイン造り」に励みたいと思います。

ちなみに現在ワインを樽に入れる作業は樽穴をのぞきながらポンプを一定時間(6分プラス数秒)動かすことによってあふれないようにしていますが、デジタル数字が大きいので重宝しています。しかしこの腕時計の造り手の特徴か、そのUFOのような近未来的なデザインゆえ、普通の作業着には似合わないような気がしてきました。やばい。変な物欲のスパイラルにはまらないよう、改めて気を引き締めねば(終)。















第10回
 

水圧式小型圧搾機


製造元 オーストリア シュパイデル社
ドラム容量90L
購入先 三森商事








2002年、このコウバを引継いで新しく購入した大きなものは4つあります。パンチングメタル製液抜きのための筒(ものソレイユ第4回)、櫂棒(同第1回)、190Lプラスチック製半切、そして今回の水圧式小型圧搾機です。コウバのエアープレス(写真後ろ)は、あまり少ない量を搾ると中の風船状のメンブランに負荷がかかり故障の原因となるので、ある程度の量が確保できないと使用できません。よってこの小型圧搾機、自園のブドウや小試験用の仕込みのために購入したものです。

使い方は、まず破砕したブドウ(白ワインの場合)や赤ワインの醸し醗酵後の果皮を入れ、蓋を閉めます。この時点で液体だけがスリットから外側に滴り落ちていきますのでバケツで受けます。水道ホースをつなぎ黒いゴム風船(水枕のよう)の内部を水で満たしどんどん膨らませ、限界まで膨らむと圧力が上がっていきます。最終的に約2barまで圧力をあげることができます。圧力を上げて搾ったワイン(プレスワイン)は収斂味があるので、その分は別にして貯蔵します。どこでプレスワインを分けるかはその場でテースティングにより判断しています。搾り終わったら水を抜き、内側に搾りカスのへばり着いたスリットの筒を二人で持ち上げ、20キロコンテナの上でヘラを使ってカスを落とします。

自園の1、2樽単位の仕込なら、この圧搾機でも赤ワインの液抜きから果皮の掻き出し、圧搾と、1日とかかりません。モーターの音もしませんので夜遅くても動かすことができ、とても重宝しています。何よりも、ブドウの良し悪しや個性を見極め、丁寧に分けて仕込み、ワインとしての品質を判断するためにこの圧搾機は重要なのです。まとまった量でエアープレスで絞ってしまえば作業的には楽ですが、良いものと悪いもの(未熟果や病果がみられるブドウ)を同時に仕込んだら品質は悪い方に引っ張られます。ワイナリーとして進歩していくには丁寧に仕込み、ひとつひとつ判断していくことが求められます。
仕込みシーズンまで残すところ1ヶ月半、今年も大活躍してくれそうなこのちび圧搾機を、昨日ピカピカに磨き上げました。

ところで2002年3月の独立以来の悲願、もちろんこの圧搾機で絞った2004年産自園メルローの瓶詰を先日終えることが出来ました。3年3ヶ月あっという間だったけど、国産ワインが注目される中、若干の焦りもあり、待ち遠しい一日でした。2003年のメルローは、根がしっかり張っていないため樹が充実していないことに加えて雨が多く、果実の熟度が低かったので果実味、厚みに欠けました。よってメルローとしてのリリースは断念しましたので2004年がファーストヴィンテージになります。ドライフルーツ様の香に柔らかい樽香がよくマッチし、タンニンもこなれています。しばらく瓶熟させ10月にリリースの予定です。6月25日に625本瓶詰というおまけ付です。ついでに最近の数字のトピックス、ソレイユワインホームページの記念すべき20,000アクセスは葡萄酒婦人自らがだしてしまいました。どうも失礼致しました(終)。










第9回
 

レイメイ瓶詰機


製造元 長崎県諫早市
     レイメイ製作所
仕様 ステンレス製
    ノズル6本型
使用歴
昭和の時代から使ってます。



暖かくなり20℃を越えてくると貯蔵中のワインにシェリー酒様のアルデヒド臭を付加する産膜酵母や酢酸臭やセメダイン臭を付加する酢酸菌等が繁殖しやすくなります。5月9日の2004ソレイユ甲州の瓶詰が終わり、空調のついていない蔵のタンクは全て空になりました。仕込みの時から続いた緊張感から開放されちょっとほっとできるひと時です。これからは空調のあるタンク、樽貯蔵庫内の三郎の葡萄酒用のワインと樽熟ワインの管理に集中すればいいのです。貯蔵タンク内を不活性ガスで満たす等の予防策はありますが、ワインを有害微生物から守る最善策はタンクから瓶に詰めてしまうことなのです。2004ソレイユ甲州もシュール・リー熟成を経て、柔らかい果実味と口中のボリューム感を堪能できるベストな状態で瓶詰することができました。仄かな甘みが感じられ2002、2003のようなドライさはありませんが、冷やして美味しい夏のいちおしです。

「樽やタンクからテースティングしたときはよかったのに」という経験は数知れずありました。「瓶詰までが腕のみせどころ」「瓶詰までが蔵の実力」が真実といえます。ボトルに詰って好きなときに栓を抜くのがワインなのですから。ソレイユで瓶詰の大役を担っているのがこれです。小さな蔵で瓶詰機といったらこれ、レイメイを指します。これ一台で360mlから一升瓶まで対応できます。入り身の調整もでき、内部に水洗トイレのタンクにあるような浮きふが栓の開閉を調整しているので上部のタンクから重力落下してくるワインが作業中にあふれる事はありません。作業中は電気が要りませんしその簡単な構造からかなりの数が東南アジアを始め、世界に輸出されているようです。実際、作業中のトラブルは皆無ですし、メンテナンスや清掃は非常に簡単です。

レイメイでも1日1000本以上は可能ですが手動打栓する人の体力がキツイのが現状です。詰めたい時に一気に詰めてしまいたいのが本音、設備拡大、貯蔵庫拡大といきたいところですが...、レイメイと手動打栓機を愛用しているボー・ペーサージュの岡本さ〜ん、城戸ワイナリーの城戸さ〜ん、一緒にこれでがんばりましょ〜!












第8回
 

軽トラ
平成4年型スズキキャリー4WD

走行距離56,000km
購入先 塩山福田輪業



3ヶ月も更新さぼっていてこれかよーと思わないで下さい。軽トラはソレイユに無くてはならない縁の下の力持ちなのですから。醸造場の花形といえば圧搾機や除梗機が思い浮かびますが、年に十数回しか働かないこれらに比べて軽トラはほぼ毎日のように働いてくれます。その働きぶりは、

畑関係
・消毒(タンク、動墳、ホース等)、・草刈機、刈払い機の運搬、・収穫箱、ブドウの運搬等

仕込関係
・梗の運搬、・絞り粕の運搬等
その他
・資源ごみの運搬、・近所への一升瓶の配達、・瓶詰時の瓶の引き取り、・灯油の購入等

とにかくいっぱい載せることができ、住宅街の狭い道や畑の中の狭い道もOKのこの軽トラ、「ジュウドー」「ツナミ」ではないけれど、世界に通じうる日本語「ケイトラ」になってもいいような気がしてます。この軽トラ、運転席の下にエンジンがあるので運転中の音は最高です。スピード以上に走りを体感できます。春から秋にかけて窓をフルオープン、AMラジオでサザンでもかかっていたらもう言うことはありません。この軽トラ論、野菜を自家栽培している鎌倉のレストランの従業員さんとも意見が一致しました。しかし軽トラのグローバル化を考えるとなるとデザイン、色を考え直さなければなりません。右にならえの日本的というか、白いっぺんとうです。農家の方、軽トラで買いに来てくれる方が多いのですがどの方が来てくれたのか車での判断は難しいです。シュワルツネッガー知事がハイブリッドの軽トラでオレンジでも運んだりしたら世界に拡がりそう。軽トラのグローバル化については、まあどうでもいいことですが、軽トラを「甲州」に置き換えるとワイン業界ではホットな話題になります。こちらはグローバル化に向けてスタイルを絞っていこうという方向ですが・・・。

山梨の大きな農家では、消毒専用とか3台軽トラを持っているところがありますが、ソレイユではこの一台で十分です。ちなみに我々の乗用車旧型デミオも割りと荷物詰めます(10kg収穫箱なら25箱)。このコンビにはまだまだ頑張ってもらいます。









第7回 

目注ぎ4点セット


購入先 バトン、ピペット 
     (有)オークバレル
     スプレー、ハンマー
     くろがねや山梨店




新年明けましておめでとうございます。今回は正月らしく福袋的アイテムの御紹介です。目減りした樽の補填作業(めつぎ、ウイヤージュあるいはトッピングともいう)をする際に使う4点。
上から順に

 ・亜硫酸水スプレー
めつぎ後、口穴の周りを亜硫酸水スプレーし、タオルでふき取り、衛生的に保ちます。

 ・バトナージュ用バトン
シュール・リー状態で澱をまきあげ、攪拌(バトナージュ)するのに使います。澱からアミノ酸等の成分抽出を促進するだけでなく、澱と樽成分が反応することでワインをより複雑にします。下の部分が樽の中で回転することができるので、普通のステンのパイプより澱をまきあげやすいのが特徴です。最初は竹のものさしを使っていましたが、2年前、TVの撮影があるというので、買ってしまいました。ボルドーのシャトーで研修中、セニエしたメルローを樽醗酵したロゼワインのバトーナージュを経験しましたが何十樽(桁が1桁違うなー)もやるとかなりの作業でした。

 ・抜き取り用ピペット
補填作業前に熟成具合を確認するため二人でテースティングしますが、その際グラスに抜き取る為に使います。

 ・ハンマー
補填後、樽内の空気を追い出すため樽の外側を何回か叩きます。シリコン栓を打ち込むのにも使います。

 樽は1ヶ月で約1リットルほど目減りします。この量は気温、湿度等により変わりますが、樽が新しいとどんどん滲み込むので目減り量は多くなります。ソレイユでは週に1回、目減り分の補填作業しています。これにより樽内の酸化を防ぎ、有害微生物の汚染を防ぎます。作業的にも重要ですが、熟成具合を確認することも大切です。樽香が果実香と調和しているか、清澄の具合はどうか、渋味が丸くなってきているか、還元(硫黄化合物)的な香はついていないか、等々二人で確認(フウフゲンカも)して、澱引き作業や樽から出す作業のタイミングを決定します。時にはふいに味を見たくなりますが、目注ぎ分のワインには限りがありますので衝動を抑え次の作業までは絶対に栓を開けません(ワイナリーで樽からの試飲を経験したことのある方はとてもラッキー)。
 新年最初のテースティングは今日(1月9日)行いました。千野甲州、メルロー、甲斐ノワール、ピノ・ノワール、マスカット・ベリーA(ハーフ樽)のどの樽も順調に良い熟成をしていますが、特に色のしっかりのったピノ、タンニンの柔らかなメルローは楽しみです。今年は樽熟成の赤ワインを中心とした「ソレイユ」を前面にだした新ラインを発売開始の予定です。是非お楽しみにお待ち下さい。




                  



第6回 

樽No.04


購入先 フランソワ・フレール社
         (ブルゴーニュ)

容量 229L
オーク材産地 トロンセ
トースト具合 ミディアム




 10月1日にリリースしご好評をいただいている千野甲州、甲州プティ・ボワゼですが、どちらのワインも上の写真の樽NO.04で熟成させました。千野産甲州種を樽醗酵、樽熟成を8ヶ月し、瓶詰のために空いた樽にソレイユ甲州シュール・リーと同じ原酒を樽に入れましたので、同じ樽NO.がラベルに刷り込んであるわけです。この樽、現在入っているピノ・ノワールを一空き(一年使用後)状態で貯蔵したいために導入したものです。日本ワインの未開の地を切り開き、明るい光を差し込んでくれているオブセワイナリーの曽我さんに一緒に輸入してもらったブルゴーニュ(に製造工場のある)樽です。ピノだからブルゴーニュ樽という安易な発想でしたが、このブルゴーニュ樽、使ってみると樽からの抽出成分に突出したものがなく、トースト香も心地よいので甲州種に非常によくマッチしました。特に千野甲州ですが、果実味、酸とも非常にしかっりしているので、樽とよく融合し、ボリューム感ある甲州種に仕上がっています。今後の瓶熟成も楽しみなワインです。ちなみにブルゴーニュ樽はボルドー樽に比べて、見た目はぽっちゃり型です。

 樽と言っても千差万別、「どれをどのワインに使うか」には様々な選択肢があります。オークの産地、原料オーク材の乾燥時間と方法、オーク材の切断方法、樽内壁面の焼き(トースト)具合、樽の大きさ、新樽で使うのかそうでないのか、樽のコスト、樽貯蔵場所の条件などなど計り知れません。またそれぞれは樽製造会社の方針によっても違いますし、厳密には樽職人による違いもありえます。実際樽を購入するにあったては、通常輸入会社に樽製造会社、大きさ、オークの産地、焼き具合を指定し発注します。正確な容量を計った後、樽番号を入れ使用します。

 11月23日現在、一部のロットを除きタンク、樽でのアルコール醗酵、マロラクティック醗酵が終わり、蔵は熟成の静かな時間を迎えております。メルロー、ピノ・ノワール、甲斐ノワールの樽入れ作業も終わり「樽増えたな。」としみじみ思いつつも樽置き場も手狭になり、使わないタンクをもう1本撤去しなければという現実に直面しております。ワインの滲み込んでいく樽は年々重くなり、特に木目の比較的粗いアメリカン・オークは3年使って腰にくるくらい重くなってしまいました。しかし風味を豊かにしワインをゆっくりと熟成させる樽はソレイユのワイン造りには欠かせません。二人で体を鍛錬し、いいワイン造りに備えます。樽担ぎやブドウ運搬に備え、プロ野球みたいにキャンプでもはって、鍛えようかなー。






第5回 

カンテラ型防水ライト


購入先 Jマート万力店
仕様  リモコン、シガーソケット付
 仕込みのほうもいよいよ、三郎の葡萄酒用の甲州4.5トンを残すのみとなりました。いまのところ機械類の大きなトラブルも無く、あと一仕込み何とか乗り切ってもらいたいものです。今年はエアープレス機の空気が送り込まれるメンブランを交換しましたが、こちらも今のところ順調です。新品時は当然真っ白なのですが、甲州の仕込が始まるとシブでだんだんオレンジがかってきます。圧搾が終わり搾り粕を掻き出したあとは、ボルト類のすきまやメンブランの端のすきまに挟まった皮や種を針金やへらを使って取り除きます。そのあとは合羽を着て水洗いとなります。圧搾機の中に入って作業をする訳ですが、写真のようにスリットが下にきていると昼でも暗いのでこれを入れて作業することになります。防水性がありますし、コードに足がもつれることもなくストレス無く中を洗うことができます。
 
 搾り粕を工場から軽トラで持ち出すのはアルバイトのノイチ君の仕事です。搾り粕は自分達の師匠F氏の堆肥場に運び、日本一おいしいとされる山梨市加納岩の桃のコヤシとなるのです。エアプレスを1日2回使うと、2回目を搾り終わる頃には外はすっかり日が暮れて真っ暗になりますのでこれを持っていってもらいます。暗い所での重労働本当にお疲れ様でした。9月24日の千野甲州の仕込から10月4日のソレイユ甲州のホールバンチまで頑張ってくれたノイチ君の汗はソレイユワインのコヤシとなっています。ノイチくんがいなくなったということは、??? 次の仕込、暗くなる前に搾り終らなければ(終)。






第4回
 

パンチングメタル
ステンレス製
液抜きのための筒と
ザル



購入先 筒 三森商事特注
     ザル ホームセンターくろがねや





今年はブドウの成熟が早いですね。8月中旬のピノ・ノワールに続いて、一昨日、昨年より20日も早くメルローの収穫でした。念願の自園のブドウで1樽分仕込めそうなので、気持を少し落ち着かせているところです。メルローはもちろん赤ワインに仕上げます。赤ワインを造るには果皮をつけこむ数日から数週間醸し醗酵の期間の後、果皮と液とを分離しなければなりませんが、それに必要なのがこの筒なのです。醸し醗酵中のもろみに突き刺して筒の内部の液だけをポンプで抜き取ります。

赤ワインを造る過程において液だけを抜き取りたい状況がいくつかありますので箇条書きします。
・セニエ(必要によって)
 醸し醗酵の前に果汁を抜き取ることにより果皮の割合を多くし、色調、タンニンを増強させます。
・補糖
 必要なアルコールを得るために糖類を添加しますが、溶解する時に液だけを抜きます。
・ルモンタージュ
 醸し醗酵中に液を抜き取り、液面の上部に浮いた果皮の層(果帽)にポンプを使いシャワーして、タンニンや色素の 抽出を促進させます。
・比重の分析(これはざるで十分)
 醗酵の進み具合を知るため、比重を分析します。醗酵が進むとアルコールが生成されるため、もろみの比重値は小さくなっていきます。
・圧搾前
 いよいよ果皮と液とを完全に分離します。水分を含んだ果皮は圧搾機で搾り、必要に応じてブレンドされます。


担ぐと映画「太陽を盗んだ男」の沢田研二の気分になれるこの筒、果皮と液を分離する網が内蔵された醸しタンクのないこのコウバでのワイン造りを決めたとき、真っ先に用意したものの1つです。圧搾前最後の方は完全に液を抜き取ることはできない等、多少の難はありますが、なにより小仕込から3トン単位の仕込にも対応してくれます。パンチングメタルステンレスで作ってもらったので比較的目詰まりが少なく後の清掃も簡単です。特注品のため少々値がはってしまいましたが、ソレイユのワイン造りにとって欠かすことのできないお宝ものです。いいメルロー造るぞー(終)。








第3回
 

除梗破砕機

伊モリ社製

購入先 山梨醸機(有)

平成7年より使用






ものソレイユ始まって以来、初の大物登場です。年に10回も使用しませんがワイン造りに欠かせない代物です。枝に当たる梗を取り除き、よく搾れるように果粒部分を圧搾前に潰しておく機械です。仕込みに向けてのモチベーションを高めるために、7日から洗い始めましたが、このくそ暑さに逆に魂を吸い取られた感じです。畑の潅水作業がはいったりしてあまりはかどりませんでしたが何とか14日に洗い終わりました。写真ではぴかぴかに見えますが、ぼろが少し出始めたそろそろ10年物です。

写真の左側部分が右側の上部に重なってブドウの房の導入部分となります。内部に入った房ですが、ゲージは回転しており梗から果粒部分がはずれてゲージの外側に押し出されます。押し出された果粒部分は、機械下部にある高速回転のスネークスクリューにより潰されながら写真奥側に集められ、水車のような回転する羽根により圧搾機(白ワイン)または醸し醗酵用のタンク(赤ワイン)に送られます。梗はシャフトに付いた羽根により写真手前に送り出されてきますのでコンテナをならべて回収します。

回転する2つのローラーの間を通過させることで果粒を潰す方式の破砕機が主流です。そうでないこの機械を見たときよく潰れるかどうかは疑問点でしたが、果粒に繊維状物質の多い甲斐ノワールを除いてはよく潰れています。ローラー方式ではローラーの間隔を調整することにより潰れ具合を調節できたりもしますがこの機械、最低限の仕事はしてくれる感じです。

「ノイチくんのアルバイト日記」に仕込みの様子がでていますが、ソレイユ甲州の仕込では、この機械を使わず、除梗破砕を行っていません。全房仕込みです。02、03と2年やってみての感想ですが、外圧に強い球状の果粒が一気に潰れることでピュアな果汁を取れるような気がしています。また梗が突起物となり低圧でも果皮から香成分の素を抽出できているような気もします。甲州種ワインにアクセントをつける仕込みのような気がしますので、今年もチャレンジします。

しかし除梗破砕をしないと嵩張るため圧搾機には約半分量しか入りません。同時期に集中するブドウを仕込む為にはこの機械を抜きに醸造の現場は語れません。ブドウは待ってくれませんので。この機械のメンテナンスと同時に、タンク廻しや収穫箱の手配といった仕込みの計画を綿密に立てなければなりません。

それにしても今年の収穫早そうです。ピノ・ノワールの仕込みの頃にはこの暑さ何とかなってほしいなー(終)。











第2回
 硫黄片とフック

フック 自作

硫黄片購入先 (有)オークバレル 

↑樽関連いろいろあります









6月8日に2003年の甲州種樽醗酵の瓶詰が終わり、秋にはリリースの予定です。新樽貯蔵8ヶ月と甲州種にはしては長いようですがこれもブドウの持つポテンシャルのなせる業、特にしっかりとした酸は長い余韻を支えてくれています。瓶詰後、本日(6月21日)でおよそ2週間、瓶詰後の味をみてみたいという衝動を現在必死に抑えております。

樽醗酵後、シュール・リー状態で約10日に1回のバトナージュ、目注ぎ(ウイヤージュ:空間部の注ぎ足し作業)を経て、3月に澱引きをしました。再度樽貯蔵して瓶詰前に2度目の澱引きをしました。今回に限らず澱引き後、水洗いされた樽は、殺菌と亜硫酸の補充を目的にこれ(写真)により硫黄燻蒸(メシャージュ)されます。硫黄片をフックにかけ着火、青色の怪しーい炎を確認した後樽の中に入れ、完全燃焼後にそーっと、そーっと落とさないように取り出します。燻蒸により生成した亜硫酸が充満した状態でしばらく放置した後、ワインを入れます。

ワイン造りにおいて亜硫酸には主に以下の働きがあります。
1)酸化防止
2)酵母による醗酵の抑制
3)乳酸醗酵(マロラクティック醗酵)の抑制
4)アセトアルデヒド(刺激臭を有する酸化物質)等と結合し、異臭を低減化
5)色調の安定化

亜硫酸はワイン中では遊離亜硫酸と結合亜硫酸の2つの形態で存在します。重要な上記の1)2)に効果があるのは遊離亜硫酸の方ですので、通常は遊離亜硫酸の値を追っかけ、20〜40mg/リットルの範囲で保つように調整します。原料ブドウが傷んでいたり、貯蔵管理が悪いとアセトアルデヒドや酢酸エチル(セメダイン臭を有する)、酢酸等が生成します。遊離亜硫酸はこれらの物質と結合し結合亜硫酸となるので、遊離亜硫酸値が減少し、1)2)の効果は低減します。つまり常に亜硫酸を補充しなければいけない状態になります。逆に健全なブドウの使用と徹底した品質管理を行えば亜硫酸の使用を最低限に抑えることが出来るのです。

樽にいったんワインを入れると、樽の壁面に5ミリほどワインがしみ込むといわれています。ですからワインを抜いた空の状態では、たとえ硫黄燻蒸を行っても微生物汚染の危険性が避けられません。常にワインを満たしておくのが最善の方法ですが、無駄に樽成分を放出することにもなります。満たしておく為のワインの確保や商品構成を考慮すると樽の使用計画(ローテーション)は、綿密に練らなければなりません。12ヶ月の樽貯蔵がうまく回せそうですが、ワインを入れたい繁忙期に大事な瓶詰が重なってしまうということも考えなければなりません。我が樽置き場も手狭になってきましたし。

この辺では硫黄燻蒸は干し柿用の柿の皮をむいた後、天日干しする前にも行われています。また3月の桃やブドウの硫黄消毒は春の訪れを否が応にも感じさせてくれます。箱根の大涌谷がそうであるように日本を代表する臭いのひとつといっていいでしょう。上述の亜硫酸も、腐敗した卵の臭いの硫化水素も、ソーヴィニオン・ブランの品種香をつかさどる物質も硫黄化合物です。三宅島のように住んでいる人にとっては大変なことですが、コウバではこの硫黄化合物とうまくやっていくことが良いワイン造りにつながります(終)。













  第1回
 櫂棒

グラスファイバーコーティング

かまぼこ型 2メートル

使用年数1年10ヶ月

購入先 三森商事

 




 ブドウが固液分離されて果汁からワインとなると、日常的に多く用いられる醸造機具は輸送に用いるポンプとホース、そして攪拌に用いるこの櫂棒です。この櫂棒は赤ワインの醸し醗酵時に炭酸ガスにより浮き上がってくる果皮を突き崩して液にしずめたり、果汁に糖類を溶解する(補糖)時に使用するほか、亜硫酸の添加時や瓶詰前の均一化、醗酵後の澱の攪拌などに使います。果皮の突き崩し作業(櫂入れ)はかなりの重労働で手に豆ができます。ちなみに故三郎さんは自作の竹製を使っていました(写真右)。
  
 先日、ソレイユ甲州2003の瓶詰が終了しました。このワインは醗酵後、澱引きをせずに攪拌をしながら熟成させるシュール・リー製法によるものです。櫂棒をタンクの中心で上下に動かすことにより上昇水流を起こして澱をまきあげます。澱には強い還元(酸化の反対)作用があるので攪拌による平均化によりタンク全体の酸化を防ぎます。また醗酵後に死んだ酵母である澱は自己分解により多糖類、タンパク質、アミノ酸などをワインに放出しますが、澱の攪拌作業(バトナージュ)はこれを促します。そのほか澱には硫化水素のような異臭の低減や清澄化剤の使用量を低減する等の効用があるといわれています。
 
 ソレイユ甲州では醗酵直後に週1回のバトナージュを行いましたが、バトナージュによる香味の変化は劇的でした。一見ただの棒ですが、ワイン造りに欠かせません。ちなみにサイズは様々あり、先端の形はかまぼこ型のほか平型もあります。各醸造家こだわりの仕様の櫂棒ができ誰々モデルとして市販されたりして。ないなー(終)。