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「 こころ現代民家研究所 」 の木造建築

日本の素材で造る

ココロが使うこだわりの 「日本の素材」 「地元の素材」を紹介します。

「天竜杉」

写真:天竜美林の山(溝のように見える部分が林道)
杉は、日本にしか生息していません。そして世界で最も真直ぐ伸びる木と言われています。空に向かって伸びる様から信仰の対象として昔から神社や寺などに植えられました。杉の森林はそのほとんどが植林による人工林。天竜での歴史は古く、500年以上も前に秋葉神社の社有林で植林されたという記録が残っています。その後、金原明善による植林活動や戦後の増林を経て現在の天竜美林となっています。建築材料としては、非常に柔らかく扱い難いのですが、他の木材に比べ、断熱性や調湿性に大変優れているので、直接肌に触れることが多い住宅には最適の木材なのです。また赤身(あかみ)といわれる中心の赤い部分は防虫性、耐久性が高く、外部に使用することもできます。一般に外壁に木を使うと「腐る・・カビがつく」と言われますが、それは外国産の木だったり、赤身でない部分を使った場合などのイメージがあるのかもしれません。ちゃんとした赤身材ならば、永く使い続けることができます。
地元静岡県内で全て供給可能な天然の建築材料として今最も注目し、使うべき素材なのです。

「伊豆石(いずいし)」

伊豆石の採掘現場(60x30センチの升目状に切られ運ばれる)
静岡で石がとれる??エッ?と思う人は多いでしょう。しかし伊豆には現在も多くの石丁場の跡を見ることができます。江戸城の石垣やお台場の大砲の台座などには伊豆石が多く使われました。また、天竜の木材を関東まで船で運搬する際、中継地点の下田で石を載せて帰った為、磐田市(旧竜洋町)掛塚付近には多くの伊豆石を使った建築が残っています。しかし現在、伊豆から建築材として採掘されているのは伊豆の国市(旧韮山町)で採れる「伊豆若草石」のみ。大谷石と同じ凝灰岩ですが色合いは青緑の独特の斑点模様が特徴で十和田石と良く間違われます。石といっても若草石は大変柔らかく、製品にできる割合は50%と非常に低いです。しかし、その成分にはゼオライトという吸湿、脱臭、化学成分吸着作用があり、吸湿作用によりシロアリにも効果があるという報告もあります。
現在、災害により採掘不可能となっている為、取り扱いできない状態です。
静岡県の石としての、復興を望んでいます。


「阿多古和紙(あたごわし)」

阿多古和紙を貼った襖(紙の重なり部分が優しい表情をだす。)
和紙と洋紙のちがいは原材料です。洋紙はパルプ、つまり木材そのものを使うのに対し、和紙は、木の皮の裏にある繊維質の部分を使います。しかも、杉や桧などの生育に時間のかかる木ではなく、放っておけば直ぐに成長する楮(こうぞ)や三椏(みつまた)、雁皮(がんぴ)などが原材料となっていて、山林資源の有効活用という視点から見てもすばらしい素材です。洋紙と違い、繊維が強靭で耐久性があることから、一度、使用したものであっても、襖の骨しばり(下貼り)などに使われますし、水に溶かせばまた紙を漉くことができます。「阿多古和紙」とは、天竜川の支流である阿多古川周辺で造られる「手漉き和紙」をいいます。もともと阿多古川には和紙の原材料となる木(楮、三椏、雁皮)が多く生息していて、それを利用した和紙造りが伝えられています。
この和紙の伝承者、岡本さんがH23年、亡くなられ、当社での扱いは、岡本さんが生前に制作した在庫を残すのみとなってしまいました。 


「漆喰(しっくい)・土壁」

練られた状態の漆喰。空気中の二酸化炭素を吸収して硬化する。
漆喰の歴史は古く、日本に限らず、世界中で大昔から使われてきました。ギリシャ神殿の建物や壁画などにも使われて良く知られた材料です。日本で言う漆喰は、石灰とフノリ、ツノマタ(海草)などと水を混ぜて練ります。主にその不燃性を利用して城壁や蔵の壁などに使われました。世界中で使われるのに何故、漆喰が「日本の素材」なのか?と言うと、 漆喰の原料である「石灰石(石灰岩)」の埋蔵量が日本は世界的にみても大変豊富であるからです。もちろん地方によっては、石灰石が産出しない所もありました。しかしそんなトコロでも漆喰は使われました。石灰石は、もともと海の中に生息するサンゴや貝などが堆積し、やがて地殻変動によって隆起して現在のような山に産出してきたものです。ですので、海辺の地方では貝殻などをつぶして焼き、石灰をつくりました。周囲を海に囲まれた、日本であるからこそ、豊富に使うことができる素材ということになります。

また、こころでは、土壁下地(竹小舞)や木ズリ下地にしっくいを塗る方法を推奨しています。竹小舞で編んだ土壁は、地震の時は、少しづつ落ちることで、力を吸収し、まわりの柱や梁を痛めないような構造になっています。日本の建築で言われる柔軟性は、この土壁が果たす役割も大きいのです。

「葛布(くずふ)」

壁紙や襖に使う場合は和紙などの裏紙に貼らたものを使う。
静岡の人以外は「葛布(くずふ)」という言葉は全く馴染みが無いでしょう。土手や道路の法面など、どこにでも生えている葛ですが植物学上は木に分類されるのです。その茎の芯の部分は下駄などの鼻緒に使われ、葛布に使われるのは芯から表皮までの繊維の部分を使います。そして縦糸を綿、横糸を葛の糸で織った布を葛布といいます。静岡県掛川市はその産地として有名ですが、江戸時代には武士の衣装である裃(かみしも)や袴などによく用いられました。武士の時代が終わり一旦低迷しましたが明治後期からは高級壁紙として外国に多く輸出しました。昭和20年代(戦後)はその需要が最も多く、材料の葛が足りなくなった程のようです。しかしその後、安価な韓国産の葛布が主流となり50軒以上あった葛布屋はやがて姿を消していきました。現在葛布を扱っているのは全国でも掛川と金谷でたった5件のみ。そして今は装飾品や民芸品に使われることがほとんどです。「葛布一代」といって一度貼れば一代(50年)はもつ。と言われます。数年で剥がれて駄目になり、ゴミと化してしまう現在のビニルクロスに比べ葛布はだんだんと綺麗なアメ色に変化し、永く使えば使うほど光沢がでてきます。自然の恵みからできた100%天然クロスなのです。

「畳」

古い家で使われた藁床を再加工した畳。歩くと柔らかく優しい床になる。
日本人はやっぱり畳だね・・という感じですが、畳が普及したのは工場での生産がはじまった明治以後なのです。しかも、現在はボウズ畳という「縁なし」の畳は大変高価なものですが、昔は縁に使う布自体がさらに高価であったので、お金持ちの家には縁ありの畳、一般の家には縁なし、という具合になっていました。高価な畳は、家の中で最も重要な部屋だけに使われ、一般の床は、板の間でした。量産が盛んになった昭和になってやっと畳が敷き詰められるようになったのです。
こころで使用するのは生産者のはっきりした、国産い草の畳表。
畳床にも国産の藁を使うか、若しくは、古民家などで不使用になった藁床を熱処理し、リサイクルして使っています。

「三和土(タタキ)」

コテ塗りした後、洗い出すと表面の微妙なデコボコが表れる。
土を練ってたたいて仕上げる床を「タタキ」といいます。たたくから「タタキ」と読みますが、3つの材料を混ぜることなどから「三和土」と書くようになったとも言われます。セメントを生産するプラントができ、コンクリートが普及するまでは、玄関や台所などの床、土間部分のほか、昔は犬走りや建物の基礎にもこのタタキの原理が使われました。
タタキには「マサ土」という花崗岩が風化してできた土を使います。それに「石灰」や砂利とあわせ、さらに水と「ニガリ」を加えて固めます。もともとその土地でとれる土や砂利を混ぜて固めた為、土の水分量や成分の違いなどから、地方によって配合の割合等は微妙に違っています。特に京都(伏見)の深草砂利を使ったモノを深草三和土(ふかくさたたき)と呼び、昔から良く使われています。
ココロで使っている土はお隣の愛知県瀬戸市の乾燥土に、地元の砂利を混ぜています。石灰では劣化が激しい為、代わりにセメントを混ぜて土間にしています・・・ので叩いてはいないのですが、表面は洗い出しなどの仕上方法をとっています。
三和土の床はコンクリートのような照り返しの無い、優しい土間になります。

「柿渋(かきしぶ)」

杉の床に塗られた柿渋。古い小学校の床のような懐かしい風合いになる。
柿渋の原料は、まだ熟していない青い柿です。そしてその名の通り「柿」からとれる「渋」のことです。では「渋」とは何かといいますと、「タンニン」と言われる成分。この「タンニン」は様々な植物の葉や皮などに含まれており、お茶やコーヒーにも含まれています。あの渋みや苦味の素になっている成分です。一説には、植物が動物や昆虫に食べられない為にこの苦い成分を含んでいる・・とも言われます。このタンニン類には余分なタンパク質などを固めて取り除く殺菌作用があるといわれます。西洋では、動物の「皮」を加工する際には、このタンニンで生皮を処理します。これによって腐敗を防いで丈夫な「革」製品が出来上がります。(皮なめしといわれます。)革製品などの褐色の色はタンニンの独特な色なのです。
日本で柿渋は様々な日用品に多く使われてきました。紫外線によって酸化して固くなり、一種の皮膜を作るので素材を守り、丈夫に保つことができます。和紙で造られた一閑張りや番傘、染物の型紙などは、その皮膜による耐久性、防水性などを利用しています。建築においても木材の劣化保護に使われます。塗装後すぐには発色はせず、2週間ほどしてはじめてアメ色がでてくるので、色ムラがでて難しいとされています。(でも杉には大変相性が良いです。)