○「小間板」の土手の高さはどのくらいか
・「小間板」は桐の、厚さ5o以下の30p角の薄板の一方に、黒檀(カキノキ科の常緑喬木)などの堅い木でこしらえた高さ「2p4o」以下の厚さ5,6oほどの板を幅一杯にのり付けした道具です。
・この、板の2.4pの土手に包丁を直角に当て、下に押し切りにしてそばを切っていきます。この、立っている板に黒檀などを使うのは、包丁の刃があたるので木が柔らかいと削られてそばに混じってしまうからです。
・この「土手」の高さが「八分(2.4p)」以下なのは、これ以上駒が高いと、1.5oの厚さに延ばしたそばの「布」を普通8重にたたみますから、切るときのそばの厚さは打ち粉も入るので1.5p以上になり、そこに2.4pの板を当てると、4p以上で、そば切り包丁を握ったときの指が、小間板の駒の頂上にやっとあたらないくらいの余裕ができ、包丁がそばの布を完全に通り抜け、まな板の表面まで届くのです。
・これが、駒の高さが3pになりますと、指の太い職人が包丁の柄を握ると、指の下に余裕がなく、土手にさえぎられ包丁の刃がまな板まで届かず、全部に刃が当たらずスダレそばになってしまいます。
・包丁の刃先が黒檀の土手に当たり、カツカツという音がするのを「駒鳴り」がするといって、イキな仕事をしている。
・包丁を下まで落としてそばを切り、その包丁を少し傾けると、包丁の腹が駒の上角に当たり、駒は少し左にずれます。このズレ幅を1.5oに決めれば、1.5oだけ下のそばの顔を出しますから、そこで包丁を持ち上げて土手にくっつけ、また、真下に落とし、包丁をひねって位置をずらし、リズミカルに動かしていくと同じ太さに切れるという便利な道具です。
・もっとそばを細く切るときは、ひねり幅を小さくすればよいのですが、それより、この駒の高さを低くすれば、包丁で駒を押したときに、同じ手癖でも駒の高さが低いので移動が少なく、ひとりでに細くなるという、単純ながら、大変合理的な道具なのです。