○色が濃いほど「そば粉」がたくさん混ぜられているのか
・そばには真っ白いそばもあります。そうはいっても「そば粉が多いほど色が黒い」という確固とした「迷信」があります。そのそばに黒い斑点があったりすると、ますます「本物だ」と喜びますが、これは実は洗練されたそばではありません。
・この黒い斑点はそばの実の殻が砕けたもので、白米の中に米の籾殻がつきこまれて粉になり、混じっているようなもので、米を脱穀せず、いきなり精米し、篩わないでそのままご飯にたいたものと同じです。こんな白米を美味しいと礼賛する人の舌が疑われます。
・田舎ではそばの種実が指でつぶせるほどに柔らかいので、殻を割ると中味まで割れてしまうから、脱穀せずにそのままついたり挽いたりしました。このそば殻を取ったのが「抜き」と呼ばれ米の玄米に当たり、この抜きでそば雑炊を作ったりします。
・この「抜き」を製粉しても殻ごと製粉したものよりはきれいなそば粉ですが、抜きの頭、尻尾の部分が褐変しているのでそばが赤みがかります。この抜きを二つか三つに割り「割抜き」し一番粗い篩にかけてきれいな割抜きを取り(上割れ)、これを使って初めて石臼で一度挽きで粉すると、石臼の目が立っていると、そばの「甘皮」と呼ばれる表面に付いている薄い、淡緑色の部分も切り刻まれて粉に混ざります。これが新そばの頃には色が鮮やかなのでそばも淡緑色に見えます。しかし、この時期を過ぎると酸化して淡い黄土色なります。これがそばの色です。
・上割れを篩って下に落ちた部分を細かい篩で篩いだしたものが「打ち粉」です。打ち粉には茶色い斑点が入っていることもあります。そばの色が変化するのは、機械製粉で一番粉、二番粉、三番粉と分けて取りそれを適当に混合するからです。
・機械製粉では最初は目なしロールで挽いて細かい目の篩で篩って一番粉を取り、二番目からは網目のついたロールで切り刻み、また篩にかけます。最後に残った皮の部分は、もっと切り刻まれて粉になりますが、高速粉砕のため瞬間的に高い圧が粉にかかるので、どうしても焼け色が褐色になります。
・真っ白いそば粉を取るには、「上割れ」だけで「上割れ」同士が身をこすり合わせて粉になるような挽き方をして、細かい篩で篩い分けるので「抜き」全体の15%位取れます。
・「挽きぐるみ」というと、上割れ全部のうち、どうしても粉にならない「さなご」の部分を除いたものです。石臼の目の切れ具合で取れる分量が違います。この「さなご」は昔は顔や体を洗うときに袋に入れて持ち歩き「洗い粉」にしました。