なぜ「江戸のそば汁」の色は濃いか

 

・江戸では、出汁の材料にあまり昆布を使いません。ほとんどが鰹節の単品です。その理由は、昆布のうまみはグルタミン酸であり、醤油にも昆布の5倍以上のグルタミン酸がふくまれているからです。それに昆布が入ると汁の傷み早いからです。

 

・関西では「淡口醤油」を使います。塩分は濃口醤油が17%に対し20%と多く含まれています。薄いのは色と旨味成分です。関西はこの淡口醤油を10倍に延ばしてうどんの「おだし」にしています。単純に考えると、汁の塩分は2%です。

 

・関東では塩分17%の醤油を8倍に延ばしたものが種物の汁なので2.1%です。関西では汁は全部飲んでしまい関東では残します。

 

・そば屋のそば汁は大変濃い、鰹節の出汁を使います。そこへ醤油を混ぜるのですから濃くなります。なぜ、そんなに濃くするかと言えば「そばの下のほうに少しだけつけて食べる汁」を作る必要があるからです。

 

・水っぽい汁ではそばの肌にしがみついてくれません。汁だけなめると「辛い(塩)!」

ような感じですが、それでも醤油直接よりも辛くなく、しかも「そばにからんでくれる」汁にしたい。

 

・そばの汁はそばに合わせて作られており、その汁の味は「醤油が入っていて醤油が入っているとわかちゃいけない。砂糖が入っていて砂糖が入っているとわかちゃいけない。味醂が利いていて、味醂がきいているとわかっちゃいけない。鰹節が入っていて鰹節が入っているとわかちゃいけない。」のであって、どの味も突出しないで、何の味もしない汁になれば「そばの味」だけが分かるという仕組みです。