5月28日

すべての芸術は落書きであり、すべての落書きは芸術である: ある反戦落書き運動に対する弾圧


東京の知り合いからメールが転送されてきた。 「転載可」ということなので、全文を最後に添付する。興味をもったひとはそちらを 読んで欲しい。過不足なく書かれた呼びかけ文に付け足すことはあまりない。 われわれはRE/MAPを通 じて、都市<を>記述することを試みるだけではなく都 市<に>記述することを試みてきた。都市はだれのものか? 言うまでもない。都市 はわれわれのものである。しかし、今では都市空間のいたるところが私有化されてい る。権力と資本は常に視覚を肉体から切り離し、従属させようとする。欲望を選択の 問題に切り替える。しかし、私有地は単に土地を所有しているだけにすぎない。われ われは、視覚を、欲望をすべて私有化させるわけにはいかない。 今日の視覚芸術の役割は、資本と権力による視覚と欲望の搾取と戦うことである。落 書きはその根源的な形態である。落書きは、都市空間を取り返すための最初の実践で ある。そもそも本当に、みんな落書きひとつない、一切の猥雑さを欠いた都市空間を 望んでいるのだろうか。落書きのおおさは、健全な市民社会が存在することの重要な 座標である。それが政治的なものであればなおさらである。ロンドンでも、パリで も、ベルリンでもおびただしい政治的落書きが存在する。それに対して民主主義がう まく機能していない都市では、一様に落書きがすがたを消している(あえて固有の都 市名はあげない。いくつかの社会主義末期の都市や独裁制の都市を想起してほし い)。 芸術それ自体には、科学技術や経済といった意味での有用性がないように、落書きに は有用性はない。落書きが犯罪であるとすれば、あらゆる芸術は潜在的にすべて犯罪 である。犯罪にさえならないような芸術は、芸術としての強度、芸術としての面 白 さ、芸術としてのいかがわしさをあらかじめ去勢されたゴミにすぎない。そのような 芸術は、落書きにさえなることができない。落書きの危機は芸術の危機である。それ は、近代主義が「芸術の危機」を唱えたのとはまったく別 の意味で、まったくベタ な、唯物論的な意味で危機である。落書きのない都市に「芸術」は存在しない。 今日、落書きが殺されようとしている。次は芸術が殺されるだろう。そして、ありと あらゆる想像力、ありとあらゆる欲望、ありとあらゆる自由が殺されるだろう。
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<以下転載文> 落書き反戦救援会 【呼びかけ】 2003年3月20日、米英政府はイラクへの侵略戦争を開始しました。同日、日本政府小 泉内閣は、この侵略を支持し、参戦しました。 4月17日夕刻、東京都杉並区の小さな児童公園で、ひとりの青年が逮捕されました。 青年の容疑は、器物損壊の現行犯。赤と黒のラッカースプレーで、自宅付近の公衆ト イレの外壁に落書きをしていたところを、警察官にみつかり捕らえられたのです。落 書きの内容は「戦争反対」、「反戦」。そして大きく「スペクタクル社会」(※1) と書かれていました。 米英軍のイラク侵攻から28日目、マスメディアが浴びせる圧倒的な戦勝報道と隠蔽に よってこの侵略が正当化されようとするなかで、一人の青年が選んだのは、彼が暮ら す日常の風景に大きく「戦争反対」と銘記することでした。圧倒的な物量に達した虚 偽の報道によって真実が封じられ、正義が歪められ、映画が現実を凌駕してしまった とき、彼は「スペクタクル社会」と大書しました。彼と彼の暮らす世界とが接続され るために、彼がおそらく初めてつかみとった言葉が「スペクタクル社会」だったので す。 翌日、彼の逮捕を知った友人たちは、留置された荻窪署へ向かい、衣類や現金などを 差し入れました。職場の同僚は、彼が抜けた穴埋めや弁護費用の立替えなど、勾留さ れている間の支援をしていくことを決めました。  この事件に対し、検察は執拗な取り調べと家宅捜索を行い、落書きとしては異例の 長期勾留を続けています。そしてついには容疑をさらに重罪となる「建造物損壊」 (※2)に格上げし、4月28日、起訴しました。  彼が著したほんの数行の言葉に対し、今、検察は3ヶ月を超える勾留と懲役刑を課 そうとしています。これは、思想に対する弾圧というほかありません。検事は、法の 認める範囲を逸脱して一人の青年を監禁し、生活を破壊し、その頭の中身に制裁を加 えようとしているのです。  私たちは、こうした検察の横暴を許すことはできません。  いまも勾留されている反戦落書き青年のために、できうる限りの支援をしたいと考 えます。

※1)スペクタクル社会  1950年代、フランスの思想家、ギードゥボールが唱えた 概念。多くの人々が受動的な観客の位 置に押し込められた世界、映画の観客のように ただ眺めることしか残されていない、資本主義の究極の統治形態をいう。ギー・ドゥ ボール著『スペクタクルの社会』参照。
※2)建造物損壊   「器物損壊」が「3年以下の懲役、10万円以下の罰金」である のに対し、「建造物損壊」は「5年以下の懲役」。トイレの外壁を汚したという程度 の行為に「建造物損壊」を適用するのは、きわめて異例。 【賛同とカンパのお願い】  落書き青年の勾留は、3ヶ月を超えることが予想されます。勾留されている間の収 入はまったく保障されず、また、当然ですが収入を得ることもできません。この間の アパートの維持、差し入れ物品、保釈請求、裁判費用などをあわせると、約60万円超 の経済的負担が予想されます。これは起訴自体が制裁の行使となるのではないでしょ うか。このような権力の濫用と不当な制裁を、私たちの広範な連帯で跳ね返していき たいと思います。みなさんの賛同と、圧倒的なカンパをお願いいたします。

カンパ振込先: みずほ銀行 新宿中央支店 普通口座 1864541 ワタナベヨウイチ 2003年5月8日/落書き反戦救援会 連絡先:東京都港区新橋2-8-16 石田ビル4階14号 救援連絡センター気付 落書き反戦 救援会 URL: http://mypage.naver.co.jp/antiwar/graffiti417// E-mail:antiwar@naver.co.jp/FAX: 03-6780-1244 ・落書き反戦救援会ではこの呼びかけへの賛同署名を広く呼びかけます。賛同いただ いた方の「名前(あれば肩書き)」はビラやウェブサイトを通じて記名公表させてい ただきます。 ------------------------------------------------------------------------

【お知らせ】 ・第一回公判決定 6月16日午後2時30分から、場所は未定、詳細はわかり次第お知らせします。 ・Kくんへの手紙 Kくん(落書き青年)への応援の手紙、募集中です。救援会宛に送ってください。転 送します。