植物用語集

このHPで用いた植物の専門用語を解説します。

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(あ行)

液果 sap fruit, succulent fruit
果実のうち、成熟しても乾燥しない肉質の果皮をもつもの。漿果(トマトなど)、石果(モモなど)等に分けられる。乾果に対する語。

(か行)

階級 rank
リンネ式階層分類による分類群の階層的位置。
植物では品種<変種<亜種<<列<節<<連<亜科<<亜目<<亜綱<となるのが普通。 なお、太字は基本的な階級名。
塊茎 tuber
地下茎のうち、が塊状になったもの。ジャガイモなど。丸いものは球茎
がく片 sepal
の構成要素のひとつで、花弁の外側(花の構成部位では最も外側)につく葉的器官。花弁に比べて目立たないことが多いが、単子葉植物などでは花弁と同じような形態をしている。一つの花につくがく片をまとめてがく(calyx)と呼ぶ。
花糸 pistil
雄蕊の構成部位。を支持する。
花序 inflorescence
複数のをまとめてつける枝のこと。また、その枝における花の配列様式。
花柱 style
雌蕊の構成部位で、柱頭子房をつなぐ部分。
花筒 corolla tube
花弁(または花被片)の基部が互いに合着して筒状になった部分。それに対して合着していない部分は花冠(花被)裂片と呼ばれる。 合着していない場合でも用いられることがある。
花被片(かひへん)tepal
花弁がく片を区別せずに指す言葉。一つの花のすべての花被片をまとめて花被(perianth)と呼ぶ。
花柄 peduncle
花梗。先端にをつけるのこと。枝分かれすることがあり、各分枝を小花柄(pedicel)と呼ぶ。
花弁 petal
の構成部位で、がく片の内側にある葉的器官。がく片と比べて目立つ色彩や形状をしていることが多い。1つの花の花弁をまとめて花冠(corolla)と呼ぶ。
花葉 floral leaf
を構成する葉的器官の総称。がく片花弁雄蕊心皮など。
乾果 dry fruit
果実のうち、果皮が成熟すると乾燥するものの総称。液果に対する語。刮ハ(アサガオなど)、豆果(エンドウなど)、節果(ヌスビトハギなど)、節長果(ハマダイコンなど)、角果(アブラナなど)、蓋果(スベリヒユなど)等に分けられる。
球茎 corm
地下茎のうち、が異常に肥大して球状になったもの。鱗茎と似るが、葉でなく茎が太ったもの。
茎 stem
植物の基本的な器官の一つ。節間からなる。 普通細長く、植物体の支持、空間的な展開、水や養分の輸送や貯蔵などの役割を担う。
固有 endemism
分布域が(相対的に見て)特定の地域に限定されること。逆は汎存(cosmopolitism)。
根茎 rhizome
地下茎のうちで根のように見えるものの総称。

(さ行)

雌蕊(しずい)pistil
めしべ。花の雌性生殖機能を担う器官。柱頭花柱子房からなる。1つの花の雌蕊をまとめて雌蕊群(gynoecium)と呼ぶ。
子房 ovary
胚珠を包み込む袋状の器官で、雌蕊の基部にある。
シュート shoot
一本のと、そのまわりに規則的に配列する複数のからなる単位。たとえば枝の1本1本はシュートで、そこから枝分かれしてできた枝もまた一つのシュート。
漿果(しょうか)berry, bacca
液果のうち石果を除いたもの。果皮が厚く水分を多く含んで果肉となり、種皮が比較的堅くなる。動物によって被食されることで散布されることが多い。
小穂 spikelet
イネ科やカヤツリグサ科植物などの花序の単位。イネ科では2枚の苞穎に包まれた1〜数個の小花からなる。
節 node
ができるの部位。普通、茎の長軸に対して垂直に、かつ輪状に存在すると仮定される。
節間 internode
と節にはさまれたの部位。
双子葉植物 Dicotyledon
胚に子葉が2枚ある被子植物の群。単子葉植物と対置されるが、その単系統性は疑問視される。合弁花類と離弁花類に分ける場合もある。一般に網状の葉脈と、真正中心柱の茎の維管束系をもつ。
襲速紀(そはやき)
小泉源一の造語で、九州の中部(熊襲)・四国(速水)・和歌山(紀伊)にわたる固有種の多い地域。東海地方西部まで含めることもある。襲速紀に特徴的な植物を襲速紀要素と呼ぶ。

(た行)

托葉(たくよう) stipule
葉柄上または葉柄基部付近にある葉的器官。双子葉植物では2つつくのが普通だが、1つあるいは欠けていることも多い。単子葉植物ではあまりみられない。形態的にも機能的にも多様。
単子葉植物 Monocotyledon
胚に子葉が1枚しかない被子植物の群。双子葉植物と対置される。双子葉類と異なり、その単系統性が認められている。一般に葉脈は平行脈で、茎の維管束は不斉中心柱、根は発芽後すぐに幼根を失い不定根に交代するという特徴をもつ。
地下茎 subterranean stem
地下部にある。 頂芽と、葉の変化した器官をもつ。その形から根茎球茎鱗茎塊茎などに区別される。
柱頭 stigma
雌蕊の構成部位で、花粉を受粉する表面のこと。一般に花柱の先端または側面に位置する。
虫媒 insect pollination
昆虫によって花粉が仲介されること。虫媒される花を虫媒花という。

(は行)

葉 leaf
植物の基本的な器官の一つ。葉身葉柄托葉からなる(どれかが欠けることもある)。一つの葉の基部には必ず芽がある。
胚珠 ovule
種子植物で後に種子になる器官。裸子植物では大胞子葉につき、ふつう裸出しているが、被子植物では心皮につき、ふつう子房に被われている。胚嚢と珠心(nucellus)、珠皮(integument)からなり、先端側の珠皮の隙間を珠孔(micropyle)、基部側の珠皮がつく部分を合点(chalaza)、胚珠を支える柄を珠柄(funiculus)と呼ぶ。また胚珠のつき方を胚珠型と呼び、直生(orthotropous)、湾生(campylotropous)、曲生(amphitropous)、倒生(anatropous)等に分けられる。
胚嚢(はいのう)embryo sac, megagametophyte
種子植物における雌性配偶体。8割方の植物は正常型と呼ばれる胚嚢をもつが、他に多くの胚嚢型がある。正常型(下図)では7細胞8核からなり、珠孔側に卵細胞(egg)と2つの助細胞(synergid)からなる卵装置、合点側に3つの反足細胞(antipodal)、中央に2つの極核(polar nucleus)をもつ大きな中心細胞(central cell)がある。
花 flower
顕花植物において生殖に携わる器官。被子植物ではがく片花弁雄蕊雌蕊からなる。
葉の形
基本的には葉身の最も広い部分が葉身の基部側にあるものは卵形・披針形、中央にあるものは円形・楕円形、先端側にあるものは倒卵形・倒披針形、中央付近で広さに変化がないものは長楕円形・線形などと呼ばれる。葉身の広さの程度を表すのに広・狭などの接頭語を適宜つける。
複葉 compound leaf
葉身が二つ以上ある。羽状複葉、3出複葉、掌状複葉などがある。複葉のそれぞれの葉身を小葉と呼び、1枚の複葉中の小葉の数で5出掌状複葉、7出羽状複葉などと呼ぶ。特に羽状複葉では頂小葉のあるものを奇数羽状複葉、ないものを偶数羽状複葉と呼ぶ。例えば羽状複葉で、小葉に当たる部分がまた複葉状になる場合を二回羽状複葉、更にその小葉が複葉状になる場合三回羽状複葉などと呼ぶ。
分類群 taxon
他から独立した個別の単位として扱われる分類学上の生物の群。分類階級のどれかに位置付けられ固有の名前があてがわれる。
苞 bract
苞葉。または花序を抱くようにつく葉。普通葉と区別できない場合は、一般には苞と呼ばない。花柄上につく苞を小苞(bracteole)として区別する場合がある。
訪花昆虫 pollinator insect
花を訪れる昆虫。ハナバチやハナアブの仲間、チョウ類、コウチュウ類など。
匍匐枝(ほふくし)stolon
走出枝、ランナー(runner)、匍匐根茎(creeping rhizome)。細長く地中または地表を水平に這う茎。

(ま行)

芽 bud
将来となる部位で、まだそれらの器官が折りたたまれている状態。普通、茎のまたは先端にできる(定芽)が、根や葉などにできる芽もあり不定芽とよばれる。シュートの先端にできるものを頂芽、側方にできるものを側芽とよぶ。将来花になる芽を花芽、葉になる芽を葉芽、花と葉になる芽を混芽として区別する場合がある。特に木本植物で、うろこ状の芽鱗をもつ芽を鱗芽、もたない芽を裸芽と呼ぶ。

(や行)

葯 anther
雄蕊(ゆうずい) stamen
おしべ。花の雄性生殖機能を担う器官。花糸からなる。一つの花の雄蕊をまとめて雄蕊群(androecium)と呼ぶ。
葉身 blade(lamina)
葉のうち、葉柄托葉を除いた部分。普通平たく、裏表があり、光合成効率が高い。
葉柄 petiole
葉のうち、葉身をつなぐ部分。単子葉植物の葉は双子葉植物の葉柄に相当するものであるとする説(偽葉説)がある。

(ら行)

稜 (a. angular)
稜角。茎などの角張り。
鱗茎 bulb
地下茎のうち、短い茎の周りを多数の多肉化した葉が囲ったもの。球根。

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