リレー小説 第三回 

 煌びやかなネオンが輝き街全てを覆い尽くす街。
 『地上の星空』なんて陳腐なネーミングがついている賭博都市ニューベガス。
 この世に存在する快楽と娯楽全てを提供すると謳う新興企業が牛耳る、この街の最深部には、あらゆる存在を"賭ける"事の出来る超巨大カジノが存在する。
 勝者には溢れんばかりの富と快楽を与え。敗者には全てを吐き出させる。――時にはその命でさえ。

 そんな暗部を一片たりとも見せない豪奢な作りのカジノの前に、己は"家族"と一緒に来ていた。
 
「なんて豪奢なのでしょう。街一番の教会でさえ霞んでしまいます・・・・・・」

 清楚な美貌を驚きに彩らせているのは、己の"妻"マリア・ロセウム。その理想形ともいえる爆乳が周囲の目を惹きつけてしまっているのは、彼女の故郷でもニューベガスでも同じだった。

「お兄様見て!あの噴水、滝みたいっ。わぁ、曲がってレース模様みたいになってる!」

 子供らしくはしゃいでる金髪の美少女は、己の"妹"リトル・シンデレラ。通称はアリス。その無邪気さと妙な色気のある表情、そしてお人形のような美貌でやはり、とんでもなく目立つ。

 案の定、カジノのスタッフらしき女が歩いてきた――あれは・・・・・・。

 「いらっしゃいませ。素敵なご家族ですね!」

 己の隣で無駄に目立っている二人に負けない程の美貌に微笑みを浮かべて挨拶してきたのは、今回の標的ルシエル・B・ダービーだった。
 黒のスラックスに白シャツ、ネクタイという男のようないで立ちが、そのスレンダーな身体にフィットして独特の魅力を湛えている。現在のニューベガスの公式ギャンブラーにして看板的存在でもある女だ。
 
 己は息を軽く吸い込み、セレブっぽさを意識した笑顔を浮かべる。
 そう、西洋人俳優がよくやってる無駄に余裕をかましてるアレだ。そうでも無ければやってられない。

 ――どうして、こうなった。

 

 


◇ ◇ ◇

 

 

「絶対に無理ですね、これ」

 ルシエル・B・ダービーの詳細な現状をカノンに調べてもらった結果。出した結論がコレだった。
 企業そのものがカジノ都市を構築しているニューベガス。中央にある巨大カジノの最深部には、大金持ちか数多の試練を突破した凄腕ギャンブラーしか入ることの許されない場所、勝利すればあらゆる快楽と富が手に入ると言われる通称ザ・コアがある。
 当然、ザ・コアの警備は異常なまでに厳しい。護衛の質は最上級。客の武器の持ち込みは禁止。何より、そんな場で、万が一暗殺を成功させようものならば、数多ある企業の中でも最大の資金力を持つと言われるニューベガスそのものを敵に回すこととなるだろう。
 金持ちは怖いのだ、何故なら幾らでも優秀な殺し屋を雇えるのだから。
 なんにせよ、力押しではルシエル・B・ダービーを殺害するどころか会うことすら出来ないだろう。

 そこまで聞いたカノンが悪戯っ子のような瞳で聞いてくる。

「じゃあ、諦めるの?」
「まさか。己の武器は殺しだけではありませんよ」
「そりゃ、まあ・・・・・・よーく知ってるけどさ」

 さわさわ、と。カノンの細い指が己の足の間にあるマグナムを撫でる。

「っ、そっちじゃありません。頭脳の方です。――あと、もう一回戦したい処ですが、片付けなきゃならない案件があるんですよ」

 己は"カノンのベッド"から出ると、ぐっと伸びをする。スレンダーな裸体をそのままにカノンも起き出して、まだ触っている。

「はぁ・・・・・・ホント、おっきいよね。んふふ、ちゅっ。いってらっしゃい」
「どこにキスしてるんですか、全く」

 カノンのぞくっとするような色っぽい表情に欲望をそそられながらも、己は服を大雑把に着込むと、扉へ足を向けた。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 己が向かった先は、郊外の森。
 犬の散歩でも来ないような辺鄙な場所で、それこそ銃撃訓練目的か自警団の目を逃れて"戦闘"する時に遣う位しか来る機会の無い所だった。勿論、己の用事は――

「準備は出来ていますよ。確か、教会で会った人かな?」

 マリア・ロセウムを"無力化"した日から、纏わりついていた視線の主にそう呼びかける。

「ふーん。気づいていたんだ?」

 三つ編みの地味目の女が、にちゃぁとした笑みを浮かべたまま森の影から姿を現す。
 その双眸は憎しみと殺意。そして、狂気に満ちていた。

「なんの用ですか?己はもう、教会に干渉しませんよ」

 なだめるように右手を上げて、説得を試みる・・・・・・フリをする。その間に位置取り完了。拳銃による銃撃に最適な距離をとった。

「マリアの仇討ち」
「はっ?・・・・・・ま、まさか?!」

 例のアレを気に病んで自殺?いやーな汗が流れる。別に死んだところで己には関係は無いものの標的から外れた知り合いが自分のせいで死んだとなると目覚めが悪い。

「今日、処刑なのよ。姦通の罪で」

 三つ編み女――確かニキータと呼ばれていた覚えが――の言葉に。

「こらこら、寛容と博愛の宗教じゃなかったんですか」

 ツッコミを入れる。

「しかも、あの子、仏教なんていう異教も取り入れるべきなんて主張初めてしまったから仕方ないでしょう」
――あ"」

 さすがに若干の罪悪感を覚える。なんでまた、あんな目にあって素直に取り入れるかな。その前に、姦通の罪も己が原因か。

「虫に喰われて腐った花は捨てなきゃいけない。虫も駆除しないと。それにぃ、うちの教義では離婚できないの。腐り落ちた花に縛られるマリアの旦那様が可哀想でしょうぅ?」

 ニキータが嫌な笑い方をする。途端、一気に殺意が膨らんで己は反射的に右手で隠し持った銃の引き金を引いた。
 弾丸は確実にニキータの眉間に突き刺さる・・・・・・筈だった。障害物さえ無ければ。

「それが、あなたの能力ですか。博愛の信徒とは思えない趣味の悪さですね」

 ニキータを囲むようにして、うぞうぞと蠢く人型の土塊を眺め己はため息をついた。厄介だ。

「はぁ?あんなの信じてる訳ないじゃない。――知ってる?ここ、古戦場なのよ」

 周囲から人間の骨や腐り果てた死体が土中から腕を出し始めている。古の屍が土中から姿をあらわしたのだろう。身体を失った古い霊は土塊に憑かせて動かしているらしく、ニキータの周囲を護衛するように動いてる。
 死霊使いといったところか。しかも、広範囲に干渉可能なタイプ。対処法は幾つかあるが・・・・・・どうしたものか。

「念には念を入れて、害虫駆除させてもらおうかな。ねぇ?私の能力は死霊を使うだけじゃなく、"呼び出す"事もできるの。意味、解る?害虫が最近殺した人間の中で、一番厄介だったのは誰?」

 その言葉の意味を理解する前に、後ろから"声"が聞こえた。

「だれがこまどりをころしたの?」

 青ざめて振り返ると、そこには――
 己が確かに殺した筈の”眠れる森のアリス”が立っていた。全身に怖気が立つ。もし、彼女が生前の力そのままで死霊使いと一緒に襲いかかってきたなら勝ち目は無い。
 すぐさま走り出し、アリスから距離をとる。その間に護衛死霊の隙間を狙い、全ての現象を操っているであろうニキータへ銃弾を放つ。が、全て宙に浮いた木々に阻まれた。
 くそっ、ポルターガイストまで使役してるのか。
 逃げようとする先には、土霊と死骸がウヨウヨと待ち構えている。突破口を探そうと一旦足を止めると――青い鳥が肩に止まった。

「こまどりをころしたのは、おにーさんだよね」
 
 アリスの声が、そう聞いてきた。

「なっ!?」

 その青い鳥が消えたかと思うと、己の隣にはアリスが腕を掴んでいる。一瞬で引き金を絞りその可愛らしい顔に銃弾を叩き込むが、全て素通り。実体化はしていないようだ。

「やっぱり、おにーさんだぁ。じゃあ、おにーさんがお兄様だったのね。嬉しい!」

 意味の解らない事を言って抱きついてくる。何故か体温と柔らかい肉の感触が伝わってくるのが逆に怖い。
 しかし、ここで重要なのは、何故かアリスからは殺気や悪意が感じられないということだった。

「そこの亡霊。私の指示に従いなさい!私は殺しなさいと命令した筈!」

 そんなアリスの様子に痺れを切らしたニキータが声を荒げる。どうやら、アイツにも完全制御出来ないらしい。

「煩いなぁ。アリスがお兄様以外の命令なんて聞く訳無いでしょう。――もう」

 アリスは、ニキータを面倒くさそうに睨みつけると・・・・・・突然、辺りを囲んでいた悪霊達の様子がおかしくなった。土塊は崩れ始め、屍人はウロウロと明後日の方向へ歩き出す。

「アリス、もしかしてあいつの能力に干渉出来るんですか?」

 確認をとる。

「あったり前だよ、お兄様。みててね!」

 満面の笑みで、自慢そうに言うと、アリスはその華奢な手をニキータに伸ばす。
 途端、周囲の霊達の気配が薄れ始め、ニキータもアリスへ腕を掲げて対抗する。
 良くわからないが、精神干渉系の力勝負となっているらしい。門外漢の己にはどちらが有利かさえ解らないものの、解る事は二つある。
 何の勘違いをしているのかは解らないが、呼び出されたアリスの霊は己の味方をしている事。そして、ニキータを護衛していた土塊は崩れたという事。それだけで十分。

 鳴り響く銃声。

 アリスをコントロールする為に無防備になったニキータを蜂の巣にするのは簡単だった。
 どうやらマリアと同じで実戦慣れはしていなかったようだ。

「ああ、あいつ血だらけ〜。うふふ、お兄様すごーい」

 あとは、残ったこのタチの悪い亡霊を消滅させるだけ、だが。
 敵意を持っていない以上、迂闊に手を出すとヤブヘビになりそうな気もして躊躇する。そして何より。その気が失せてしまった。

「窮鳥懐に入れば猟師も殺さず、ですね」
「お兄様。なぁに、それ?」

 不思議そうに首を傾げるアリスを撫でてやってから、ニキータが漏らした情報を考える。
 
 己は明日、気持ちよく目覚める為の行動を選択した。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

「これよーり、魔女の処刑を行います。各自石を持ちて並んでください」

 異様な光景だった。
 老若男女がずらりと円形の並び、中央には十字架に縛られた女が一人。
 幾重にも縛られ、食い込んだ縄がその豊かな胸を強調し、凄まじい色気を放っている。周囲の男の目がギラついているのもそのせいだろう。
 
「まずは、夫である貴方から石を投げなさい。この魔女が死ねば死別ということになり新しい女を娶る事ができます」

 牧師の淡々とした言葉が逆に異常さを引き立てる。その異様な空気の中、民衆は石をもって今か今かと合図を待っていた。

 己は、エンジン音を響かせると、一気にバイクで突入した。

「あなたたちの中で罪を犯したことのない者が、まず、この女に石を投げなさい――だったっけ?」

 割れる群衆の中を突破して、マリアを庇うようにバイクを止め嘲笑する。
 明らかに教義に反する行為をどう言い訳して、こんな展開の至ったのやらと呆れ果てるばかりだ。いや、 普通にマリアを暗殺しようとしていた己が言うのも何だけど。

「なっ、企業の犬が何をしに来た!」
「罪人はお前だ!お前のせいでこうなったんだろう」

 口々に罵ってくるが、石は投げてこない。皆、己の右手にある銃を意識してる。
 神の加護より"力"だなぁ。マリアがこうなったのも己が力を奪ったからか、となると、ホント全て己のせいではある。

「いーや、今罪を犯そうとしてるのは、貴方たちですよね。特に、旦那さん」

 銃口をマリアの旦那と呼ばれた男に向けると、ひぃぃっという声と共に石を取り落として尻餅をついた。
 ニキータと言い、旦那といい、一体何なんだ。家族や親友がこんな目にあっているのに、保身しか考えていない。こいつら、自分達の事を姉妹兄弟とか言ってなかったか?!

 家族だったら。
 
 姉が同じ立場だったら己が、己が同じ立場だったら姉が必ず――

 引き金に力を入れようとした瞬間。

「わたしは、大丈夫です、から。皆を赦してあげてください」

 ――己は耳を疑った。
 緊張感と恐怖で息を切らしながらも、マリアがそう囁いてきたのだ。
 ナニヲイッテルンダコイツハ?
 夫や親友、仲間に裏切られ処刑される寸前に、何を言っているんだ?宗教系の御伽噺ではそんなバカバカしい話も聞いたことがある。しかし、現実にそんな事をいう人間がいるとは思わなかった。

 己はマリアを一瞥してから、引き金を引いた。

 虚空に響く銃声。
 銃弾は空に消えていった。

 

 

◇ ◇ ◇

 



 
 威嚇射撃によって、群衆が蜘蛛の子を散らすように逃げ帰った後。

「あ、ありがとうございました。皆を赦してくれて」

 感激したように瞳を潤ませ、マリアは己に抱きついてくる。でかい胸の感触に全てを奪われそうになりながらも何とか踏みこたえ、己は呆れたように言う。

――感謝の方向、そっちですか」
「あ、私を助けて頂いた事も、とても感謝しています。ふふ、何か物語のお姫様になったみたいでした」

 うっすら頬を染めて身を寄せてくると、更に爆乳が胸板にあたってヤバイ。いいシーンなのに。 

「感謝、ね。己は貴女を裏切った挙句殺そうとした筈ですよ。恨んでも良いと思うんですが」
「ふふ、主は言いました"敵を愛し、自分を迫害する者のために祈りなさい"と。仏教もまた"善人なほもて往生をとぐ、いはんや悪人をや"と申しますもの」

 うわ、どっちの教義にも詳しくなってるよ、この人。

 そんな感じでいちゃいちゃしている己達に。

「お兄様。ナニをしているの」

 静かな怒りを湛えた声が後ろからかけられる。ああ、そういえばアリスも付いてきて、否、憑いて来てたんだ。

「ちょっとした、役得をね」

 そう応え、胸に残る柔らかい感触を名残惜しんでから離れる。
 たたたっと走り寄ってきたアリスは、己の腕を掴み、マリアをきっと睨みつけた。

「まあ、可愛らしい子ですね。ダンテさんの妹さんですか?」

 屈託の無い笑顔で、きゅっとアリスをハグする。どうやら実体化しているようで、不意をつかれたアリスは、その爆乳に埋まってしまう。
 マリアは慈愛と母性に満ちた表情でアリスを撫で続けている。それを見ていると何か、妙に毒気を抜かれてしまう。

「ダンテというのは偽名ですよ。己の名は――

 二人には行き場所は無い。
 マリアには借りがあり、アリスは勝手に憑いて来る。
 ――どうしようも無かった。 

 こうして、己は、敵として知り合った二人の面倒を見ることになったのだ。

 

 


 
◇ ◇ ◇

 

 

「いらっしゃいませー。わあっ、また来てくれたんだー」
「いや、アリスちゃんの顔を見ないと、疲れがとれなくってね」
「お待たせいたしましたお客様。――あ、でも、健康の為に程ほどにしなければいけませんよ?」
「いやー、マリアちゃんには敵わないなぁ」

 亡霊とシスターが酒場で給仕しているという、ある意味シュールな光景を眺めながら、己はくいっと酒を煽る。
 因みに、二人とも給仕服は先輩であるカノンの数万倍は似合っている。
 美少女と美女が可愛い服を着て接客してくれる!と、たった数日で客が倍以上。客単価は三倍以上となる有様だった。

「あのさ、ネコ。アタシが不機嫌な理由解ってる?」

 向かいに座っているカノンが私服で座っている。今日の仕事は休みらしい。

「給仕の仕事が減ったから、じゃないですよね。前々から本業に差し支えるから少なくしてって言ってましたし」

 そんな惚けた返答に、カノンの表情が更に不機嫌になっていく。

「昨日、ネコの部屋訪ねたんだよね。昼と夜」
「え"」

すぅっと青ざめる。気づかなかった。

「"お兄様、きもちいい!!"
"赤ちゃんデキちゃいます、ぁぁ、なかにぃ・・・・・・あつい・・・・・・"
"ママのここから、お兄様のミルク垂れてる――、美味しい♪"
"二人ともおっぱいばかり吸って、うふふ"
なーーんて、声が聞こえてきたんだけどさぁ。ナニやってんの、あんたは」

 カノンのジト目視線が痛い。
 昨日は、二人揃えて親子丼風味を朝から晩まで楽しんでしまったワケだが、しっかりと聞かれていたらしい。
 最初に会った時にマリアを敵視していたアリスも、マリアの母性に魅了されて今ではママと呼ぶようにすらなっている。

「イヤ、あー、その。姉ノ奪還計画ニ必要ナコトナノデスヨ」

 我ながら嘘っぽい言い訳だが、これは事実だ。あのSEXだって二人を説得するための・・・・・・。

「はーーーん。あのラブラブ乱交近親相姦ごっこがねぇ。その内、家族増えちゃうんじゃない?」

 確かに、二人には中出ししまくっている。亡霊であるアリスに心配はいらないとしても、マリアはヤバそーだなぁと我ながら思う。
 いや、まだ人妻ってところと、あの爆乳が揺れてるのを見たら、我慢は無理ですよカノンさん。
 と、言い訳したかったが、殴られそうなので止めた。

「本当なんですってば。例のニューベガス最深部のカジノ、ザ・コアに行くための資格、知っているでしょう?」

 この言葉の意味を悟ったのか、カノンの瞳が鋭く光る。

「はぁ?まさか、ネコ・・・・・・本気なの?それ」
「物見遊山じゃないですからね。二人の了解も得ました。しかしカノンですらそんな反応なら――計画は上手く行きそうです」
「ふーん。確かにネコの武器は大したモンだね。このスケコマシ」

 不機嫌な表情のまま睨みつけられるが、それ以上は何も言ってこない。了解したということだろう。

「まあ、全員で帰ってくるので。心配しなくて大丈夫ですよ」
「はぁ〜。全く、それを祈ってるわ。もし一人で帰ってきたら、マスターに死ぬまでボコってもらうから」

 そう言って、カノンはニューベガス及びルシエル・B・ダービーの追加資料をすっと差し出してきた。

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 対人博打は、相手の手札を知ることが出来れば絶対的優位に立てる。
 ルーレットはポケットに落ちるボールが一つ隣なだけで全く結果が違ってくる。
 もし、誰の目にも見えないように動くことのできる幽霊がギャンブラーに協力していたとしたら?その結果を、己はここ数日目の当たりにし続けていた。

 胸が広く開いたセクシーなドレスを着たマリアは、己の隣にいるだけで対戦相手の集中力を乱し、ステルス化したアリスは相手の手札を己に伝え、必要ならばホンの少し、不自然にならない程度に物理干渉する。
 通常、どんなに優秀な死霊使いであっても情動で動く思念体にそんなイカサマをさせる事は不可能と言っていい。
 実体化と霊体化、可視と不可視、物理干渉の有無を操作可能な亡霊を使役出来れば、イカサマし放題だ。


「これで、3日目。そろそろザ・コアに入る資格が手に入るかな」

 己は全裸のまま、目の前でイチモツを舐め合ってる二人の頭を撫でる。

「んっ、んぅ――お兄様、おっきぃ」
「ちゅぱ、美味しいです。ぁぁ、あなたぁ」

 手は頭から乳房へ。巨乳と微乳の感触二つを楽しみつつ考えを巡らせる。
 ザ・コアに入る資格は、一定の資金力と勝利実績。
 それでも普通ならば警備上の理由から審査に一年はかかる。その中で例外が一つだけある。家族連れならば配偶者や子供を人質にとった形となる為、出場許可は早い。その為の二人だった。
 
「今日はどちらからシますか?」

 二人の手の中にあるマグナムをブルンと震わせると、マリアはうっとりとした目で追ってくる。
 これからの事を考えると、彼女達への報酬はたっぷり与えとくべきだろう。己は"妻"と"妹"と登録した二人を抱き寄せ――快楽に溺れた。

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 ザ・コア。
 それが、現在、ルシエル・B・ダービーが看板公式ギャンブラーとして住まう場所だった。
 ザ・コアではギャンブルは競技として位置づけられ、競技者として出るには厳しい条件が必要だった。
 しかし、観戦者として入る分には、金を払うだけで問題無く観ることはできる。

 そこで知ったルシエル・B・ダービーの強さは――桁違いだった。

 公式ギャンブラーはザ・コアで公式認定されている競技ならば、勝負を挑まれれば誰であっても対戦しなければならない。
 ルシエルは、その挑戦全てに勝利し続けているのだ。
 勝負勘の良さ、戦術、統計、それら全てが最上級である上に超が付くほどの豪運がある。

 ポーカーならば、最初の手札の時点で3カード以上が確定。
 勝負の時点で4カード以上。極稀に相手がそれ以上の手札だった場合は絶対に勝負はしない。
 仮に、己がアリスによるイカサマを駆使したところで勝てないのは明白だ。ずっと降り続ける羽目になるだろう。

 今では、ルシエルに挑む相手は観光客の"記念ギャンブル"か凄腕ギャンブラーの二極化しており、後者は絶滅寸前にまで追い込まれている。
 
 一つ息を吸う。

 そして、今。
 競技者としてザ・コアに立てた以上、こちらの手を読まれる前に挑む必要があった。
 己は客との記念ギャンブル&談笑が終わったルシエルにゆっくりと近づく。
 勿論、ここで"殺す"のは難しい話では無い。そんな事をすれば、己とアリスは逃げられてもマリアを見捨てる事になる。その上、一生涯追っ手から逃げ続けなければならないだろう。
 
 ギャンブル都市ではギャンブル以外の手段で目的を果たそうとする人間が一番嫌われるのだ。

「ルシエルさん。己と一つ勝負をお願いしたいのですが」

 これが、ルシエル攻略の第一歩。

「あら?街の入口でお会いした方々ですね。はい、勿論宜しいですよ。勝負は何にいたしますか?」

 観光客による記念ギャンブルだと思ったのだろう。にこっと営業スマイルで受け付けてくれる。
 ニューベガスで看板となっているだけあって、その美貌と笑顔の組み合わせは卑怯な位魅力的だった。

「勝負方法はマーダー・ルーレットで」

 己の言葉に、ルシエルと周囲が凍りつく。
 マーダー・ルーレット。それは、ロシアンルーレットの亜種で、お互いリボルバー式拳銃の引き金を引くのは同じ。
 ただし銃口は相手の心臓か頭に向けられる。
 当然、敗北者は銃で撃たれた方となるルールだ。
 ――競技の性質上、数年に一度行われるか否かという位にマイナーで、今迄の挑戦者は全て敗北して死んでいる。
 銃を用意するのは、胴元。幾らでもイカサマが効くのだから当然だった。

「本気・・・・・・いえ、正気ですか?」

 まだ、冗談か何かと疑っているのだろう、ルシエルの唇には、まだ笑みが浮かんでいる。

「いいえ、ギャンブラーとしての正式な勝負です。勿論、この競技の参加費用は払いますよ」
――私の命に見合う、賭け金が残るとは思えないのですけど?」

 マーダー・ルーレットは、公式ギャンブラーに命の危険がある為、参加費用だけで己がここで稼いだチップ全てを使わなければならない。
 賭けで稼いだ金はアリスによるイカサマが万が一にもバレないよう、ザ・コア参加資格取得ギリギリで抑えていた。それ故にランキングに載らずルシエルの目から逃れられたのだ。
 逆にそれは、看板公式ギャンブラーの命に見合うチップを有していない事でもある。
 当たり前だが、己の命がこのニューベガスで、ルシエルの命と釣り合うわけもない。
 
「ありますよ。――だって、その為の参加資格でしょう?」

 出来るだけ悪い顔をしながら、両脇に控えていたマリアとアリスを抱き寄せる。
 そう。妻や子供がいる"家族連れ"がザ・コアへの参加資格を取りやすいのは、安全面での保証というだけでは無い。"解りやすい賭け代"を所有しているからなのだ。

「っ!!最低、ですね」

 ルシエルの瞳が怒りに染まる。
 カノンもそうだったが、やっぱりこういった状況は女としては許せないらしい。
 特に、ルシエルは家族を大事にしているという情報がある。ならば、余計――

「お褒めに預かり光栄ですね。二人とも納得して来てるのだから文句を言われる筋合いはありません」

 嘲笑を浮かべ反論。

「こ、のっ。家族の情に漬け込んで――という訳ですか」

 怒りのボルテージが上がっていくのが手に取るように解る。
 確かに"情"に漬け込んでる事は確かなので、少々心が痛む。己の家族は姉だけとしても・・・・・・もう彼女たちは己の敵では無いのだから。

 それどころか、姉を探すためと話したら。
 "アリスがお兄様を探していたのと同じだね〜。あはは"
 "まあ、お姉さまに会う為に・・・・・・そんな理由があったのですね。勿論、協力いたします"
 万が一を考えると、ゾクリと背筋に悪寒が走る。いや、何を考えている。己の家族は姉一人だけだろうに。

「いいでしょう。下衆に相応しい報いをゲームによって与えるのも私の役割ですから」

 ルシエルがパチンと指を鳴らすと、黒服がリボルバー式拳銃をうやうやしく持ってくる。
 無造作に手にとったルシエルは――

「先がいいですか?後にしますか?」

 食事のメニューを決めるかのような気軽さで尋ねる。
 この選択によって生死すら決まるというのに、全く緊張していない。それどころか楽しんでいる。
 
「随分と余裕ですね。己に選ばせて良いんですか?」
「ふふ・・・・・・どうぞ」

 己もひょいと拳銃を手に取り、ルシエルに構え、引き金を引く。
 カチリ。外れ。

「今なら、参加費用だけ支払って撤退できますよ?」
「そんな小口径の拳銃を素人が撃っても致命傷になる訳ないですからね。負けても怪我する位です。"その程度のリスク"ですから遊びのようなものですよ。ええと、ルシエル・B・バービーさん」

 ギリリッ。
 ルシエルの表情が一段と険しくなる。
 "家族を深く愛しているためファミリーネームを間違われることが我慢ならない"
 カノンの持ってきた情報は正しいらしい。
 そして――家族を愛している人間は、他の家族に対しても同じ道徳律を求める。己の発言は完璧にルシエルの地雷を踏み抜いた。

「そうですか。では、さようなら。頭を撃ち抜かれても同じことが言えるのか試してみましょう」

 ルシエルの指が引き金を引くその瞬間。
 マリアから奪った力を指輪から開放した。
  
 銃声は、無い。

 リボルバーが回る音も無い。――時間が止まったような静寂。
 その中で、ルシエルが銃を両手で握り締めたまま震えていた。

「おや?怖くなってしまいましたか?ルシエル・A・トンキーさん」
「くっ、ぁあ。今、何を。し・・・・・・」

 挑発すると、ルシエルは再び銃を構え直して・・・・・・膝から崩れ落ちた。
 マリアから奪った能力は、強烈な悪意と殺意に対し、抑制と浄化を働きかける。抗えば精神に凄まじい負荷をかけるのだ。
 撃つことが出来ずゲームを終えれば、敗北。
 そのプレッシャーは更に精神的不可を増大させる。

「その賭けに対する情熱と自信が仇になりましたね」

 そう。
 この手段は、ルシエルが賭けに勝つと確信し、己に殺意と悪意を持って銃を向けなければ成立しない。
 普通の人間ならば「撃てる」か解らない状況である為、攻撃抑制と浄化の力は小さくしか働かない。
 しかし、彼女は自身の豪運と恐らくはイカサマを用意していた為、この状況で"絶対に己を撃てる"と確信していたのだろう。
 それだけに効果は絶大だった。

「撃てなければ、ルールによって勝負を放棄した側の敗北です。生殺与奪は己に委ねられる事になります。――たっぷり、可愛がってあげますよ」
 イヤラシク囁くと。

――っ!!!」

 言葉を発する事すら出来ない激痛なのか、ルシエルは声にならない叫びを上げ、己に銃口を向けると――そのまま意識を失った。

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 ニューベガス、ザ・コア内敷地に聳え立つ高層ホテル。
 その最上階にあるVIPルームで、己はルシエルの服を剥いでいた。
 白シャツに細身の黒いスラックスという男装の麗人の如き姿から"女"の身体が出てくるのは、下衆な笑いが出でしまう位にそそる。
 スレンダーで美しいラインを描く肢体。薄く脂肪のついた双乳は芸術品のような気品を纏わせている。

「う・・・・・・ん、ここは・・・・・・私、どうして」

 脱がされた服が散乱するベッドで、全裸のルシエルが頭を振って起き上がる。
 まだ、寝ぼけているのか己には気づいていない。

「お目覚めですか、アイドルギャンブラーさん」

 ルシエルと同じように全裸になっている己は、股間のモノを誇示するように震わせて挨拶した。

「っきゃぁぁぁぁぁ!!な、なんで貴方、裸・・・・・・え?私も、いやぁぁぁ!!」
「そりゃ、まあ。ルシエルさんは負けたのだし、ねぇ」

 何とも、新鮮な反応をしてくれるルシエルにニタリと笑いかけ、己は状況を説明した。
 
「あ・・・・・・っ。確かに。貴方の挑発に乗って、私は判断を間違え――敗北した。それは認めましょう。
そうですね、身体を自由にされる事くらい何でもありません。好きにしなさい」
「お言葉に甘えて、おっと、そうだ。これニューベガス中に生放送してるので、いい反応頼みますね」
「なっ、何考えて――。そんな事をしてただで済むと思ってるのですか。私は、ニューベガスの・・・・・・」
「"元"看板ギャンブラーですね。派手に負けたので、AV出演位しか役に立たないと上が判断したみたいでね。己はさしずめ男優でしょうか」
「そ・・・・・・ん、な」

 ルシエルの顔、設置されたカメラに向けられた途端、絶望に染まる。
 己が勝利した後。ニューベガスの幹部連中と話を通し、今回の騒動で遺恨を残さない事を条件にニューベガスの看板娘が"堕ちる"姿をニューベガスで娯楽放送として流すという契約をしたのだ。
 勿論、このVIP用ホテルも幹部連中提供。余程嫌われていたらしい。
 
 己は仕事を誠実に果たす為、脱力しているルシエルの膝の裏へ手を入れ、"観衆"に見えるよう御開帳。
 
「い、いやっ。この――絶対、負けない。貴方なんかに」
「じゃ、勝負しますか?己とヤってる間、一度もイかなければ、命でも何でも差し出しますよ。その代わり・・・・・・己が勝ったら、一生、性奴隷として使わせてもらうかなぁ」
「勝手にしなさい。私は絶対に負けない!」

 下衆な笑顔を浮かべ、ルシエルの頬に口付けると、本気で嫌がってくる。
 やっぱり、この女は挑発すると楽しい。

 開かせた足の間、殆ど無毛のソコへ指を走らせる。慎ましげな鞘に収まっているそこを皮ごと軽くクニクニ。
 僅かな反応から、どこがポイントかを割り出し、唾液を指にたっぷりつけてもう一度。

「ひぅっ、ぁ」

 優しいタッチの、恐らくはルシエルが一人でスる時の動きを反応からトレース。
 慌てず時間をかけて追い詰めていく。既に5分でトロリとした愛液が滴り始めてるのを見ると、相当敏感な事が解る。
 かなりのオナニー娘だ、と己はそのクールな美貌と見比べギャップに笑う。

「はや、く。イれて終わらせなさい」
「まあ、まあ。そう焦らず」

 涙を湛えながらも睨みつける瞳、その下、泣き黒子の位置にある小さな雷型の入れ墨が色っぽい。
 己は余裕の笑みでルシエルのお豆を捏ねくり回し続ける。
 同時に真っ白で薄い綺麗な形の胸を愛撫。桜色の先端を舌先で嬲る。
 
「ひぅっ、ぁっ、ぐぅぅ」

 必死に快感を我慢しているのか美貌が歪み始める。
 とろみが出てきた膣に小指。膣壁のつぷつぷを擦って、親指で綺麗にクリを剥く。
 軽く解れて来たところで、膣をかき混ぜる指を中指に。

 ちゅぷ、ちゅぷ。ぐちゅ。ぴちゃぷちゃ。

 見つけた弱点に指を添えて軽く振動させると、ヤらしい水音が響いて来た。

「ひゅー、ルシエルちゃん。感じやすいんですね」
「ぁぁっ、くぅぅ、やぁ。貴方なんか、にちゃんづけ、されたくな――い」

 そんな連れない態度のルシエルにお仕置きとばかり、深く中指を入れてクリトリスより少し上を圧迫した。
 じゅぼじゅぼじゅぷ!!!

「ひぃっ、やだっ、でちゃ、やあぁぁぁぁぁ」

 ぷしゅっぅぅぅぅぅぅ。
 美貌の看板ギャンブラー。ニューベガスのアイドルの潮吹きが、ニューベガス中に配信される。
 余程気持ちいいのか、腰が浮き上がりながら何度も何度も間欠泉のように潮を吹き上げる。
 そこへかるーく、クリトリスを指の腹で撫で上げてから捏ねる。

「ひぅっ、またっ!ぁ、あ、くぅ。もう、イヤ。なんで――私の身体、ぁ」

 ビクンビクンと腰を跳ねて感じまくるルシエルを、指先だけでコントロールする。
 今、噴かせたものの、まだイかせてはいない。ギリギリの所で刺激をストップしてる。
 
 絶頂に至るギリギリまでクリを弄り回してから、膣内の刺激にシフトして焦らし・・・・・・・そこで収縮が強くなったら後ろを軽く弄って警戒させる。
 それを何度も何度もしつこく繰り返し、生放送中の皆様にルシエルの弱いところやピンク色の亀裂の反応を見せ続ける。

 しかし、それでも最後の最後でイかせない。
 寸止めを何度も何度も繰り返し、時には己の巨根で入口をつついたり、カリにお豆を引っ掛けるものの――ルシエルが腰を浮かせた瞬間に引く。

「はぁはぁ、ぁ、や――くぅ」

 思わず、という風情で漏れた言葉に、己はルシエルの耳を甘噛みしながら聞く。

「ナニを?早く?」
「す、るんでしょ。イかないか、ら。早く――ぁぁんっ、シなさい」

 あくまで強気なのが嬉しい。
 ルシエルのカモシカのように細い足首を掴み、ぐいっと股を開かせると、トロトロに蕩けきったピンクサーモンが見える。
 そこに己の巨根を宛てがい、入っていく様が見えるように、ルシエルの腰を浮かせる。
 勿論、カメラにも局部がバッチリ写っている筈だった。

「ひぅっ、そんな――おっき、い。なんて」
「ほーら、ルシエルご所望の己のイチモツですよ」
「呼び捨てにする・・・・・・ぁ、ぁあああああ!!!やぁぁぁ!!」

 己の亀頭ずぶずぶと入り、指で確認していたGスポットをカリ首で軽く擦ってやる。
 途端、焦らされまくった反動で、一気にイき始めた。
 
 じゅぶ、ずぼっ。ごちゅ。
 えげつない程の水音が響き、ルシエルの泉を肉の棒が蹂躙する。
 どろどろになるまで焦らされ、イく寸前で潮を噴かれまくった身体は、男のモノを咥え込んだ瞬間、本能に従っていた。

 ずちゅぅぅぅ。
 膣いっぱいに巨根を打ち込んで子宮口を軽くつつくと。

「ひうっ、ぁっぁぁっ。それ、や、やぁ!!っ、っ、っ!」

 派手にハメ潮を噴き、自分の身体をびしょびしょにしながら痙攣する。
 もうイクのが止まらないらしい。

「ほーら、出たり入ったり。ヤラシイなぁ、ルシエルは」
「ひぅぅ、奥、やめ――また、いっちゃ・・・・・・」
「イったら、一生性奴隷ですよ?」
――っ!!」

 "賭け"を思い出したのか急激に膣が締まる。既にイってしまった事はバレているのにと薄く笑う。
 締め付けてくる膣壁に深くカリ首を当てて、Gスポットを強烈に擦ると――
 ルシエルは己に抱きついて、またハメ潮を噴きながらイきまくる。

「あ、や、だ。せいど、れい・・・・・・・なんて」

 快感に酔っ払った虚ろな瞳で呟くルシエルに、止めを刺すように己は笑顔のまま言う。

「おっと、ルシエルが締め付けるから、出したくなってしまいました」
「え?、だめ!だめぇぇ!!中は絶対、イヤ、やぁぁ」
「ダメですよ。この生放送の名前は『憧れのアイドル、ルシエルが中出し生活しちゃいました』なんですから」
「いやぁぁぁっぁぁぁ!!」

 己は、最低の囁きと共に、子宮口に鈴口をぴったり当てて、思いっきり射精した。
 白い樹液が物凄い勢いでルシエルの膣で溢れかえり、結合部からどぷどぷと流れでている。
 もはや、失神寸前のルシエルは、誰が見てもイきまくってるのが解る程腰を震わせ、失禁までしている。

 これでもう、彼女がニューベガスの看板ギャンブラーとして姿を現すことは無いだろう。
 
 依頼達成。
 
 ただ。
 勿論、今晩、こんな前戯みたいなSEXで終わらすつもりも無かった。
 己はルシエルからイチモツを引き抜くと、第二戦に備え、コップに入った水をあおった。

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 じゅぷ。ぐちゅ。
 ぬぷ、ぬぷ、ぬろぉぉ。
 己の巨剣がゆっくりゆっくり、ルシエルの膣から顔を出しては沈む様は心地いい。
 そんな己に抱きつき、ルシエルは唇を預け、恋人同士のようなキスを繰り返す。

 あれから既に12時間。
 
 ルシエルのイった回数は数知れず。
 己も8回程出した為、彼女の足の間は輪姦されたかのように大量の精液が付着して、尚も己の肉棒をくわえ込んでいる。

「きもち、いい。ぁん――ぁぁ」
「ギャンブラーを止めて、己の性奴隷になりますか?そうしたら・・・・・・」
「ぁっ、あっ。な、る。なります・・・・・・こんなキモチいいこと、知らなかった、から。――あっぁ、ギャンブルと同じくらい、ううん、もっと!ひぅぅっ!!」
 
 酔っ払ったように快感を口にするその姿に、最早、ギャンブラーとしての誇りは微塵も無い。
 ただ、快楽に溺れて男を貪るビッチそのものだった。
 あれほど嫌っていた己の舌を美味しそうに舐め、乳首を軽くつねるだけで派手にイク。
 後ろの穴も、指を入れてほぐすと直ぐに馴染んだ。数日調教すれば、己の巨根でも飲み込むことが出来るだろう。ソレも生中継配信するかな、と邪悪な考えすら浮かぶ。

 それ程、普段とのギャップが素晴らしすぎるのだ。
 あのクールなアイドルが己のイチモツに屈して、無様にイきまくってる姿を無数の観客に鑑賞されているのだから。
 己は最高の気分のまま、ルシエルの中に最後の一発をたっぷり出し切った。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 数日後。
 バー『フォルテッシモ』。

「ふーん、上手くいったんだ。流石ネコねー。確かにアッチの威力は半端ないわー」
 
 ジト目のカノンが心底呆れたというように、顛末を報告した己へ煙草の煙を吹きかけてきた。
 己は返す言葉も無く、視線を泳がせる。

「確かに、ね。アタシは一人で戻ってくるなと言った。うん、それは認める。
 ――でも、一人増やしてくるなんてのは予想外だったわー。しかも結局、彼女の能力はネコと同質だから奪えなかった訳よねぇ」
「ハイ」

 己はひたすらカノンの説教を聞くことしか出来ない。

「その能力が、"賭け代を強制的に回収する能力"でしょ?これ、勝者にも敗者にも適用されるのよね」
「ハイ」

「じゃあ、一生性奴隷なんて賭け代を設定したら、相手が一生付いて来るよう強制執行される訳じゃない?」
「ハイ」

「あんた、馬鹿でしょ?」
「ハ・・・・・・イ」
 
 がっくりと肩を落とした己にもう一度、煙草を吹きかけ、カノンがチラリと店内を見やる。その視線の先には。


"いらっしゃいませー。わあ、オジさん、これアリスにプレゼント?"
"ふふ、飲みすぎはダメですよ。ソフトドリンクにしましょうね"

 二人は無事、ここに帰って来れた。

"はい、私はフォーカードです。これで全勝ですね。――え?私に惚れた?
残念ながら、先約ありです。それに私の好みは『賭けで自分を負かせることができる男』なので、ごめんなさい"

 ニューベガス仕込みの営業スマイルを振りまいているのは。
 ルシエル・B・ダービー、その人だった。


 今日も、バー『フォルテッシモ』は大繁盛だ。

 

 

 

 





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